脊椎動物 脊椎動物の概要

脊椎動物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 01:17 UTC 版)

生物学生物 > 生物の分類 > 脊椎動物
脊椎動物
Vertebrata
生息年代: カンブリア紀-現在, 525–0 Ma
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
学名
Vertebrata
和名
脊椎動物 (せきついどうぶつ)
下位分類群

概要

分類

動物分類のひとつで、後口動物脊索動物門に属する単系統群である[1]。脊椎動物以外の動物を便宜上に無脊椎動物という。

脊椎動物とは、哺乳類鳥類爬虫類両生類魚類からなる系統群である。ただし爬虫類魚類側系統群であるので、単系統群のみを系統群として認める立場からは下記の表のように、四肢動物羊膜類双弓類といった単系統群を用語として用いることになる:

分類群 イメージ 種の数の見積もり[2]
脊椎動物 四肢動物 有羊膜類 哺乳類 5,513
双弓類 鳥類 10,425
爬虫類
(鳥類以外の双弓類からなる側系統)
10,711
両生類 7,302
魚類
(四肢動物以外の脊椎動物からなる側系統)
32,900
総計(種数) 66,178

表に記載したの数の見積もりは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(2014年3月のもの)[2]から引用した。このリストでは現生の無脊椎動物の数を1,305,075と見積もっているので、脊椎動物の数は全動物中の5%以下ということになる。

特徴

  • 多数の椎骨がつながった脊椎(背骨)をもつ。
  • 脊髄(あわせて中枢神経と呼ぶ)をもち、それぞれは頭蓋骨と脊椎に守られている。
  • ヘモグロビンを含む赤い血液を持つ(極地に生息する魚などに一部例外あり)。
  • 少なくとも一つの半規管を持つ。
  • 大型の種が多い。魚類の幼生には1ミリメートル以下のものがあるが、成熟時の体長としては最小のものでも6 - 8ミリメートル程度になる。このため多くの動物門にある間隙性生物が存在しない。また、最大の水棲動物(現生種のシロナガスクジラ。ただし体長だけならマヨイアイオイクラゲが上回る)と最大の陸上動物(絶滅種では竜脚類の一種。現生種ではアフリカゾウ)の両方を含む。

系統分類上の位置づけ

動物界から脊椎動物に至る系統樹は下記のとおりである[3][4]。なお、脊椎動物から遠い系統群の詳細は省略している。省略部分の詳細は「動物」の項目を参照されたい。

動物

前左右相称動物側系統群[注釈 1]

左右相称動物
前口動物
冠輪動物
扁平動物

(略)

触手冠動物

(略)

担輪動物

(略)

脱皮動物
線形動物

(略)

鰓曳動物

(略)

汎節足動物

(略)

後口動物
水腔動物

棘皮動物

半索動物

脊索動物

頭索動物:一生、全体長に渡って脊索を持つ。ナメクジウオの仲間

尾索動物:一生ないし一時期に尾部に脊索を持つ。ホヤ綱オタマボヤ綱タリア綱(ヒカリボヤ、ウミタル、サルパなど)からなる。

脊椎動物:脊索の周囲に脊椎が形成される。

珍無腸動物

左右相称動物

例外も多いが[6][7]、基本的に下記のような特徴を持つ:

  • 完全な三胚葉性で[8]、体が左右相称(=左右対称)[8]
  • 肛門、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に体腔ないし偽体腔(線形動物、輪形動物など)を持つ。
  • ボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である[9][10]。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する感覚器や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある(頭化という)。
  • 多くの左右相称動物は環状筋縦走筋のペアを持つので[10]、ミミズのような体が柔らかい動物では水力学的骨格(英語版)の蠕動により動ける[11]
  • 多くの左右相称動物には繊毛で泳ぐことができる幼生の時期がある。

後口動物

後口動物(新口動物)とは歴史的には胚にできた原口が口になる前口動物(旧口動物)に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物として定義された分類群である[12]。しかし1990年代に分子系統解析が始まると、この歴史的な意味での後口動物は単系統にならないことが示されたので、毛顎動物有鬚動物などが後口動物から外され、上述の系統樹にあるもののみが後口動物として残された[13]

なお、珍無腸動物 (Xenacoelomorpha) を含むか否かは2016年現在未確定[14][15][16][17][18]

