4ストローク機関 2ストローク機関との比較

4ストローク機関

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/23 08:48 UTC 版)

2ストローク機関との比較

燃料に同じガソリンを用いる場合について2ストローク機関と比較すると、未燃焼成分である炭化水素や潤滑油の燃焼に伴う粒子状物質の排出量が少なく、三元触媒を用いて窒素酸化物一酸化炭素の排出を抑制しやすい。燃焼効率や熱効率が高く、燃費が良好である。排気の騒音が2ストローク機関より低い。爆発(作用)ストロークが下死点近くまで続いて働き、他の3ストロークをこなすための慣性装置(フライホイール)の働きも強いので、低速回転の安定性や操作性は2ストローク機関に勝る。

一方で、クランクシャフトの回転に対する燃焼工程の回数が2ストローク機関の半分になるため、同じ排気量で比較すると出力(軸トルク)が低い。吸排気バルブとその駆動機構やエンジンオイルの循環機構などのために部品点数が多く、重量や価格の面で不利である。必要な整備間隔は長くなるとしても整備には手間と費用が掛かる。

競技用オートバイにおける4ストロークエンジン

1960年代以降、耐久性の問題を克服した2ストロークエンジンが競技用オートバイの世界を席巻したが、1980年代に入ると4ストロークエンジンが復権するようになった。

オフロードでは1980年代にハスクバーナがビッグボアの4ストロークエンジンのエンデューロマシンを開発。欧州エンデューロ選手権(現在の世界選手権)で開発者でもあるトーマス・グスタフソンがタイトルを獲得する活躍を見せた。ハスクバーナがカジバに買収された際、グスタフソンは仲間を連れて退社し、フサベルを設立した。

1990年代にヴェルテマティ・レーシングが、フサベルのエンデューロ用バイクをモトクロッサーに改造してモトクロス世界選手権の500ccクラスで複数回タイトルを獲得。高速域でもトルク特性が安定している4ストロークエンジンの強みが注目されるようになった。また同時期に北米モトクロス(AMAモトクロス/AMAスーパークロス)では排ガス規制の関係から4ストロークエンジンが規則で推奨されるようになり、日本メーカーをはじめとする各社が4ストロークエンジンを導入するようになった。4ストロークエンジンの特性はトップレベルのモトクロスの環境に合致し、現在では育成クラスを除くと4ストロークエンジンのみに限られている。

マシンの軽量化が命のトライアルでは2ストローク優位と思われていたが、00年代半ばからホンダは傘下のトライアルバイクメーカーであるモンテッサのシャシーに、4ストロークエンジンを搭載した。トライアルでは当時珍しかった燃料噴射装置(FI)を採用して、4ストロークの低速トルクの良さを高めつつ、高回転域の伸びも2ストロークエンジンに対抗できるレベルに改良した[3]。これを天才トニー・ボウが操って、屋外・屋内双方の世界選手権で17連覇という圧倒的な戦績を治め、全日本選手権でも小川友幸が11連覇を達成している(2023年時点)。

市販車ロードレースの世界では、北米AMAのフォーミュラ1規定において750ccの2ストロークエンジンが猛威を振るっていたが、タイヤが引き裂かれるほどのハイパワーによる安全の懸念、さらには一社独占状態が続いたこともあり、1985年にそれまで下位クラスであった4ストロークエンジンのスーパーバイククラスが最高峰クラスにとって代わり、欧州のスーパーバイク世界選手権でも1988年の設立当初から4ストロークエンジンに限定して開催されるようになった。プロトタイプ規定のロードレース世界選手権(現MotoGP)でも市販車の趨勢に合わせ、00年代から最高峰クラス(WGP500ccクラス→MotoGPクラス)は4ストロークエンジンのみに限られるようになった。


  1. ^ 夏目幸明 『ニッポン「もの物語」』 講談社 2009年6月 ISBN 978-4-06-215315-7 その15 スーパーカブ(p.150)
  2. ^ DISCOVERY Chanel 「Legend of motorcycle」
  3. ^ Hondaの挑戦が生んだ、トライアル世界チャンピオンの系譜:第3期 「4ストローク、第二世代(水冷/プロリンク)他の追随を許さない、4ストロークの技術革新」


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