清
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/15 13:18 UTC 版)
清の経済
秤量貨幣である銀と信用貨幣である銅銭の併用であり、銀は主に税金、八旗への給与、対外貿易に用いられ、銅銭は国内の商取引に用いられた。明代後期から出現した郷紳層による地方支配、外国産の銀の流通による経済の発達、良質な銅銭普及による対銀レートの高騰とそれによる八旗の困窮、銀東アジア交易網の隆盛などが明後期から清前期の特徴として挙げられる。
農業の発展と人口爆発
北宋代に1億を超えたと言われる人口は増減を繰り返し、順治帝期の1651年の戸籍登録人口は約5300万、康熙帝期の1685年には約1億1000万、1700年に1億5000万、乾隆帝期の1765年には2億、1770年から1780年にかけて2億8000万、1790年に3億、19世紀前半のアヘン戦争直前の1833年に4億を突破した(数字は全て推定)[11]。
この人口の爆発的増加の最大の理由は新大陸原産の作物トウモロコシ・サツマイモ・落花生などが導入された事にある。これらは水がそれほど豊富でなくとも痩せた土地で育つ作物であり、それまで灌漑が不可能なるがゆえに見放されていた山地に漢人が進出できるようになった。また、当時の農業が労働集約的であり、生産性向上の為に小作人を低賃金で大量に雇った方が利益を得られやすいという観点から、地主階級が貧しい農民の人口が増えることを歓迎していたことも、人口増加の背景となった[12]。溢れる人口は領内だけでは収めきれず、満洲・モンゴル・青海と言った本来漢人の居住地ではない所にも進出し、牧草地や山地を農地に変えていった。更に陸地だけでも収まり切らず、明代から出現していた華人が激増する事になる。
これらの漢人の進出は多くの場合、現地の民族との摩擦を引き起こし、時に現地の民族の経済的没落を招く事になった。これに不満を持ったモンゴル人・苗族などは何度か反乱を起こすが、数の圧力には逆らえず次第に勢力を減退させていった。また鄭一族の降伏により版図に入った台湾にも数多くが進出し、開発が進む一方で原住民達は山間部に追いやられていった。その中で清の故地である満洲は満洲人の保護の意味から漢人の移住を禁止していたが、19世紀末になって、この地方にロシアの圧力がかかってくるようになると領土権の保持と防衛のために禁を解除し、この地も漢人の農地が広がることになる。
税制
清初には税制も明から一条鞭法を引き継いでいたが地丁銀制に切り替えた。これはそれまでが人頭税(人丁)・土地税(地丁)の二本立てであった税を土地税一本にするものである。それまでは郷紳勢力には免税特権が与えられており、また人頭税逃れのために戸籍に登録しようとしない者も多く、これらの対策のために完全に土地による税制に切り替えたのである。この制度が行われた後には隠す必要が無くなった人々が戸籍に登録されるようになり、前述の人口増加はこれが原因の一端と見られている。それと共に戸籍制度もそれまでの里甲制から変えて、新しく作り直した。 こうした政策によって、清朝中頃までは円滑に、あるいは曲がりなりにも税制は機能したが、アヘン戦争前後より貿易不均衡により清からの銀の流出は著しくなり、これが清国内での銀価格を吊り上げ、反対に銅銭や穀物の相場は相対的に低下した。結果的に、銀納を義務付けられた庶民の納税の負担は上昇して、困窮、清の衰退の主因の一つになった。
商業
明代から引き続いて全国的に手工業が大いに盛んであり、絹織物・綿織物に加えて鉄の加工販売が盛んとなり、増大する人口と農地に必要な農具が大量に作られていた。だが、清朝初期には海禁政策の影響で海外からの銀の流入が止まって、極端なデフレ状態に陥って「銀荒穀賤」と呼ばれて民衆は勿論、有力者の中にも破綻するものが相次いだ。この傾向は鄭氏政権の崩壊によって海禁政策が緩和されるとともに落ち着くようになる。三藩の乱後は良質な銅銭の普及に力を入れたため、銅銭の信用が増し広く流通するようになり、銅銭の供給量が増えているにもかかわらず対銀レートが高騰する銭貴という状態になった。これは俸給を銀で受け取り、銅銭に換金して生活必需品を購入していた旗人達に打撃を与え後の困窮に繋がる要因の一つとなった。
そして商業も非常に活発となり、それに伴い商業システムの発展が随所に見られる。典舗・当舗と呼ばれる質屋は貸付・預金業を行い、独自に銀と兌換が出来る銀票を発行した。また為替業務を行う票号という機関もあった。これらの中心となっていたのが山西商人(山西省出身)・新安商人(安徽省出身)と呼ばれる商人の集団で、山西商人などは豊富な資金を背景に皇族とも密接に関わり、政府資金の運用にも関わっていたと言われる。
注釈
- ^ 光緒末年から宣統改元に作成され、篆書体で「大清帝國之璽」と書かれている。
- ^ 五行相克では、
- 木徳→土徳→水徳→火徳→金徳→(木徳に戻る)
- ^ 大清皇帝に即位し崇徳と改元。
- ^ 一旦「祺祥」と公布されたが、辛酉政変のため改元前に同治と変更された。
- ^ 2004年、愛新覚羅家より廟号「恭宗」、諡号「愍皇帝」が追贈された。
- ^ 清朝の滅亡後は、1924年の優待条件修正案公布まで紫禁城内でのみ使用。
- ^ 日本銀は16世紀中期以降、石見銀山や但馬銀山などでの生産が急増し、16世紀後半には1200〜1300トン、17世紀前半には2400トンの銀が中国に流れた[13]。南蛮貿易はのち、台湾の安平古堡と長崎の出島を拠点とするプロテスタント勢力のオランダ東インド会社に引き継がれた。その後の江戸には蘭学は広まったがフリントロック式(燧石銃)はほとんど輸入されなかった。
出典
- ^ a b 譚璐美 (2021年6月23日). “狙いは民族抹消、中国が「教育改革」称してモンゴル人に同化政策”. JBpress (日本ビジネスプレス). オリジナルの2021年6月23日時点におけるアーカイブ。
- ^ 宣和堂 (2017年5月21日). “その後の「制誥之寶」とマハーカーラ像”. 宣和堂遺事. 2019年11月16日閲覧。
- ^ “中研院歷史語言研究所歷史文物陳列館”. museum.sinica.edu.tw. 2019年11月16日閲覧。
- ^ 貝と羊の中国人, p. 92.
