港湾 港湾の概要

港湾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/22 22:47 UTC 版)

2010年以来、世界最大のコンテナ港である上海港
積み替え港として世界最大シンガポール港
ロッテルダム港マースフラクテ地区にあるコンテナターミナル
名古屋港、空から見る鍋田埠頭と飛島埠頭

歴史

船の運航のために古代より、河川の河口入り江といった天然の地形が、波浪といった自然災害からの船舶の避難場所が泊となったり、補給のための飲料水やなどの確保も必要になり、これらの条件が停泊する上では都合が良いため時代が進むにつれて、これらの場所が泊や港・湊として使われるようになり、海運の発達ともに船の規模が拡大するなど港の陸上部分に桟橋岸壁が作られ、施設も拡充され、防波堤などの突堤も突き出すようになる。

現代では税関検疫所、出入国管理所が設けられ、旅客船の増加と規模の拡大に応じて旅客施設が作られた。貨物荷役の便益のために桟橋上や岸壁横には上屋が多く建てられ、陸上輸送との接続地点として道路鉄道が港に接続されるようになった。

交通の要所となると他国・他地域との文化的な玄関口となると共に、商業活動によって経済的な発展を遂げて港湾都市として繁栄するようになり、ますます港湾機能の充実が図られた。埋め立て、陸地の掘り込み、浚渫などによってそれまでの港湾の規模を拡大することも行われた。また、天然の良港として長い時間をかけて発展してきた港とは別に、人間活動の要請に応じて、新たな港が作られるようになった。鉄鋼業石油化学工業の発展によって専用の貨物船に対応した工業港が作られ、専用ターミナルとして発展して行った。

貨物船はしだいに大きくなり、港での荷役に数日が掛かるようになったため、港外で桟橋や岸壁の空きを待つ「滞船」(たいせん)が起きるようになった[注 1]。また、大型貨物船が直接接舷できない多くの港では、沖仲仕(おきなかし)が湾外で停泊する貨物船と陸の間を(はしけ)に貨物を積み替えることで荷役を行うなど、非常に非効率であった。

コンテナ船の登場で港での荷役作業は効率化されたが、同時に港の荷役設備は更新を迫られた。コンテナ船の巨大化に応じて浚渫やクレーンの大型化が図られ、コンテナターミナルとして発展していった[1]。21世紀に入ると国際貨物コンテナを扱う港は、ハブ港とフィーダー港に峻別される傾向が鮮明になってきた[2]

機能

島・岬や湾入などにより遮蔽された地形は、しばしば天然の良港と呼ばれる。近代に入ってからは、防波堤・岸壁といった構造物や掘り込み式港湾などの建設技術が著しく向上し、天然の地形に恵まれない場所でも大規模な港湾が造られている。英語の"Harbour"は、古英語の軍隊 "here" をかくまう "beorg" という意味合いに由来を持ち、船舶が安全に停泊できる港という避難港的な意味合いが強い。そしてそれは、港湾として求められる最も重要な機能でもある。

旅客の乗降や貨物荷役保管といった水陸輸送の転換機能、すなわち、ターミナル機能も港湾の重要な機能である。そのため、港湾には船舶の係留のみならず、貨物の荷さばきと保管、旅客の乗降、港湾から後背地への陸上輸送などを行うための施設が整備されている。英語"port"の語源は、古代ローマのラテン語の「運ぶ」を意味する"portare"である。そして運び入れたり運び出す場所をport(門)と呼ぶようになり、都市国家間の輸送の門である港湾の意味に転じた。すなわち、port には水陸輸送の転換場所という意味合いが強い。

これらの他の港湾の機能としては船舶へ燃料食糧・船用品などを補給する運航援助機能などがある。


注釈

  1. ^ 貨物船でも旅客を運ぶ貨客船となれば滞船待ちの順番を待たずに優先的に接舷できたため、多くの貨物船が旅客設備を備えるようになった時期がある。
  2. ^ 日本のシップチャンドラーとしては、高級スーパーやジャム等でもよく知られた明治屋が有名である。
  3. ^ 船への給油作業は「バンカリング」と呼ばれる。これは石炭を燃料としていた時代の名残で石炭庫のことをバンカーと呼んでいたためである
  4. ^ 神戸港・横浜港の補給水はそれぞれ遠洋の航海においても日持ちが良いとされ、文字通り「六甲のおいしい水」「道志の源流水」として人気がある。

出典

  1. ^ a b c 池田良穂(監修)『船のすべてがわかる本』ナツメ社、2009年2月9日。ISBN 9784816346408 
  2. ^ a b 池田良穂『船の最新知識』ソフトバンク クリエイティブ(株)、2008年11月24日。ISBN 9784797350081 
  3. ^ 八木光(監修)『イラスト図解 船』日東書院、2010年2月1日。ISBN 9784528019256 
  4. ^ 塩ノ谷幸造(編)『クレーンの運転』パワー社、2003年6月25日。ISBN 4827730318 
  5. ^ AAPA World Port Rankings 2015
  6. ^ Global Port Development Annual Report (2015)”. 2016年7月26日閲覧。
  7. ^ AAPA World Port Rankings 2014
  8. ^ Global Port Development Annual Report (2014)”. 2015年7月26日閲覧。
  9. ^ AAPA World Port Rankings 2013
  10. ^ Global Port Development Annual Report (2013)”. 2014年7月26日閲覧。
  11. ^ AAPA World Port Rankings 2012
  12. ^ Global Port Development Annual Report (2012)”. 2013年7月26日閲覧。


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