波 波の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/20 03:09 UTC 版)

砂浜へ寄せる波
砂浜に打ち寄せるやや荒れ気味の波(瀬戸内海にて)
比較的小さな風浪
打ち寄せて水煙を上げるうねり
Mavericks Surf Contest 2010での巨大な波とサーファー。米国西海岸、カリフォルニア州のMavericksというサーフィン向きの海岸(El Granadaの近く)で開かれるサーフィン大会での光景。(2010年2月13日)
航行する船によって引き起こされた引き波
葛飾北斎が描いた波『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』。

波の分類

原因による分類

波は、起きる原因によって分類することも可能である。によって起きる波を風浪ふうろうと呼ぶ。船舶などが航行することによって後方に生じる波は航跡波引き波と呼ばれる。これらを含めて人工的に波を造り出すことは造波ぞうはという。地震などによって起きる波は津波と呼ばれる。このように波ができる原因はいくつもあるが、最も一般的な原因は風である[2]

多方向からの波が合成されてできるピラミッド状の波を三角波と言う。

大きさによる分類

特に、確率的に発生する相対的に波高がかなり大きな波や、あるいは絶対的な観点から波高が巨大な波を、巨大波と呼び分類する。海洋遭難防止の観点から、この名称でこのような波を分類し、研究が進められている。

波浪(風浪とうねり)

波浪とは風によって起こる波のことである。波浪には風浪ふうろううねりの2種類がある。(→#風浪

風浪

その場で吹いている風によって引き起こされた波は風浪あるいは風波ふうはかざなみ)と呼ばれる。風が海面に当たると、風と海水の摩擦で海面が波立つ[2]。風浪は波の上部が尖った三角形に近い形をしている[2]

風が強くなるほど風浪の高さは大きくなる傾向があり見た目の形状も変化する。無風で波の無い状態の時はなぎと呼ばれ、海面の質感はほぼ平坦になる。このような状態は「のような海面」とも表現される。風がかすかに吹くと小さな波(さざ波)が立つ。風速が数メートル程度になると波頭なみがしら波の頂上部分)の水が風に飛ばされ、視野を広く見ると海面全体に白い部分がチラチラ、ピョコピョコと動いているように見える。日本では地域によってはこの状態を「が跳ぶ」と表現する。このような風と風浪の形状の関係を利用して、風浪から風速をおおよそ推定できる。

うねり

他の海域で風によって起こされた波が伝わってきた波はうねりと呼ばれる。日本気象庁では、うねりについて「遠くの台風などにより作られた波が伝わってきたもので、滑らかな波面を持ち、波長の長い規則的な波。」と定義している[3]。遠地の台風低気圧などによって発生している高波が、減衰しながら時間をかけて長距離を伝播していくものであり、例えば日本近海で発生したうねりはハワイにまで到達することがある。うねりの波長は100m以上、周期は8秒以上であることが多い[3]。うねりの代表例としては、 暴風の余波で起こる波や土用波などがある。うねりは、風浪に比べて周期も波長も長く、波頭は丸みを帯びるため、水深が浅い海岸などでは海底の影響で波高が高くなりやすい。このため、しばしば海の事故を誘発したり船舶に影響を与えたりする。気象庁は、風浪やうねりによって災害が引き起こされると予測される場合は、警報注意報を発表して注意を促している。

波浪の地形などへの影響

波浪は、海岸地形に大きな影響を及ぼしている。砂浜の形状は波浪の影響を受けて絶えず変化している。岩壁に絶え間なく打ち寄せつづける波浪は岩壁を侵食してゆく。また、波浪は、海岸の生物生態系にも大きな影響を与えている。波が打ち寄せる場所を波打ち際と言う。

波高と確率

通常「波の高さ」と言えば有義波高(100波のうち高い33波の平均値)をいい、天気予報などでの「波の高さ」もこの値の予報値である。有義波高は100波のうち高い33波の平均値であるから、最大ではこの2倍程度の波が押し寄せることもありうる。→#有義波高

