社会主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 15:20 UTC 版)
批評・批判
社会主義に対しては、多くの立場から多くの批評や批判がされてきている。ただしその内容の多くは、社会主義全般に対する批判よりも、特にマルクス主義(レーニン主義、スターリニズム、各国共産党など)に対する批判である場合がある。共産主義に反対する、いわゆる「反共」の主張は、共産主義以外の社会主義の立場によってなされる場合も多い。
以下では主な政治思想の立場からの代表的な批評・批判を記載する。
- アナキズムは権力が全廃された社会を目指す立場から、特にマルクス主義やレーニン主義などのプロレタリア独裁や前衛党、あるいは既存の社会主義国の国家主義や中央集権的な官僚制などを権威主義であると批判している。ただし社会的無政府主義は社会主義との共通点が多く、逆に個人主義的無政府主義はリバタリアニズムとの共通点が多い。
- 自由主義は、基本的には自由市場を基本とした自由主義経済である資本主義を支持する。しかし社会的公正を重視するリベラルとも呼ばれる社会自由主義は、特に民主社会主義との共通点が多い。逆にレッセフェールや個人主義を重視するリバタリアニズムや新自由主義は、あらゆる社会主義を私的所有権を侵害する集産主義であるとして反対している。
- 多くの保守主義者は、伝統的な社会階層や文化の継続性を重視する立場から、啓蒙主義的な近代化や平等主義を進める社会主義への反発が存在している。多くのナショナリストやファシストは、国家や民族の独立性と団結を重視する立場から、特にマルクス主義の階級闘争や国際主義などへの反発が存在している。多くの宗教の立場からは、多くの社会主義が持つ啓蒙主義的な近代化への嫌悪や、特にマルクス主義の唯物論や唯物史観への反発が存在する。
- そのほか、多くの民主主義や人権、平和、環境などの立場から、特にマルクス主義やボリシェヴィキズムのプロレタリア独裁や一党独裁、あるいは既存の社会主義国に見られた大量虐殺、粛清、秘密警察、検閲、強制収容所などを含む、全体主義とも呼ばれる大規模な基本的人権の侵害や軍国主義、更にはノーメンクラトゥーラなどの特権階級による官僚主義や汚職、産業優先による環境への軽視などへ反発が存在する。
注釈
- ^ a b 生産手段の共有化は社会主義に見られる大きな特徴であり、必須の条件のように語られることも多いが、後出のアンリ・ド・サン=シモンのようにそれを掲げていない思想家の例もある。エミール・デュルケームは「社会主義とは、結局のところ経済生活をばそれを規制する中心的機関に結びつけることに帰着するのではないか」と述べている[2]。この言葉に従うならば、社会を組織化することにより人々を支える制度は、例えば富の再分配だけであっても、社会主義の範疇に含めることができる。
- ^ スターリンは自らの立場を「マルクス・レーニン主義」と呼んだ。そのためスターリン主義は他称である。
- ^ 非公式にはモルドバの一部である沿ドニエストル共和国がロシアの影響下にて事実上のソ連型社会主義を維持している。ただし、国際社会において、同国を承認している国は存在しない。
出典
- ^ a b c The Oxford English Dictionary (1970年) C - 701p
- ^ 『社会主義およびサン‐シモン』邦訳:森博 恒星社厚生閣 ISBN 4-769-90190-9
- ^ “共産主義とは? 社会主義・資本主義との違いを子どもにも分かりやすく説明 | HugKum(はぐくむ)”. hugkum.sho.jp (2020年10月13日). 2022年7月8日閲覧。
- ^ 吉村正和 著 『心霊の文化史—スピリチュアルな英国近代』河出書房新社、2010年
- ^ 稲垣伸一 著「理想国家建設の夢-ユートピア思想・スピリチュアリズムと社会改革運動」 實踐英文學 63, 89-104, 2011-02-28
- ^ Kovel, J.; Löwy, M. (2001). An ecosocialist manifesto
- ^ 日本共産党綱領
社会主義と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- 社会主義のページへのリンク