- ^ ネルチンスク条約:「凡山南一帶,流入黑龍江之溪河,盡屬中國(中国)。山北一帶之溪河,盡屬鄂羅斯(ロシア)...將流入黑龍江之額爾古納河為界,河之南岸屬於中國(中国),河之北岸屬於鄂羅斯(ロシア)...中國(中国)所有鄂羅斯之人(ロシア人),鄂羅斯(ロシア)所有中國之人(中国人),仍留不必遣還」
- ^ 道光帝. 『御製大清一統志序』
- ^ 『清史稿』志二十九 地理一
- ^ 『清史稿』志三十、三十一、三十二 地理志二、三、四
- ^ 『大清一統志』盛京
- ^ 清史稿地理一
- ^ 貝と羊の中国人, p. 90-91.
- ^ 貝と羊の中国人, p. 93.
- ^ 『日本銀』 - コトバンク。旺文社世界史事典 三訂版。
- ^ ブリュッセイ, 2019年、岩井, 2012。
- ^ 韃靼漂流記
- ^ 『福井県史』通史編3 近世一
- ^ 松方冬子「18世紀オランダ東インド会社の遣清使節日記の翻訳と研究」。東京大学史料編纂所。
- ^ 楠木賢道「はじめに (<特集>東アジア学のフロンティア : 清朝・満州史研究の現在)」『東洋文化研究』第10巻、学習院大学東洋文化研究所、2008年3月、307-307頁、hdl:10959/2879、ISSN 1344-9850、CRID 1050001338012832128。
- ^ 上海で拘束された台湾「八旗文化」編集長、何が中国を刺激したのか? Newsweek
- ^ 清朝とは何か.
- ^ 金振雄「日本における「清朝史」研究の動向と近年の「新清史」論争について : 加藤直人著『清代文書資料の研究』を中心に」『四分儀 : 地域・文化・位置のための総合雑誌 : クァドランテ』第20号、東京外国語大学海外事情研究所、2018年3月、169-174頁、doi:10.15026/91617、ISSN 1344-5987、NAID 120006457726。
清と同じ種類の言葉
品詞の分類
「清」に関係したコラム
-
株式の投資基準とされるROS(Rate of Sales)とは、企業の売上高の経常利益の割合をパーセンテージで表したものです。ROSは、売上高経常利益率、売上高利益率などともいいます。ROSは、次の計...
-
株式の投資基準とされる売上高純利益率とは、企業の売上高の純利益の割合をパーセンテージで表したものです。売上高純利益率は、次の計算式で求めることができます。売上高純利益率=純利益÷売上高×100売上高純...
-
株式の投資基準とされるROAとは、総資本の経常利益の割合をパーセンテージで表したものです。ROAは、Return on Assetの略で、総資本経常利益率といいます。ROAは次の計算式で求めることがで...
-
株式の投資基準とされる経常利益伸び率とは、企業の予想経常利益が最新の経常利益の何パーセント増加しているかを表したものです。予想経常利益が伸びればその分、株価も上昇するのが一般的とされています。経常利益...
-
株式の投資基準とされる売上高連単倍率とは、企業の連結決算ベースの予想売上高が個別財務諸表ベースの予想売上高の何倍かを表したものです。売上高連単倍率は、次の計算式で求めることができます。売上高連単倍率=...
-
東京証券取引所(東証)では、規模別株価指数の算出のために一部上場銘柄を大型株、中型株、小型株の3つに分類しています。その基準は、時価総額や株式の流動性などによって順位づけしたものになっています。大型株...
- >> 「清」を含む用語の索引
- 清のページへのリンク