HyperText Markup Language 歴史

HyperText Markup Language

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/11 16:03 UTC 版)

歴史

1989年CERNティム・バーナーズ=リーは、オリジナルのHTML(および多くの関連したプロトコル、HTTPなど)のメモを提案し、1990年5月にコード化した[22]NEXTSTEPの動作するNeXTcubeワークステーション上で開発された。当時のHTMLは仕様ではなく、直面していた問題を解決するためのツール群であった。直面していた問題とは、ティム・バーナーズ=リーやその同僚たちがどのように情報や進行中の研究を共有するかということである。彼の成果は後に国際的かつ公開のネットワークの出現として結実し、世界的な注目を集めることになった。

HTMLの初期のバージョンはゆるい文法規則によって定義されており、ウェブ技術になじみのない層に受け入れられる助けとなった。ウェブブラウザはウェブページの意図を推測し、レンダリングを実行するのが一般的であった。やがて公式規格においては厳格な言語構文を作ることを志向するようになっていったが、それに加え、ウェブブラウザの挙動を元に構文エラーの取り扱いも規格に含めることで、既存のウェブページに対する互換性の維持が図られている[23]

HTMLが公式な仕様として定義されたのは1990年代からである。それは従来のマークアップ言語であるSGMLに、インターネットのためのハイパーテキストの機能を取り入れるというティム・バーナーズ=リーの提案に大きく影響を受けたものだった。

1993年にはIETFからHTML仕様書バージョン1.0が公開され、SGMLからの拡張として文法定義のDTDを持つようになった。また1994年にIETFのHTMLワーキンググループが発足した。しかし、2.0以降のIETFの元での開発は他の開発との競合から停滞した。1996年からはW3Cによって商用ソフトウェア・ベンダーからの支援も受け、HTMLの仕様が標準化されている[24]。また2000年からは国際標準ともなった(ISO/IEC 15445:2000)。W3Cから勧告された最新のHTML仕様はHTML 5.2である。

HTML 1.0、HTML+

1993年6月に、IETFのIIIR Workingグループより提出されたHTML仕様書がインターネット・ドラフトとして発表された。本来はバージョン番号が付いていないが通常HTML 1.0と呼ぶ。このドラフトはティム・バーナーズ=リーおよびダニエル・コノリーによって、ティム・バーナーズ=リーの出したHTML Design Constraintsに極力従うように書かれた。

1993年11月に、HTMLの上位互換な HTML+が発表された。テーブルなどが追加になっている。HTML+仕様書

HTML 2.0

1995年11月に、IETFのHTMLワーキンググループによってRFC 1866日本語訳)として仕様が発表された。下記の補助的なRFCもリリースされた。HTML 2.0はRFC 2854によって廃止されHTMLはIETFではなくW3Cが管理することとなった。

  • 1995年11月:フォームベースのファイルアップロード。RFC 1867
  • 1996年5月:テーブル。RFC 1942
  • 1996年8月:クライアントサイドイメージマップ。RFC 1980
  • 1997年1月:HTMLの国際化。RFC 2070非公式な日本語訳)。「HTML i18n」とも呼ばれる。日本語を扱えるHTMLのバージョンとしては、最も古い。

HTML 3.0、HTML 3.2

HTML 3.0は策定作業が行われたが、ドラフトの段階で策定途中に破棄された。HTML 3.0仕様書

1997年1月14日に、HTML 3.2がW3C勧告として仕様が発表された。HTML 3.2 Reference Specification非公式な日本語訳)。

HTML 4.0、HTML 4.01

1997年12月18日に、W3C勧告としてHTML 4.0の仕様が発表された。HTML 4.0は1998年4月24日に仕様が改訂[注釈 20]された。この仕様にいくらかのマイナーな修正が加えられたHTML 4.01は1999年12月24日にW3C勧告となった。Strict DTDの他にHTML 3.2からの移行過渡期のためのTransitional DTDとフレームを使うことのできる Frameset DTDの3つのスキーマを持つ。

