船舶工学 各部の名称

船舶工学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/10/12 08:33 UTC 版)

各部の名称

船の各部の名称

船は船本体である「船体」(せんたい)とその上に設けられた「上部構造物」(じょうぶこうぞうぶつ)から構成される。 船は前から後ろに向かって、船首部、中間部、船尾部と分けられるが、どこから分けられるのか厳密な区別は無く、船体の曲線がほぼ直線的な部分が中間部とされているが、かなりあいまいである。

船体・上部構造物

船からさまざまな機械類・装備類を取り外して水面に浮かんでいられる器だけの船の本体を「船体」(Hull)と呼ぶ。船体は造船技術用語では船殻(せんこく)と呼ばれる。船体の左右側面は「」(げん)や「舷側」(げんそく)と呼ばれ、その上縁部もまた「舷」「舷側」や「船縁」(ふなべり)「船端」(ふなばた)」などと呼ばれる。船体の上面は、上甲板と呼ばれる強度を備えた単一平面の甲板で覆われることが一般的である。船体より上の構築物は上部構造物や上構(じょうこう)と呼ばれ、船室などに当てられることが多い。上構の中でも横方向に占める構造物の幅が左右舷一杯に達しているものは「楼」と呼ばれる。 船に取り付けられた機械類・装備類は「艤装品」(Equipment)や「艤装」(Rig)と呼ばれる。

船首部

日本語での「舳先」(へさき)に相当する船首の先端部は特にStemと呼ぶ。 船首(Bow、バウ)は「おもて」(艏、舟偏に首)に相当する。 船首部の、上が広がった形態はフレア(Flare)と呼ばれる。 船首部の上甲板が船首方向に行くに従ってなだらかに持ち上がっている形態はシアー(Shear)と呼ばれる。シアーによって船首部の乾舷(かんげん、水面からデッキまでの高さ)を高くとることでバウ・ダイビングや青波(Green water)を減らす効果が期待できる。 シアーや船首楼とは別に、船首上端にフレアの一部として付けられた波除けの板はブルワーク(Bulwark)と呼ばれる。

船体外板はシェル・プレイティング(Shell plating)とも呼ばれる。 甲板は船の主要な構成部分で強度部材の1つであり、船体上にあって水平に広く取り付けられた金属製、FRP製の板材であるとともに、上部構造物を含む全ての船内空間の床板である。但し船底の床だけは甲板とは呼ばない。見張り台の様な足場は甲板には数えない。

上甲板(上部甲板、Upper deck)は水密構造となっている船体のすぐ上にあって船首から船尾まで続く甲板であり、浮体としての船体のフタを構成している甲板といえる。上甲板は他の多くの甲板と同じく船体強度を保つ重要な構造材の1つである。船全体を地上のビルに例えれば上甲板は地上1階の床面に相当し、上甲板より下の部分は地階に、上部構造物のそれぞれの階はビルの地上階に相当する。
風雨に曝される甲板は露天甲板(ろてんかんぱん)と呼ばれ、多くの貨物船などでは上甲板は通常、露天甲板であるが、自動車運搬船や大型客船などは上甲板の露天部分はほとんどない。
  • 上甲板から水面までを乾舷(Freeboard)と呼び、水面から船底下面までを喫水(きっすい)と呼ぶ。
  • 錨を繋ぐ鎖を入れておく鎖錨庫はチェイン・ロッカー(Chain Locker)と呼ばれる。
  • 錨鎖(ホーサー、Hawser)を通す管は錨鎖管(ホースパイプ、Hawsepipe)と呼ばれ船首側面や、まれに船首正面の錨鎖孔(Hawsehole)に開口している。小型船を除けば、錨鎖孔は錨を引き込んで格納するベルマウス(Bell mouth)となっている。
  • 船首部上甲板には多数の係船用装置類が並んでいるのが普通である。詳しくは本項目の#係船装置を参照のこと。
  • 船首部の上甲板上にある両舷に渡ってつながった構造物は、船首楼と呼ばれる。
  • 船首楼の上甲板より上に位置する部屋は、ボースンズ・ストア(Boatswain's Store)と呼ばれる。
  • 船首部の上甲板より下に位置する空間のタンクは、フォア・ピーク・タンク(Fore Peak Tank)と呼ばれる。
  • 船首部とそれに続く船体とを隔てる船首隔壁はコリジョン・バルクヘッド(Collision Bulkhead)と呼ばれる。船首隔壁は同時に第一隔壁である。

