FMV FMVの概要

FMV

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/24 00:19 UTC 版)

「FMV」のロゴタイプ
FMV-DESKPOWER CE55TW/D

概要

1993年(平成5年)10月18日に発売(同日、富士通はOADGに正式加盟)。FMVの意味は、公式にはFujitsuのF、マイコンのM、DOS/VVictoryのVをとったものとされる[1]。異説としてFujitsu Multimedia Visionの略という説もある。Fujitsu Multimedia Vision(富士通マルチメディアビジョン)は元々、1991年(平成3年)に富士通が発表した[2]マルチメディア構想の名称である。

2010年(平成22年)夏モデルからは「FMV」の意味は「F」ujitsu PC 「M」aterializes your 「V」ision.(富士通PCは、あなたのやりたいことを実現します。)となった[1]バクロニム)。なお、1980年代初頭から富士通製PCには「FM」ブランドが冠される伝統が残っており、国内外を含め、このような例は他社には見られない。

発売当初のキャッチコピーは「富士通の国際標準機"FMV"」。規格としてはPC/AT互換機相当で、従来の独自規格パソコンであるFMRFM TOWNSと当初併売され、のちに集約した(特にFM TOWNSは末期には「FMV-TOWNS」という名で、FMVのPCIスロットにTOWNSカードを搭載した形のハイブリッド機に移行)。それまでのパソコンでの部品は国産品が多かったが、FMVでは部品を海外で安く調達して組み上げる、または設計そのものを海外に委託する、という生産方法が取られた(FMVの初期シリーズではエイサー製マザーボードを採用)。

なお、現在は一部のシリーズ・機種を除き、デスクトップモデルは福島県伊達市にある富士通アイソテック、ノートブックモデルは島根県出雲市にある島根富士通で部品受入検査・CPUや部品の組み込み・最終組み立て・出荷試験(品質管理)を行っているほか、ユーザーからの意見は開発拠点となっている富士通川崎工場へフィードバックさせ、使いやすさの向上や信頼性の確立などのより良い製品作りに生かされている。また、2011年(平成23年)9月からは高品質・高信頼をアピールするため、国内で生産された機種を「伊達モデル」・「出雲モデル」としてプロモーション展開を開始している。

歴史

当初は企業向けデスクトップPCとしてIntel 486SX/DXといった当時の最先端CPUを採用したラインナップを展開していた(Intel 486SX 搭載モデルに FMV-425D、486DX搭載モデルにFMV-466D[3][4])が、高機能化していくPC用サウンドカードの市場動向・需要や、Microsoft Windows 3.1が豊富なマルチメディア機能を搭載したOSとなったこともあり、次第にFMVはコンシューマを意識したラインナップとなっていった(サウンドカード同梱の限定モデル等も発売した)。一例として限定モデル「FMV-499D2sp」では、DX4-100MHzという当時の高速CPU搭載に加え当時8万円以上もした最速ビデオカードDiamond社製ViperVLBを同梱する等ハイエンドを志向した。FMVに先駆けて「ライバル」NECは「PC/ATをも包み込む」仕様と銘打ってPC-9821シリーズを投入しており、日本独自仕様一色だった日本のコンシューマパソコン市場はコンパックの日本上陸の衝撃から確実にPC/AT系ハードウェアとWindows 3.1搭載パソコンが標準となっていった。

FMV-DESKPOWERの投入

そして非マニアの一般消費者に訴求するべく投入されたのが、初心者にも易しく(独自メニューウィンドウの自動起動)、「マルチメディア」をキーワードに(SoundBlaster16を搭載・アクティブスピーカーまで同梱)、大量のプレインストールソフトウェアをバンドルした初代「FMV-DESKPOWER」である。1995年Windows 95の発売とともに大々的な低価格路線と販売攻勢を打ち出し、ついに富士通のパソコンシェアはNECを抜いて悲願の1位となった。しかし、大量に売れたFMV-51**D3/D4系ベースのDESKPOWERでは、PCI機器の相性問題・Plug&Play実装周りに問題があり、ユーザーからのクレームも多かった。PCIバスの拡張カードによっては、FMVのD3系だけ動作保証外とされていた程であった。また、あまりに値段を下げすぎたため赤字となってしまい、その後は販売方法の見直しが行われた。ちなみに当時の搭載フロッピーディスクドライブはNEC製である。

