秋吉台 秋吉台の概要

秋吉台

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/08/24 06:06 UTC 版)

秋吉台
秋吉台の山焼き
秋吉台最北部の烏帽子岳を望む

秋吉台(あきよしだい)は山口県美祢市中・東部に広がる日本最大のカルスト台地である。北東方向に約16km、北西方向に約6kmの広がりを有し、台地上の総面積54km²、石灰岩の分布(沖積面下の潜在部を含む)総面積93km2、台地面の標高180〜420mである。

厚東川によって東西二つの台地(東台と西台)に分けられ、東側地域が狭義の秋吉台(特別天然記念物国定公園)である。

概要

地表には無数の石灰岩柱とともに多数のドリーネ(擂鉢穴)を有するカッレンフェルトが発達し、地下には秋芳洞大正洞景清穴、中尾洞など、400を超える鍾乳洞がある(近年も新しい洞窟が発見されている)。カルスト台地上の降水は全て地下に浸透し、秋芳洞をはじめとする多くの洞窟地下水系を通じ、東台と西台に降る雨の大半が厚東川に排出する。

東台の主部は広大な草原地となっており、昭和中頃まではドリーネ耕作や飼料用草刈り場として維持するため、春先に山焼きが広く行われてい[1]たが、近年は草原の景観維持の目的に変わり毎年2月に実施されている。しかし地域の高齢化、過疎化による労力不足から次第に実施面積が縮小しつつあり、草原維持の面で問題が生じつつある。台上東部の小盆地に集落(長登)がある。東台とは外れて小面積の猪出台と中台、八久保台があるが、広い意味で東台と総称される。

西台の大半は樹林地で、台地内のカルスト凹地3ヶ所に集落(江原、入見、奥河原)がある。石灰石資源の鉱区として数カ所で採掘が大きく進んでいる。西台の本体と離れて伊佐台があるが、ふつう西台と総称される。

秋吉台のカルスト台地はひとつの石灰岩の大地塊からなるが、その厚さは西台の西端で50~200m、東台の東北端で1000m以上に達することがボーリングデータから知られている[2]

東台には秋吉台科学博物館や秋吉台エコミュージアム、長登銅山文化交流館、秋吉台家族旅行村、秋吉台少年自然の家、秋吉台ユースホステル秋吉台道路など、学術研究や観光用の施設が数多く整備されている。西台の麓の美祢市街地には美祢市歴史民俗資料館、美祢市化石館がある。

沿革

  • 7〜10世紀の頃、秋吉台東部(美祢市美東町長登地区)でわが国最古の銅山、長登銅山が開発され、精錬が行われた。長登の地名は、奈良の大仏鋳造に本地産の銅が献納されたことをいう「奈良登り」の訛と伝えられている。
    • 以後、中世〜近代を通じて本地区にはいくつもの鉱山が稼行されたが、1960年坑道の出水により操業が停止され、翌々'62年長登銅山としての終焉を迎えた。
  • 10世紀に成立した「延喜式」の付録「和名異考」中に長門国美祢郡に石薬としての鍾乳石を産することが記されている[3]
  • 1727〜1729年の地下上申絵図や1761〜1763年の宝暦小村絵図から、台上でドリーネ耕作(窪畑)があったことがうかがえる[4]
  • 1844年頃の防長風土注進案に秋吉台の名がある。滝穴(今の秋芳洞)の洞内見物に関する記述もみられる。
  • 1909年、観光洞として滝穴の開発が行われた。
  • 1885年から1945年まで東台の一部が旧日本軍の演習地(大田演習場)となった。大田(おおだ)演習場は終戦後ニュージーランド軍、米軍による強制接収と射撃演習地への利用が行われ、一時は自衛隊の使用などを経て、1955年にはアメリカ軍による爆撃演習地使用の申し入れがあった。しかし強い反対運動が起こり、申し入れは翌年撤回され、同演習場は1957年美東町に返還された[5]
  • 1922年、滝穴景清穴天然記念物に指定された。
  • 1923年、大正洞と中尾洞が天然記念物に指定された。
  • 1923年、小沢儀明が日本初の大規模な横臥褶曲構造説を秋吉台で提唱した。。
  • 1928年に地獄台が天然記念物に、1955年に東台の大半が国定公園秋吉台国定公園)に、また1961年に東台の主部が天然記念物に(1958.2.29 文化財保護委員会決定)、1964年には特別天然記念物に指定された。
  • 1955年に宇部興産(株)伊佐セメント工場が、1959年に小野田セメント(株)重安鉱業所が、1965年には住友セメント(株)秋芳鉱山が、それぞれ西台においてセメント向けに大規模な石灰石の採掘事業を開始した。
  • 1959年、秋芳町立秋吉台科学博物館が設立された。
  • 1963年、第18回国民体育大会山岳競技が秋吉台とその周辺の山々で開催された。
  • 1970年、秋吉台道路が開通した。
  • 1991年、一部(天然記念物に指定されていない地域のうち40ヘクタール)を3か年で牧畜用地に改造する工事が始まり問題となる[6]
  • 2005年、3つの鍾乳洞、秋芳洞、景清洞、大正洞が秋吉台地下水系としてラムサール条約登録湿地となった。
  • 2007年、秋芳洞とともに日本の地質百選に選定された。

