TBSビデオ問題 TBSビデオ問題の概要

TBSビデオ問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 04:32 UTC 版)

TBSビデオ問題
TBS千代田分室の位置していた科学技術館
場所 東京都千代田区
科学技術館(TBS千代田分室)
日付 1989年平成元年)10月26日 (日本標準時)
概要 TBSのテレビ番組「3時にあいましょう」の取材班は反オウム真理教派の弁護士・坂本堤のインタビューを収録した後、オウム真理教の修行を取材。その際のインタビューで紛糾し、沈静化のため。曜日担当プロデューサー・武市功は坂本弁護士のビデオを見せることを提案。10月26日深夜、オウム真理教の早川紀代秀らが科学技術館に来訪、総合プロデューサー・多良寛則の命令により早川らに坂本のビデオを視聴させ、企画自体の放送を取りやめる約束をする。このことが坂本弁護士一家殺害事件発生の根源とされる報道倫理問題。
原因 TBSがジャーナリズムの鉄則である「情報源の秘匿」および報道倫理を遵守しなかったため
対処 プロデューサーの多良および武市の懲戒解雇
磯崎洋三社長ら経営陣の引責辞任
ワイドショー番組からの一時撤退
深夜放送の一時中止
謝罪 1996年4月30日19時から19時20分まで磯崎洋三社長による特別番組「視聴者の皆さまへ」、19時20分から22時54分まで「ビデオ問題検証特番『証言・坂本弁護士テープ問題から6年半』」(司会:杉尾秀哉)を放送。
5月20日に特別番組「視聴者の皆さまへ」で当時の砂原幸雄社長より経過報告と今後の対策および謝罪放送を行う。
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事件はオウム真理教への強制捜査(1995年3月22日)が行われたのちの一連のオウム真理教事件の捜査の途上で浮上し、当初は否定していたTBSが1996年3月になってから認めたもので、TBSビデオ問題などとも呼ばれる。問題を事件に置き換えた表記もある[注釈 1]


注釈

  1. ^ 単にTBS事件といえばTBS成田事件を指すことが多いため注意が必要である。
  2. ^ 当時のテレビ局舎ではなく、東京都千代田区に当時あった千代田分室(どちらも1994年閉鎖)
  3. ^ 1996年4月30日に放送された4時間の検証番組『視聴者の皆様へ・証言』の31分30秒あたりでTBSビジョン(TBS-Ⅴ)のスタッフの名刺が出てきている。TBSスパークルに名称変更した2023年4月現在『THE TIME,』『ラヴィット!』『ひるおび』『Nスタ』『報道1930』『新・情報7daysニュースキャスター』など多くの報道・情報番組を制作している。『サンデーモーニング』でTBSスパークルは制作協力をしているが、旧東放制作→旧エフエフ東放のスタッフが制作しているため、旧TBSビジョンとは関係がない。
  4. ^ 厳密には、企画していたオウム特集自体放送しなかった。
  5. ^ この時点で聞き取り調査を行ったのは、武市、多良、西野の3人に対してのみだった。
  6. ^ これはあくまでも早川の供述を報道したものであり、「TBSがオウム幹部に坂本弁護士のインタビュービデオを見せた」とは一切報道していない。
  7. ^ この記者会見の際、TBSの大川光行常務が「これで調査を打ち切ります」と発言したため、内外から強い批判の声が上がることとなった。
  8. ^ この参考人招致の模様は、4月3日に日テレとTBSで4月3日17時から中継された。(出典:1996年4月3日付読売新聞夕刊テレビ欄より。同紙夕刊に、「(日テレ)緊急報道番組・TBSビデオ問題で磯崎社長再び国会へ」・「(TBS)報道特別番組・衆議院通信委員会・参考人招致-TBSテープ問題」と記載あり。)
  9. ^ TBSも検証番組において「情報源の秘匿」に言及し、取材協力者に無断で対立相手にテープを見せた行為は、取材原則を逸脱しており、番組制作倫理に反したものであったと認めている。
  10. ^ 筑紫の著書によると、「TBSは今日、死んだに等しい」の言葉の元は放送前の会議中のスタッフの発言であり、放送直前に筑紫が当該スタッフに「自身の言葉として発して良いか」と、同意を得たという[13]
  11. ^ いずれも、「この問題はどの報道機関でも起こり得たことだ」として、TBSバッシングに興じ、自己批判・自己反省を行わないマスメディアのあり方やTBSへの過熱した批判報道に対して疑問を投げかけている。実際にオウム報道が金のなる木となってしまい、そのほかのオウム報道の検証が行われなかった[16][17][18]
  12. ^ この問題による自粛措置により、この番組がこの日のTBSテレビの最終プログラムとなった。