この後、HTML 4.01をベースとしてXHTML 1.0が策定されることになる。

2018年3月28日に代替された勧告に指定され、最新の勧告を参照することを推奨されている。

ISO/IEC 15445:2000

ISO/IEC JTC 1による規格。HTML 4.01を参考にし、より厳密に規格化された。これは2000年に翻訳されJIS X 4156:2000というJIS規格になった。

ISO/IEC 15445:2000は2003年に訂正版[注釈 21]が発行された(ただし訂正なので、その後も名称はISO/IEC 15445:2000のまま)。JIS X 4156は2005年に改正され、JIS X 4156:2005日本産業標準調査会経済産業省)となっている。

HTML5、HTML 5.1、HTML 5.2

HTML5のロゴ

その後、HTMLの改良にW3Cが興味を示さなかったことから、2004年にWHATWGが開発を開始した[25]。2007年には、W3Cもワーキンググループを設立し[26]、WHATWGと共同での開発が始まった。しかし、2012年7月、両者は別個に作業する体制となった[27]。WHATWGの仕様策定はHTML Living Standard英語版として継続している。

2014年10月28日にHTML5がW3Cより勧告された[28]。ブログや記事向けの「article」要素やマルチメディアのための「audio」および「video」要素などをはじめとした新要素・属性が追加され、以前は見た目を規定していた要素の殆どは変更または削除された。2016年11月1日に HTML 5.1が勧告され[29]2017年12月14日に HTML 5.2が勧告された[30]

W3CによるHTML5~HTML 5.2は、WHATWGのHTML Living Standardを元に編集が加えられたものであり、HTML Living Standardとの差異が発生している状態となっていた。これについてWHATWGのIan Hickson英語版がW3C側を強く非難する事態となっている[31]。W3CはHTML 5.3への作業を進められていたものの、2019年のWHATWGとの合意により、取りやめている[3]

HTML Living Standard

HTML Living Standard[32]WHATWGが更新し続けている HTMLの最新仕様。2019年まではW3CのHTML5~HTML 5.2と並行して仕様策定が進められている状態だった。これを元にしてW3Cの勧告が作られていた。


注釈

  1. ^ HTMLという名前は従来はHyperText Markup Languageの略称だったが、2023年4月現在最新の規格であるWHATWGのHTML Living Standardには「HyperText Markup Language」という名前の記載はなく、単にそのままHTMLと呼ばれている。
  2. ^ 廃止された従来の規格(HTML5.2まで)で使われていた呼称。現在でもISO/IEC 15445:2000で使用されている。
  3. ^ 例えば、太字指定の「<b></b>
  4. ^ : Strict
  5. ^ : Transitional
  6. ^ : Frameset
  7. ^ : corrected version
  8. ^ 訂正なので、改定版も名称はISO/IEC 15445:2000のまま
  9. ^ 5年毎にレビューと承認が行われており、手続き上は現在も有効なISO規格である。最も新しい日付は2023年のもの。ただし2004年以降、文書の改訂はない。
  10. ^ バージョン番号はないが「HTML 1.0」などとも呼ばれる
  11. ^ a b c ドラフトのみ
  12. ^ 現在はリダイレクト。Internet Archive参照。
  13. ^ Introducing HTML 3.2 には「HTML 3.2 was superseded by HTML 4.0 in December, 1997.」とあり、仕様書には「Superseded 15-March-2018」とある。前者はHTML 4.0を、後者はHTML5を後継仕様として案内している。
  14. ^ 修正版。現在はリダイレクト。Internet Archive参照。
  15. ^ revised(改訂版)
  16. ^ ワーキングループノートとして公開
  17. ^ XML構文の場合は任意の処理命令も記述可能
  18. ^ 英語表記ではSingle tagsと記載される。
  19. ^ XML構文を用いる場合はこの限りではない
  20. ^ : revised
  21. ^ : corrected version