中間部

船体内部の左右に浮力を調整する水タンクは、バラスト・タンク(Ballast tank)と呼ばれる。バラスト・タンクは船内に多数あり、多くが船体左右や前後の外板にそって配置されている。

  • 船体の甲板は上甲板の下は中甲板と呼ばれ、多層の場合には第一・第二と番号が振られる。
  • 船体を前後方向に貫く壁は縦隔壁と呼ばれ、船の用途によって位置や数が全く異なる。
  • 横隔壁と縦隔壁は合わせて水密隔壁と呼ばれ、水密隔壁と船体外板や船体外板に沿って設けられたバラスト・タンクで区切られた空間は、水密区画と呼ばれる。

船体内部を横に仕切る隔壁はバルクヘッド(Bulkhead)と呼ばれ、船首隔壁を便宜上第一と数えて第二隔壁、第三隔壁と呼ばれる。隔壁の強度が要求される箇所では波型隔壁(Corrugated Bulkhead)と呼ばれる縦方向に多数のの折り目が付けられた鉄板によって隔壁が作られる。

  • 貨物船では貨物を船内へ収容する空間を船艙(せんそう、ホールド、Hold)と呼ぶ。
  • 普通、船艙は縦隔壁と横隔壁で区切られ、それぞれに番号が振られている。
  • 貨物船では上甲板や中甲板にハッチが設けられ、各船艙毎に1-4つ程度の開口部となる。
  • ハッチの周囲はハッチ・コーミング(Hatch Coaming)と呼ばれる立ち上がり部を持ち、ハッチカバー(Hatch Cover)で覆われている。
  • 上甲板の手すり柱はスタンチョン(Stanchion)と呼ばれる。
  • 船体の側面は船腹(せんぷく)と呼ばれる。船腹の窓は舷窓(げんそう、Porthole)と呼ばれ確実に閉鎖して水密が保てるように作られる。

船内でも最下層の船底部左右舷に計2本ある前後に長い窪みはビルジ(Bilge)と呼ばれ、そこに溜まる汚れた水も同じくビルジと呼ばれる。ビルジ部の船体外面にある減揺のための鋼鉄板はビルジ・キール(Bilge keel)と呼ばれる。船底を船首から船尾まで貫く太い構造部材はキール(keel)や竜骨と呼ばれる。

船の右側は右舷(うげん、Starboard)、左側は左舷(さげん、Port、Port side)と呼ばれる。

船体中央と機関室前端とを隔てる隔壁は機関室前端バルクヘッド(Machinary Fore Bulkhead)と呼ばれる。何も使用していない空き空間は、コファダム(Cofferdam)と呼ばれる。機関室後端とそれに続く後部船体とを隔てる隔壁は機関室後端バルクヘッド(Machinary Aft Bulkhead)と呼ばれる。

  • 船橋のある部分の上甲板の上に建つ構造物で両舷に渡りつながったものは、船橋楼と呼ばれる。
  • 船橋は船首にあるものや、中央やや後ろにあるもの、船尾にあるものなど、船の種別や役割、大きさ、利便性、安全性、居住性などを考慮して決められるため、船それぞれで多様な配置をとる。
  • 船橋部分は上階から順に、コンパス甲板(Compass Deck)、船橋甲板(Navigation Bridge Deck)、船長甲板(Captain's Deck)、ボート甲板(Boat Deck)、上甲板(Upper Deck)と呼ばれる場合や、Aデッキ、Bデッキと呼ばれる場合、1番デッキ、2番デッキと呼ばれる場合などがある。
  • 船橋甲板には一般に船橋(ブリッジ、Bridge)とも呼ばれる操舵室があり、船長をはじめ航海士が操船に当っている。機関室の一角にはエンジン・コントロール・ルームがあり、機関長をはじめ機関士が主機関と多種の補機類の運転操作を行なっている。
  • 20世紀末からは多くの船で、エンジンのコントロールは操舵室でも行なえるように変わりつつあり、機関長をはじめ機関員が船橋に詰めることが珍しくない。

