極限 数列の極限

極限

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 09:32 UTC 版)

数列の極限

実数数列収束する (converge) あるいは有限の極限を持つ若しくは極限が有限確定であるとは、番号が進むにつれてその数列の項がある1つの値に限りなく近づいていくことをいう。このとき確定する値をその数列の極限値という。収束しない数列は発散する(diverge)といい、それらはさらに極限を持つものと持たないものに分かれる。発散する数列のうち極限を持つものには、正の無限大に発散するものと負の無限大に発散するものがあり、極限が確定しないものは振動する(oscillate)という。

数列の収束

自然数逆数の列 1, 1/2, 1/3, …, 1/n, … を考えると、n を限りなく大きくしていくと一般項 1/n は限りなく 0 に近づいていく。このときこの数列は 0 に収束するといい、このことを

あるいは

と書く。

カール・ワイエルシュトラスは「限りなく近づく」という曖昧な表現は使わず、イプシロン-デルタ論法を用いて厳密に収束を定義した。これによれば、数列 {an} がある一定の値 α に収束するとは、次が成り立つことである(この場合はイプシロン-エヌ論法とも言う):

(どんなに小さな正の数 ε をとっても、その ε に対して適切な番号 n0 を十分大きく定めれば、n0 より先の番号 n に対する anα から ε ほども離れない範囲に全部入るようにすることができる)

これを用いると、an = 1/n の極限値は 0 であることを以下のようにして示すことができる。

(証明)
自然数は上に有界でない(アルキメデスの性質)から、
従って

極限値の性質

  • 数列が収束するとき、その極限値はただ一つに限る。
  • 収束する数列から項を有限個取り除いても、得られた数列は同じ値に収束する。
  • 収束する数列は数の集合として有界である。

数列の発散

数列が収束しないとき、その数列は発散するという。特に、番号 n を限りなく大きくしていくとき、数列の項の値 an が限りなく大きくなることを、数列 {an}正の無限大に発散するといい、

または

のように表す。イプシロン-エヌ論法では、数列の正の無限大への発散は、

のように定式化される。

また、番号 n を限りなく大きくしていくとき、数列の項の値 an が限りなく小さくなることを、数列 {an}負の無限大に発散するといい、

または、

と表す。数列 {an} が負の無限大へ発散することは、各項 an反数にした数列 {bn} (bn = −an, n = 1, 2, 3, …) が正の無限大に発散することと同値である。あるいは絶対値をとって得られる数列 が正の無限大に発散すると言っても同じである。イプシロン-エヌ論法では、

となる。

数列が収束せず、また正の無限大にも負の無限大にも発散しない場合、その数列は振動するという。振動も発散の一種である。

様々な極限

実数の列 がある数 について を満たしているとき(数列 が下に有界なとき)、 下極限と呼ばれる数

を定めることができる。同様にして、上に有界な数列に対しその上極限

が定義される。

と記しても同じ意味である)

数列 が極限を持つのは となる場合であり、このとき

となる。さらに、有界な数列のなすベクトル空間 に対して抽象的な関数解析の構成を適用し、任意の有界な数列 に対してバナッハ極限と呼ばれる数 を、古典的な極限の拡張となるように定めることができる。

点列

ユークリッド空間のように、距離 d の定まった空間における点の列についての収束の概念を、実数の列の収束の概念を拡張して定めることができる。すなわち、点列 (xn)n が点 y に収束するとは、正の実数列 (d(xn, y))n0 に収束することである。この概念をさらに一般化して、自然数によって数え上げられるとは限らない「列」とその収束性を一般の位相空間に対して定式化することができる。(#位相空間を参照のこと)

距離 d に関する極限であることを明示するために lim の代わりに d-lim などと書くこともある。




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