DESKPOWERシリーズの発展・多様化

Windows 98が発売される頃までは、FMV-DESKPOWERとビジネス向けFMVとでハードウェアデザインは筐体含めて共通化を行っていたが、SONYVAIOシリーズによるPC/AT互換機市場への参戦等でユーザ嗜好の多様化や、PCのデザイン性が売上げへの重要なファクターとなり、次第にコンシューマ向けDESKPOWERは、独自の筐体・デザインとなりビジネス向けFMVと分離される。一方のビジネス向けのデスクトップPCブランドは「FMV-DESKTOP」といい、次第にコンパクト筐体がメインとなりながらも、他メーカーは既にやめてしまっているサービスコンセント付電源を採用し続けるなど、堅牢な企業向けPCとして現在もラインナップが展開されている。

販売形態としては、パソコン初心者向けを意識したために、イメージキャラクター高倉健木村拓哉を起用したり、ワープロソフト(Word)や表計算ソフト(Excel)など、多くのアプリケーションソフトをあらかじめインストールプリインストール)して販売される方式が取られ、その後の各社のパソコン販売形態の基本となった。

かつてはワープロソフトと表計算ソフトの組み合わせを「一太郎Lotus 1-2-3」・「OASYS+Lotus 1-2-3」・「Word+Excel」から選べるのも大きな特徴であったが、Microsoft Office 2000が発売される頃になると、FMVの大半はMicrosoft Officeシリーズをプレインストールするようになり、2010年現在ではプレインストールされるワープロ・表計算ソフトは「Microsoft Office 2010」のみとなっている。

現在ではハードウェアにも力を加えており、2005年夏シリーズでは業界初となる地上デジタルBSデジタル110度CSデジタル放送のHD解像度での視聴・録画(デジタル3波対応のチューナーの搭載自体はNECが先行)、32インチ液晶画面を搭載するなど「デジタルテレビ」としての方向性を強く打ち出したモデルも登場した。

2006年秋冬モデルでは、インテリアに調和するシンプルなデザインの、真っ白なノートNFシリーズを発売。以後一番人気の商品となり、BIBLOの中核を担うシリーズとなっている。

2007年春モデルでは、テレビに繋いで使う、という新しいコンセプトを元に、FMV-TEO(テオ)シリーズを発売(同じ時期に、ソニーも同じ概念のVAIOを発売した)。また、6月にはコンバーチブル型WindowsPCでは世界最小(2007年5月現在)としながらQWERTY配列キーボードを装備したIntel Ultra Mobile Platform 2007準拠のUMPC「LOOX U」を発売。発売当初は注文が殺到し、注文から到着まで最大2カ月近くかかる場合もあった。

2008年夏モデルでは、ソニーのVAIO type L、NECのVALUESTAR Nに続く第3のボードPC「FMV-DESKPOWER Fシリーズ」が発表された。

同年11月には高齢者など、主にパソコン操作に不慣れな方にターゲットを絞り、使いやすさにこだわった「FMVらくらくパソコン」を発売。

2008年12月に発表された2009年春モデルでは、タッチパネル式のサブディスプレイ「タッチスクエア」(ノートPCでは日本初)、地上・BS・110度CSデジタル対応テレビチューナー(ノートPCでは日本初)、水冷システム(同社PCでは初)と3つの初搭載を取り入れた大画面ノート「FMV-BIBLO NWシリーズ」が発表された。

2009年夏モデルでは「FMV-BIBLO LOOX Mシリーズ」を発表し、ついにネットブック市場に進出した。

Windows 7を搭載した2009年秋冬モデルでは、「Windowsタッチ」対応の12.1型ワイド液晶を搭載したコンパクトホームノート「FMV-BIBLO MTシリーズ」、ネットブックより高機能を求めるユーザーに向けた「FMV-BIBLO LOOX Cシリーズ」、2009年度グッドデザイン賞受賞の12.1型ワイド液晶のビジネスモバイルノート「FMV-BIBLO Rシリーズ」の3シリーズを新たに投入した。また、「FMVらくらくパソコン」も新モデルを発表し、従来のノートブックタイプに加え、「Windows タッチ」対応の「FMV-DESKPOWER Fシリーズ」をベースにしたデスクトップタイプを新たに設定した。

