西山事件 西山事件の概要

西山事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/13 17:34 UTC 版)

最高裁判所判例
事件名 国家公務員法違反被告事件
事件番号 昭和51(あ)1581
昭和53年5月31日
判例集 第32巻3号457頁
裁判要旨

一 国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密とは、非公知の事実であつて、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいい、その判定は、司法判断に服する。
二 昭和四六年五月二八日に愛知外務大臣とマイヤー駐日米国大使との間でなされた、いわゆる沖縄返還協定に関する会談の概要が記載された本件一〇三四号電信文案は、国家公務員法一〇九条一二号、一〇〇条一項にいう秘密にあたる。
三 本件対米請求権問題の財源についてのいわゆる密約は、政府がこれによつて憲法秩序に抵触するとまでいえるような行動をしたものではなく、違法秘密ではない。
四 国家公務員法一一一条にいう同法一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の行為の「そそのかし」とは、右一〇九条一二号、一〇〇条一項所定の秘密漏示行為を実行させる目的をもつて、公務員に対し、その行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為をすることを意味する。
五 外務省担当記者であつた被告人が、外務審議官に配付又は回付される文書の授受及び保管の職務を担当していた女性外務事務官に対し、「取材に困つている、助けると思つて安川審議官のところに来る書類を見せてくれ。君や外務省には絶対迷惑をかけない。特に沖縄関係の秘密文書を頼む。」という趣旨の依頼をし、さらに、別の機会に、同女に対し「五月二八日愛知外務大臣とマイヤー大使とが請求権問題で会談するので、その関係書類を持ち出してもらいたい。」旨申し向けた行為は、国家公務員法一一一条、一〇九条一二号、一〇〇条一項の「そそのかし」罪の構成要件にあたる。
六 報道機関が公務員に対し秘密を漏示するようにそそのかしたからといつて、直ちに当該行為の違法性が推定されるものではなく、それが真に報道の目的からでたものであり、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、実質的に違法性を欠き正当な業務行為である。

