豆腐 種類

豆腐

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 07:10 UTC 版)

種類

豆腐には、薄い豆乳を凝固させて圧搾・成形した種類のもの(例:木綿豆腐、ソフト豆腐)と、濃い豆乳全体を凝固させた種類のもの(例:絹ごし豆腐、充填豆腐)とがある[33]

豆腐の一般的な分類

今日、豆腐は木綿豆腐、ソフト豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐の4種に大別される[9]

木綿豆腐
豆乳に凝固剤を加えて凝固させたものをいったん崩し、穴の開いた木綿豆腐用の型箱に布を敷いて流し込み圧搾して水抜きし、成形した豆腐[33]。表面に布目が付くことからこの名がある[33]。普通豆腐ともいう[34]。英語表記はregular tofu[34]。絹ごし豆腐よりも固く、型崩れしづらいため、煮炊きする料理に向いている。表面を焼いて焼目を付けた「焼き豆腐」と呼ばれ、より崩れにくく、主に鍋料理に使われる。
脱水と成型という過程を通じ水溶性ビタミンの含有量が大きく減少するもののタンパク質カルシウム、鉄などが多く含まれている。カルシウムが欲しいなら絹ごし豆腐よりも木綿豆腐が優れている[35]。重量100 gあたりのエネルギー80 kcal、たんぱく質7.0 g、灰分0.7 g[36]
ソフト豆腐
絹ごし豆腐状に凝固させたものを木綿豆腐の型箱に流し込んで軽く圧した、木綿豆腐と絹ごし豆腐の中間程度の濃度の豆腐。京都では嵯峨豆腐と言われる[33][37]。重量100 gあたりのエネルギー59 kcal、たんぱく質5.1 g、灰分0.7 g[36]
絹ごし豆腐
木綿豆腐製造時よりも濃い豆乳と凝固剤で凝固し絹ごし用の型箱に流し込んでゲル状に固めて水にさらした豆腐[33][37]。笹の雪ともいう[14]。英語表記はKinugoshi-tofuあるいはtofu with whey[37]。「絹ごし」という名前は「木綿ごし」に対しての便宜的な名前であり、実際は成形時には濾していない。軟らかく、木綿豆腐に比べて崩れやすい反面、口の中で崩れるように舌触りが良く、また豆乳すべてを固めるため、そうではない木綿豆腐に比べ大豆の香りが流出せず多く残っており、豆腐本来の淡い繊細な味を味わう冷や奴湯豆腐などに向いている。
吸水総量は原料大豆重量の5倍から6倍となる[33]。水分を抜かないので、ビタミンB1など水溶性ビタミンが残る上にマグネシウムも多く含まれている。代謝の促進には木綿より絹が優れている[35]。重量100 gあたりのエネルギー62 kcal、たんぱく質5.3 g、灰分0.7 g[36]
充填豆腐
充填豆腐(じゅうてんとうふ)は絹ごし豆腐の一種であり、絹ごし豆腐製造時の濃い豆乳を冷却後に凝固剤を加えてプラスチック製の角型の容器に充填して摂氏約90度で40分から50分加熱し成形した上で冷却した豆腐[38][34]。豆腐はスーパーなどではプラスチック容器に入れて販売されるが、充填豆腐ではない豆腐は容器との間に隙間があり水が充填されているのに対し、充填豆腐はほとんど隙間がない。英語表記はpackaged-tofu[34]。衛生的で保存性が高いのが特徴[14][34]
製品パッケージのまま加熱し凝固させるので殺菌されて衛生的なため、長期保存に優れている。さらに品質が均質で輸送性に優れている上に葉酸(ビタミンB9)の含有量は他の種類の豆腐の約2倍である[39]。重量100 gあたりのエネルギー59 kcal、たんぱく質5.0 g、灰分0.8 g[36]第二次世界大戦後に発明され、普及した[40]
高野豆腐
鎌倉時代に生まれ、「氷豆腐」「凍り豆腐」(こおりどうふ)または「凍み豆腐」(しみどうふ)とも呼ばれる。寒天同様、昔は冬場に晴天の多い地域で凍結と乾燥を交互に繰り返して仕上げたが、現代では工場で一年中生産できる。豆腐を凍結と解凍を繰り返して水分が抜け乾燥状態になっているため、豆腐の栄養成分が凝縮されている。カルシウムとリンなどミネラルが特に豊富で、ビタミンEやタンパク質も多い健康食材である[41]。水(多くは出汁を含んだもの)で戻して用いる。凍り豆腐の水煮重量100 gあたりのエネルギー115 kcal、たんぱく質10.7 g、灰分1.3 g[36]

