水の危機 地域紛争

水の危機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/04 04:49 UTC 版)

地域紛争

世界には約260の河川系(水系)があり、国境をまたぐものも存在する。ヘルシンキ規則 (enは水資源の利用権を国際的にどう解釈するかの一助となるが、問題が基本的な生存問題に絡んだ深刻なものである場合、係争が起きることもある。こういったケースでは、他に端を発する国境問題と緊張関係があった上で、付加的に水資源をめぐって争われることが多い。

チグリス=ユーフラテス河川系は複数の国に利用されている水源であるが、その利用権をめぐって争われている一例である。イランイラクシリアの各国がこの水源の利用を合法に主張しているが、その総要求量は河川系の物理的な水量を上回ってしまっている[15]1974年初頭、イラクは、ユーフラテス川に設置されたシリアのアッサウラダムを破壊するため、国境地帯に軍隊を集結させるという示威行為を行っている[16]

また、1992年にはハンガリーチェコスロバキアドナウ川の水の利用とダムの設置をめぐって対立し、国際司法裁判所の裁定にゆだねられた。この係争は、正論と法理が解決の道筋となりえた少数例である。北朝鮮韓国イスラエルパレスチナエジプトエチオピアなどの対立は、調整がさらに難航したケースといえるかもしれない。今後問題になりうるケースとしては、メコン川において中国がメコン川上流に建設しているシャオワン(小湾)ダム[17]流砂を止めるためにメコン・デルタや沿岸農地が縮小されるのではないかという懸念が流域諸国で構成される「メコン川委員会」で問題になっており、対応を誤ると新たなアジアの不安要因になりかねないという指摘もある。


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