真空管 特徴

真空管

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/08 20:34 UTC 版)

特徴

真空管の役割は21世紀になってほぼ終焉しているが、高周波大電力(10GHz・1kW以上)の用途では2013年現在でも真空管が用いられている。主な特長・長所は次の通りである。

  • キャリアが自由空間中の電子であるため、キャリア移動度が高い。
  • 強電界が加えられるのが真空中であるため、構造によっては高い耐電圧を確保できる。
  • 構造が単純で、絶縁破壊等による不可逆的な損傷が少ない(ごく短時間なら定格を多少超えても破損しにくい)。

一方で、短所は次の通りである。

  • 素子(特に内部のフィラメントやヒータ)の消費電力が大きく寿命が短い(通常の製品で1000時間程度)。
  • トランジスタに比べて素子単価が高い。
  • 機械的な振動や衝撃に弱い。

動作原理

電極構造と動作

二極真空管による整流作用

二極真空管の模式図

二極真空管(二極管)はガラス管の中に、フィラメント電気抵抗の比較的大きい電線で、両端を外部に引き出してある)と、フィラメントに向き合う板状の電極(アノード、形状からプレートと呼ぶ)を封入したものである。

真空中でフィラメント電極(陰極、カソード)に電流を流すと加熱され、熱電子が放出される。このとき、フィラメントを基準にしてプレート(陽極、アノード)側に正電圧を与えると、放出された熱電子は正電荷に引かれ陽極に向かって飛ぶ。この結果フィラメントからプレートに向けて電子の流れが生じる。すなわち、プレートからフィラメントに向かって電流が流れることになる。また、プレートに負電圧を与えると熱電子は負電荷に反発してプレートには達しない。従って、二極管はプレートからフィラメントに向かう電流のみ通すことになり、整流効果が得られる。

模式図では電極を並列に書いてあるが、実際の製品ではフィラメントを取り囲むような、筒状のプレートをもった構造が普通である。

二極真空管はダイオードと呼ばれたが、今日では同じ機能を持った半導体素子を「半導体ダイオード」、あるいは単にダイオードと呼ぶのが普通である。電源整流用のものはプレート電流が大きく、発熱も大きくなることから寿命が短いことが多い。機器により、立ち上がり時間、突入電流の問題はあるが、半導体ダイオードに置き換えることが可能なため、自作アンプや真空管ラジオの補修等で、整流管のみ半導体に置き換えることも行われている。

自動車用電球には前照灯や制動灯のようにダブルフィラメントのものがある。このうちの一方のフィラメントのみが切れた状態のものは、残ったフィラメントをヒーター、切れたほうの電極をプレートと見れば二極真空管と同等の構造を有していることとなる。内部に不活性ガスが封入され真空でないものはうまくいかないが、ガス圧が極めて低いものはフィラメントに適当な電流を流して整流作用を観察できる場合がある。

三極真空管による増幅作用

三極真空管の模式図

二極管のフィラメント(陰極)とプレート(陽極)の間に粗い網状の電極(形状からグリッドと呼ぶ)を配置する。この三極真空管におけるグリッドは、陰極に対するその電位を変化させることによって、陰極-陽極間の加速電界を増強または抑制させる役割を持っている。二極管と同様に、プレートに対して正電圧が加えられると、陰極から放出された熱電子がプレートに到達する。そのとき一部の熱電子はグリッドに引き込まれるが、多くの電子はグリッドを通り抜ける。以上により、グリッドに電圧の変化(入力信号)を与え、プレートから電流(出力信号)を取り出すことで、信号の増幅が可能になる。

四極真空管、五極真空管

三極真空管の増幅率を高めるには、グリッドを細かくして多くの電子を捕捉したり、グリッドをカソードに接近させて電子の軌道への影響を大きくしたりする方法が考えられる。いずれも高いプレート電圧が必要となるため、低いプレート電圧で用いるにはグリッドとプレートの間に第二グリッド(スクリーングリッド)を設け、正電圧を加える。これを四極真空管と呼ぶ。第二グリッドはプレートとグリッド間を静電遮蔽し、浮遊容量を小さくする作用もある。

しかし、四極真空管は安定に動作しないことが多い。それはカソードからプレートに到達し、プレートから反射放出された二次電子が第二グリッドに吸収されて電位が変化し、全体の増幅特性に影響するためである。その問題を解決するため、第二グリッドとプレートの間に第三グリッド(サプレッサグリッド)を設け、カソードまたはアースに接続したものを五極真空管と呼ぶ。プレートから反射放出された電子は第三グリッドによって再度反発されるため、二次電子の影響が殆ど無い安定な動作が可能となる。

また、四極真空管の第一グリッドと第二グリッドの位置を、電子が一点に収束するよう調整することでも、二次電子の影響を減少させることができる。これをビーム真空管と呼び、高効率の動作が可能なため電力増幅に多く用いられる(但し、動作時のプレート電流が少ない場合には二次電子の影響が少なからず存在し、特性の暴れが避けられない)。

