核燃料サイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/25 21:43 UTC 版)
日本における核燃料サイクル施設
日本ではウラン鉱の採鉱・精錬等は行われていない。フロントエンドではウラン濃縮事業と燃料加工事業、バックエンドでは使用済み燃料再処理および放射性廃棄物の保管と低レベル放射性廃棄物の埋設処理が行われている。濃縮、燃料加工、使用済み燃料再処理に関しては国内の能力で需要を満たせておらず、大半を海外に依存している。高レベル放射性廃棄物の地層処分については設置場所を公募中である。以下は2013年3月末時点[15]。
濃縮施設
国内での処理能力は1890トンU/年で国内需要の約三分の一である。
- 日本原子力研究開発機構・人形峠環境技術センター(岡山県鏡野町) 1988年より、2001年に役務生産運転終了、処理能力200トン-U/年。
- 日本原燃・ウラン濃縮工場(青森県六ヶ所村) 1992年より稼働中、処理能力1,890トン-U/年。
転換・加工施設
処理能力 | |||||
---|---|---|---|---|---|
グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン | ? | 神奈川県横須賀市 | 1970年より稼働中 | 成形加工 | 750トン-U/年 |
三菱原子燃料 | 茨城県東海村 | 1972年より稼働中 | 440トン-U/年 | ||
転換加工 | 475トン-U/年 | ||||
原子燃料工業 | 熊取事業所 | 大阪府熊取町 | 成形加工 | 383トン-U/年 | |
東海事業所 | 茨城県東海村 | 1980年より稼働中 | 250トン-U/年 |
使用済み核燃料中間貯蔵施設
日本国内で発生した使用済み核燃料は、各原子力発電所内等で保管されている。原子力発電所外の中間貯蔵施設として、リサイクル燃料貯蔵株式会社の中間貯蔵施設(青森県むつ市)が建設中。貯蔵能力は約3000トン。
再処理施設
2002年末までに5600トンUの処理がイギリス・フランスに委託された。
- 日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所東海再処理施設(茨城県東海村) 稼働1981~2007年 累計処理量1,140トン-U。
- 日本原燃・再処理事業所六ヶ所再処理工場(青森県六ヶ所村) 2011年10月アクティブ試験中、2012年10月しゅん工予定であるが、使用済み核燃料の受入は2000年より始まっており当施設では3,362トンを保管している。
MOX燃料加工施設
再処理施設で回収されるウラン・プルトニウム混合酸化物は、プルサーマル発電等に使用されるMOX燃料に加工される。加工工場が青森県六ヶ所村に施設建設中。
廃棄物管理施設
- 日本原燃・六ヶ所高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県六ヶ所村) 高レベル放射性廃棄物のガラス固化体の保管 1995年より稼働中、保管量1,442本(保管容量2,880本)
- 日本原子力研究開発機構・廃棄物管理施設(茨城県大洗町) 高レベル以外の放射性廃棄物の保管 1996年より稼働中、保管量29,429本(200リットルドラム缶換算、保管容量42,795本)。
廃棄物埋設施設
- 六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村) 低レベル放射性廃棄物の埋設 1992年より稼働中。累計搬入量251,979(200リットルドラム缶換算、保管容量412,160本)
- 日本原子力研究開発機構・廃棄物埋設施設(茨城県東海村) 極低レベル放射性廃棄物の埋設 1995年より稼働中。1995年より稼働、1,670トンを埋設し1997年10月には埋設地の保全段階へ移行。
- 高レベル放射性廃棄物の地層処分施設は場所を公募・検討中。2033~2037年頃に施設の建設を開始する予定である。
この他、放射性物質等を陸揚げするむつ小川原港へは、専用道路が通っている。
- ^ 核燃料リサイクル、原子燃料サイクルと呼ばれることもある。
- ^ QAプルトニウム(2004) p.34
- ^ 具体的には概ね、材料であるウラン資源等の「入手」、濃縮などを経て核燃料へ「加工」、原子炉における「使用」、使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出すための「再処理」、そして再び核燃料として利用するための「リサイクル」、という核燃料の一連の循環する流れのことである。
- ^ 原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画抜粋(原子力委員会平成6年6月24日)、日本原子力研究開発機構:用語集『核燃料サイクル(原子燃料サイクル)』、 中島(1976) p.96
- ^ 平成17年大綱 pp.34-39、比較報告書(2004) はじめに
- ^ “原子力政策大綱”. 内閣府原子力委員会. 2011年5月31日閲覧。
- ^ “45年で10兆円投入 核燃サイクル事業めどなく”. 東京新聞 朝刊: p. 1. (2012年1月5日) 2012年1月12日閲覧。
- ^ “中国新聞 原子力を問う”. 中国新聞. (2004年6月11日) 2011年5月31日閲覧。
- ^ “日本の"核燃料サイクル"は破綻 世界はリサイクルせず"直接処分" 脱原発でも既にある放射性物質は残り続ける 「原発、どんな理想を持って"やるかやらないか"の問題」と専門家”. 関西テレビ放送 カンテレ (2023年8月10日). 2023年8月12日閲覧。
- ^ 再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)は、平成21年末現在で、1,664本が国内で貯蔵されている。ガラス固化体は、30~50年間冷却のために貯蔵された後、地下300mより深い地層中へ複数の障壁を施して埋設処分される予定である。
- ^ 再処理施設やMOX燃料加工施設から出る低レベル放射性廃棄物(TRU廃棄物)は、2009年3月末現在、日本原子力研究開発機構と日本原燃再処理施設内において、200ℓドラム缶に換算して約14.5万本の廃棄物が保管されている。
- ^ 各原子力発電所の運転により発生する低レベル放射性廃棄物は、減容等の処理をした後、最終的に埋設処分される。2009年3月時点で、各原子力発電所の貯蔵施設内に、200ℓドラム缶に換算して約62万本分が貯蔵されている。日本原燃は青森県の六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで、2009年3月までに、約22万本のドラム缶を埋設処理した。
『原子力施設運転管理年報』(平成22年版(平成21年度実績)) - ^ “低レベル放射性廃棄物の処分方法”. 日本原燃. 2011年10月21日閲覧。
- ^ 110万kW級の軽水炉の場合の廃棄物は総量約50~54万トン、その内放射性廃棄物は1万トンと見積もられており、これらも放射能レベルに応じて処理されなければならない。解体費用は数百億円と見積もられている。
- ^ 原子力施設運転管理年報(平成25年度版)202p-
- ^ “REMIX fuel ready for final test”. World Nuclear News. 世界原子力協会 (2021年11月11日). 2021年11月16日閲覧。
- 1 核燃料サイクルとは
- 2 核燃料サイクルの概要
- 3 日本における核燃料サイクル施設
- 4 核燃料サイクルの系列
- 5 プルトニウムの使用法
- 6 外部リンク
核燃料サイクルと同じ種類の言葉
- 核燃料サイクルのページへのリンク