船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 21:31 UTC 版)
基本的には海、湖、川などの水上を移動する乗り物を指しているが、広い意味では水中を移動する潜水艇や潜水艦も含まれる。動力は人力・帆・原動機などにより得る。
大和言葉の「ふね」「フネ」は広範囲のものを指しており、規模や用途の違いに応じて「船・舟・槽・艦」などの漢字が使い分けられている。船舶(せんぱく)あるいは船艇(せんてい)などとも呼ばれる(→日本語表現参照)。
なお、宇宙船や飛行船などの水上以外を航行する比較的大型の乗り物も「ふね」「船」「シップ」などと呼ばれる。これらについては宇宙船、飛行船などの各記事を参照のこと。また、舟に形状が似ているもの、例えば刺身を盛る浅めの容器[1]、湯舟/湯船、セメントを混ぜるための容器(プラ舟)等々も、その形状から「舟」と呼ばれる[注 1]。これらについても各記事を参照のこと。
概要
船舶の要素
日本の国土交通省のウェブページ上の記述では、船(船舶)は浮揚性・移動性・積載性の三要素をそなえた構造物[2]、とのことである。
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浮揚性について説明すると、船体が水を押しのけることでアルキメデスの原理が働き、船は浮力を得る。移動性について説明すると、船の歴史は(カヌーも含めれば数万年で)数千年以上におよぶが、推進力を得るには、古代から中世まで、小さな筏やカヌーでは「櫂」(オール、パドル)が用いられ、また帆(セイル)が用いられた。船の長い歴史のほとんどの期間は、推力は櫂や帆によって得ていたのである。18世紀末ごろにようやく蒸気船が登場し、当初は推力は、一般的には「外輪」(がいりん)を使って水を後方に「蹴る」ように押し出すことで得た(外輪船)。19世紀末に(つまり、わずか百数十年ほど前に)ディーゼルエンジンが船にも積まれるようになり、エンジン船では(外輪ではなく)スクリュープロペラが主流となった。最近では地球温暖化や環境問題が考慮され、(コンピュータ制御などの新しい技術も併用した)帆船の再研究が行われるようになっている。#歴史
- 線引き
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「船」と「船でないもの」の線引きがどこでおこなわれているかについて解説すると、ホバークラフトのように、アルキメデスの原理は用いず、空気を取り込む大きなプロペラ、「スカート」(エアクッション)を用いて表面効果を利用して、水上を滑るように進む乗り物は、船に含めない場合が多い(だが、諸事情により、広義の船舶に含めることもある)。また水上機や飛行艇は通常「船」には含めず、あくまで「航空機」に分類されている。基本的に空を飛行することが主目的の乗り物だからである。たとえ、飛行することに加えて水に浮かぶこともできて、移動できて、人や物が載せられたとしても、主目的が飛行することだから「航空機」なのである。ウィンドサーフィンやスタンドアップパドルボードなどのサーフボードは船舶法では船と扱われるが、一般にスポーツ用品に分類される傾向にある。
- 構成要素
船舶は、大きく分けると、船体(主たる、容器状の構造体)および艤装(船に付属する装備品や備品類)から成る。
船体
船体が通常進む方向(進行方向)を見て、先端に当たる部分を「船首」(英語では「バウ」)という。反対に、進む方向を見て「後ろ」の端に当たる部分を「船尾」(英語:スターン)という。進行方向に向かって右側の側面を「右舷(うげん)」といい、左側の側面を「左舷(さげん)という。船体の上面の平らな面を「(上)甲板(かんぱん)」(英語:デッキ)という。
艤装
艤装(ぎそう、rig、rigging、outfitting(s))には2つの意味がある。
- 船を構成する物で、船体(等の構造物)以外の装備品全般を指す。航海に必須の装備や荷役や乗客のための装備が含まれる。船は水上を揺られながら航行するので、船の内外の装備や各種機器・道具類が船体やデッキに固定されている必要がある。これらを「艤装」や「艤装品」と呼び、船から始まったこの名は、他の乗り物でも固定された装備全般を艤装と呼ぶことがある。
- 造船で艤装品を船体に取り付ける工程は「艤装」と呼ばれ、「艤装する」という動詞としても使われる。
法令による定義
