酒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 18:16 UTC 版)
料理と酒
特に酒とともに食べる料理を肴という[22]。ソーセージとビールや、キャビアとウォッカなど料理と定番の組み合わせがある。フランス料理とワインや、日本料理と日本酒のように食事の際にも飲まれる。また食前酒や食後酒などもある。特に酒のための食事を宴会とよぶ。
料理に風味付けや肉や魚などの臭み消し等の用途でみりん、日本酒、ワイン、ブランデー、ウィスキーなどが使用され、煮切りやフランベなどの調理法がある。そのほか、パンの原材料としてや、漬物、饅頭やカステラなどの和菓子、チョコレートやケーキなどの洋菓子にも使われる。奈良漬けやブランデー・ケーキ、中のシロップにワインやブランデーが使われているチョコレートなどには風味のためアルコール分が残してある。
エチオピアにはパルショータと呼ばれる醸造酒を主食とする人々がいる。
健康への影響
人体への作用
摂取した酒に含まれるアルコール(エタノール)は、主に胃と小腸粘膜で吸収される。吸収されたアルコールは迅速に酸化されアセトアルデヒドとなる。酒に含まれるエチルアルコールは向精神性物質であり、人間の不安感や抑うつ感を抑える効果がある。しかし、一度に大量のアルコールを摂取すると代謝が間に合わず、血中アルコール濃度が上昇を始める。血中のアルコールは中枢神経系を麻痺させ、酩酊や急性アルコール中毒を引き起こす。嘔吐することもある。
アルコールの作用が強くなると、一時的に記憶がなくなることもある。このような作用を持つ薬物としては睡眠薬と同じであり、共にGABA受容体に作用するため、アルコールと睡眠薬の併用では呼吸を抑制して死亡するリスクは高まる。
判断力を低下させる。アメリカでは、アルコールによる死因の14%(毎年約1万4千人)を運転事故、8%を他殺、7%を自殺、5.6%を転落死で占め[9]、暴力や事故に起因する死亡につながる。
週7回以上の飲酒は不妊治療を受けている女性の妊娠確率を低下させるという研究がある[23]。
また、祝日などで大量の飲酒を行うとホリデーハート症候群と呼ばれるアルコール性心筋症などを引き起こす。
飲酒習慣と健康
順位 | 疾病 | DALYs (万) | DALYs(%) | DALYs (10万人当たり) |
---|---|---|---|---|
1 | 新生児疾患 | 20,182.1 | 8.0 | 2,618 |
2 | 虚血性心疾患 | 18,084.7 | 7.1 | 2,346 |
3 | 脳卒中 | 13,942.9 | 5.5 | 1,809 |
4 | 下気道感染症 | 10,565.2 | 4.2 | 1,371 |
5 | 下痢性疾患 | 7,931.1 | 3.1 | 1,029 |
6 | 交通事故 | 7,911.6 | 3.1 | 1,026 |
7 | COPD | 7,398.1 | 2.9 | 960 |
8 | 糖尿病 | 7,041.1 | 2.8 | 913 |
9 | 結核 | 6,602.4 | 2.6 | 857 |
10 | 先天異常 | 5,179.7 | 2.0 | 672 |
11 | 背中と首の痛み | 4,653.2 | 1.8 | 604 |
12 | うつ病性障害 | 4,635.9 | 1.8 | 601 |
13 | 肝硬変 | 4,279.8 | 1.7 | 555 |
14 | 気管、気管支、肺がん | 4,137.8 | 1.6 | 537 |
15 | 腎臓病 | 4,057.1 | 1.6 | 526 |
16 | HIV / AIDS | 4,014.7 | 1.6 | 521 |
17 | その他の難聴 | 3,947.7 | 1.6 | 512 |
18 | 墜死 | 3,821.6 | 1.5 | 496 |
19 | マラリア | 3,339.8 | 1.3 | 433 |
20 | 裸眼の屈折異常 | 3,198.1 | 1.3 | 415 |
