神戸ハーバーランド 神戸ハーバーランドの概要

神戸ハーバーランド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 22:52 UTC 版)

ガス灯通り

概要

1982年昭和57年)11月に貨物駅としての営業を終了した旧国鉄湊川貨物駅[1]や、川崎製鉄(現在のJFEホールディングス)・川崎重工業といった沿岸一帯の工場の跡地約23ha(ヘクタール)[1]1985年(昭和60年)、再開発に着手し、1992年平成4年)9月に街開きした市街地である[1]

東端は大阪湾に面し、従来工場や倉庫など港湾施設で占拠されていて一般市民が近づけなかった臨海部を市民に開放する狙いを持ったウォーターフロントが開発された[1]

当時、政府が奨励していた民間活力導入の方針に沿って神戸市が購入した土地で民間企業が事業を展開する方式で開発が進められ[1]、総事業費は神戸市と民間企業合せて3000億円以上に上った[3]

1981年(昭和56年)に竣工されたポートアイランドと並ぶ臨海部の都心的な開発事例である[4]

国内では当時としては先進的な方式であった事もあり、1993年(平成5年)度に日本都市計画学会から『石川賞』を受賞する[5]と共に国土交通省の『都市景観100選』にも選定された[6]

対岸の中突堤と共に神戸の玄関口の一つとして、神戸港高浜旅客ターミナルが設けられている[7]。また、ターミナルの南側には造船業大手の川崎造船三菱重工業の各造船所がある。

鉄道の便は、地下街のデュオこうべが当地を起点に北(山側)に向かって延び、山陽本線JR神戸線)の神戸駅神戸市営地下鉄海岸線ハーバーランド駅神戸高速鉄道東西線高速神戸駅など複数路線の駅が利用できる[8]

ハーバーランドと対岸のメリケンパーク

対岸のメリケンパーク側に神戸ポートタワー神戸海洋博物館といった観光施設が揃うのに対し、ハーバーランド側には神戸モザイクなどの複合商業施設が林立し、顧客の獲得競争が日々繰り広げられている。これらは主にハーバーランド全体の東側に集中しており、住宅街は当初は西側が中心となっていた(神戸市内の他の郊外型ニュータウンと同様の構成)。

街開きした1992年に神戸西武神戸阪急の百貨店2店と大手百貨店髙島屋大阪ガスと共同で開発・運営するファッションビルオーガスタプラザ、地元神戸を創業の地とする大手スーパーダイエーや当時大手家電量販店の一つだった星電社、阪急百貨店などが共同で出資して開発したオープンエアの複合商業施設神戸モザイクなど、地元関西資本を中心とした大型店がほぼ一斉に開業して、一気に店舗総面積は約120,000m2の大規模な商業集積が誕生し[1]、横浜市のウォーターフロント開発地区である東のみなとみらい21と共に、西の「ハーバーランド」と呼ばれて注目を集めた[9]

街全体で約5,000台の駐車場があるため、家族連れが車で来やすい関係で都心部としては子育て中の家族が多く、大きなブロックごとに整然と整備されているため、都心にありながら郊外的な雰囲気も持つ街となっている[1]

神戸駅南口から望むハーバーランドのビル群

また、商業施設とオフィスや住宅などが混在する複合都市としての[10]新都心として開発した[11]ため、川崎重工業本社兵庫県神戸ハーバーランド庁舎[12]などの入る神戸クリスタルタワーの他、プロメナ神戸(開業時はオーガスタプラザ)に併設された大阪ガスの神戸地区のオフィスなどが入る神戸ガスビル[13]、ホテルクラウンパレス神戸(開業時はホテルニューオータニ神戸ハーバーランド)やファミリオ(開業時は神戸西武)に併設された神戸ハーバーランドセンタービルHa・Reキャナルガーデンなどが併設された神戸ハーバーランドダイヤニッセイビル神戸新聞社とその関連企業などの入居する神戸情報文化ビルなどのオフィスビルも数多くある。

