群 (数学) 基本的な概念

群 (数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 02:29 UTC 版)

基本的な概念

位数

G の元の数(基数)のことを位数 (order) という[1]。位数は集合に倣って |G| や #G などの記号で表される。位数が有限な群を有限群という。

部分群

G の空でない部分集合 HG の群演算に関して閉じていて、H の任意の元に対して、逆元が H の元であるとき、この部分集合 HG部分群といい HG または GH と表す。これは空でない部分集合 H の任意の元 a, b に対して ab−1H が成り立つことと同値である[4]

G が群であれば、G および {e}(単位元のみからなる群、単位群)は必ず G の部分群になる。これらを自明な部分群という(単位元のみからなる部分群のみを指す場合もある)。それ以外の部分群は、自明でない部分群あるいは真の部分群と呼ぶ(真部分集合であるような部分群という意味で、真の部分群に単位群を含める場合もある)。

部分群 N が群 G の任意の元 g に対して gNg−1 = N を満たすとき、NG正規部分群といい、

基本的な有限群のクラスがなす階層

G が、G の部分群の有限列 G0, G1, ..., Gn で 2 条件

  • Gi+1/Gi (0 ≤ i < n) は全てアーベル群

を満たすもの(アーベル的正規列)を持つとき、G可解群であるという。

最小位数の非可解群は5次の交代群 A5 である。

奇数位数の有限群はすべて可解であることが、ジョン・G・トンプソンらによって証明されている(ファイト・トンプソンの定理)。トンプソンはこの業績によりフィールズ賞を受けた。

標数 0 の体上において、代数方程式が代数的に可解となることと、その方程式のガロア群が可解群となることは同値である(一般の正標数では同値にならない)。このことが可解群の名の由来である。また、4 次以下の交代群は可解であるのに対し、5 次の交代群 A5 は可解でなく、したがってそれは 「5 次の一般代数方程式はべき根のみによって解くことは出来ない」という命題の証明となる。

また、可解群の定義は次のように述べることもできる(上の定義と同値):

G の部分群 D(G) を

D(G) = ⟨ xyx−1y−1 | x, yG

と定め、H1 = D(G), H2 = D(H1), ... と帰納的に G の部分群 Hi を定めるとき、Hr = {e} となる自然数 r が存在するならば G を可解群と呼ぶ。

一般に、xyx−1y−1xy交換子と呼び、[x, y] であらわす。さらに G の部分群 H, K に対し、[h, k] (hH, kK) の形の元で生成される G の部分群を [H, K] で表し、HK交換子群という。

この記号を用いれば、D(G) = [G, G] であり、これを G交換子群と呼ぶ。D(G) は G特性部分群、したがって特に正規部分群である。すぐに分かるように、D(G) = {e} は G がアーベル群となることに同値である。したがって、剰余群 G/H がアーベル群となるなら HD(G) であり、自然に G/HG/D(G) と見なせるので、G/D(G) は G の剰余アーベル群の中で最大のものになる。よって G/D(G) を G最大剰余アーベル群あるいは Gアーベル化、アーベル商などと呼ぶ。

次の2つの同値な条件を満たす群を冪零群 という。

  • とし、以下 と定めるとき、ある r が存在して となる。
  • G の部分群の列
であって、各 GiG の正規部分群であり、Gi/Gi − 1G/Gi − 1 の中心に含まれるようなものが存在する。

可換群および有限 p 群はべき零群である。また、べき零群は可解群である。

可解性・べき零性の遺伝:べき零群の部分群および剰余群はべき零群である。可解群の部分群および剰余群は可解群である。逆に G の正規部分群 N と剰余群 G/N がともに可解群なら G は可解群である。(べき零群の場合には同様の主張は成り立たない。)

群の直積と半直積

G と群 H に対し、その直積集合 G × H 上に

という積を定めることで群となる。これを群の(外部)直積または構成的直積という。また、群 G がその部分群 H1, H2 の(内部)直積である、あるいは直積に分解されるとは、以下の条件

  1. H1H2G の部分群で G = H1H2 = {h1h2 | h1H1, h2H2} が成り立つ。
  2. H1H2 = {1G}, ただし 1GG の単位元。
  3. H1 の元と H2 の元は可換である。

がすべて満たされることをいう。

で表す。右辺の直積を構成的直積と呼ぶこともある。G の部分群という構造を落として、H1, H2 の外部直積をつくったものと内部直積とは、二つの自然な埋め込み

をそれぞれ同一視することで本質的に同じものであることがわかる。

H と群 N と準同型写像 f: H → Aut(N) が与えられているとき、直積集合 N × H 上に

で積を定めると群となる。これを HNf による半直積といい、

で表す。なお、この群で N は正規部分群となる。群の拡大も参照。


  1. ^ a b Robinson 1996, p. 2
  2. ^ a b バーコフ & マクレーン 1967, 第VI章 4. 抽象群.
  3. ^ McCune, W.W. (1993), “Single axioms for groups and Abelian groups with various operations”, Journal of Automated Reasoning 10: 1–13, doi:10.1007/BF00881862 
  4. ^ Robinson 1996, 1.3.1 (The Subgroup Criterion).
  5. ^ Robinson 1996, 1.6.17 (Cauchy's Theorem).
  6. ^ Robinson 1996, 1.6.16 (Sylow's Theorem).
  7. ^ Doerk & Hawkes 1992, p. 210.
  8. ^ Robinson 1996, 5.2.4.






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