アルコールは毎年250万人の死亡につながっており、世界死因の4%を占める[8]。ロシアでは男性の37%が55歳以前に死亡しており、主な原因は強いアルコール飲料、特にウォッカが原因と考えられる[25]。イギリスでは、このような早期死亡の比率は7%である[25]。
2012年の研究は44件の研究から、男性5杯以上、女性4杯以上の過剰な飲酒がひと月に1度でもあると、これまで言われていた少量の飲酒での健康効果を損なうとした[26]。しかし、ハーバード大学医学大学院によると適度なアルコール摂取は、健康な高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールのレベルを上昇させる。アルコールはまた、インスリンに対する細胞の抵抗性を低下させ、血糖値をより効果的に低下させることができる[27]。
従来、1日にビール1缶程度の飲酒であれば死亡率が低下するとされてきたが、禁酒の理由には死亡率に影響するような病気になっているということがあるため、2016年には疾患の有無を区別し87件の研究から解析したところ、そうした飲酒と飲酒しない人の間には、総死亡率には違いがなかった[28]。月に一度の大量飲酒(男5杯・女4杯以上)によって、リスクが上回る[28]。
また2016年の別の研究は、195か国の592研究のデータを分析し、飲酒しないことが最も健康を保つとした[26]。
アルコール依存症
アルコール依存症とは、長期にわたり多量の飲酒した事から、アルコールに対し精神的依存や身体依存をきたす、精神疾患である。アルコールを繰り返し摂取し、アルコールに対する依存を形成し、精神的に身体的に続的に障害されている状態をいう。長期間多量に飲酒を続ければ、誰でもアルコール依存症になる可能性があり、世界保健機関(WHO)の策定した『国際疾病分類』第10版には"精神および行動の障害"の項に分類されており、個人の性格や意志の問題ではなく、精神障害と考えられている。
アルコール依存症の症状には精神依存と身体依存とがある。精神依存としては、飲酒への強烈な欲求をもつようになり、飲酒のコントロールがきかず節酒ができない状態となる。また精神的身体的問題が悪化しているにもかかわらず断酒できない、などが挙げられる。身体依存としては、アルコールが体から切れてくる事で、指のふるえが起きたり、発汗症状などの禁断症状が現れたり、以前と比べて酔うために必要な酒量が増大する、などが挙げられる。アルコール依存症になると他の娯楽や生活をおざなりに、飲酒をすることをすべてに優先的な行動となってしまう傾向にある。
飲用量が多い場合、急な飲酒は振戦せん妄を起こして致命的となりうる。
がん
アルコール飲料は、IARC発がん性で発がん性があるというグループ1に分類される。WHOでは、飲酒は口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肝癌、大腸癌と女性の乳癌の原因となる[29]として注意喚起を行っている。飲酒は喫煙と同じく深刻な健康被害をもたらすため、多くの人々に問題を知らせ、極めて有害であるアルコールの真実を効果的に伝える必要があるとし呼びかけを行っている。
アルコールそのものには発癌性があり、飲酒が少量でも顔が赤くなるようなALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)の働きが弱い体質の人では、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道癌の原因となり、ガンリスクを増大させると結論づけられている。ALDH2の働きが弱い人は日本人の約40%にみられ、アセトアルデヒドの分解が遅く飲酒で顔面が酷く赤くなったり、二日酔いを起こしやすい体質を作るなどの症状をもたらす。アセトアルデヒドやアルコールには発ガン性があり、口腔・咽頭・食道の発癌リスクが特に高くなる。口腔ガン、咽頭ガン、食道ガンは一人に複数発生する傾向があり、ALDH2の働きが弱い人に多発癌が多くみられる。少量の飲酒で顔が赤くなる体質の人の中で飲酒を始めて2年以内にあった人では、約9割の確率でALDH2の働きが弱いタイプと判定される。
