AMD Phenom AMD Phenomの概要

AMD Phenom

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/16 11:09 UTC 版)

Phenom
生産時期 2007年から
販売者 AMD
設計者 AMD
生産者 GLOBALFOUNDRIES
CPU周波数 1.8 GHz から 2.6 GHz
HyperTransport帯域 3.2 GT/s から 4.0 GT/s
プロセスルール 65nm
マイクロアーキテクチャ K10
命令セット AMD64
Extended 3DNow!, SSE3, SSE4a
コア数 3, 4
ソケット Socket AM2+
コードネーム Agena
Toliman
前世代プロセッサ Athlon 64(K8)
次世代プロセッサ Phenom II(K10)
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PhenomはAMD K10 マイクロアーキテクチャに基づいたデスクトップ用プロセッサで、米国時間2007年11月19日に発表された。名前の由来は「驚異的な・目を見張る」といった意味の「Phenomenal」より。稀に「ペノム」とも呼称されるが、正しくは「フェノム」である[1]。2009年1月より Phenom II を発売した。

登場までの経緯

Intel の Core 2 Quad によるクアッドコア ブームの折、AMD にも早急にクアッドコア CPU の発売が求められていた。Kentsfield がデュアルコアの 2ダイによる「なんちゃってクアッドコア」(インテル日本法人担当談)[2]であるのに対し、Phenom は 4つのコアを 1ダイに収めた「真のクアッドコア」「ネイティブクアッドコア」である点を強調。「Are you "ネイティブ"?」のキャッチコピーで、対抗感を滲ませていた[3]。また、なかなか出荷に漕ぎ着けないまま、威勢の良い事を発言するAMDに大して、見掛け倒しであることを揶揄して「Phenomは張り子のクアッド」(インテル日本法人担当談)などと命名し、煽っていた。

当初はクアッドコア製品が「Phenom X4」、デュアルコア製品が「Phenom X2」と名付けられていた。しかし、出荷直前の2007年9月に急遽トリプルコア製品をラインナップに加えると発表し、クアッドコア製品は「Phenom 9000」、トリプルコア製品は「Phenom 8000」、デュアルコア製品は開発中止となり、代わりに「Athlon X2 7x50」 (Kuma) が発表された。

この世界初の x86 トリプルコア採用 CPU はPhenom 9000 シリーズのコアを 1個無効化したものとされ、歩留まりが向上すると共に価格や消費電力が低下する点をセールスポイントとした。PhenomIIの方が有名だが、一部において、無効化されているコアを復活できると話題になった。[4]

発売後の状態

後発だけあって Core 2 Quad の対抗馬として大きく注目され、発売後は各種メディアでベンチマーク比較が数多く行われたが、その結果 Core 2 Quad を超えるものではないとする評価が多勢を占めた。要因としては、完全なマルチスレッド処理となっているアプリケーションやゲームがまだ僅かしかなく、Phenom が得意とする処理は従来プログラマーにとって避けるべき処理とされていたことや[5]、絶対的なクロック数の低さ、消費電力の高さなどが挙げられている。これにより、新製品にもかかわらず高値を付けることができず、TLB のエラッタ(後述)が発覚してからは更に値が下がる窮状となった。なお、このエラッタが解消された2008年3月からは、再び Phenom 9000 が Phenom X4 9000 に、Phenom 8000 が Phenom X3 8000 に改称された。

TLBのエラッタ問題

K10 マイクロアーキテクチャでの最初のリビジョンである B2 では、全 CPU モデルで L2 キャッシュの不具合が原因で、L3 キャッシュ内容が特定の条件で破壊されるという、エラッタの存在が公表されている。L2 / L3 キャッシュと Translation Lookaside Buffer (TLB) に関わる問題であり、最悪の場合、OS がフリーズしたりデータが破損したりする可能性があるが、通常使用によるエラッタによっての問題の発生確率は低い[6]

このエラッタを回避するには、BIOS や OS によってモデル固有レジスタ (MSR; Model Specific Register) の設定で TLB のキャッシュを無効化するしかないが、TLB のキャッシュを無効化した場合はアプリケーション レベルで性能が 5% から 10% 低下する[6]。このエラッタは同じ K10 マイクロアーキテクチャを採用する Opteron でも発生し、Barcelona の一時販売停止から大量出荷の延期に繋がると共に、高価格で販売できる新製品の出足を挫いた。

Phenom の発売後まもなく TLB のキャッシュを無効化するための MSR の変更を行うコードを含んだ BIOS や OS での対策が始まり、2008年3月からはエラッタを解消した B3 ステップが順次発売されている。通常、ステッピングの更新でモデルナンバーが変更されることはないが、B3 ステップの Phenom はモデル ナンバーが 50 増加しており異例の差別化が図られた。


  1. ^ ペノム【ぺのむ】 古田雄介&ITmedia アキバ取材班
  2. ^ “神様”切り返し、AMDクアッドコアは「張子のクアッドだ」”. Impress Watch. 2008年10月23日閲覧。
  3. ^ Phenomロゴが秋葉原をジャック「Are you“ネイティブ”?」”. Impress Watch. 2008年10月23日閲覧。
  4. ^ 株式会社インプレス (2009年9月6日). “4コア化したPhenom II X3が店頭デモ製品パッケージでも機能解説、“コア復活”もメジャー化?” (日本語). AKIBA PC Hotline!. 2022年8月16日閲覧。
  5. ^ Phenom徹底分析(前):ネイティブクアッドコアに意味はないのか?”. 4Gamer.net. 2008年12月22日閲覧。
  6. ^ a b 西村 岳史. “Vista SP1でCPUの速度低下についてAMDがコメント:ニュース”. PC Online. 2008年10月23日閲覧。


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