目
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/04 07:31 UTC 版)
眼の機能
眼光学系
光は角膜により屈折される。次に瞳孔を通過する。次に水晶体により屈折される。最後に網膜へと投射する。
角膜の屈折力は40 D程度である。これは、水晶体の屈折力20-30 Dよりも大きい。角膜の屈折力が大きいのは、角膜が屈折率の差の大きい空気と境界をなしているためである。角膜の屈折力は大きいため、角膜の障害により視力は大きく低下する。
瞳孔径は2-8mm程度の間で変化する。瞳孔径の変化は虹彩をなす虹彩筋の作用による。瞳孔径の変化は光量に依存する。虹彩の色はメラニン色素により決まり、個体差がある(→ヒトの虹彩の色)。
水晶体の屈折力は20-30 D程度のあいだで変化する。水晶体は、毛様体筋の働きによって厚みを変化し、屈折力が変化する。この作用を調節とよぶ。調節機構の説明としては毛様体小帯の緊張により、水晶体の周囲が圧迫されて調節されるとする緊張説と毛様体筋の収縮により毛様体小帯が弛緩し水晶体が球形に近づくことで起こるとする弛緩説とに分かれる。[8]
眼光学系は、カメラにたとえられることがある。角膜は単焦点レンズ、瞳孔は絞り、水晶体は可変焦点レンズ、網膜はフィルムに相当するとされる。しかしながら、眼光学系の各々の屈折面では明確な光軸は定義されない。また、各々の屈折面における近似的な光軸は、互いに一致しない。さらに、中心窩や瞳孔の中心は、近似的な光軸上には位置しない。このように、眼光学系はカメラのような共軸光学系とは異なり、非共軸光学系である。
網膜
網膜において光受容がなされる。すなわち、眼光学系を通じて網膜に投射された光は、網膜において神経信号へ符号化される。網膜からは視神経が出て、神経信号を外側膝状体や上丘へと伝達する。
付属器
眼瞼は眼球を物理的に保護する。また、瞬目により結膜表面に涙液を分布させる。
涙器は涙液の分泌と除去に関わる。涙液にはリゾチーム、ラクトフェリン、免疫グロブリンなどが含まれる。
コミュニケーション機能
少なくとも人間の場合に、眼は表情を構成する重要な要素であり、視覚的な個体間の情報交換、いわゆる非言語コミュニケーションの大きな部分を担っている。日本語では「眼は心の窓」「目は口ほどにものを言い」という表現がある。また、「眼が泳ぐ」「目が据わる」などの表現も、眼の感情表現における役割を示すものである。目と目を合わせることをアイコンタクトと言う。
さらに、ヒトの場合はまぶたの間から虹彩より外の白目の部分が見えること、その上に眉毛があることは独自の特徴で、これらは眼の作る表現の幅を広げ、強調する役割を担ってもいる。また涙も単に眼を洗浄する役割以上に感情と強い結びつきを持つ。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k 解剖学第2版、p.148、第9章 感覚器系 1.視覚器
- ^ 解剖学第2版、p.135-146、第8章 神経系 4.末端神経系
- ^ a b c d e f 佐藤・佐伯(2009)、p.245-247、第12章 感覚、2.視覚visual sensation、1)眼球の構造と働き
- ^ "The size of a human adult eye is approximately 24.2 mm (transverse)" Bekerman, et al. (2014) Variations in Eyeball Diameters of the Healthy Adults.
- ^ "Transverse (s-s) 24.156 ± 1.9 Max 26.8 Min 21.5" Bekerman, et al. (2014) Variations in Eyeball Diameters of the Healthy Adults.
- ^ "The average corneal diameter was 11.71 ± 0.42 mm." Rufer et al. (2005). White-to-White Corneal Diameter.
- ^ "males was 11.77 ± 0.37 mm, whereas in females it was 11.64 ± 0.47 mm. ... the mean values of males and females were not significantly different" Rufer et al. (2005). White-to-White Corneal Diameter.
- ^ 医学大辞典(医学書院、ISBN 4-260-13651-8)
- ^ 目の愛護デー(日本眼科医会)
- ^ a b c d e f g h 岩堀修明著、『感覚器の進化』、講談社、2011年1月20日第1刷発行、ISBN 9784062577
- ^ “Scallops’ amazing eyes use millions of tiny, square crystals to see” (英語). Science News (2017年11月30日). 2022年3月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t ニュートン (2012-6) p.94-99 知られざる眼のヒストリー
- ^ 佐藤・佐伯(2009)、p.249-251、第12章 感覚、2.視覚visual sensation、3)視覚の性質と調整
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