電力線搬送通信
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実用化の経緯
屋内において2MHzから30MHzまでの周波数の搬送波により信号を送受信する、「電力線搬送通信」(広帯域電力線搬送通信)を実用化するにあたり、総務省の「高速電力線搬送通信に関する研究会」[4]「情報通信審議会」[11]「電波監理審議会」[12]での議論・審議を経て、段階を経ながら規制緩和が実施されてきた。それぞれの状況については以下のとおりである。
高速電力線搬送通信に関する研究会
2005年1月31日から同年12月22日までの間、屋内利用を前提に高速電力線通信機器と既存無線利用(アマチュア無線・短波放送など)との共存条件を検討するため、12回開催された。 最終報告書において「機器が発生するコモンモード電流は、周波数2メガヘルツから30メガヘルツまでの範囲において、コモンモードインピーダンス25Ω、線路の平衡度 (LCL) 16dBのインピーダンス安定化回路網 (ISN) を用いて帯域幅9キロヘルツで測定したとき、30dBμA(準尖頭値)以下であること」との許容値案が示された。
情報通信審議会
2006年1月23日から同年6月29日までの間、高速電力線搬送通信設備に係る許容値及び測定法について審議され
- PLCを利用している設備から10m(田園環境では30m)離れた地点で周囲の雑音レベル以下になること
- 建物の遮蔽によって電磁波が減衰する効果も見込む
- あらゆる家屋のうち99%の家屋で漏洩電磁波強度が周囲雑音以下になること
等漏洩電磁波を周囲の雑音以下にする答申「PLC機器が発生するコモンモード電流は、2MHz - 15MHz : 30dBμA (31μA)、15MHz - 30MHz : 20dBμA (10μA)」の許容値案が示された。なお、この際に仮定された周囲雑音レベルは、2MHz - 15MHz : 28dBμV/m、15MHz - 30MHz : 18dBμV/m であった。
その後、高速電力線搬送通信設備作業班においては、①事業者等からの具体的提案の集約 ②漏えい電波低減技術の効果の検証 ③無線利用との共存可能性・共存条件の検討 ④その他関連する事項の審議が行われている。
2011年3月11日から2012年6月4日まで、
同一敷地内に設置される高速PLC設備間で通信を行うものであって、屋外(分電盤※より負荷側)に設置された高速PLC設備に係る許容値及び測定法について審議され、2012年10月19日情報通信審議会により答申「屋外PLC設備が発生するコモンモード電流は、屋内PLC設備より10dB低い、2MHz - 15MHz : 20dBμA 、15MHz - 30MHz : 10dBμA 」の許容値案が示された。
※同一施設内に複数の分電盤が存在する大規模施設の場合、各分電盤を集約した施設全体の分電盤を指す。
2017年10月20日から2019年4月25日まで、
高速PLC設備の三相電力線での使用および鋼船内での使用に係る審議が行われた。
2019年7月23日情報通信審議会により答申「PLC 設備を接続できる電力線として、600V 以下の単相及び三相交流用電力線の利用も可能とすることおよび鋼船における屋内用PLC 設備の利用を可能とすること。」の使用範囲の拡大案が示された。
電波監理審議会
2006年7月12日から同年9月13日までの間、「電力線搬送通信設備の技術基準等の整備のための、無線設備規則の一部を改正する省令案」の審議が行われ、「高速PLC設備の設置申請が個別にあった場合は、慎重に審査すること」「万が一混信が生じた場合には、迅速に対応できる体制の整備に努めること」「漏洩電波に関して、国際規格などが改定された場合には、必要に応じて技術基準を見直すこと」の付帯条件を付して、改正省令案が妥当であると答申した。
このような経緯を経て2006年10月4日、「無線設備規則の一部を改正する省令」「電波法施行規則の一部を改正する省令」が公布され、同日付で施行となった。
2013年3月13日 - 同年4月10日
屋内においてのみ認められている「広帯域電力線搬送通信設備」の利用範囲を屋外(分電盤から負荷側)に拡大するため、新たな技術基準を設けるものに関し審議の結果、諮問のとおり(コモンモード電流の許容値をは屋内PLC設備より10dB低いものとする)改正することは適当との答申がなされた。
2021年3月10日
「PLC 設備を接続できる電力線として、600V 以下の単相及び三相交流用電力線の利用も可能とすることおよび鋼船における屋内用PLC 設備の利用を可能とすること。」の使用範囲の拡大案に関し、審議の結果、諮問のとおりに改正することは適当との答申がなされた。