- 日本の商法第684条では「この編(第七百四十七条を除く。)において「船舶」とは、商行為をする目的で航海の用に供する船舶(端舟その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟を除く。)をいう。」と定義されている。具体的には商行為を目的とする海商で航海の用に供される櫓櫂船以外の船を指す。ただし、船舶法第35条が「商法第三編ノ規定ハ商行為ヲ為ス目的ヲ以テセサルモ航海ノ用ニ供スル船舶ニ之ヲ準用ス但官庁又ハ公署ノ所有ニ属スル船舶ニ付テハ此限ニ在ラス」と商法の規定を準用している結果、ほとんどの船舶が商法の適用を受けることになっており、商船と非商船の分類は法の適用の点では大きな意義はない[3]。
- 工学上は飛行機に分類されるホバークラフトは、水面の支持を受けながら前進するものであることから日本の法律上では船舶と見なされる[4]。これに対して、水上航空機は空中輸送手段であり、離着水時の水面での滑走は、空中を航行するためになされるものであることから、商法上の船舶とは見なされない[5]。ただし、海上で水上航空機が船舶と衝突することを防ぐ必要があるため、海上衝突予防法では水上航空機を「船舶」に含めて扱っている(海上衝突予防法第3条第1項)。過去の大型飛行艇には組み立て式のマストと帆が搭載されており、着水後には帆船として航行が可能な機種もあり、緊急用の装備としてだけではなく遊覧航行にも利用されていた。このような目的での航行がどのような扱いを受けるのかは不明。
- 海上保険(元は商法第3編第6章の「保険」)は、日本においては、岡野敬次郎(1896年)『英国保険法』などによって導入されていった。「価額評定」(valuation)、「委棄」(abandonment)などの訳語が策定された。
船舶を指すための様々な表現
日本語表現
- 舟 - 「舟」の漢字は木をくりぬいて作られた丸木舟の形状に由来する[6]。「舟」の字は、手でこぐような比較的小型のものに使うことが多い[1]。
- 艇 - 「艇」は小型のものをいう[6]。
- 船 - 「船」のセンの読みも木をくりぬく意味に通じるといわれている[6]。「船」は小型から大型のものまでもっとも広い範囲を指して使われる[6]。
- 舶 - 「舶」は大型のものをいい、「船舶」は小型から大型まで船全般を指す[6]。
- 艦 - 「艦」は大型のものをいう。日本海軍では艦(艦の字義は装甲船の意)と書いて「フネ」と呼んだ。
総称として「艦船」(かんせん)、「艦艇」(かんてい)、「船艇」(せんてい)、あるいは「舟艇」(しゅうてい)などの言い方をする場合もある。
- 槽(ふね) - 一般的にふねの構造は、水上に浮かぶための浮力を得るために、内部は空洞になる。転じて、ある物体の中が空ろな容器全般を「ふね」と呼び、特に木製で中身(おもに液体や粉粒体)を入れる目的に特化した場合には「槽」(そう)の文字を当てる。日常的に、これら器を指して「ふね」と呼ぶ場合は使用時に蓋をしない、または蓋の付いていない状態のものをいう(例:湯ぶね、浴槽、酒槽など)。
英語表現
英語では日常的にはboatやshipが用いられ、「boat」(ボート)は比較的小型のものを指し、あえて言えば日本語の「舟」や「艇」に相当する。だが日本人が「結構 大きい」と感じるようなものまで 英語圏では「boat」と呼ばれていることがある。「ship」(シップ)はboatに比べて大型のものを指し、あえて言えば「船」や「艦」に相当する。boat / shipは感覚的な呼び分けがされているのであって、厳密な線引きがあるわけではない。「vessel」は(やや学術用語や行政用語的な表現であり) boatの中の大き目のものおよびshipを指し[7]、(ぴったりの日本語語彙は無いが)あえて言えば「船舶」や「船艇」に相当する。
従来、英語では民間船・軍艦共に代名詞はshe(女性扱い)であって、これに対し飛行機では民間機がshe、軍用機がhe(男性扱い)であるが、最近は、このような用法が少なくなって、他の一般名詞と同様にitを使用することがある。「ふね」を表す性についても、各言語によって異なり一様ではない。 なお、英文表記の航海日誌上では、she(女性扱い)で表記される。
数詞
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- 海上運搬物の船は比較的大きな船の場合「1隻(せき)、2隻、3隻」と数え、小型の船の場合は「1艘(そう、槽とも綴る)、2艘、3艘」と数える。だが、最近は大きさに関わらず「1隻、2隻、3隻」と数えることもある。
- 器としての槽では「1ふね、2ふね、3ふね」のような使い方をする。
- 器の意味を込めて数える場合は杯または盃の文字を当て、「1ぱい、2はい、3ばい」と数える。
船舶の分類・種類
用途による分類