陰極加熱方法

陰極の加熱方法について分類した呼び名に直熱管と傍熱管がある。傍熱管のほうが長所が多く、傍熱管の発明以降は一般的に傍熱管が広く用いられた。

直熱管
  • フィラメントと陰極(カソード)を兼用した電子管。
  • フィラメント表面から熱電子が放出される。
  • 熱電子放出効率はフィラメント材料により決まる。
  • フィラメントに通電すると、ガラス管の場合、フィラメントが光る様子が容易に観察できる。
  • 傍熱管に比べ、電源投入から動作開始までの予熱時間が短い。
  • 陰極の直流電位はフィラメント電源の直流電位と同電位であり、回路設計上の制約となる。
  • フィラメント電源が交流電源の場合、出力に商用電源周波数ノイズが現れる。オーディオ回路では、このハムノイズを減少させるためフィラメント回路にハム・バランサを用いることがある。
過去のハム・バランサの例
傍熱管
  • 筒状の金属管を陰極(カソード)とし、その内側にカソードと絶縁した加熱用の電線(ヒーター)を内蔵する電子管。
  • ヒーターで熱せられたカソードの表面から熱電子が放出される。
  • カソード材質の選択自由度が生まれた結果、効率的に熱電子を放出できるようになった。
  • ヒーターに通電すると、ガラス管の場合、カソードの端部中心からヒーターが暗赤色に光る様子が観察できるが直熱管の場合ほど明るくない。
  • 直熱管に比べ、電源投入から動作開始までの予熱時間が長い。
  • 陰極(カソード)とヒーター回路が分離されているので、陰極(カソード)の直流電位に対する自由度が大きくなり、回路設計の自由度を増すことができる。
  • ヒータ電源が交流電源の場合でも、出力には直熱管ほどハムノイズは出ない。

代表的な真空管

  • 整流用二極管 : 12F(K)、81、35W4、25M-K15、5M-K9、19A3、5G-K3、80BK、80HK、36AM3、35Z5
  • 整流用双二極管 : 80、5Z3、5AR4、5U4G(B)、6X4、5Y3、83、82、5G-K18、5G-K20、5G-K22
  • 検波用双二極管 : 6AL5
  • マジックアイ : 6E5、6M-E5、6M-E10、1629、1N3、1H3
  • 電圧増幅用三極管 : 6C4、76、6J5、6C5、6J4、WE101D、102D、104D、3A/167M
  • 検波用二極電圧増幅用三極管 : 75、6Z-DH3、6Z-DH3A
  • 検波用双二極電圧増幅用三極管 : 6AT6、6AV6、6BF6、6SQ7、6SR7
  • 電圧増幅用双三極管 : 12AX7、12AU7、12AT7、12BH7A、6DJ8、6SN7、6SL7、6240G、12R-LL3、12R-HH14、5678、6350、6414、30MC、109C、3A5
  • 電力増幅用三極管 : 10、12A、71A、45、VT-52、2A3、6B4G、WE300B、211、845、8045G、6(50)C-A10、VT-25(A)、VT-62、PX4、PX25(A)、WE275A、50、801A、R120、Ed、EbⅢ、AD1、6G-A4
  • 電力増幅用双三極管 : 6336A、6080、5998(A)、6528、6AS7、6C33CB、3C33、19、6BX7
  • 電力増幅用ビーム管 : UY-807、KT66、KT88、6550(A)、6L6、6V6、6AQ5、1619、12A6
  • 電圧増幅用五極管 : 6C6、6D6、6SH7、6SJ7、6SK7、6AU6、6BA6、6BD6、6267、WE310A
  • 電力増幅用五極管 : 6CA7、6BQ5、6AR5、42、30A5、50C5、6K6、6F6、7189(A)、35C5、35(50)EH5、30M-P23、32ET5、34GD5、45M-P21、35(50)L6、47
  • 周波数変換用七極管 : 6SA7、6BE6、6WC5、6A7、1R5、18FX6
  • 電圧増幅用三極五極管など : 6U8(LD611)、6BL8、6AN8、6GH8(A)、6EA8、6R-HV1、6R-DHV1、6R-DHV2
  • 電圧増幅用三極電力増幅用五極管 : 6BM8、6(14)GW8、6R-HP2、8R-LP1、18GV8
  • 送信用三極管 : 3-500Z、3-1000Z、T-307、800、808、830B
  • 送信用四極管 : 4CX250B
  • 送信用五極管 : 6146B、S2001(A)、S2002、S2003、813



  1. ^ アメリカ英語では「管」にあたる部分を「tube チューブ」、イギリスでは「valve バルブ」などと呼ぶ。
  2. ^ : electron tube
  3. ^ : thermionic valve
  4. ^ 「電子管」は熱電子を利用しないものなど、より広い範囲の素子を指して使われることもある。
  5. ^ 広辞苑第六版【真空管】定義文
  6. ^ 広辞苑第六版【真空管】定義文の後の叙述文
  7. ^ : diode
  8. ^ : triode
  9. ^ : tetroiode
  10. ^ : pontoode
  11. ^ : rectifier
  12. ^ 平凡社『世界大百科事典』vol.14, p.261【真空管】
  13. ^ Bijl著「The Thermionic Vacuum Tubes and It's Applications」、1920年
  14. ^ どちらも直熱型三極管
  15. ^ タイン著「Saga of Vacuum Tube」、1977年
  16. ^ 後のUZ-2A5。
  17. ^ 浅野勇著「魅惑の真空管アンプ 上巻」
  18. ^ 『週刊ワールドエアクラフト』2001/6/12号、P11
  19. ^ 複数の部品取り用の機器から1台を整備。
  20. ^ : Nuvistor
  21. ^ : strangle
  22. ^ : taper
  23. ^ GTは「glass tube」の略とされる。
  24. ^ : Radio News
  25. ^ : Clyde Fitch
  26. ^ : Reflector-JSC(ロシア語ラテン翻字)
  27. ^ : Svetlana-JSC(ロシア語ラテン翻字)
  28. ^ : JJ-Electronic
  29. ^ : Shuguang(ラテン翻字)
  30. ^ : Groove Tubes
  31. ^ : Ruby
  1. ^ 高周波での増幅特性で半導体素子を凌駕する事は現在でも珍しくはない。事実、高信頼性と低消費電力が要求される放送衛星通信衛星等の人工衛星では現在でも送信用に真空管の一種である進行波管が使用される







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