また逆にALDH2の活性が高い人は、大量のアルコールを摂取できる反面、同時に肝臓ではアルコールの分解と共に中性脂肪の合成が進む事で結果、肝臓は脂肪まみれになり、いわゆる脂肪肝リスクが増大することになる。
2005年の厚生労働省多目的コホート研究では、男性に発生した癌全体の約13%が週300g以上の飲酒による原因と概算されている。口腔・咽頭と食道癌では禁酒によりリスクの低くなることが報告されており、禁煙と禁酒の両者に取り組めばさらにリスクは低下すると報告されている。
大腸癌は飲酒で約1.4倍程度のリスク増となり、日本人では欧米人よりも同じ飲酒量でも大腸癌のリスク増加は若干多い傾向にある。大腸癌は頻度が多いので飲酒量を減らすことによる予防効果は大きいと考えられている。
2024年2月19日、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及の推進を図るために「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表。年齢、性別、体質、疾患別で異なる飲酒によるリスクを示し、「純アルコール」の摂取量に着目することが重要としている[30]。
- 肝臓ガン
- 長期間飲酒を続けると肝臓に障害が生じ、アルコールの摂取量が肝障害に関連している。
- 大量のアルコールを摂取を続ける事で、肝臓ではアルコールの分解と共に中性脂肪の合成が進み、その結果、肝臓は脂肪まみれになり脂肪肝を発症する。
- さらに飲酒を続けると、アルコール性肝炎や肝硬変に進み、最後には肝癌を合併するケースも珍しくない。お酒に強い人ほど強いがゆえに、肝臓を著しく痛めつける傾向があることが報告されている。
- 積算飲酒量とは、今までに飲んだアルコールの量のことである。積算飲酒量が、純アルコール換算で男性で600kgを超えると上記のように肝臓に障害が出る危険が高まると言われている。女性の場合は男性よりも少ない量で危険が高まる[31]。ちなみに、この600kgは、週300g(ビール大瓶(633cc/本 x 4% = 25g/本)2本/日・6日分相当)、2000週(40年間)に相当する。上記表より換算すれば、日本酒週1.2升40年、ウイスキー週ボトル1.2本40年に相当する。
- もともとウイルス性肝炎がある場合は、飲酒は増悪因子となりうる。
- ただし、脂肪肝の段階で、節酒するか断酒に踏み切れば、肝臓は元の健康な状態に戻ることが確認されている。アルコール性脂肪肝と指摘された場合には、速やかに断酒することが重要とされている[32]。
- 食道ガン
- 飲酒時に赤面する人が長期間飲酒を続けると食道ガンになる危険性が89倍にまで増加し、同体質の人が飲酒、喫煙を続けると最大190倍も高くなることが、東京大学の中村祐輔教授と松田浩一助教の研究により報告されている。
- ALDH2酵素の遺伝的不足により、飲酒により吐き気を催したり、心拍数が増加、ほてりなどの反応を示す人は、東アジア(日本・中国・韓国)の人たちの1/3以上にまで及ぶ。日本では約4割がこの体質を持つ。アセトアルデヒドと呼ばれる毒素の体内蓄積を引き起こし、たったビール1/2本でも症状がでる。
- 世界で食道がんを多い国をつなげると、ベルト状になることから「食道がんベルト」という名が付いている。中東アジア、中国、韓国、日本などがそれとなる。病理学的に食道がんは「食道扁平上皮癌」と「食道腺癌」に大別され、日本人の場合には95%以上が食道扁平上皮癌が多数を占めている。一方、欧米では「食道腺癌」が多数である。
- 喉頭ガン
- 喉頭ガンの原因として飲酒やたばこの吸いすぎがあげられる。多く発症し特に50歳以上の患者の増加が目立ち咽頭部への継続的な悪質な刺激がガンを引き起こすと見られている。飲酒、喫煙の割合が男性に多い事から、男性に咽頭ガンの多い原因と考えられている。