地学的成り立ち

約3億5千万年前(古生代石炭紀)、赤道付近のパンサラッサ(古太平洋)上にホットスポット起源のいくつもの海底火山が生じ、海面近くの頂上に珊瑚礁が形成された。これらの海山・珊瑚礁群は秋吉海山列と名付けられているが、秋吉台をはじめとする西南日本内帯のカルスト台地(ほかに帝釈台、阿哲台平尾台など)のもととなり、最終的に厚さ500mから1000mの石灰岩層が堆積した。これらはプレート運動により北西へ移動し、海溝域で遠洋/深海成の地層と共に今のユーラシア大陸の一部に次々に付加し、海溝内堆積物中に埋もれた(約2億6千万年前)[7]。このとき、珊瑚礁であった部分が現在のカルスト台地の石灰岩層をつくっている。

付加体として地下深く(約10km?)に埋もれていく海山・珊瑚礁群は、プレートから剥ぎ取られる過程で横圧力によって大きく横臥褶曲し、地層の上下が逆転する地質構造をつくるとともに、2億3千万年前には押し上げられ、山脈の一部に石灰岩層が露出した。この一連の地殻変動を秋吉造山運動と呼んでいる。地層の逆転構造は1923年に小沢儀明が発見したが、その後も非逆転褶曲説や付加に伴う石灰岩体崩壊説など、複数の解釈が提唱され、逆転構造の細部については定説を見るに至っていない。

第三紀以前(約500万年以前)のカルスト地形の様子はよく分かっていないが、次のような歴史をへて、多数のドリーネ鍾乳洞が形成され、現在のようになった[8]

  1. 約2000万年前、低位の準平原形成。現在の秋吉台上を被っている赤色土中には、円磨された石英砂粒が広く普遍的に含有され、準平原時の堆積物に由来するものと推定されている[9]
  2. 約500万年前、標高600mの隆起準平原化。
  3. 370万年前に標高300mまで古厚東川の侵食が進み、準平原地形から台地地形へ変化。
  4. 110万年前に標高100mまで厚東川の侵食が進む。同時に秋吉台上も溶食によって次第に低くなり、今の秋吉台に近くなった。秋芳洞の形成が開始した。
  5. 8〜9万年前に阿蘇カルデラの巨大噴火(正確には噴火の結果、カルデラができた)によって高温の火砕流が萩近くまで達し、秋吉台も大量の火山灰に広く被われた。
  6. 約1万年前にかけて標高45mまで厚東川の侵食が進んだ後、沖積層の厚い堆積によって厚東川は現標高80m付近を流れるようになる。

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  1. ^ “山口 秋吉台で春を前に山焼き”. NHKニュース (日本放送協会). (2013年2月23日). オリジナル2013年2月24日時点によるアーカイブ。. http://megalodon.jp/2013-0224-1025-21/www3.nhk.or.jp/news/html/20130223/t10015729451000.html 2013年2月24日閲覧。 
  2. ^ 山口地学会誌, no.48, 2002.
  3. ^ 秋吉台と鍾乳洞探検, 1992. 山口ケイビングクラブ
  4. ^ カルスト その環境と人びととのかかわり, 1996. 大明堂
  5. ^ 秋芳町史, 1963
  6. ^ 長谷川熙, 太田順一, "秋吉台に突然破壊の轟音", AERA, 1992.4.21, p.6-11
  7. ^ 日本列島の誕生, 1990. 岩波新書
  8. ^ 哺乳類科学, 49巻1号, 2009. 日本哺乳類学会
  9. ^ 山口地学会誌, no.64, 2010.
  10. ^ 秋吉台の自然観察, 1984. 秋吉台科学博物館
  11. ^ 秋芳洞の自然観察, 1991. 秋吉台科学博物館
  12. ^ 美祢の化石, 1981. 美祢市立歴史民俗資料館
  13. ^ 秋吉台の自然観察, 1984. 秋吉台科学博物館
  14. ^ 秋吉台カルスト, 1953. 秋吉村
  15. ^ 秋吉台科学博物館報告, no.1, 1961. 秋吉台科学博物館
  16. ^ 山口ケイビングクラブ会報, no.29, 1994. 秋吉台科学博物館


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