船舶は用途によって商船、漁船、軍艦、特殊船などに分類され、商船は旅客船と貨物船に分類される[8]。
商船
商船(Merchant ship)とは、主として交易品を輸送する船である[9]。
- 旅客船
- 貨物船
- 一般貨物船(カーゴシップ)
- 貨物輸送に使用されるもの。荷物船。コンテナ船のような専用貨物船の多くは荷役装置を持たない (Gearless Vessel) ため、港の岸壁のクレーン等の荷役装置により貨物の積み下ろしを行うが、多くの一般雑貨運搬船やバラ積み船等では船上にクレーンやデリック等の荷役設備を備えるため港を選ばず荷役作業が行える。
- タンカー以外の貨物船全般(専用貨物船やコンテナ船、バラ積み船)を特に指す場合は一般貨物船と呼ばれる。重量物、輸送コンテナ、一般雑貨、バラ荷等の多様な貨物を効率よく積めるように作られた船は多目的(貨物)船と呼ばれる。
- 貨物船には航路、寄港地、スケジュールが定まっている定期船(ライナー)と、定まっていない不定期船がある。定期貨物船の多くが1航海での寄港地が10港以上にも及び、貨物も多種に及ぶため、貨物の揚積の効率を考えて5-7個の船艙と2 - 3層の甲板を持つものが多いが、不定期貨物船では寄港地が少なく貨物の種類も限られるために3-5個の船艙と1~2層の甲板を持つものが多い。また、定期貨物船が運ぶ貨物は不定期貨物船の物に比べて高価なものが比較的多く、貨物の発汗防止のための通風乾燥装置、郵便物のためのメイルルーム[注 2]、貴重品のためのストロングルーム[注 3]、冷蔵貨物用の冷蔵庫、液体貨物用のディープ・タンク[注 4]、重量物の荷役に使うヘビー・デリック (Heavy Derrick) などを備える船が多い。不定期船では木材、鉱石、石炭、穀物、鋼材などの原材料や半製品を運搬することが多く、これらはいずれも価格が安く、またこれらを運ぶための専用船との競合にも運搬コスト等の面で対応が求められるため、船型を単純にして小出力エンジンと低速航行によって燃費を抑えるなど定期貨物船との違いがある。不定期船は特殊な装備を求めず単純な船体を低コストで求められるため、同一設計で多数の船が作られるという傾向もある(2,580隻のリバティー船の例を参照)。
- 定期船と不定期船のいずれにも利用される船はライパーと呼ばれる。
- コンテナ船
- タンカー(油送船、油槽船、水槽船)
- ばら積み貨物船(バルクキャリア、バルカー、ばら積専用船)
- 冷蔵・冷凍運搬船(リーファー)
- 冷凍船。海洋船団において漁獲したものを急速冷凍し保存する設備を持ち、加工設備も併せ持つ。
- 特殊運搬船
- 車両航送船
- フェリー(渡船、自動車渡船)
- 鉄道車輌渡船
- RO-RO船(RORO船、ローローせん)
- 自走によりトレーラーなどの車両を船内の車両甲板へ搭載・固縛できる構造の専用貨物船である。トレーラーの後部車体のみを運搬する方法は、前部車体であるトレーラーヘッドは搭載・揚陸時のみに少数台ですみ、搭載スペース縮小と重量の軽減や狭い車輌甲板上での運転という運転技量の問題も回避できるために多く用いられる。
- フェリーのようにランプウェー(斜路)を備えるものが多いが、特定の航路での就役を計画されて、港側のランプウェーを利用できる場合は初めから備えていない場合もある。船が備える機構は乗客を乗せるフェリーとほぼ同じであるが、運転者を含めた乗客を運ばないためフェリーのような客室は備えない。
- ラッシュ船
漁船
漁船は漁業に用いる船舶。近海用と遠洋用、また漁獲する水産物の大きさや量によって、船の大きさはさまざまである。
軍艦
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軍事用船舶を指す。大きさ、形態、武装はその用途により様々である。国連海洋法条約によれば保有国が武装に関わらず自国海軍の艦艇であると認めたもの。ただし、海軍の艦艇であっても戦闘に直接寄与しない補助艦艇であれば軍艦でないとされる場合がある。日本では軍艦の管轄官庁は国土交通省だけでなく、防衛省でもある。
日本語では軍事組織の船舶を指す言葉として『艦』を用い、自衛隊や外国軍の使用する船舶に対して使われる。なお警察や沿岸警備隊(海上保安庁)が利用する船舶には使われない。
特殊船
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- 練習・調査船
- 警備・救難船
- 作業用船(作業船)
- 工作船
- 本来は甲板上に大型の起重機を複数設置し、艦艇や船舶の軽微な補修作業をドック入りさせなくとも行えるリペアー・シップのこと。近年、他国への破壊活動を行う工作員を輸送する小型の船も、この呼び方をされるようになった。