- ^ kHz帯PLCの動向と需要地系通信への適用課題
- ^ 電力線搬送通信設備に関する研究会
- ^ 高速電力線搬送通信設備に関する実験制度速電力線搬送通信設備小委員会
- ^ a b 高速電力線搬送通信設備小委員会
- ^ 高速電力線搬送通信設備作業班
- ^ ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース(広帯域 Wavelet OFDM PLC
- ^ 第3世代HD-PLCアダプター
- ^ 通信障害の例:コンクリート壁、金属で覆われた筐体、建物の上下階層間、地下と地上間、持ち込み外来ノイズや電波干渉による通信遮断など
- ^ 事例集|HD-PLCアライアンス
- ^ 【トピック】コンセントに挿すと通信できる「PLC」、再び注目の理由とは? 電波法改正で新たな用途- 家電 Watch
- ^ 総務省情報通信審議会
- ^ 総務省電波監理審議会
- ^ 総務省高速電力線搬送通信に関する研究会(第1回)資料1-4
- ^ 日経コミュニケーション 2005年1月31日
- ^ 住宅環境における屋内広帯域電力線搬送通信からの漏洩電界とコモンモード電流の測定 I(電子情報通信学会)
- ^ PLCについて(日本アマチュア無線連盟)
- ^ アメリカ無線中継連盟による警告ビデオ(18.2MiB MPEG-1 英語)
- ^ 日本アマチュア無線連盟による市販PLCモデムの評価実験について
- ^ 非常時の総務大臣の措置(総務省電波利用ホームページ)への影響
- ^ 電力線搬送通信が低周波電波天文観測にもたらす有害干渉への懸念 2002年7月8日 - 日本天文学会
- ^ ソフトバンクBBに聞く、PLCの課題と展望 - ITmedia +D LifeStyle
- ^ 信学論(B),vol.J89-B, no.4, pp.576–584, April 2006 電力線搬送通信信号が誘導によりVDSL 通信に与える影響の研究
- ^ PLC通信について~ - パナソニックよくあるご質問
- ^ 広帯域電力線搬送通信機器による医療機器への影響に関する医療関係者等からの照会に対する対応について
- ^ 槻ノ木隆のNEW PRODUCTS IMPRESSION 松下電器産業「BL-PA100KT」 - BroadBand Watch
- ^ 東京地方裁判所判決(2007年(平成19年)5月25日)
- ^ 東京高等裁判所(2008年(平成19年)12月5日)
- ^ 電波監理審議会への異議申し立て(2009年(平成21年)年6月10日)
- ^ 電波監理審議会への異議申し立て(2012年(平成24年)11月28日)
- ^ 電波法第八十二条 免許等を要しない無線局及び受信設備に対する監督
- ^ 脇坂俊幸, 松嶋徹, 古賀久雄, 奥村浩幸, 桑原伸夫, 福本幸弘「三相3線電力線を使用したPLC通信システムが建物外の電磁環境に与える影響の評価」『電気学会論文誌 A』第140巻第12号、電気学会、2020年、557-564頁、doi:10.1541/ieejfms.140.557、ISSN 0385-4205、NAID 130007948596。
- ^ 議論が再開された電力線搬送通信、既存通信と共存の道は未だ見えず - MYCOMジャーナル
- ^ “ECC REPORT 24 - ECC REPORT 24”. 2007年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年5月16日閲覧。
- ^ “HF Interference, Procedures and Tools”. 2007年10月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年10月26日閲覧。
- ^ FCC 11-160 APPENDIX D Measurement Guidelines for Broadband Over Power Line (BPL) Devices Or Carrier Current Systems (CCS) and Certification Requirements For Access BPL Devices
- ^ Power line communication apparatus - Radio disturbance characteristics -
- ^ 国際規格CISPR32第2.0版(2015-03)「マルチメディア機器の電磁両立性–エミッション要求事項」
- ^ COMMISSION RECOMMENDATION
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