- 咽頭ガンは上咽頭ガン、中咽頭ガン、下咽頭ガンにわかれておりそれぞれの部位で症状が違いがある。症状を例をあげると、一番多い中咽頭ガンで共通しているのは声がガサつきとなっている。いわゆるがらがら声と呼ばれる状態。咽頭ガンがさらに進行すると呼吸がうまくできなくなることがある。いわゆる呼吸困難の状態である。また、タンが多く出たり、タンの中に血が混じったりする症状がでてくる。このような症状が出た場合には早期に診療を受けることが大切。
- 喉頭がん
- 喉(ノド)頭がんの原因に喫煙や飲酒があげられる。喉(のど)が焼けるような強い酒をあおるように飲む飲み方ではリスクはより高まることになる。毎日飲酒をする人は特に注意が必要である。また、喉頭がんの原因は飲酒以外にもタバコやアスベストなどもあげられている。
- 口腔ガン
- 口腔ガンを引き起こす主要因子は喫煙や飲酒とされている。喫煙者は非喫煙者より口腔ガンでの死亡率が約4倍高いといわれている。また、アルコールはタバコよりも口腔癌を引き起こす可能性が著しく高いことが、近年の研究によって明らかになってきた。さらにビールやワインは同量のウイスキーを飲むよりもリスクが高まることも報告されている。
- 口腔ガンの予防法には主に次のようなことが挙げられている。
- タバコやアルコールを控える
- 口の中を清潔にする
- 口の粘膜に慢性の刺激を与えない
- などである。
脳の萎縮
アルコールは少量であっても、脳を萎縮させる効果があるとする研究結果が報告されている[6]。
研究によれば、以下の順で脳がより萎縮するとされている。
- 大量の飲酒を継続的に行っている人
- 少量の飲酒を継続的に行っている人
- 過去に飲酒していたが、現在は飲酒を止めている人
- 飲酒をしない人
「適量」と呼ばれている少量の飲酒であっても、脳の萎縮が起こり、過去の飲酒の影響も残り続けるため、脳の萎縮という観点から見れば、アルコールに適量は存在しないと言える。
なお、日本において20歳未満の者の飲酒は法律により禁止されているが、アルコールを摂取する方法として飲酒の形態を取っていない場合であっても摂取したアルコール量に応じた化学反応が脳内物質に発生することで脳に対して相応の影響が生じる。ただし、アルコール分を飛ばした後の極微量の残存アルコールが摂取されることなどについては一般に許容されるものと考えられている。ただし、アルコールを含まない代替物質を使用するなどで同様の効果を得るといった選択はある。
認知症
慢性的に大量の飲酒を続けることは、65歳未満で発症する早期発症型の認知症をはじめとする様々な類型の認知症の主要な危険因子になりうるとする研究結果が出ている[33]。
フランスにおいて早期発症型認知症の患者5万7000人以上の症例を調査した結果、半分を優に超える患者がアルコールに関する診断がなされていることが判明した。また、過去5年間に認知症と診断されたフランスの成人100万人以上の医療記録を精査し、アルコールとの関連が統計学的に明白であることも示されている。
代替飲料の開発
このように、アルコールには死亡を含めた有害な影響が高く、その悪影響を低減させたアルコシンス(Alcosynth)が開発されている[34]。2017年にイギリスのデビッド・ナットがアルカレラ(Alcarelle)を設立し、100の特許と共に商品化に向けて動いており、二日酔いがなく健康への害や暴力を低減させ、電子たばこのように害を低減させるという変化を社会にもたらしたいと考えている[34]。
飲酒と社会
精神、心理状態を変化させることなどもあって、飲酒は様々な社会、文化と関わってきた。家庭における飲酒が日常化し、晩酌(夕食時に(しばしば日常的に)飲酒すること)する習慣や、酒を提供する飲食店であるバー、パブ、居酒屋、スナックのような飲食店も存在している。