- 砕氷船(アイスブレイカー)
- 極地など氷海や凍結河川を自力航行し、航路啓開を目的とする船。強力な機関と船体を備え、周囲を氷に閉ざされても薄い氷であれば割り進み、ある程度の厚さであれば船首と船尾を上げ下げし、船体の重さで氷を砕き低速での移動が可能である。厚すぎる氷に閉じ込められても、舷側が斜めになっていて潰されない工夫がある。商船の砕氷船も砕氷タンカーのように多数存在する。
- 敷設船(敷設艦)
- 海底ケーブル敷設船など。
- 浚渫船
- 海底資源掘削船
- 作業台船
- 起重機船(クレーン船)
- 大型のクレーンを搭載したクレーン船で、海難救助や建設工事等で使用される。
- 引き船、曳き船(タグボート)
- 狭隘海域・狭小水路・港湾内において大型船舶が航行または離着岸する際の座礁や衝突を回避するために曳航または押航する船。前述のはしけを引くためにも使う。
- 工作船
- 特殊業務用船舶
- その他の特殊用船舶
運航形態による分類
船舶は運航形態により自営船、定期傭船、裸傭船、運船委託船に分けられる[8]。
- 自営船 - 船主が自ら運航する船舶[8]。
- 定期傭船 - 船主が期間を決めて傭船者に船舶を利用させて運航する船舶(船主に占有権がある)[8]。
- 裸傭船 - 船主から傭船者が船舶のみを賃貸し、自らの船員を乗せて運航する船舶(傭船者に占有権がある)[8]。
- 運船委託船 - 船主は配船や運航を行わず、集貨力のある者に運航業務を委託している船舶[8]。
船型による分類
船舶は大分類として以下の3つ船型とそれらの分類外のその他の特殊な船型に類別できる。
単胴船、双胴船、三胴船の違いは水面下に沈む下部船体の数である。 また、双胴船や三胴船での高速船用の船型としてウェーブ・ピアーシング型(波浪貫通型、Wave-piercing)の船舶が2000年代前半から実用化されている。
単胴船
水面下に沈んで水と直接接する船体が1つである船型である。多くの船が単胴船であり、船舶の歴史においても最も古く、船舶設計や造船技術の基本となった。双胴船や三胴船は単胴船からの派生デザインといえる。1人乗り手漕ぎボートから大型タンカーまでの船舶が単胴船であり、特に高速航行や波浪に対する非常に高い安定性、幅広い甲板を求めない場合には、燃費や建造コストの点で有利である。
水と接する船底部の形によって「ラウンドビルジ型」と「ハードチャイン型」に分かれる。多くの単胴船は船底が丸くスムースなラウンドビルジ型となっているが、船底での揚力を得て水面を滑走するモーターボートのような小型艇は鋭角的な船底を持つハードチャイン型である。また、はしけの仲間は流線型をとらずに四角い箱型の「バージ船型」というものもある。
単胴船での甲板上の上部構造物(上構)の配置によって、更にいくつかの船型に分けられる。上甲板上の建造物の内で左右の両舷に渡って占めているものを「楼」(ろう)や「船楼」(せんろう、Erection)と呼びその位置によってそれぞれ、船首楼(Forecastle)、船橋楼(Bridge)、船尾楼(Poop)と呼ばれる。この楼の配置によって以下のように分かれる。
双胴船
水面下に沈んで水と直接接する下部船体が細長く左右2つに平行している船型である。上部船体部分はほぼ四辺形に広く取れるため車輌用フェリーや海上作業用プラットフォームに適している。波浪に対しては特に左右方向の揺れ(ローリング)が単胴船に比べて小さくなる利点がある。このことから、ブローチングに対する危険度が減じられる。しかし横波による揺れ(ローリング)の固有振動数が高く、少しの短波長の横波でも波に追従して激しく揺れるという問題点がある。
曳き波の発生が単胴船に比べて小さいことも、高速航行時にも周囲への影響が少ない点で有利となる。センターバウがあればバウダイビングに対する安全性の確保に貢献する。
双胴船は古くから考案されていたが、単胴船に比べて水中表面積が増加し摩擦抵抗や粘性圧力抵抗が大きくなる点や、下部船体を左右に分ける事による強度確保のため船体重量が増すことで造波抵抗と他の2つの抵抗を増やしてしまうなどの不利な要素が排除出来ずにいた。その後、技術の発達により軽量なアルミ合金が普及したことで実用的な双胴船が建造されるようになった。
三胴船
