皮膚筋炎 自己抗体

皮膚筋炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 13:28 UTC 版)

自己抗体

筋炎特異自己抗体(MSA)と他の膠原病でも見出される筋炎関連自己抗体(MAA)が知られている。MSAの出現率は20~25%程度であり、抗体の種類によって臨床症状が異なると考えられている。MSAで最も有名なのがアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase))に対する自己抗体、抗ARS抗体である。

抗ARS抗体

抗ARS抗体の代表格は抗Jo-1抗体であり、これらの抗体は抗ARS抗体症候群(筋炎、間質性肺炎、レイノー症候群、発熱、機械工の手)を起こすと考えられている。間質性肺炎はNSIPが多く、早期併発を特徴とする。代表的抗体を以下に示す。

自己抗体 対応抗原 特徴
抗ARS抗体 アミノアシルtRNA合成酵素 間質性肺炎合併多、ステロイド反応性
抗Jo-1抗体 ヒスチジルtRNA合成酵素 検出率25%、筋炎>間質性肺炎
抗EJ抗体 グリシルtRNA合成酵素 間質性肺炎>筋炎 
抗PL-7抗体 スレオニルtRNA合成酵素 SScとのオーバーラップが高率
抗PL-12抗体 アラニルtRNA合成酵素 筋症状乏しい 
抗KS抗体 アスパラギニルtRNA合成酵素  
抗OJ抗体 イソロイシルtRNA合成酵素  
抗Zo抗体 フェニルアラニルtRNA合成酵素  
抗Ha抗体 チロシルtRNA合成酵素  

抗ARS抗体、抗Jo-1抗体以外の測定は免疫沈降法で行われており、専門的な技術が必要である(抗ARS抗体はELISA)。保険収載もされていないため、日常の臨床で抗ARS抗体、抗Jo-1抗体以外を測定するのは困難である。ただし、ARSの対応抗原は細胞質に存在するため、抗核抗体のスクリーニング検査で細胞質が染色される(cytoplasmic pattern)ことから予測が可能である。

抗SRP(シグナル認識粒子)抗体

MAAとして有名である。1986年にReevesらによって同定された。筋炎患者の約5%で検出される。SRPは7SL-RNAと6種類のポリペプチドからなる低分子リボ核タンパクであり、タンパク質のN末端シグナル配列を認識し細胞外輸送にかかわる。抗SRP抗体はDM皮疹のないPMで検出され、悪性腫瘍や他の膠原病の併発は少なく、典型的PMと関連すると考えられている。抗ARS抗体症候群陽性とは異なり、間質性肺炎、多発関節炎、レイノー現象などの筋外症状はの合併頻度は少ない。近年はステロイド抵抗性、再燃性が特徴的であり、しばしば免疫抑制剤併用を余儀なくされる。筋生検では炎症細胞浸潤が認められないのが特徴的とされている。リツキシマブの有効性の報告もある。亜急性の経過で重篤化、呼吸、嚥下、心筋障害などを起こす。SRLで検査は可能であり、近年定量法の開発もされた。PM以外の膠原病でも認められる。

抗CADM-140抗体(抗MDA5抗体)

ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候など皮膚筋炎の皮膚症状があるにもかかわらず筋炎所見を認めないAmyopathic Dermatomyositis(ADM)に特異的な抗体である。ADMは筋力低下は認められないが筋電図検査などでは筋原性変化などが認められるもの(clinically ADM;CADM)をここでは指す。その対応抗原はmelanoma differentiation-associatated gene 5(MDA5)またはinterferon-induced helicase C domain containing 1(IFIH1)であることが判明している。急速進行性間質性肺炎を高率に併発する。

抗155/140抗体(抗TIF1-γ抗体)

悪性腫瘍合併DMのマーカー抗体と考えられている。DM以外の膠原病では殆ど検出されず悪性腫瘍合併のDMにおいては50%以上で陽性となる。後に対応抗原がtranscriptional intermediary factor 1-gamma(TIF1-γ)であることが明らかになった。TIF1-γはTGF-βのシグナル伝達の強度に関与するといわれている。

抗Mi-2抗体

DMの1割で陽性となる特異的な抗体である。抗Mi-2抗体陽性DMではステロイドが著効するといわれている。

抗Ku抗体

強皮症と多発性筋炎など重複症候群で認められる抗体である。ステロイドが著効するといわれている。

抗U1-RNP抗体

混合性結合組織病で認められる。


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