日本では行事などで、なかば強制的に飲酒させる慣習が2000年代初頭頃まで見られたが、2010年代以降は急性アルコール中毒や飲酒運転による死亡事故報道の増加や、アルコール代謝酵素の欠落症の存在やアルコールハラスメントによる諸問題が広く知られる様になった事で、酒席でのノンアルコールやソフトドリンクも認められる様になりつつある。
暴力
アルコールは攻撃的な感情が起こることを促す[35]。
児童や高齢者への虐待、家庭内暴力(DV)、駅や街中での暴力、傷害、犯罪など飲酒に関連した暴力は様々な場面で起こっており、社会的に重大な問題の一つとなっている。飲酒に関連した暴力を防止するためには、その原因となっている飲酒を減らすことが大切とされる。
飲酒により暴力が増加する背景には、飲酒・酩酊により攻撃性が増すなどのアルコールによる直接的な影響と、習慣的な飲酒によるアルコール乱用やアルコール依存症などの疾病からくる間接的な影響とがある。また、飲酒に関連した暴力には様々な種類があり、暴言や身体的暴力のみならず、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力などが報告されている。
鉄道会社団体のまとめでは、駅や列車内で暴力行為をした乗客の約6割は飲酒をしていた[36]。また酔客を降ろした駅員が突然傘で殴られたり、乗客同士のけんかの仲裁に入った駅員3人が逆上されてけがを負ったりするなど、駅員への暴行も多数報告されている。酔って地域警察官へ暴力をふるうなどして公務執行妨害容疑で逮捕されるなど、警察官へ暴力を振るうケースも珍しくない。
日本においては、飲酒による暴言・暴力やセクシャルハラスメントなどにおよぶといった迷惑行為である。この問題は、公共の場、職場や家庭内など、2000年代の日本での調査によると被害を受けた成人は推定約3,000万人である[37]。
自殺
飲酒量が増すにつれて自殺のリスクが直線的に高い結果が示された。多変量解析の結果、多量飲酒者の自殺リスクは、非現在飲酒者(非飲酒者+過去飲酒者)と比べ3.3倍高くなり、さらに、1日1合未満の少量飲酒者においても自殺リスクが1.7倍と高いリスクが示された[38]。
凍死
飲酒したまま屋外などで寝込んでしまい、そのまま低体温症により凍死することがある[39]。特に、寒波が厳しい時期にはホームレスなどの屋外生活者が寒さを紛らわせるために飲酒し、そのまま凍死するケースもある[40]。
飲酒運転事故
飲酒運転による死亡事故は、平成14年(2002年)施行の改正道路交通法により罰則等が強化されたことで減少してきた。そして、平成18年(2006年)以降の取締りの強化及び飲酒運転根絶に対する社会的機運の高まり、さらには飲酒運転の厳罰化等により、大きく減少し、10年前の約3分の1となっている[41]。飲酒運転事故は平成20年の6219件が平成30年には3355件に減少している[42]。
貧困
飲酒と貧困には、世界の貧困問題と不可分である。世界的に、学歴が低く、低所得、失業中などの人において飲酒率が高いことが多数の統計的研究によって裏付けられている。複数の研究では、貧しい国の中には家計の約18%が飲酒に出費されていることもあると指摘されている。WHOによると、少ない所得から食費・健康管理費・教育費などがさらに削られ、栄養不良や医療費増大、早死、識字率低下をもたらし、社会階層の固定化に影響している。
社会的損失
イギリス政府は飲酒への財政負担の軽減のために規制強化に乗り出した。飲酒が原因となる犯罪、暴力事件や医療費が大きな財政負担となっており、日本円にして年間1兆2000億から1兆9000億円が飲酒に関わる財政負担となっていると推計されている。また、成人の100万人以上がアルコール依存症だとされ、NHS(国民保健サービス)への負担は年間27億ポンドにも達している。イギリスではアルコール飲料が安価であることが過剰飲酒の引き金になっているとして厳しく非難されている。10年間で約10万人が飲酒が直接の原因となる疾病による死亡者数となっている。またこの累計には飲酒運転やガンなど、アルコールが間接的な原因と考えられるものは除かれている。2010年10月から身分証明書の確認の義務化なども実施される。そのほか、パブなどでの飲酒促進サービスとなる10ポンド飲み放題サービスや女性無料の日サービスのほか、早飲み競争ゲームなどの禁止が実施される。