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三胴船は双胴船の欠点である横波による揺れを解決するために、左右の下部船体を小さくすることで横波による揺れの固有振動数を長くして、少しの横波ぐらいでは揺れないようにしている。双胴船と同様に、センターバウがバウダイビング(後述)に対する安全性の確保に貢献する。中央船体の大きな三胴船は単胴船の左右にアウトリガーを付けて左右復原力を確保した船型とも考えられるため、別名「スタビライズド・モノハル」とも呼ばれている。双胴船と比べて三胴船はまれであり、主に高速フェリーや外洋レース用として利用されている。
具体例を挙げると、オーストラリアの超高速カーフェリー「トリウムファント」(後に「ドルフィン・ウルサン」と改名)が最初の実用船であったが1年ほどで引退し、さらに大きく早い「ベンチジグア・エキスプレス」(127m, 40kn)がカナリー諸島で就役している。 また軍用艦艇ではアメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦や、海上自衛隊の水上標的に採用されている。
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三胴船の中央断面図
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三胴の外洋レース帆船
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海上自衛隊の高速小型水上標的1形
ウェーブ・ピアーサー
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双胴船や三胴船での下部船体を特に細長くすることで造波抵抗を減少させ、超高速航行を可能にした船型。
単胴船では船体を極端に細くすると横波に対する十分な復原力が得られず容易に転覆する危険があるため、ウェーブ・ピアーサー(Wave piercer)は主に多胴船に採用される。
水中翼船やホバークラフトでは排水量と水中翼の大きさや船底の広さの関係が2乗3乗の法則に縛られてしまい、実用可能な船体規模が制約を受けるが、排水量型であるウェーブ・ピアーサーでは2乗3乗の法則に制約されることはないため、超高速航行が可能な大型船舶は必然的にウェーブ・ピアーサー型になる。
船体が細長くなるため貨物の寸法や積載量に制限が生ずることから、主に積載量より速度を重視する超高速フェリーや高速航海記録に挑戦する特殊なレース船など、外洋を超高速で航行する船に採用されている。
軍用艦では中国人民解放軍海軍で運用されている紅稗型ミサイル艇、中華民国海軍で2015年3月末より運用開始した沱江級コルベットに採用されている例がある。
オーストラリアのインキャット社は主にウェーブ・ピアーサー方式の船を建造している造船会社であり、製品は高速フェリーや高速輸送艦として運用された実績がある。
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ナッチャンWorld(双胴式の高速フェリー)
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アディ・ギル(アースレース)の後部
その他の船型
その他の船型として水中翼船、表面効果船(地面効果翼機)、ホバークラフトなどがある。表面効果船は、波浪が一切ない状態では水に接触せず空中を飛行している状態であり、厳密には航空機の一種である。
浮力による分類
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船舶は最も一般的な排水量型の船の他にも浮力によっていくつか特殊なものがあり、以下のように分類される。
- 排水量型(Displacement)
- 最も一般的な船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船である。航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない。
- 滑走型(Skimmer)
- 高速艇やモーターボートなど、低速度では排水量型のように水面下に沈む部分で浮力を得ているが、高速時には船体が浮き上がり水面上を滑るように進む船である。
- 水中翼型(Hydrofoil)
- 水中翼が水中で発生する揚力によって船体を水上に持ち上げて進む船である。停止すれば排水量型の船と同じように船体下面が水面下に沈む。詳細は「水中翼船」を参照
- 半没翼型
- 全没翼型
- エアクッション型
工学上の分類
船体材料による分類
船は船体の主な材料で木造船(木造艇)、アルミ船(アルミ艇)、繊維強化プラスチック(FRP)船、先進複合材料(ACM)船などに分類される[12]。
- 葦船
- 木造船