グローバルブランドへ

LIFEBOOK WA1/M カスタムメイドモデル

法人向けデスクトップは2005年4月発売モデルより、同社のグローバルブランド「ESPRIMO(エスプリモ)」を導入し「FMV-ESPRIMO」とした。2010年4月発売モデルからは法人向けノートブックモデルと共に「FMV」が取れ、デスクトップモデルは「ESPRIMO」、ノートブックモデルは「LIFEBOOK」となった。

また、個人向けモデルについても2010年夏モデルからデスクトップPCの「FMV-DESKPOWER」は「(FMV-)ESPRIMO」に、ノートブックPCの「FMV-BIBLO」は「(FMV-)LIFEBOOK」にそれぞれ改め、シリーズ名称が刷新された(「らくらくパソコン」は名称変更なし)。

  • DESKPOWER Fシリーズ → ESPRIMO FHシリーズ
  • DESKPOWER CEシリーズ → ESPRIMO DHシリーズ
  • BIBLO NWシリーズ → LIFEBOOK NHシリーズ
  • BIBLO NFシリーズ → LIFEBOOK AHシリーズ
  • BIBLO Sシリーズ → LIFEBOOK LHシリーズ
  • BIBLO MGシリーズ → LIFEBOOK SHシリーズ
  • BIBLO Rシリーズ、BIBLO LOOX Cシリーズ → LIFEBOOK PHシリーズ
  • BIBLO LOOX Mシリーズ → LIFEBOOK MHシリーズ

これにより、日本国内でも個人向け・法人向けを問わず、デスクトップは「ESPRIMO」、ノートブックは「LIFEBOOK」に統一され、「FMV」は個人向けパソコンに用いるブランド名となった。

同時に、ESPRIMO FHに3D対応モデルが設定された。本モデルでは2D映像から3D映像への変換機能を備える。2010年冬モデルで新たにノートブックのLIFEBOOK AHにも3D対応モデルが設定された。

その後もシリーズの追加や入れ替えが行われており、2011年夏モデルではストレートPCとキーボードが融合した「ハイブリッド・モーションPC」であるLIFEBOOK THシリーズを、2012年夏モデルでは富士通製初のUltrabookであるLIFEBOOK UHシリーズを、2013年秋冬モデルでは、ディスプレイにチルト機能を備え、タッチ操作がしやすい角度に調整できる一体型デスクトップモデルであるESPRIMO WHシリーズを追加。2014年春モデルでは、既存のLIFEBOOK AHシリーズの派生モデルとして、60歳以上の大人世代に向け、使いやすさだけでなく、デザインにもこだわった新ブランド「GRANNOTE(グランノート、LIFEBOOK AH90/P)」を追加し、一度シリーズが消滅していたLIFEBOOK THシリーズはディスプレイが回転するコンバーチブルタイプのUltrabookとしてラインナップに復活。2015年春モデルでは、コンパクトサイズのデスクトップ型PCとタッチパネルを搭載したバッテリー内蔵ワイヤレス液晶ディスプレイの組み合わせとしたディスプレイ着脱式モデルLIFEBOOK GHシリーズを追加した。

2016年秋冬モデルからは、カスタムメイドモデルにおいて、従前からのMicrosoft Officeに加え、キングソフト製のWPS Officeも選択可能となった(インストールメディアではなく、シリアルキー記載のライセンスカードが同梱される。使用するには、カード記載のURLから専用サイトにアクセスし、ソフトウェアのダウンロードとパソコンへのインストール作業を行う必要がある)[5]


  1. ^ a b FMVキッズ > なるほど!パソコン研究室 > これってどういう意味? > FMV、富士通 - 2020年5月23日閲覧。
  2. ^ 清水計宏『マルチメディアへの挑戦』、ソフトバンク、1991年、335頁。ISBN 4-89052-233-6
  3. ^ IPSJコンピュータ博物館【富士通】FMVシリーズ, museum.ipsj.or.jp, http://museum.ipsj.or.jp/computer/personal/0055.html 2022年1月23日閲覧。 
  4. ^ 『DOS/V POWER REPORT '94年冬号』株式会社インプレス、1994年1月8日、84-85頁。 
  5. ^ WPS Office 製品ダウンロード


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