韓国政府は、飲酒による社会経済的な損失の費用が年間20兆ウォン(約2兆6000億円)を超えるという韓国内政府統計を示した。これを切っ掛けにテレビコマーシャルなどを用いた「節酒キャンペーン」が行われた。医療費の支出や早期死亡、生産性の減少など、社会経済的に損失を与えた費用が20兆990億ウォンに及ぶなど、飲酒の弊害が深刻な水準にあると明らかにした。その根拠として、18‐64歳のアルコール使用障害人口(アルコール乱用人口とアルコール依存症人口を合わせた数)が全人口の6.8%(221万人)に及ぶという2001年の保健福祉部精神疾患実態疫学調査の結果を挙げた。仁済大学の金光起(キム・クァンギ)教授チームの調査の結果、過度な飲酒による疾患で死亡した人は2001年2万2000人(死亡者全体の8.7%)だった。また、2001年の殺人・暴力・強盗・強姦などの凶悪犯罪や交通事故の加害者など、現行犯の43.5%が犯行時に飲酒状態であったことが分かった。
日本では政府による大規模統計は示されていないが、韓国人では1人あたり年間71.1L、日本人は1人あたり年間83.5Lの飲酒量から同様の問題が懸念されている。
日本での飲酒者の傾向
以下はJMSコホート研究による。
日本人男性では、年齢が高いほど飲酒未経験者・禁酒者の割合が高く、若年層では飲酒量が多い傾向がみられた。結婚している人よりしていない人、および身体活動度が高い人より低い人で、飲酒未経験者・禁酒者・多量飲酒者が多かった。
日本人女性では、高齢層より若年層、教育年数の短い人より長い人、身体活動度の高い人より低い人で飲酒者の割合が高いという結果となった。そのほか、非飲酒者の収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、LDL-Cは飲酒者よりも高い結果がみられた[43]。
- 酒癖
- 飲酒した際に普段は見られない行動を取ることを言う。下記に一般的な例を上げる。
若者の飲酒
若者の飲酒は、中高年と比較し急性アルコール中毒やアルコール依存症等のリスクが高くなり、事件・事故の関連性が高いという特徴がある。その対策としては、飲酒禁止年齢を用いた対策が効果的といわれている。アルコールは200種以上の疾患と関連があるといわれ、その中で急性アルコール中毒と、アルコール依存症は若者の飲酒と関連も深いともいわれている。その他、脳の萎縮や第二次性徴の遅れ等、多くの領域でアルコールによる若者の健康への悪影響が懸念されている[44]。
- 大学生・専門学校生の飲酒
大学コンパなどにおいて、20歳未満の者の飲酒が暗黙の了解となっている場面も少なくないのが実態である。20歳未満の者の飲酒の撲滅に盲目的に取り組むことはあまり有効ではなく、むしろ現状を認めたうえで、アルコールのモラルに関する教育・情報発信を行うほうが大学生や専門学校生の飲酒事故抑止には有効、という意見もみられる[45]。
飲酒禁止令
794年(延暦13年、奈良~平安時代)頃には、日本初の「飲酒禁止令」が出された。このことから、既に社会問題化していたことが分かる。
注釈
出典
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- ^ カトマンズ(ネパール)の海外現地ガイド記事「カトマンズ中が大いに盛り上がる!ネパールのお祭りインドラジャトラへようこそ!!」 掲載日:2008/07/14, 海外旅行情報 エイビーロード
- ^ 不飲酒戒 -なぜ酒を飲んではいけないのか * 法然『百四十五箇条問答』真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺
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