空気マグネシウム電池 空気マグネシウム電池の概要

空気マグネシウム電池

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 00:38 UTC 版)

研究および市販化の技術は MagPower Systems[2]により公開されており、90%の効率および-20 - 55℃の環境下での動作が可能としている[3]

国内では埼玉県産業技術総合センターの栗原英紀が活物質重量比90%以上の実容量での放電に成功している[4]。負極の放電容量は2000Wh/kg。

放電の反応式

  • 正極:
  • 負極:

実用化への課題

  • 自己放電を防ぐために電解液をアルカリ性にすると、マグネシウムの表面と反応して不動態になってしまう。また余分な熱も発生する。
    • 発生する水酸化マグネシウムが電解液に溶解しやすくするための補助剤を加えることで回避する[4](記事上では具体的な物質名は公表されていない)
    • 小濱泰昭率いる東北大学エアロトレイン開発チームはエアロトレインに使った難燃性マグネシウム合金(マグネシウムにカルシウムを混ぜた合金)を海水に浸して電池を作る実験をしたところ、従来よりはるかに長く電気が発生する事を発見した。これはマグネシウムとカルシウムが不動態の原因となる水酸化物イオンを奪い合い続けるため、水酸化物イオンが結びつく相手を変えた瞬間に電極のマグネシウムが溶け出す現象が起こるからである[5]
  • 現状で反応(放電)速度を制限しているのはマグネシウムのイオン化速度ではなく酸素の吸収速度であり、大電流を取り出すためにはより高効率な酸素の吸収を行える空気極の開発が必要である。
  • 近年、非常に高効率の空気極の開発が進み、0.25A/cm2, 0.25W/cm2を実現し、従来のマグネシウム電池の10倍以上の性能が実用化された。[6][7]これは、1mm厚のマグネシウム1枚で、50cmx50cmの面積の電池だけで、625Wを発生するという驚異的なものです。さらには、円盤型のマグネシウムが回転しながら燃料を供給する燃料電池も特許化されている[8]。この電池で有れば、直径60cm、高さ50cmで36kWhを実現することになる。電池重量もわずか24kgで、リチウムイオン電池の1/10と予測されている。