脊索動物

脊索動物は脊椎動物を含む動物門で、(一生のうち少なくとも一時期に)脊索を持つという特徴をもつ[19]。詳細後述。


注釈

  1. ^ 「前左右相称動物」というのは左右相称動物以外の動物門について述べるための便宜的な名称で、「前左右相称動物」という系統群があるわけではない[5]

出典

  1. ^ 藤田(2010), p.113.
  2. ^ a b The World Conservation Union. 2014. IUCN Red List of Threatened Species, 2014.3. Summary Statistics for Globally Threatened Species. Table 1: Numbers of threatened species by major groups of organisms (1996–2014).
  3. ^ 藤田(2010), p.113. pp.174-175.
  4. ^ 馬渡 (2013), p.2.
  5. ^ 藤田(2010), p.113.
  6. ^ 動物#cite note-Minelli20092-135[リンク切れ]
  7. ^ 動物#cite note-Brusca20162-136[リンク切れ]
  8. ^ a b 動物#cite note-Fujita10-122-132-131[リンク切れ]
  9. ^ Minelli, Alessandro (2009). Perspectives in Animal Phylogeny and Evolution. Oxford University Press. p. 53. ISBN 978-0-19-856620-5. https://books.google.com/books?id=jIASDAAAQBAJ&pg=PA53 
  10. ^ a b 動物#cite note-Brusca20162-136[リンク切れ]
  11. ^ 動物#cite note-Quillin2-137[リンク切れ]
  12. ^ 藤田(2010) p104
  13. ^ 藤田(2010) p108
  14. ^ Philippe, Hervé; Brinkmann, Henner; Copley, Richard R.; Moroz, Leonid L.; Nakano, Hiroaki; Poustka, Albert J.; Wallberg, Andreas; Peterson, Kevin J. et al. (2011-02). “Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to Xenoturbella” (英語). Nature 470 (7333): 255–258. doi:10.1038/nature09676. ISSN 0028-0836. PMC 4025995. PMID 21307940. http://www.nature.com/articles/nature09676. 
  15. ^ 馬渡 (2013), p27-p29
  16. ^ Rouse, Greg W.; Wilson, Nerida G.; Carvajal, Jose I.; Vrijenhoek, Robert C. (2016-02). “New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha” (英語). Nature 530 (7588): 94–97. doi:10.1038/nature16545. ISSN 0028-0836. http://www.nature.com/articles/nature16545. 
  17. ^ Cannon, Johanna Taylor; Vellutini, Bruno Cossermelli; Smith, Julian; Ronquist, Fredrik; Jondelius, Ulf; Hejnol, Andreas (2016-02). “Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa” (英語). Nature 530 (7588): 89–93. doi:10.1038/nature16520. ISSN 0028-0836. http://www.nature.com/articles/nature16520. 
  18. ^ 分類学:珍無腸動物門はNephrozoaの姉妹群である”. ネイチャー (2016年2月4日). 2018年7月20日閲覧。
  19. ^ 藤田(2010), pp.174-175.
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z キャンベル11版 pp.826-827.
  21. ^ a b c d e f キャンベル11版 pp.828-829.
  22. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p キャンベル11版 pp.831-832.
  23. ^ a b c d e f g h i キャンベル11版 pp.829-830.
  24. ^ キャンベル11版 p.826.
  25. ^ a b c d e f g h i j k l m キャンベル11版 pp.832-833
  26. ^ a b c d キャンベル11版 pp.833-834
  27. ^ a b c d e f g h i j k l m n o キャンベル11版 pp.834-836
  28. ^ a b c d e f g h キャンベル11版 pp.837-838
  29. ^ a b c d e f g h i j キャンベル11版 pp.838-841
  30. ^ キャンベル11版 p.841
  31. ^ a b c 日本動物学会2018 pp.98-99.
  32. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u キャンベル11版 pp.841-843
  33. ^ a b c d e f g h i j k キャンベル11版 pp.842-845
  34. ^ a b c d e f g h i j k l キャンベル11版 pp.845-846
  35. ^ a b c d e f g h キャンベル11版 pp.846-847
  36. ^ a b c d e f キャンベル11版 pp.843-845
  37. ^ a b c d e f g h i j k l m n キャンベル11版 pp.848-849.
  38. ^ a b c d キャンベル11版 p.848.
  39. ^ a b c d 日本動物学会2018 pp.102-103.






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