焼夷弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/23 18:08 UTC 版)
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通常の銃砲弾・爆弾とは異なり、目標を爆発で破壊するのではなく、攻撃対象に着火させて焼き払うために使用する。そのため、発生する爆風や飛散する破片で対象物を破壊する爆弾と違い、焼夷弾は中に入っている燃料が燃焼することで、対象物を火災に追い込む。
このような、燃焼を利用する銃砲弾が全て焼夷弾ということではなく、同様の機構を持ちながらも目的の異なる、照明弾・曳光弾・発煙弾・ガス弾などもある。
種類
焼夷剤の種類
焼夷剤の種類で分類される。
- テルミット焼夷弾
- テルミット反応を使う。
- エレクトロン焼夷弾は、テルミットの燃焼によりさらにエレクトロン(マグネシウム合金)に点火する。第二次世界大戦の対独爆撃に多用された(日本へも若干用いられた)。
- 油脂焼夷弾
- 油脂を使う。化学的な意味での「油脂」だけでなく、ナフサ・重油などの石油製品(主成分は炭化水素)もこれに含まれる。
- ナパーム弾は、ナフサに各種薬剤を混ぜた「ナパーム剤」を使う。太平洋戦争の対日爆撃でM69焼夷弾が、ベトナム戦争の北爆でナパームBが多用された。
- 黄燐焼夷弾
- 黄燐(白燐)の自然発火を使う。
主剤ではないが、エレクトロン焼夷弾や油脂焼夷弾の点火剤に、マグネシウムが使われることもある。
その他の種類
- 火炎瓶
- ガラス瓶に油脂を詰め、簡単な着火機構を装着して製造される簡易な焼夷弾。軍用としては主に第二次世界大戦期に対戦車兵器として使用された。
- 製造が容易なことから、暴動の際にも対人・対車両用武器としてしばしば使用される。ただし、単純にガラス瓶に油脂や燃料を入れて栓として詰めた布に着火して投擲する単純なものは、投擲後の着火の確実性が低く、使用者とその周囲にとっての危険性が高い割には有用性は低い。
- 焼玉式焼夷弾
- 近世・近代に使われた砲弾で、焼夷剤を使うのではなく、砲弾を赤熱させることで焼夷効果を起こす。
- 徹甲焼夷弾 (armor piercing incendiary; API)
- 徹甲弾(armor piercing; AP)と焼夷弾の機能を併せ持つ砲弾・銃弾。敵の装甲を貫いて、内部で燃焼し焼夷効果をもたらす。さらに榴弾の機能を加えた徹甲炸裂焼夷弾(high explosive incendiary/armor piercing ammunition; HEIAP)もある。
被害
- 火災
- 焼夷効果により火災が発生する。焼夷弾の大量使用により大火災が発生すると、酸欠や一酸化炭素中毒による窒息死も多発する。
- 焼夷剤による化学的な被害
- 焼夷剤の燃焼ガスや、燃え残った焼夷剤そのものが、化学的な被害をもたらす。特に黄燐焼夷弾は、気化したリンや、燃焼ガスの五酸化二リンが、広範囲に広がり皮膚や呼吸器を侵食する。
日本橋の欄干の焼夷弾跡(2010年12月10日撮影)
人体への直撃による被害
焼夷弾は建造物などの目標を焼き払うための兵器であるが、子弾式(複数の焼夷弾を束ねてより大型の弾殻に収容し、投下後に分散して散布する方式(いわゆる「クラスター爆弾」)のものは小型の子弾が分離し大量に降り注ぐため、人体への直撃による即死の事例が多くの被災者の証言により伝えられている。
例えば戦争を題材にしたアニメ・映画では、落下した焼夷弾が家屋や地面に激突し大爆発を起こし燃え上がる描写が多く見られる。実際には家屋や地面だけではなく、避難民の頭上に大量に降り注ぎ、子供を背負った母親や、上空を見上げた人間の頭部・首筋・背中に突き刺さり即死、そのまま燃え上がるという凄惨な状況が多数発生していた。
- ^ Where global solutions are shaped for you | Disarmament | States parties and signatories
- ^ 平塚柾緒 『日本空襲の全貌』洋泉社、2015年、32頁。ISBN 978-4800305954。
- ^ “【動画】終戦の日まで続いた空襲…街を焼き尽くした焼夷弾とは。CGや資料映像で解説”. 朝日新聞 (2019年8月15日). 2019年9月22日閲覧。
- ^ “How the Molotov Cocktail Got Its Name”. NYTimes.com. 2018年10月22日閲覧。
焼夷弾と同じ種類の言葉
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