七 当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図で女性の公務員と肉体関係を持ち、同女が右関係のため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させたなど取材対象者の人格を著しく蹂躪した本件取材行為(判文参照)は、正当な取材活動の範囲を逸脱するものである。
第一小法廷
裁判長 岸盛一
陪席裁判官 岸上康夫、団藤重光藤崎萬里、本山亨
意見
多数意見 全員一致
意見 なし
反対意見 なし
参照法条
国家公務員法100条1項、国家公務員法109条12号、国家公務員法111条、裁判所法3条1項、憲法21条1項、刑法35条
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  1. ^ 沖縄返還密約事件を追って――封印を解く歴史ドキュメンタリー
  2. ^ アメリカが負担する義務があったが、アメリカの議会は反対していた。
  3. ^ 福田赳夫 『回顧九十年』 岩波書店(原著1995年3月)、pp. 182-185。ISBN 9784000028165
  4. ^ 西山が機密文書をコピーする際に取材源を秘匿しなかったため、漏洩元が女性事務官であることはすぐに露呈した。
  5. ^ なお、当時の西山の直属の上司(政治部デスク)は現政治評論家の三宅久之である。
  6. ^ しかし、西山の弁護人の反対尋問で、「(個人的な間柄が切れたのは)九月十四、五日ごろだということですが、それに間違いないでしょうか」と聞かれると、「もっと早い時期ではなかったかと記憶しているんですけれども、わたくしの記憶違いかも知れません」と答えている。
  7. ^ 『週刊新潮』1974年2月7日号、女性事務官「私の告白」。他、『週刊ポスト』2月15日号、『女性セブン』2月20日号、『女性自身』3月22日号でも女性事務官の夫が同様の主張をした。
  8. ^ 例外として、西山側の証人となった渡邉恒雄による「「西山事件」の証人として…渡辺恒雄/××さん「聖女」説にみる論理的矛盾」(『週刊読売』1974年2月16日号)がある。記事原文は実名
  9. ^ 沖縄返還35年目の真実 〜政府が今もひた隠す"密約"の正体〜”. ザ・スクープスペシャル. テレビ朝日 (2006年12月10日). 2010年1月24日閲覧。
  10. ^ a b 最高裁判所第一小法廷判決 1978年5月31日 、昭和51(あ)1581、『国家公務員法違反被告事件』。
  11. ^ 亀井 週刊新潮「50年」と沖縄密約報道
  12. ^ ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊); 共同著作者 (2008年8月23日). “沖縄返還秘密合意を裏付ける文書を9月早々、公開請求!”. 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊). 2008年8月23日閲覧。
  13. ^ “元毎日記者の敗訴確定=「西山事件」賠償訴訟-最高裁”. 時事通信社. (2008年9月2日). http://www.jiji.com/jc/zc?k=200809/2008090200761 2008年9月6日閲覧。 
  14. ^ “「密約」文書の公開請求/県内外記者ら63人/沖縄返還3通指定”. 沖縄タイムス. (2008年9月3日). http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-09-03-M_1-027-1_001.html?PSID=73ce6f983400fe9f1ec375245581fdfb 2008年9月3日閲覧。 
  15. ^ “沖縄密約文書「不存在」外務・財務省”. 琉球新報. (2008年10月4日). http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-136813-storytopic-3.html 2010年1月24日閲覧。 
  16. ^ http://blogos.com/article/90514/
  17. ^ a b シリーズ「言論は大丈夫か」第13弾“国のウソ、回避する司法””. サンデー・プロジェクト. テレビ朝日 (2008年8月24日). 2010年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月24日閲覧。
  18. ^ 内閣府 森内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年10月22日
  19. ^ 『毎日新聞』内田久光 秘密保護法案:森担当相「処罰対象は西山事件に匹敵」 2013年10月22日 23時20分(最終更新 10月23日 12時21分)
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  22. ^ 「岡田・民主副代表:沖縄返還時密約、政権取れば公開」毎日新聞2009年3月15日
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  24. ^ “機密文書、溶かして固めてトイレットペーパーに 外務省”. 朝日新聞: p. 1. (2009年7月11日). http://www.asahi.com/politics/update/0711/TKY200907100424.html 
  25. ^ “機密文書、溶かして固めてトイレットペーパーに 外務省”. 朝日新聞: p. 2. (2009年7月11日). http://www.asahi.com/politics/update/0711/TKY200907100424_01.html 
  26. ^ 2010年12月には、外交文書公開により、原本か写しかは不明だが密約関係の機密扱い訓電3通が焼却処分されていた事が判明した。沖縄返還密約の文書焼却か 痕跡示すメモ発見 朝日新聞2010年12月23日
  27. ^ “岡田外相、「核密約」調査を命令 日米会談でも説明へ”. 朝日新聞. (2009年9月17日). http://www.asahi.com/politics/update/0917/TKY200909160442.html 2010年1月24日閲覧。 
  28. ^ 遠藤誠二; 坂口明 (2009年9月18日). “日米核密約 新局面へ”. しんぶん赤旗 (日本共産党). http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-09-18/2009091803_01_1.html 2010年1月24日閲覧。 (外務大臣命令「いわゆる『密約』問題に関する調査命令について」の全文あり)
  29. ^ “日米密約:「歴史歪曲は国民の損失」吉野さん声詰まらせ”. 毎日新聞. (2009年12月2日). オリジナル2009年12月4日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/20091204124900/mainichi.jp/select/world/news/20091202k0000m010098000c.html 
  30. ^ “沖縄密約「文書に署名した」 元外務省局長、法廷で証言”. 朝日新聞. (2009年12月1日). http://www.asahi.com/politics/update/1202/TKY200912010530.html 2009年12月1日閲覧。 
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  32. ^ “核密約文書、佐藤元首相邸に……”. 読売新聞. (2009年12月22日). オリジナル2009年12月25日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/20091225111627/www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091222-OYT1T00775.htm 2009年12月22日閲覧。 
  33. ^ 沖縄密約訴訟:東京地裁で結審…判決は4月9日毎日.jp
  34. ^ 核密約調査:岡田外相「3月に結果」毎日.jp
  35. ^ 沖縄返還、最大密約は施設工事費 講演で西山太吉氏共同通信2010年2月27日
  36. ^ 沖縄返還「密約」文書、東京地裁が開示命じる読売新聞2010年4月9日
  37. ^ 沖縄返還文書 日米密約の存在認め開示命令 東京地裁朝日新聞2010年4月9日
  38. ^ 密約開示判決 「歴史に残る」 西山さん改めて講演で強調(毎日新聞 4月10日21時6分配信)
  39. ^ 読売新聞 (2010年4月22日). “沖縄密約訴訟、判決不服として国が控訴”. 2010年4月23日閲覧。
  40. ^ 沖縄返還・安保改定などの外交文書公開へ 外務省22日 朝日新聞2010年12月7日
  41. ^ 密約暴いた西山元記者「やっと出たか…」 外交文書公開 朝日新聞2010年12月22日
  42. ^ 西山事件「手際よく処理」 米が日本の対応評価 東京新聞2011年2月18日
  43. ^ 貴省に対する公開質問書の提出及び回答要請に関する件―密約情報公開訴訟原告共同代表より玄葉光一郎外務大臣宛 News for the People in Japan
  44. ^ Listening:時流・底流 秘密保護法、有識者会議 評価の一方、懸念の声も毎日新聞
  45. ^ 西山太吉『機密を開示せよ―裁かれる沖縄密約』(2010年、岩波書店)ISBN 978-4000225809 pp.15-16. pp.30-40.
  46. ^ 預金は6000万ドルまたは現に通貨交換した額のいずれか大きいほうの金額。1億1200万ドル相当の供与にあたる。
  47. ^ Summation of Discussion 1971年6月12日 スナイダー公使の発言「沖縄返還協定第4条3項に基づく土地の原状回復補償費の自発的支払いに関するこれまでの議論を参照し、最終的金額は不明であるが、現在の我々の理解では、400万ドルになるだろうことに留意する」
    佐藤栄作がアメリカ側に補償を求めていたところ交渉が難航したため、国民に説明しやすいように「自発的に支払う」と書くことで妥協に至ったもの。実際は肩代わりであるし、アメリカ側ではそのように説明されなくてはならなかったので、協定とは別に秘密文書が作成された。
  48. ^ 密約 外務省機密漏洩事件 - Movie Walker
  49. ^ Mitsuyaku: Gaimushô kimitsu rôei jiken - インターネット・ムービー・データベース(英語)







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