高血圧 高血圧の概要

高血圧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 08:16 UTC 版)

高血圧
動脈性高血圧を示している自動血圧計(収縮期血圧(最高血圧)158水銀柱ミリメートル (mmHg)、拡張期血圧(最低血圧)99mmHg、心拍数80bpmを表示している)
概要
診療科 家庭医療, hypertensiology[*]
分類および外部参照情報
ICD-10 I10,I11,I12,
I13,I15
ICD-9-CM 401.x
OMIM 145500
DiseasesDB 6330
MedlinePlus 000468
eMedicine med/1106
Patient UK 高血圧
MeSH D006973

生活習慣病のひとつとされ、厚生労働省(2013年度)は男女共に最も通院者率が高い疾患として公表している(2位は男性が糖尿病、女性が腰痛)。

アメリカ合衆国では1995年に、成人全体の24%には高血圧があり、そのうちの53%の人は降圧剤を服用していた[1]日本高血圧学会によると、日本には4000万人の高血圧の人がいると推定されている。肥満脂質異常症糖尿病との合併は死の四重奏、syndrome X、インスリン抵抗性症候群などと称されていたが、これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。


注釈

  1. ^ 病気の実体論によって分類しているのではなく、医師が仕事を進めるうえでの便宜上の分類である。あくまで医師によって原因が特定できたかできなかったかという、医師側の状態によって分けているものであって、病気の実態論で二分類しているわけではない。ある医師にとっては「原因が特定できない」(=本態性高血圧症)とされていて「本態性高血圧症」とされた症状が、別の能力が高い医師が診断したら原因が特定できて「二次性高血圧」に分類することもありうるし、また、長期的に見て、検査方法の変化や、医学会の判断の変化などによって、見直されることもありうる。
  2. ^ 若年者の場合は原因が特定できる場合も多い。医師の言葉では「若年者高血圧症では二次性高血圧症が高頻度に存在する」などと表現する。 患者の年齢が上がるにつれて「二次性高血圧」の割合が減り、その分「本態性高血圧症」の割合が増える(これは、年齢を重ねるにつれ、人の身体にはさまざまな要因が重なっていてさまざまなことが複合的に起きるので、あまりにややこしくなって、医学的に何が本当の原因なのかうまく特定しきれない割合が増えることである)。 二次性高血圧症については「〜高血圧症」と名付けられることが多いが、たとえば「A性高血圧症」という表現であれば、Aが高血圧の原因だと判断された高血圧であるとの意味である。 例えば、「副腎性高血圧症」は、副腎に問題があることが原因だと判断された高血圧、という意味の表現である。したがって原因についての分析が変更されると、名称が変更されることがある。 「二次性高血圧」(=原因が特定できている高血圧)には、副腎性高血圧症、腎血管性高血圧症、腎実質性高血圧などがある。褐色細胞腫、クッシング症候群が原因となって高血圧になることもある。
  3. ^ ひとつのケースは、食習慣であり、人の味の好みは家庭の味の影響を受けるので、片方の親が塩味の濃いものを好むと結果として子供は濃い味に触れる機会が増え、塩分が強いほうに誘導される。薄味、濃い味の両方が食卓に並ぶことがある場合でも、概してどちらかと言えば濃い味のほうに誘導される傾向がある。結局、両親のどちらかが塩味の濃い味を好むと、子供まで塩味の濃い料理を選ぶ習慣がついてしまうことが多く、その結果どちらかの親が高血圧だと子まで高血圧になっているケース。この場合は、親の高血圧は本当の因子ではなく、どちらもともに高血圧は「結果」であり、本当の原因は《塩分のとりすぎ》や《生野菜不足》である。この場合は食習慣を改善することで結果は変えられる。もうひとつのケースは、遺伝的なもので親から受け継いだ遺伝子が影響している場合である。長野県では長年に渡り代々血圧が高い人が多く脳卒中も多く死亡率も全国平均と比較して高かったが、1981年から医師などの呼びかけによって食習慣を改善する運動を県民をあげてやったところ、わずか一世代のうちに長寿日本一になった。[18]つまり症状のデータ的としては、親から子へと固定的に引き継がれていても、大きな原因は 実は遺伝ではなく、食習慣であったわけである。日本人全般は「しょうゆ」や「漬物」によって塩分のとりすぎの傾向があり、にもかかわらずそれを自覚しておらず、自己申告形式で塩分摂取量を報告させてもしょうゆの使用量などまではきちんとカウントしては報告されず漏れてしまい、通常の調査では塩分摂取量の因子としての大きさを正確に因子分析しようとしても非常に困難である。長野県のように大規模に食生活の改善の運動をした結果、統計的にはっきりと表れて、はじめてその影響の大きさが判ることになる。以前の長野県で高血圧で病院を訪れる患者でも、医師が病院にやって来る患者だけを見て判断していると医師は「原因は不明」と感じ「本態性高血圧」に分類してしまう傾向があったが、患者の生活の場、患者たちが生活の場でどのようなものを実際に食べているのかという部分まで詳細に観察すれば、判断・診断は変わる可能性があるわけである。患者や地域住民の生活の中の場まで入っていって、そこで食べられているもの、地域の伝統食の実態・加工方法・調味方法を確認したり、食べ物の味を医師が自身の舌で確認したり塩分計で確認したりすれば、(その地域の人々は独特の習慣におぼれてしまっていて気づいていなくても)第三者的には実は、「原因は明明白白だ」ということもあるわけである。こうして「原因は塩分過多だ」とか「原因は野菜不足だ」と特定できれば、それはもはや単なる「本態性高血圧」ではなくなる。長野県の場合は、そうしたことに気付く医師がいて(来てくれて)、行政まで巻き込んで、食生活改善のための大きな運動を展開してくれたおかげで状況を変えられたわけである。

出典

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