遺言
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/06 05:19 UTC 版)
遺言の効力
遺言の効力発生時期
遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(985条1項)。遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる(985条2項)。
遺言の無効・取消し
遺言も法律行為の一種であるから、他の法律行為と同じように意思能力のない者による遺言や公序良俗(90条)に反する遺言は無効とされる。その一方で、遺言は法律行為ではあるものの最終意思の表示であるという点で他の法律行為とは性質が異なることから、取消しについても異なる扱いを受け、本人は自由に遺言を撤回することができるものと規定されている(1022条)。また、遺言は代理に親しまない法律行為であるから、制限行為能力者に関連する規定の適用は排除され(962条)、制限行為能力者が遺言をする場合であっても、遺言を行う本人に遺言能力があれば保護者はその遺言に関して同意権や取消権などを行使できない。遺言をした制限行為能力者本人が遺言を取り消したい場合には1022条により取り消すことになる(1022条に規定される遺言制度における撤回及び取消しについては後述)。撤回行為が撤回されたり効力を失っても、一度撤回された遺言は原則、復活しない(1025条)。ただし、復活の意思が明白である場合に、遺言の復活を認めた判例もある(後述) [14]。
遺贈
遺言者は包括または特定の名義でその財産の全部または一部を処分することができる(964条本文)。これを遺贈という。ただし、遺留分に関する規定に違反することはできない(964条ただし書)。
注釈
- ^ 遺言内容が秘密であるから、証人の欠格事項には公正証書の場合に比して注意が必要である。
出典
- ^ 金子宏・新堂幸司・平井宣雄:法律学小事典(第4版補訂版)、有斐閣、2008年10月20日第4版補訂版第1刷、p.15
- ^ 最判平成3年4月19日[1]民集45巻4号477頁: 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに、被相続人死亡の時に直ちに当該遺産当該相続人に相続により承継される。
- ^ 最二小判平成14年6月10日[2]判例時報1791号59頁
- ^ 松岡慶子『相続・遺言・遺産分割の法律と手続き 実践文例82』(2018年)44ページ
- ^ a b c d 日本経済新聞朝刊2016年8月20日付
- ^ a b c d 松岡慶子『相続・遺言・遺産分割の法律と手続き 実践文例82』(2018年)50ページ
- ^ a b c d 自筆証書遺言に関する見直し 法務省、2019年6月23日閲覧。
- ^ 最判平成5年10月19日[3]
- ^ 最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁[4]
- ^ 最判昭和47年3月17日民集26巻2号249頁[5]
- ^ 大判大正4年7月3日民録21輯1176頁
- ^ 最判平成元年2月16日民集43巻2号45頁[6]
- ^ 平成27年(受)118、遺言書真正確認等、求積金等請求事件、平成28 年6月3日、最高裁判所第二小法廷(未収録)[7]
- ^ a b 最高裁判決平成9年11月13日[8]・民集第51巻10号4144頁
- ^ 大決大正4年1月16日民録21輯8頁
固有名詞の分類
品詞の分類
- >> 「遺言」を含む用語の索引
- 遺言のページへのリンク