多くの船では、船橋の両脇にウイング(Wing)と呼ばれる左右に突き出て人が立てるようになっている部分があり、主に岸壁への接岸時や水路通航時に舷側(げんそく)と陸との距離を目視によって確認するのに使用される[4]

煙突はファンネル(funnel)とも呼ばれる。 上甲板や楼などにマスト(Mast)が立っている。

船尾部

船尾部はStern(艉、(舟偏に尾と書く)、とも、スターン)と呼ばれる。

  • 船尾部の露天甲板には係船用のロープを繋ぐ設備が備わっており、船によっては投錨設備も付いている。
  • 船尾部の上部甲板上にある両舷に渡ってつながった構造物は、船尾楼と呼ばれる。
  • 後部船体と船尾部を隔てる隔壁は船尾隔壁(Aft Peak Bulkhead)と呼ばれる。
  • 船尾部の上甲板より下に位置する空間のタンクは、アフト・ピーク・タンク(Aft Peak Tank)と呼ばれる。
  • 船尾が丸くなっておらず、切り落としたように平面で構成されている場合の垂直板をトランサム(Tramsom、船尾肋板、せんびろくばん)と呼ぶ。トランサムが無く、船首も船尾も丸みを帯びてとがっている船は「ダブルエンダー」(Double ender)と呼ばれる。
  • 大多数の船では船尾船底部にスクリューが備わっている。



  1. ^ a b 泉江三著 『日本の戦艦 上』 グランプリ出版 2001年4月20日初版発行 ISBN 487687221X
  2. ^ a b c d e f g 池田良穂著 「図解雑学 船のしくみ」 ナツメ社 2006年5月10日初版発行 ISBN 4-8163-4090-4
  3. ^ 渡辺逸郎著 「コンテナ船の話」 成山堂書店 18年12月18日初版発行 ISBN 4425713710
  4. ^ 伊藤雅則著 「船はコンピュータで走る」 共立出版 1995年1月15日第一版発行 ISBN 4-320-02915-1
  5. ^ a b c 池田宗雄著 「船舶知識のABC」 成山堂書店 第2版 ISBN 4-425-91040-0
  6. ^ a b c d e f 仲之薗郁夫著 「海のパイロット物語」 成山堂書店 2002年1月28日初版発行 ISBN 4-425-94651-0
  7. ^ 小野寺幸一著 「地球90周の航跡」 東京経済 1995年4月20日第一刷発行 ISBN 4-8064-0419-5
  8. ^ a b c 野沢和夫著 「船 この巨大で力強い輸送システム」 大阪大学出版会 2006年9月10日初版第一刷発行 ISBN 4-87259-155-0
  9. ^ 檜垣和夫著 「エンジンのABC」 ブルーバックス 講談社 1998年3月20日第6刷発行 ISBN 4-06-257129-3
  10. ^ 野沢和夫著 「氷海工学」 成山堂書店 2006年3月28日初版発行 ISBN 4-425-71351-6
  11. ^ a b 拓海広志著 「船と海運のはなし」 成山堂書店 平成19年11月8日改訂増補版発行 ISBN 978-4-425-911226
  12. ^ 恵美洋彦著 「Illustrations of Hull Structures」 成山堂書店 2006年11月28日初版発行 ISBN 4-425-71381-8
  13. ^ 佐藤忠著 「セメント船を造ろう」 パワー社 2001年9月25日発行 ISBN 4-8277-2277-3
  14. ^ 吉識恒夫著 「造船技術の進展」 成山堂書店 2007年10月8日初版発行 ISBN 978-4-425-30321-2
  15. ^ 池田良穂著 『内航客船とカーフェリー』 成山堂書店 平成20年7月18日新訂初版発行 ISBN 9784425770724
  16. ^ 満田豊他著 『海のなんでも小事典』 講談社ブルーバックス 2008年3月20日第1版発行 ISBN 9784062575935
  17. ^ [1] 海上における船舶のための共通通信システムの在り方及び普及促進に関する検討会報告書(総務省電波利用ホームページ 平成21年1月27日 報道資料より)
  18. ^ [2] 船舶が任意に設置する安価な国際VHF機器の導入に伴う関係規定の整備(総務省電波利用ホームページ 平成21年10月1日 報道資料)







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