高梁川 高梁川の概要

高梁川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/05 07:32 UTC 版)

高梁川
総社市清音付近
水系 一級水系 高梁川
種別 一級河川
延長 111 km
平均流量 63.93 m³/s
(日羽観測所 2000年)
流域面積 2,670 km²
水源 花見山(岡山県)
水源の標高 1,188 m
河口・合流先 瀬戸内海水島灘(岡山県)
流域 岡山県広島県

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概要

高梁川大橋から南望

鳥取県境の明地峠(標高 755 m )に近い花見山(標高 1,188 m )の東麓(新見市)を源流とし、吉備高原の間を貫流して瀬戸内海水島灘倉敷市)に注ぐ。

上流部は主に石灰岩質のカルスト台地である阿哲台を貫通し、河川の浸食によって生成された鍾乳洞渓谷に富む。また、植物分布も日本ではこの地域特有のものも多い。

語源

沿岸の河岸段丘上に発達した山間の町「高梁」に由来すると思われるが、「高梁」の由来には諸説があり、定かではない[1]

  • 古く高梁川(松山川)を「高橋川」と呼んでいたところから、沿岸に「高橋」という地名が出来て、のちに「高梁」に変化したのだというもの。この説だと川の名前が先だが、表記は地名が先である。
  • 『高梁市史』によると、高梁の地名は古くは「高橋」と称したが、高橋九郎左衛門が備中守護として来た際、城主の姓と地名が同じであるのは望ましくないという理由で「松山」と改めた。その後明治初年になって伊予松山と混同されたため、元の「高橋」に戻し、さらに「橋」の字に雅字の「梁」を当てて「高梁」とした。

「たかはし」の読みについては、吉備高原台地の端(松山城のあった地点)あるいは河岸段丘の高く切り立った端のことを指すと思われる。いずれも地名が川名になったと考えられる[1]

歴史

古代から近代にかけて高瀬舟による水運に利用され、備中国域の経済の大動脈として重要な河川であった[2]

かつては、河島川川嶋川)・河邊川川辺川)・総社川松山川板倉川宮瀬川など時代や地域によって様々な名称で呼ばれた。

古代 〜 中世(井尻野分岐)

古代高梁川は総社平野(吉備平野)へ突入する部位(現在の総社市井尻野湛井あたり)で南と東へ分岐していた。

東流は分岐点からやや南東に流身をとりつつ現在の総社市街・吉備平野を蛇行しながら東方へ流れ、やがて当時の足守川と現在の総社市長良付近で合流し、その後南へ進路を変え、吉備中山西部を北から南へ流走し、岡山市北区撫川・倉敷市上東付近が河口で、吉備穴海に流入していた。この河口付近に備中国の国府津があったとされ、上道遺跡はそれに関連している遺跡だとする説もある。[3]

備中国風土記[注 1]逸文である「宮瀬川」によると、賀陽郡の伊勢御神社(いせのみかみのやしろ)[注 2]の東に河があり、河の西に吉備建日子命宮(きびたけひこのみことのみや)があるので、この河を宮瀬川と称した、とある。 この逸文が宮瀬川(高梁川旧東流)の河道の存在を暗示している。この旧東流の河道は、古代行政区をわける「郡境の河道」であったとされ、河道の北側が賀陽郡、南側が窪屋郡都宇郡であった。

その後、平安時代末期の妹尾太郎兼康による十二箇郷用水建設により、総社中心部では同用水の基幹用水路・総社東部では前川の一部・岡山市北区高松付近では西方に河道が移動し、現在の足守川の中下流となった。[3]

また総社市井尻野から南に分流した流路(現在の高梁川の流路)は、現在の流路に近い位置を蛇行しながら分岐・合流をしつつ現在の倉敷市真備町川辺あたりで小田川と合流、総社市清音古地あたりが河口だった。この南分流の河道は、当時の下道郡・賀陽郡・窪屋郡の郡境となっていた。度々洪水を起こしたため、河道や分流などが変遷し、それに合わせ郡境も変更されていた。[4]

中世 〜 近世(古地分岐)

前述のように、平安末期に井尻野分岐の東流は姿を変えたが、南流は土砂による堆積作用や戦国時代以降の新田干拓などにより河口は南に移動していった。さらに現在の総社市清音古地で東西に分流し、西流は現在の柳井原貯水池を通り、現在の倉敷市船穂町水江あたりから現高梁川の流路に近い位置を流れた。東流は、現在の総社市清音黒田から倉敷市酒津あたりまでは現在の流路とほぼ同じ位置を流れ、酒津以南はそのまま南へほぼ直進して流れた。なお、西流は又串川、東流は酒津川とも呼ばれた。倉敷代官所が作らせた1705年(宝永2年)、地図では、古地で高梁川が分岐しており、さらに干拓により児島・連島が陸続きとなり、河口部も西流が連島の西側、東流が連島東側と児島西側の間に位置している。また、干拓により造成された、児島北側を東側へ流れ児島湾に流入する分流である吉岡川も描かれている[4][3]。さらに現在の倉敷市中島は旧窪屋郡、同市西阿知町は旧浅口郡であることから、両地区の境界部を酒津川の派川が流れ、この派川が郡境であったとも考えられている。