  1. ^ Messina, John (2010年4月23日). “Magnesium: Alternative Power Source”. 2010年6月7日閲覧。
  2. ^ MagPower Systems
  3. ^ MAFC verses HFC (Hydrogen Fuel Cell)”. 2010年6月7日閲覧。
  4. ^ a b c WIRED VISION. “次世代電池レースで脚光を浴び始めた「マグネシウム電池」”. 2010年6月9日閲覧。
  5. ^ サイエンスZERO 2013年3月10日放送内容より
  6. ^ “無尽蔵な原料で次世代電池”. 毎日新聞. (2022年5月12日) 
  7. ^ "ホントに使える”マグネシウム電池が登場 次世代バッテリーの本命は循環社会への切り札”. 2022年7月23日閲覧。
  8. ^ 電気自動車”. 2022年7月23日閲覧。
  9. ^ T.Yabe et.al. (2006). “Demonstrated fossil-fuel-free energy cycle using magnesium and laser”. Applied Physics Letters 89: 261107. 
  10. ^ “Heroes of the Environment. (Scientists, Innovators)”. TIME. (2009年10月5日) 
  11. ^ 『マグネシウム文明論-石油に代わる新エネルギー資源』PHP新書、1月5日 2010。 
  12. ^ Magnesium - Key Material to Energy and Environment. LAMBERT Academic Publishing. (2016) 
  13. ^ a b 世界初「高性能マグネシウム燃料電池」を共同開発(東北大学) (PDF)
  14. ^ Murray,J.P., Steinfeld,A. and Fltcher,E.A., "Energy" 20, 1995, p.695
  15. ^ Abu-Hamed, Karni,J. and Epstein,M., "Sol. Energy" 81, 2007, p.93
  16. ^ a b c 矢部他、"太陽光レーザーが拓く新エネルギー"、日経サイエンス2007年11月号,p.30-40
  17. ^ Mohamed,M.S., et.al., Journal of Applied Physics, vol.104, (2008)113110
  18. ^ Liao,S.H., et.al.,Journal of Applied Physics,vol.109, (2011) 013103
  19. ^ 矢部他,"太陽エネルギーと蓄積", 学術月報 2006年2月号Vol.59-2 p.125-129
  20. ^ “マグネシウム循環社会構想”. https://www.youtube.com/watch?v=NCAd2LRoyfo 
  21. ^ 特開2012-15013号公報
  22. ^ "夢のマグネシウム電池ってなんだ!?"、プレイボーイ2013年3月11日号p.134-135
  23. ^ “マグネシウム電池搭載 3輪EV、100キロ走破”. 河北新報. (2012年12月12日). http://www.kahoku.co.jp/news/2012/12/20121212t72015.htm 2012年12月17日閲覧。 
  24. ^ タンデムstyle2013年5月春の特大号 ASIN: B00BPWK6RY 2013年3月23日発売
  25. ^ 軽金属通信 2013年1月18日 第4304号"共に世界初、日本はいわき・仙台市間百km"
  26. ^ a b “新型電池、実用化にメド 携帯電話なら1カ月 東工大など、マグネシウムを電極に”. 日本経済新聞. (2013年12月21日). http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG20062_R21C13A2CR8000/ 2014年1月18日閲覧。 
  27. ^ a b “インタビュー:マグネシウム電池の開発に本腰=藤倉ゴム常務”. ロイター. (2014年2月5日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA1404O20140205?pageNumber=1&virtualBrandChannel=14173 2014年1月18日閲覧。 
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  29. ^ a b “シート1枚でスマホ充電可能 マグネシウム電池製品化へ”. 47NEWS. (2014年6月10日). http://www.47news.jp/CN/201406/CN2014061001002034.html 2014年8月10日閲覧。 
  30. ^ a b “矢部東工大教授が会長のベンチャー㈱エネルギー創成循環がマグネシウム電池開発 販売へ”. ジェイシーネット. (2014年6月10日). http://n-seikei.jp/2014/06/post-22472.html 2014年8月10日閲覧。 
  31. ^ “スマホを2グラムのシートで充電できるマグネシウム電池”. https://www.youtube.com/watch?v=nu8EjyZKTmc&feature=youtu.be 
  32. ^ a b “低価格で高性能のマグネシウム電池を開発 京大など”. 朝日新聞. (2014年7月11日). http://www.asahi.com/articles/ASG7C4S2KG7CPLBJ001.html 2015年6月20日閲覧。 
  33. ^ 日本経済新聞2014年7月29日
  34. ^ “古河電池が4日連続ストップ高 水で発電する電池に引き続き注目”. 産経新聞. (2014年9月3日). http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140903/biz14090318560017-n1.htm 2014年9月4日閲覧。 
  35. ^ a b “古河電池、マグネシウム空気電池「マグボックス」を開発-非常時に水・海水で発電”. 日刊工業新聞. (2014年9月3日). http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0320140903bfau.html 2014年9月4日閲覧。 
  36. ^ “「水を注ぐ電池」の古河電池株、5日連続ストップ高ならず 一時あと30円”. 産経新聞. (2014年9月4日). http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140904/biz14090415090009-n1.htm 2014年9月7日閲覧。 
  37. ^ “ブログ:マグネシウム電池は「死の谷」越えるか”. トムソン・ロイター. (2015年6月5日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0OL02Z20150605 2015年6月20日閲覧。 
  38. ^ マグボックス公式サイト
  39. ^ a b “マグネシウム電池量産へ 中国で工場建設計画”. 産経新聞. (2015年12月18日). https://www.sankei.com/photo/story/news/151218/sty1512180006-n1.html 2016年1月5日閲覧。 
  40. ^ 日経産業新聞 2017年1月27日「リチウム後継」実用段階へ
  41. ^ a b 京都大学公式サイト>研究>お知らせ>「高エネルギー密度・高安全性・低コスト二次電池の開発に成功 -リチウムからマグネシウム金属へ-」
  42. ^ a b c “京大、マグネシウムで2次電池 リチウム使わず”. 日本経済新聞. (2014年8月11日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG0900N_R10C14A8TJM000/ 2014年8月15日閲覧。 
  43. ^ a b c “リチウムイオン電池の代替、マグネシウムで実用化へ ホンダなど”. 日本経済新聞. (2016年10月9日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB08H12_Y6A001C1MM8000/ 2016年10月9日閲覧。 


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