水先人 操船

水先人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/12 15:17 UTC 版)

操船

安全運航に対する船長の権限およびその責任は、水先人の乗船により変更されるものではない。したがって名目上は船長が操船を指揮して、水先人は船長の操船を補佐することになっているが、実際は水先人が操船命令を発して、船長が横で黙ったまま承認している事もあり、どちらが主体的に操船するかは主に船長の性格によって決まる。ただし、前述のとおり、安全運航の責任は依然として船長にあるため、水先人の指揮により万が一トラブルが発生した場合でも、その責任は船長が負うことになる。

外国人船長などでは、時として経費節約のために、タグボートの要請やその増船を断ったり、強風下等での接岸見合わせを夜間荷役の割増し経費を嫌うなどで、水先人の提案を受け入れないこともある。

潮流が激しくなく他船が周囲にいなくて風も吹いていない環境では、主機関やサイドスラスターが突然故障でもしない限り、船長でも容易に安全な操船が行なえるかもしれないが、日本の大きな港では他船がいない状況はそうは望めず、また風も吹く吹かないは時の運しだいである。特に混み合う港や狭い水路での強風下の操船は、海深や潮流、地元小型船を含む他船の運動、投錨時の利き、タグボートとの連携などで地元環境に精通している水先人だけが行なえる芸術的な操船技術である[3]

日本の水先人の免許と試験の概要

試験

一次試験は5月中旬 - 6月上旬頃の2日間、東京都で行われる。二次試験は11月から翌年1月までの指定された日に地方運輸局所在地で行われる。

試験科目

  • 身体検査
  • 筆記試験
    1. 海難事例、海上衝突予防法、港則法、港湾知識、海上交通安全法水先法、操船知識(運用)、気象知識、
      • 試験内容は共通問題と港則法、海上交通安全法については各希望水先区ごとに違う問題が出題される。
      • 制限時間内に何も見ずに白紙に、志望する水先区の海図を書く、などの問題が出題される。
  • 口述試験
    1. 気象・海象知識
    2. 水深、距離、障害物、航路標識等の知識
    3. 操船知識
    4. 国際通信信号知識 (国際信号旗など)
    5. 条例、規則
    6. 英会話
    7. 一次試験範囲の応用問題

水先人資格の取得要件

  • 一級水先人は沿海以遠の乗船履歴で船長として総トン数3,000トン以上の船舶への2年以上の乗船経験があり、一級水先人養成過程(9ヶ月)を修了した者。あるいは、二級水先人として2年以上の実務経験を積んだ上で登録先水先人養成施設で一級水先人養成過程(3ヶ月)を修了した者。
  • 二級水先人は沿海以遠の乗船履歴で一等航海士以上で総トン数3,000トン以上の船舶への2年以上の乗船経験があり、二級水先人養成過程(1年6ヶ月)を修了した者。あるいは、三級水先人として2年以上実務経験を積んだ上で登録先水先人養成施設で二級水先人養成過程(6ヶ月)を修了した者。
  • 三級水先人は沿海以遠の乗船履歴で航海士以上又は実習生以上で総トン数1,000トン以上の船舶への1年以上の乗船経験があり、登録先水先人養成施設で三級水先人養成過程(2年6ヶ月)を修了した者。
  • 三級海技士(航海)又は上位免許取得者で登録水先人養成施設の課程を修了し等該級の水先人試験(身体検査、筆記、口述)に合格すること。
  • 合格者は水先人免許が交付される
  • 欠格条項
    • 日本国民でない者
    • 禁固刑以上の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから5年を経過しない者
    • 海技士の免許や小型船舶操縦士の免許を取り消され、取り消しの日から5年を経過しない者
    • 船長又は航海士の業務につき業務停止を命じられ、その業務停止期間中の者
    • 船長又は航海士の業務につき3回以上の業務停止を命じられ、最後に業務停止を命じられてから5年を経過しない者
    • 水先人の免許を取り消され、取り消しの日から5年を経過しない者

免許の種類

免許の種類により水先業務の行える船舶に制限がある。

  • 一級水先人 - 制限なし
  • 二級水先人 - 上限5万トンまでの船舶、但し危険物積載船は上限2万総トンまで
  • 三級水先人 - 上限2万トンまでの船舶、但し危険物積載船は不可

免許の更新

  • 水先人免許は5年ごとに更新しなくてはならない。
  • 毎年10月に実施される身体検査に合格しなければならない。

水先人会

水先人は水先法により、原則、水先人会への所属が求められるが、各水先人会には定員があり、資格を取得したとしても会員になれる(開業できる)という保証はない。

水先人資格

日本の水先人資格は、そもそも受験資格を得る事自体に膨大な時間と業務経験を必要とする。

水先人資格を得るには、商船系大学や商船高等専門学校などでの専門教育を受けて国土交通省の国家資格である三級海技士の海技試験を合格して入社し三等航海士となる。その後乗船しながら一定期間以上の経験をつみつつ、上部資格である二級海技士、一級海技士をともに取得する。その後、3000トン以上の外航船船長として3年以上の実務経験を経て、そうして初めて受験資格を得ることが出来る[2]

一般的に、一級海技士まで取得するには、会社に21 - 22歳で入社したとしても30歳程度までの乗船経験の時間を要する。

平成19年4月に規制緩和が行われ、船長経験がなくても三級海技士 (航海)以上の資格を持つ者なら2年6ヶ月の三級水先人養成課程を受けた上で三級水先人の試験を受けられるようになり、最短で20代前半で三級水先人になる事が出来るようになった。現在は、東京海洋大学神戸大学海事科学部、海技大学校にそれぞれ水先人養成課程が設けられており、三級海技士(航海)を取得できる大学もしくは高専の過程を卒業すると入学できるようになっている。

2011年に26歳の日本初の女性水先人が誕生し横浜港で勤務している。




  1. ^ 英和海洋辞典 English-Japanese Ocean Dictionary, 船と航海 Ships and Navigation
  2. ^ a b c 仲之薗郁夫著『海のパイロット物語』成山堂書店 2002年1月28日初版発行 ISBN 4-425-94651-0
  3. ^ a b c d 参照先に写真と説明。(関門水先区水先人会)


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