兵庫県神戸ハーバーランド庁舎[12]兵庫県立神戸生活創造センター[14]などの兵庫県の施設や、神戸市産業振興センター[15]神戸市総合児童センター(こべっこランド)[16]などの神戸市の施設など公共施設も多数設置されている。

問題点

神戸駅元町駅など、周辺の最寄り駅や三宮からの歩行者の通り道が阪神高速3号神戸線国道2号浜手バイパスを含む)で分断されているため、神戸駅からの場合、地下街のデュオ神戸を通るか、遠回りして2階デッキを渡らなければならず[17]、主要駅や繁華街と物理的には近い抜群の立地に見えながらも、買い物客に「立ち寄りにくさ」を感じさせて足を延ばしてもらい難い施設構造となっていて、集客力が弱くなっている[3]

建設された施設は大型の商業施設ばかりのため、各店舗が商業施設内の通路に面して配置されたため街路に向かって並んでおらず、新設された街路があるにもかかわらず人が歩かず、ハーバーランドの街全体へ人が流れないという問題点もある[18]

日々の買い物客より見学や観光客が多いといわれる地区の特性による売り上げにつながる集客力の弱さなども、商業施設の運営を困難にしている[19]

さらに、大規模な再開発で出店に資金力を要したため、他地区にも展開している大型店が集積する形となり、当地区ならではのオリジナル商品やサービス・ブランド力に欠ける面も持っていた[1]