- 鋼船
- 繊維強化プラスチック(FRP)船
- 軽合金船
- アルミ船
動力による分類
船は動力により動力船(動力艇)、帆船(帆艇)、手漕ぎ舟(手漕ぎ艇)などに分類される[12]。
- 手漕ぎ舟 - 人間の腕力でパドルや櫓を動かす(または脚力でペダルをこいで外輪などを回す)。
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パドルを用いるカヤックで獲物に忍び寄りハンティングを行うイヌイット
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古代エジプトのオール(櫓)を漕いで進んだ船
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大自然の中でのカヤッキング(アラスカ)
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1959年の手漕ぎ舟での舟運の様子
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足漕ぎ式のスワンボート
- 帆船 - セイル(帆)に風を受けた力、および竜骨や船側で生じた抗力、それら2つの合力を推力とする。セイルで船を動かすことをセイリングという。セイリングの原理については、「セイリング」(帆走)の記事を参照。
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セーリング・クルーザーで家族・友人とセーリングを楽しむ欧米の人々
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訓練航海中のUSCGCイーグル
- 機帆船 - セイルに加えて小型の原動機も備える帆船。(ディンギー(小さなセーリング・ボート)などはエンジンを備えないが)現代の中型以上のセイルを用いた船のほとんどは、基本的にはエンジンも備えており、実際には「機帆船」である。
- 動力船、機船(発動機船)[13]
- 外燃機関
- 内燃機関 - 通常、エンジンが生み出したトルクをスクリュープロペラに伝えて推力にする(稀にウォータージェット推進もある)。
- ディーゼルエンジン
- ガソリンエンジン
- ガスタービンエンジン - 高速航行を行う客船や軍艦に利用される。
- 電気推進方式 - 熱機関を直接動力とせずに発電機として利用し、電動機でスクリュープロペラやウォータージェットを駆動する。
- ディーゼル・エレクトリック方式 - ディーゼルエンジンで発電し、電動機でスクリュープロペラを駆動する。
- ターボ・エレクトリック方式 - タービンエンジンで発電し、電動機でスクリュープロペラを駆動する。
- CODLAG - ディーゼル・エレクトリックとターボ・エレクトリックを併用する。
- 統合電気推進 - 推進用と船内で使用する発電機を共用化した方式。大量の電力が必要な軍艦に利用される。
- 原子炉 - 蒸気タービンの熱源を原子炉とする船は原子力船と呼ばれる。
- 超伝導電磁石 - 熱機関、回転系の推進機を使わず超伝導電磁石による強力な磁場で磁場中の水に電流を流し、ローレンツ力により海水を噴射する(ウォータージェット推進)。実験船としてヤマト1が建造された。
船体構造による分類
- 単胴船・多胴船(双胴船・三胴船)「船体」も参照
- 水中翼船
- ホバークラフト - 通常の船舶とは異なる法令を適用する国が多い。日本では特殊船舶として扱われる。
- 地面効果翼機 - ロシア以外では法整備が進んでおらず、航空機か船舶かも定まっていない。日本での扱いは不明。
- 水上オートバイ - 免許が小型船舶よりも簡素化されていたり講習会を受けるだけで扱える国が多い。日本では特殊小型船舶として扱われる。
機関の搭載方法による分類
- 船外機船 - 船尾板(トランサムボード)に船外機を装着したもの
- 船内外機船 - 機関を船内船尾に備え付けドライブユニットを船外に出すことによるスクリュープロペラを回転させる
- 船内機船 - 機関を船内中央付近に備え付けプロペラシャフトによりスクリュープロペラを回転させる
法令上の分類
所有者による分類
なお、公有船・私有船の概念は後述の公用船・私用船の概念とは異なるものである(通説)[3]。
供用による分類
- 公用船 - 航海において公用に供する船舶を公用船という。日本でいえば防衛省の自衛艦、海上保安庁の巡視船、水産庁の漁業取締船等がこれにあたる。ただし、国立学校などの練習船や国の所有する研究用の船舶などは公有船ではあるが、公用船ではなく私用船に属する[3]。