堅豆腐

堅豆腐 / 固豆腐 (かたとうふ[42])は、現在の日本で一般的となっている製法と異なり、濃度の高い豆乳を使ったり、にがりの代わりに海水を使うなど、様々な方法を用いて保存できるようにした種類の豆腐のことで、なかには荒縄で縛って持ち運びできるほど堅いものもある。

現代に遺る日本の堅豆腐は、そもそも日本で作られ始めた当時のものに近い[42]。つまり、本来的には豆腐は堅豆腐、もしくは、それに似た「堅い豆腐」であった。例えば江戸時代の浮世絵に描かれた豆腐もその多くは大きくしっかりとした長方体の堅豆腐である[42]。現代では流通の不便な豪雪地帯や山岳地域あるいは離島などだけで変わらず作られ続ける伝統製法となっている[42]。堅豆腐を作る地域としてしばしば例に挙げられる場所としては、加賀地方石川県)の白山麓の一円の各所がその一つであり[42]、なかでも旧・石川郡白峰村(現・白山市白峰)の石豆腐や、富山県五箇山の岩豆腐はよく知られている[42]

水分を減らしたもの
  • 沖縄県島豆腐:「生しぼり法」で作られ、豆乳の粘度が低い状態でにがりを混ぜるが、荷重と時間を多くかけて含水率を減らすため硬くなる。また、作りたてで新鮮なものが好まれるため、水にはさらさずに温かい状態で販売される。
  • 京都府宇治市の黄檗豆腐:荷重と時間を多くかけて含水率を減らしたもので、普茶料理に使われる。
濃い豆乳
海水利用

注釈

  1. ^ 日本の豆腐は豆腐ようなど一部を除いてほとんどが発酵していないものである。中国では豆腐を発酵させた腐乳臭豆腐も一般的。
  2. ^ この説には腐乳は清朝(『隋園食単』岩波書店 1980年)になってからであるという反論がある。著者は北方遊牧民族に腐乳が見当たらないとも書いてある。
  3. ^ 古来の豆腐は堅いタイプであるため、豆腐の全史からすれば、柔らかい豆腐のデリケートさは最近のものである。
  4. ^ ほととぎす自由自在にきく里は酒屋へ三里豆腐やへ二里」(ほととぎすの声が聞けるような場所は、近くの酒屋豆腐屋へ2里3里もある不便な田舎だ)江戸時代後期に、ほととぎすの多い郊外へ引っ越すことが流行った。当時の見さかいのない風流ばやりを馬鹿にした句。
  5. ^ 古典的製法の古文書は『豆腐集説』を参照のこと

出典

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  3. ^ 「豆腐・こんにゃく食べ方革命」『日経MJ』2021年5月10日フード面
  4. ^ 醒狂道人何必醇 輯『豆腐百珍』正編(1782年)
  5. ^ 滑壽(写作) 呉勉学『難経本義』(三十一難) 宋代
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  12. ^ a b c d 岡田哲著『たべもの起源事典』(東京堂出版 2003年)p.314
  13. ^ a b c d e f g h 『日本の伝統食』(角川春樹事務所・グルメ文庫)pp.200-201
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  16. ^ 『古代日本のチーズ』角川書店 1996年
  17. ^ 次なるブーム「豆花」ってなに!?材料や味を詳しく解説!, docomo, (2019-10-24), https://apprev.smt.docomo.ne.jp/news/news-294026/ 2021年9月26日閲覧。 
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  20. ^ a b c 世界の食文化雑学講座”. キッコーマン. 2020年4月10日閲覧。
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