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o “News ANGLE2002 神戸ハーバーランド開業10年”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2002年11月1日) 
  2. ^ 例として、当地の最寄り駅の一つ・神戸市営地下鉄海岸線の「ハーバーランド駅」がある。
  3. ^ a b 黒川絵理 (2012年3月11日). “イオン中心に再開発”. 読売新聞 (読売新聞社) 
  4. ^ 神戸都市問題研究所編『ウォーターフロント開発の理論と実践 (都市政策論集, 第15集)』神戸都市問題研究所,勁草書房、1993年1月。 
  5. ^ 神戸市都市計画総局計画部地域支援室. “旧居留地連絡協議会「石川賞」受賞”. こうべまちづくりセンターニュース 平成19年8月号(第120号) (こうべまちづくりセンター) (2007-8). 
  6. ^ 全国初 流通科学大がソフトバンクモバイルと「ふらっと案内」を活用した地域活性化社会実験を開始 (Report). 流通科学大学. 30 March 2010.
  7. ^ 直江純 (2005年6月6日). “潮風に船乗り気分 日本丸見学会に6300人”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  8. ^ 屋内測位普及発展に関する調査研究報告書 (Report). 財団法人ニューメディア開発協会. 2009-3. {{cite report}}: |date=の日付が不正です。 (説明)
  9. ^ a b c d e 福山絵里子 (2010年9月25日). “テナント撤退続く神戸ハーバーランド、「住」で再生-高層マンション開発進む(街が動く)”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社) 
  10. ^ a b c “潮香る街 神戸ハーバーランド10年 上.玄関口”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2002年10月22日) 
  11. ^ 末永陽子 (2011年10月28日). “「にぎわい復活」へ期待 神戸ハーバーランド”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  12. ^ a b c “「イーブン保育付きライブラリー」の参加者を募集(7月3日、8月7日、9月11日)”. 兵庫県少子対策本部ニュース 子ども未来通信7月号 (兵庫県少子対策本部). (2008年7月) 
  13. ^ “オーガスタプラザ売却 大阪ガス”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2002年5月11日) 
  14. ^ a b “昭和40年代の三宮を「路面電車の見た神戸」展”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2002年11月13日) 
  15. ^ a b 高見雄樹 (2012年4月27日). “兵庫県内のIT業界に特化 就職セミナー初開催”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  16. ^ a b 小林伸哉 (2005年8月12日). “ハーバーランドでお化け屋敷 学生企画”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  17. ^ 石沢菜々子 (2012年2月28日). “歩行者導線見直しへ 神戸ハーバーランド20年”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  18. ^ 高森亮 (2002年10月24日). “潮香る街 神戸ハーバーランド10年 下.連携”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  19. ^ 藤本陽子 (2002年5月11日). “モルガンに委ねる再生”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  20. ^ a b c d 末永陽子 (2012年3月8日). “11日閉店、神戸阪急の後継店舗 子育て世代に照準”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  21. ^ “奮闘ダイエー一冊につづる 初動の重要性紹介”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2005年1月15日) 
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  23. ^ a b 小林由佳 (2004年12月4日). “家族向けで勝負 ビーズキス、神戸で開業”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  24. ^ a b c “神戸ハーバーサーカス、月内にも大半閉鎖 運営会社撤退”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2004年3月11日) 
  25. ^ “ソフマップがダイエーに移転”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2003年7月11日) 
  26. ^ a b “お菓子の国にようこそ 神戸に「ビーズキス」開業”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2004年12月2日) 
  27. ^ “神戸に新名所「ビーズキス」オープン にぎわい再び”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2004年12月3日) 
  28. ^ 高見雄樹 (2007年10月27日). “神戸スイーツハーバー、11月に閉鎖 観光に打撃”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  29. ^ “神戸ハーバーランドの「トイザらス」 来月閉鎖へ”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2007年12月20日) 
  30. ^ a b 西井由比子 (2008年3月25日). “ビーズキス「ファミリオ」に改称、家族向けに”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  31. ^ a b 西井由比子 (2008年4月25日). “神戸ハーバーランドに新施設「ファミリオ」開店”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
  32. ^ “ファミリオのテナント大半が撤退 ハーバーランド”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2011年2月1日) 
  33. ^ “オーガスタ 9月解散を正式発表 高島屋”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2002年6月14日) 
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  47. ^ a b “旧ニューオータニ神戸棟などHMI買収 ハーバーランド活性化に期待感”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2011年10月5日) 
  48. ^ 石沢菜々子 (2011年10月4日). “神戸・旧ニューオータニの施設取得 HMIが正式発表”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
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  51. ^ [1] 「神戸ハーバーランド商業施設 新名称決定のお知らせ」三菱倉庫株式会社 ニュースリリース]
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  53. ^ 井垣和子 (2012年6月15日). “アンパンマンミュージアム開業へ 神戸ハーバーランド”. 神戸新聞 (神戸新聞社) 
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  55. ^ 登記上の本社は西神ニュータウンにある印刷所「神戸新聞製作センター」に置いていたが、実質的な本社機能は当地にあった。
  56. ^ “SOHOプラザ創業準備オフィス ハーバーランドに開設”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2001年5月3日) 
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  59. ^ “阪神大震災で損傷、12年間開かずの跳ね橋が開閉へ”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2008年3月14日) 
  60. ^ “記念イベントを開催 神戸ハーバーランド10周年”. 神戸新聞 (神戸新聞社). (2002年10月4日) 
  61. ^ JR神戸駅前における放送局とホテルの複合開発「神戸駅前JUSTスクエア」竣工”. NTT都市開発 (2020年12月24日).
  62. ^ そごうに関しても阪神・淡路大震災で神戸店の一部が崩壊した後、ハーバーランド進出を持ち掛けられたが、副社長だった山田恭一が否定している(神戸新聞1995年2月6日)
  63. ^ 神戸港に海上ロープウエー構想 21年度調査へ”. 神戸新聞NEXT (2021年1月3日). 2021年2月7日閲覧。
  64. ^ 神戸港海上に都市型ロープウェイ建設構想が遂に浮上! 21年度に調査検討実施へ”. こべるん (2021年1月4日). 2021年2月7日閲覧。


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