- 私用船 - 公用船以外の船舶を私用船という。企業保有の船舶の他に、個人所有の漁船、ヨット等も含まれる。
海上運送法による分類
海上運送法では、旅客定期航路事業を行う旅客定期船、貨物定期航路事業を行う貨物定期船、自動車航送貨物定期航路事業を行う自動車航送貨物定期船、不定期航路事業を行う不定期船に分けられる[8]。
船舶安全規則による分類
船舶安全規則では、平水区域(湖、川、港内およびこれらに接続する指示された水域)のみ航行できる平水航路船、沿海区域(陸地から距岸20海里以内の水域)のみ航行できる沿海航路船、近海区域(東経175度、東経94度、北緯63度、南緯11度に囲まれた水域)のみ航行できる近海航路船、すべての水域を航行できる遠洋航路船に分けられる[8]。
日本標準商品分類の分類
日本標準商品分類では船舶(分類番号50)は商船(分類番号501)、特殊用途船(分類番号502)、漁船(分類番号503)、艦艇(分類番号504)に分類される(このほか分類番号506以下に軸径及びプロペラ、分類番号507以下に舶用補機、分類番号508以下に航海用機器、分類番号509以下にぎ装品が定められている)[14]。
- 商船
- 特殊用途船
- 日本標準商品分類では特殊用途船(分類番号502)は練習・調査船(分類番号5021)、警備・救難船(分類番号5022)、作業用船(分類番号5023)、特殊業務用船舶(分類番号5024)、はしけ(非自航)(分類番号5025)、舟艇(分類番号5026)、係留船(分類番号5027)、特殊水上装置(分類番号5028)、その他の特殊用船舶(分類番号5029)に分類される[14]。
- 漁船
- 艦艇
各時代ごとの特徴的な船舶の分類
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船舶の歴史を扱う場合に、しばしば、ある時代、ある地域に一般的であったり、大量に製造された船のタイプを指すための分類名が登場する。すべての船舶を網羅的に分類するためのものではなく、特徴的なタイプを分類したものであるが、これも分類の一種であるので、それもここで紹介する。
- ガレー : 主な推力に人力によるオール(櫓)を用いた大型船
- トライリーム : 三橈漕船(さんどうそうせん)、両舷に三段のオールの漕ぎ口があるガレー船
- クナール : バイキングの用いた船
- ロングシップ : バイキングの用いた大型船
- ビランダー(en:Bilander) : オランダやエリザベス1世時代のイギリスで用いられた、2本マストでメインマストにラテンセイルおよび横帆(角帆)も備えた小型商船
- キャラベル(Caravel) : 15世紀ころのポルトガルやスペインで愛用された、ラテンセイル(三角帆)だけを用い2~3本程度のマストを持つ小型帆船
- キャラック(Carrack) : 北欧のコグと南欧のキャラベル、両方の長所を取り入れ15世紀に地中海で開発され大航海時代に用いられた大型武装商船
- ガレオン(ガリオン、ガリオン船) : キャラックから派生した、16世紀半ば〜18世紀ごろのスペインなどの軍用・貿易用大型帆船
- フリゲート : 帆船時代には哨戒や護衛のための帆走快速軍艦を指し、第二次世界大戦期にはイギリス海軍の航洋護衛艦を指すようになった用語。
- マン・オブ・ウォー(man-of-war) : 武装帆船を(漠然と)指すための、16~19世紀のイギリス海軍における表現。(人力でオールを漕いで進むガレーと対比して用いた表現)
- 戦列艦 : 17~19世紀の、多数の砲門を備え一定以上の速力・旋回力・耐久力を持つ、艦隊が一列になって戦うための、大型軍用帆船
- クリッパー : 19世紀に発展した、アジア産物をヨーロッパへすばやく輸送するための、速度最重視の高速帆船、快速帆船、スキッパー級帆船。(後に、高速ヨットも指すようにもなった。)
- 汽船・蒸気船 : 推力の動力として蒸気機関を用いた船を指すが、現代では外輪船等の旧式の蒸気船を指すことが多い。
- Uボート:第一次世界大戦~第二次世界大戦時のドイツが用いた潜水艦
- Qシップ(Qボート) : 第一次大戦中に英国が建造した、ドイツ軍Uボート対策の艦
- リバティシップ : 第二次大戦中に大量建造された貨物船。仕様を標準化し、建造期間が短かった。
- ビクトリーシップ : 第二次世界大戦中のリバティシップを改良して建造された高速性の優れたビクトリーの名を付けた貨物船の種類。
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