軍隊 階級

軍隊

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 00:57 UTC 版)

階級

軍隊という組織においては、その活動の成否が各個人の死に直結する緊急事態において行動する。その成功のために上部の意思が下部に迅速かつ的確に伝達され、それが実行されなければならず、組織的な合理性が追求されなくてはいけない。そのため、指揮系統の確保のために階級指揮権というものが重要視されている。上下関係を明確にすることで、組織の意思決定、役割分担などの効率化を図っている。

軍隊の階級は一般に、士官下士官に大別され、士官は戦略的、作戦的な判断・決定を行い、下士官は現場指揮官として作戦的、戦術的な指揮をとる。兵は下士官に従って各々の役割を組織的に果たして任務を遂行する。さらに士官は将官、佐官、尉官に分かれ、さらにその内容も大佐、中佐、少佐のように三段階に構成されている。この階層構造は部隊の階層と関連してそれぞれの部隊に応じた指揮官に求められる階級がある。この制度はグスタフ2世により定められたものであり、現在でも用いられている。ただし細かい点については地域や時代により様々である。

軍法

軍法とは、軍隊の構成員を軍隊の司法機関が規制する特別なである。軍法の法源は、基本的に議会立法であるが、慣習法に基づいている場合もある。ただし、軍隊と無関係の犯罪を軍人が犯した場合は一般的な法廷で裁判を受けさせることは可能である。軍法の適用される範囲は、軍隊の構成員である軍人軍属である場合が多く、さらに捕虜に対しても適用される。ただし、反逆罪のような罪で起訴された場合は、民間人でも軍事裁判で裁かれる国もある。

軍事犯罪に関しては、アメリカ軍の統一軍事裁判法では、任務の無断放棄、敵前逃亡、命令違反、敵前での許すべからざる行為など20種類が定義されている。殺人強盗強姦なども挙げられているが、専管でない。ただし軍事犯罪の定義は国によって異なっており、フランス軍やイギリス軍では純粋な軍事的な犯罪に限定しており、旧日本軍では軍人軍属の犯罪を全て軍事犯罪とまとめていた。軍事裁判が行われる法廷は軍法会議と呼ばれる。軍種別、部隊別に定められている場合が多く、アメリカ軍では略式軍法会議、特別軍法会議、一般軍法会議があり、それぞれに性格が異なる。軍事犯罪者を起訴するのは、その犯罪者が所属する部隊の長であり、事前に公正な調査が行われることと定められている。ただし、指揮官は、軍法会議によらず限定的な懲罰を部下に課す権限を持っており、この細部も国によって異なっている。

軍隊と政府

現代の軍制は概ね政治統制に基づいて国家元首の下に設置されているが、歴史的にはさまざま関係のあり方があった。政府指導者と軍隊指揮官が同一であった時代に始まり、その後に政府指導者と軍隊指揮官は軍事的な専門性の深化から分離されていった。そのために政府指導者による軍隊の統制という新しい必要性が生まれることとなった。アメリカの政治学者であるサミュエル・P・ハンティントンはこの文民統制を大きく政府指導者が軍隊の専門分野にまで強く介入する主観的文民統制と政府指導者が軍隊に専門分野に特化させて最低限の統制を保つ客観的文民統制に分けて論じた。またパールマターやファイナーは本来的に軍隊が政治へと介入しうる存在であることを軍隊の団体性や動機から説明している。軍隊と政府の関係は軍事と政治の関係であり、本質的には政治に軍事が従属するものであり、政府の意思を軍隊が代理して遂行する。しかしながら実際には政府は軍隊の軍事上の専門性を完全に理解することはできないために一方的な統制を行うことは出来ず、専門的な助言や判断を軍隊に対して要する。ここに政府と軍隊の関係がどうあるべきかについての問題がある。


注釈

  1. ^ 戦法上「遠方から識別しうる標識」を集団的に隠すこと(すなわち、有しないこと)はあり、また、国家によって運営されている正規軍でも実際上は戦争法規を遵守しないことも時としてあることは広く知られている。だが、そのようなものでもやはり「軍隊」と呼ばれている
  2. ^ これはこれで、実態とはそぐわないケースもある。
  3. ^ 孫子 (書物)謀攻篇第三に曰く、百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。q:孫子
  4. ^ 陸軍の基地は戦術上必要な点に置かれるため、平時に駐屯する場を基地とは言わない。ただし、日本陸軍では永久に一つの地に配備駐屯する地を衛戍地といい。アメリカ陸軍においても同様の地をフォート(砦)と表記している。

出典

  1. ^ 軍隊(ぐんたい)の意味”. goo国語辞書. 2020年11月6日閲覧。
  2. ^ 『世界大百科事典』より
  3. ^ a b 『世界大百科事典』より
  4. ^ 服部実『防衛学概論』(原書房、1980年)を参照
  5. ^ 防衛大学校・防衛学研究会『防衛学研究』第34号、2006年3月、108-112頁を参照
  6. ^ 平成2年10月18日第119回臨時国会衆議院本会議における中山太郎外務大臣答弁。
  7. ^ 韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について - 韓国海軍の艦艇へ英語で呼びかける際にJapan Navyと発言している。
  8. ^ 民主・菅代表、国連待機軍を提唱へ 自衛隊と別組織で2003年12月30日、朝日新聞
  9. ^ a b O’Sullivan, Michael; Subramanian, Krithika (17 October 2015). The End of Globalization or a more Multipolar World? (Report). Credit Suisse AG. 2018年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月14日閲覧






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