水の危機
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生物多様性へのダメージ
野生の動植物は、十分な水資源がなければ生活できない。沼地や湿地、河岸地帯が、適切な水の供給なしで成り立たないのは明らかであるが、森林などの陸上の生態系も利用できる水が減少するにつれ、その生活に著しい被害を受ける。これらの地域は食料や住居を供給するための土地として、直接的にも、広範囲にわたって開発され自然が失われたが、間接的にも、上流で水が堰き止められたりすることによる自然な水の流入量の減少などによっても土地がやせ、自然が失われていっている。
アメリカ合衆国内の7つの州では、議会が湿原の保護を法律で定めた1980年代までの間に、80 %の湿原が干拓された[14]。また、湿原の消失が結果として生物多様性の低下をもたらしている。たとえば、スコットランドの数多くのボグが人口の増加に伴って干拓、開発されてきた。アバディーンシャーのポートレーテンモスでは半分以上の湿原が消失し、ホクオウクシイモリ (en) など、この泥炭湿地から姿を消した生物も少なからず存在する。
マダガスカル中央の高原地帯では、1970年から2000年にかけて、森林という森林で大規模な伐採が行われた。焼畑農業はこの地方の生体量の10 %を根絶し、不毛の荒野に変えてしまった。これは人口爆発の結果であり、貧しい現地の人々を養うためにやむを得ないことだったが、大規模な森林伐採のために広範囲の土壌が侵食され、川に大量に流れ込んだ土砂は川の水を赤く染めた。これにより、重要な生活用水が周辺の人々から奪われただけでなく、複数の河川系の生態系が破壊され、複数の魚類が絶滅の危機に立たされ、インド洋の一部の珊瑚礁が目立って失われた。
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- ^ 「(社説)水サミット 汚染はひとごとではない」(朝日新聞、2007年12月7日・朝刊)
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