また、備中松山藩により、現在の倉敷市船穂町船穂東部から玉島港にかけて高瀬通しと呼ばれる運河が造成された。[2]

近世 〜 現代(酒津分岐)

東高梁川廃川地に掘削された八間川用水(倉敷市水島。用水の左側が水島青葉町、車両進入禁止の道路標識がある右側が水島西常磐町。)

現在の倉敷平野部では、高梁川の洪水に幾度も悩まされたため、度々河川の改修・治水工事が行われた。その後、1907年(明治40年)から始まった改修で東西の分岐点が、古地から現在の倉敷市酒津で東西に分岐するように変更され、東高梁川東松山川)、西高梁川西松山川)となった。旧分岐点から新しい西流(西高梁川)までの流路は柳井原貯水池となり現在に至る。[3]

さらにその後の改修により、酒津分岐の東高梁川は廃川となり、1925年(大正14年)に明治期から続いた大改修工事は完成。 同年5月20日には若槻内務大臣を迎えて竣工祝賀会が開かれた[5]。 この工事により西高梁川が本流となり、現在に至っている。旧河口部には水島市街地、旧堤防には水島臨海鉄道水島本線や八間川用水などが造成された。[3][2]

水不足の発生

高梁川水系では度々少雨の影響で水不足の恐れがある。特に深刻だった水不足問題は1994年夏頃である。貯水率は0パーセントになり、断水などが相次いだ。9月に台風が接近したために水不足は解消された。その後2002年2005年にも水不足の心配があったが、こちらは特に深刻ではなかった。

2007年秋頃から少雨の影響で再び渇水の恐れがあり、一時的に取水制限を実施した。同年12月23日の流域4箇所のダム貯水率は46.3%と、平年値を大幅に下回った。2008年も少雨の影響で8月21日の貯水率は4ダムの平均が42.3%を下回った。

流域の自治体

岡山県
新見市高梁市吉備中央町井原市矢掛町総社市倉敷市
広島県
庄原市神石高原町福山市

注釈

  1. ^ 備中国風土記は後に散逸亡失し、現在わずかにその逸文が残っただけである。
  2. ^ 伊勢御神社を、神明神社に比定する説もあるが、確かなことはわからない。
  3. ^ 倉敷市児島付近を流れる二級河川の小田川とは別。

出典

  1. ^ a b 地名をあるく 1.高梁 - 高梁市公式ホームページ”. www.city.takahashi.lg.jp. 2019年9月7日閲覧。
  2. ^ a b c 岡山県大百科事典編集委員会『岡山県大百科事典』山陽新聞社(1979年)
  3. ^ a b c d e 太田健一『倉敷・総社の歴史』郷土出版社(2009年)
  4. ^ a b 藤井駿・加原耕作『備中湛井十二箇郷用水史』湛井十二箇郷組合(2001年)
  5. ^ 高梁川改修工事が完成、酒津で祝賀式『大阪朝日新聞』大正14年5月21日岡山版(『大正ニュース事典第7巻 大正14年-大正15年』本編p48 大正ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
  6. ^ “新総社大橋 6月25日開通 渋滞緩和、企業誘致など見込む”. 山陽新聞 (山陽新聞社). (2016年5月24日). http://www.sanyonews.jp/article/354664 2016年6月29日閲覧。 
  7. ^ “高梁川の川辺橋 橋脚傾き通行止め 大雨の影響か、復旧見通し立たず”. 山陽新聞 (山陽新聞社). (2023年5月8日). https://www.sanyonews.jp/article/1395838 2023年6月4日閲覧。 
  8. ^ “傾いた川辺橋 橋脚撤去へ工事着手 岡山県 6月中旬までの完了目指す”. 山陽新聞 (山陽新聞社). (2023年6月4日). https://www.sanyonews.jp/article/1407619 2023年6月4日閲覧。 
  9. ^ “「倉敷大橋」市民ら渡り初め 西阿知町 - 船穂町間、24日開通”. 山陽新聞 (山陽新聞社). (2016年1月23日). http://www.sanyonews.jp/article/289590/1/ 2016年1月24日閲覧。 
  10. ^ “「水江の渡し」90年の歴史に幕 倉敷大橋開通で運航は3月末まで”. 山陽新聞 (山陽新聞社). (2016年3月15日). http://www.sanyonews.jp/article/315238/1/ 2016年4月9日閲覧。 
  11. ^ “倉敷みなと大橋 3月25日に開通 水島と玉島結ぶ 物流コスト減狙い”. 山陽新聞 (山陽新聞社). (2017年2月20日). http://www.sanyonews.jp/article/490328 2017年2月20日閲覧。 


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