有義波高

天気予報で波の高さが「波の高さは2mになるでしょう」などと伝えることがあるが、天気予報で伝えられる波の高さは「有義波高」という特別な方法で数値をはじいたものである[4]

通常、波は大小が入り混じっていて、その大きさをひとつの数字で言い表すことはできない。しかし最大波高や最小波高を用いると、人間の実感ともかけはなれる[4]。平均波高を使っても、平均波高より高い波が数多く打ち寄せるので、平均波高を用いるのも防災上よろしくない[4]。そうした配慮から考え出されたのが「有義波高」であり、平均波高を集めてそれらを高いほうから並べ、上位1/3の平均値を「有義波高」としている[4]。この「有義波高」は人間が波を目視した実感にかなり近く、実用的である[4]

しかしながら、この便利な「有義波高」でも、それより大きい波や小さい波は発生する[4]。例えば、10波に1波は有義波高の1.3倍、100波に1波は有義波高の1.6倍、1000波に1波は有義波高の2倍となるので注意を要する[4]。このように、全体から見て割合としては小さいものの確率的には発生する波高の高い波を高波たかなみと呼ぶ。「昨日 埠頭で(桟橋で)釣りをしていた人が、高波にさらわれ死亡しました」といったていのニュースは頻繁に流れている。海釣りをする時などは、そうした数万回に1回来る高くて強い波のことも心の片隅に置いて注意しなければならない。けれども、逆に言えばサーフィンをしている時は波が小さいと感じられても、諦めずに根気強く待ち続ければ半日に1回くらいは大きな波に出会える可能性がある[4]

波高に影響する要因

主に風力正比例して波が大きくなるが、地球の大気との摩擦面である水面に「油、流氷、流木、海藻など」が浮いてたり、水中の摩擦力が高くなる要素である「氷塊・浮遊生物など」があったりする場合、さらに豪雨・豪雪が水面に衝突する場合は波高が抑えられる[5]

京都大学防災研究所教授の森信人らによる研究では、地球温暖化海面上昇だけでなく大気の対流を促して風による波のエネルギーを増大させ、砂浜など海岸の地形や生態系に大きな影響を与えると警鐘を鳴らしている[6]


  1. ^ a b 広辞苑』第六版「なみ【波、浪、濤】」
  2. ^ a b c 『風と波を知る101のコツ』p.102
  3. ^ a b 気象庁|予報用語 波浪、潮位”. www.jma.go.jp. 2021年12月30日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 『風と波を知る101のコツ』p.109
  5. ^ 丸川久俊『海洋学』昭和七年十月十四日発行 p.149(Googlebook
  6. ^ 「温暖化で波の高さ強さ増大」毎日新聞』朝刊2021年7月27日くらしナビ面(2021年8月7日閲覧)
  7. ^ 谷端 郷 (2014年). “大阪市における1934年室戸台風による 被災社寺の分布とその特” (PDF). 『歴史都市防災論文集』Vol. 8(2014年7月). 2018年10月29日閲覧。
  8. ^ 昭和9年(1934年)室戸台風”. 国土交通省淀川河川事務所. 2018年10月29日閲覧。
  9. ^ 「あと4m高ければ 吉原防波堤の高波災害」『朝日新聞』昭和423年7月26日夕刊3版11面
  10. ^ 想定し得る最大規模の高潮等について”. 国土交通省. 2020年10月23日閲覧。
  11. ^ 高波による災害”. 気象庁. 2018年10月29日閲覧。
  12. ^ 富山県東部海岸 における2008年2月高波による被害調査” (PDF). 『海岸工学論文集』第55巻(20) (2008年). 2018年10月29日閲覧。
  13. ^ 台風21号 関西空港滑走路など浸水、最大風速58m”. 毎日新聞 (2018年9月4日). 2018年10月29日閲覧。
  14. ^ World Meteorological Organization Global Weather & Climate Extremes Archive 2021年12月13日閲覧
  15. ^ a b c d e f 世界大百科事典』第21巻 p.162【波】(執筆:寺本俊彦


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品詞の分類

接尾語気味    波    

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