出典

  1. ^ IANAREG text/html
  2. ^ HTML Living Standard - Last Updated 2 May 2023 text/html
  3. ^ a b HTML標準仕様の策定についてW3CとWHATWGが合意発表。今後はWHATWGのリビングスタンダードが唯一のHTML標準仕様に”. ITmedia (2019年6月10日). 2020年1月19日閲覧。
  4. ^ HTML REVIEW DRAFT — PUBLISHED 29 JANUARY 2020 IS A W3C RECOMMENDATION”. W3C. 2021年5月21日閲覧。
  5. ^ ビレッジセンターHTML&SGML研究チーム『正しいHTML4.0リファレンス&作法』ビレッジセンター出版局、1998年3月20日。ISBN 4-89436-111-6 
  6. ^ JIS X 4156:2000日本産業標準調査会経済産業省
  7. ^ JIS X 4156:2005日本産業標準調査会経済産業省
  8. ^ RFC 2854
  9. ^ HTML 4.0 Specification(superseded)
  10. ^ HTML 4.01 Specification(superseded)
  11. ^ HTML5(superseded)
  12. ^ HTML 5.1 2nd Edition(superseded)
  13. ^ HTML 5.2(superseded)
  14. ^ "3.2.4.1 Attributes An attribute value is a string." WHATWG. (2023). HTML Living Standard - Last Updated 11 January 2023.
  15. ^ "The XML syntax for HTML was formerly referred to as "XHTML", but this specification does not use that term (among other reasons, because no such term is used for the HTML syntaxes of MathML and SVG)." WHATWG. (2023). HTML Living Standard - Last Updated 2 May 2023.
  16. ^ "HTML vs XML syntax ... There are various concrete syntaxes that can be used to transmit resources that use this abstract language, two of which are defined in this specification." WHATWG. (2023). HTML Living Standard - Last Updated 11 January 2023.
  17. ^ MDN Web Docs - Void elements、2024年3月12日閲覧。
  18. ^ W3C "HTML 4.01 Specification" 3.2.1 Elements、1999年12月24日
  19. ^ "Elements, attributes, and attribute values in HTML are defined ... to have certain meanings (semantics)." WHATWG. (2023). HTML Living Standard - Last Updated 11 January 2023.
  20. ^ "These definitions allow HTML processors ... to present and use documents and applications in a wide variety of contexts that the author might not have considered. ... HTML conveys meaning, rather than presentation" WHATWG. (2023). HTML Living Standard - Last Updated 11 January 2023.
  21. ^ HTML Standard”. html.spec.whatwg.org. whatwg.org. 2021年5月30日閲覧。
  22. ^ Tim Berners-Lee. “Information Management: A Proposal”. CERN (March 1989, May 1990). 2012年11月28日閲覧。
  23. ^ 矢倉 (2009年7月21日). “HTML5の構文解析がもたらすもの”. Web標準Blog | ミツエーリンクス. 2020年1月19日閲覧。
  24. ^ Raggett, Dave (1998). Raggett on HTML 4. Addison-Wesley. pp. chap. 2: A history of HTML. ISBN 0-201-17805-2. http://www.w3.org/People/Raggett/book4/ch02.html 
  25. ^ WHATWG; Mondo (2017年7月14日). “HTML Standard 日本語訳 1.6 歴史”. 2017年7月15日閲覧。
  26. ^ W3C (2007年3月8日). “HTML 標準の更新に着手”. 2017年7月15日閲覧。
  27. ^ HTML5仕様をめぐるW3CとWHATWGについて、Ian Hickson氏がメーリングリストに書いたこと”. Publickey (2012年7月24日). 2017年7月15日閲覧。
  28. ^ HTML5勧告–オープン・ウェブ・プラットフォームの重要なマイルストーンを達成
  29. ^ HTML 5.1 is a W3C Recommendation | W3C News
  30. ^ HTML 5.2 is done, HTML 5.3 is coming | W3C Blog
  31. ^ 渡邉卓 (2017年1月1日). “2017年のWeb標準:WEB+DESIGN STAGE新春特別企画”. gihyo.jp. 2020年1月19日閲覧。 “この事態を,WHATWG側のエディターであるIan Hickson氏は,「⁠剽窃」(⁠Plagiarism)という強い語を用いて非難しています。”
  32. ^ HTML Living Standard






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