出典

  1. ^ a b c d e 1996年4月30日19時から放映されたTBS社長による特別番組「視聴者の皆様へ」、「坂本弁護士テープ問題」及び関連調査書、株式会社東京放送(1996年4月30日、再調査書)による
  2. ^ 藤倉善郎 2007, p. 89-92.
  3. ^ a b 水中クンバカ以外に「被害者の会」関係者の主張も放映するのか確認するとともに、どのような「被害者の会」関係者の主張を放映するのか教えるよう要求しました。経緯は忘れたのですが、TBS側も教団の反論を聞かずに放映することはできないと考えたのか、録画していた「被害者の会」関係者のビデオを見せてくれたのでした。(「ビデオ問題検証特番『証言・坂本弁護士テープ問題から6年半』で放映された早川供述調書の内容による)
  4. ^ 坂本弁護士のビデオテープを見せた細部は確定できないが、総合プロデューサーと曜日担当プロデューサーが見せる決断をし、坂本弁護士をインタビューした担当ディレクターが呼ばれて実際の作業が行われたと判断される。編集後のオウム側の確認については編集マンの証言による。(「坂本弁護士テープ問題」及び関連調査書、株式会社東京放送、1996年4月30日、再調査書)
  5. ^ a b 原口和久 1998, p. 92.
  6. ^ 1996年5月1日付け東奥日報朝刊18面記事。
  7. ^ 藤倉善郎 2007, p. 88-89.
  8. ^ 藤倉善郎 2007, p. 89.
  9. ^ 「インフォメーションファイル」『月刊アドバタイジング』第41巻第8号、電通、1996年7月25日、75頁、NDLJP:2262172/40 
  10. ^ 衆議院 逓信委員会. 第136回国会. Vol. 第9号. 30 May 1996.
  11. ^ a b 大山友之 2000, p. 226-228.
  12. ^ a b 筑紫哲也 1996, pp. 75–76.
  13. ^ 筑紫哲也『ニュースキャスター』集英社〈集英社新書〉、2002年6月14日、172-174頁。ISBN 9784087201451 
  14. ^ 筑紫哲也 (1996年3月25日). “News23 多事争論 3月25日(月) 「坂本弁護士事件とTBSの問題」”. 筑紫哲也 NEWS23. TBSテレビ. 2012年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月22日閲覧。
  15. ^ a b c 筑紫哲也 1996, pp. 77–79.
  16. ^ 田原総一朗『田原総一朗の闘うテレビ論』文藝春秋、1997年3月1日、103-127頁。ISBN 9784163526508 
  17. ^ 木村太郎『太郎が飛んだ 国際ニュースの現場』東京新聞出版局、1997年5月1日。ISBN 9784808305970 
  18. ^ 黒田清『TBS事件とジャーナリズム』岩浪書店〈岩波ブックレット No.406〉、1996年7月22日。ISBN 9784000033466 
  19. ^ 神山冴と検証特別取材班『TBSザ・検証 総力取材 局にかわって私がやる!!』鹿砦社、1996年6月1日。ISBN 9784846301545 
  20. ^ 森達也. “真実と偽りが二極化する危うさ―オウム事件から激変した日本社会”. WEB論座 (朝日新聞社). https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2017111400004.html 
  21. ^ 第136回国会 逓信委員会 第9号 - 平成8年5月30日,当時社長の砂原幸雄の発言より
  22. ^ 平成7合(わ)141 殺人等 平成16年2月27日 東京地方裁判所
  23. ^ “TBSがワイドショーを復活させた理由”. デイリースポーツ. (2015年3月10日). https://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2015/03/10/0007806440.shtml 


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