日本紅斑熱 疫学

日本紅斑熱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/03 10:09 UTC 版)

疫学

日本の風土病であると考えられており、それ以外の国家での発生は見られていない。ただし、韓国南部での最初の発生事例が2006年に報告されている[5]。日本国内では関東以西の地域でのみ発生が見られる。当初は中部地方以南の太平洋側の温暖な地域に見られたが[1]、発生地域が拡大しており、2006年現在までに23府県から発生が報告されている[2]。ただし本菌を媒介すると考えられているチマダニ類は、日本全国に生息することが知られており、本疾患が関東以西でのみ発生する理由はまだ判っていない。

日本紅斑熱は、マダニの刺咬によってのみヒトに感染するため、その発生にはマダニの生態や生息域が大きく関与する。発生時期は4-11月であり、特にマダニが吸血を行う夏期に集中している。媒介するマダニは森林や山地に生息するため、竹林や田畑での作業中の感染が多い。類似の疾患であるツツガムシ病と比較すると、ツツガムシ病は全国的に発生が見られ、発生時期は地域によって春から初夏にかけての時期(東北・北陸地方)と、秋(それ以南の地域)に集中して発生する傾向があり、両者の発生動向には違いが見られる。

1984年の発見以降、日本では年間10-60件程度の発生が報告されている。1994年までは10-20名程度であったが、1995年以降は年間40-60名程度に増加しており、2007年には98件が報告されている[6][7][8]

マダニの分布域の拡大や検査体制の充実などから感染報告は増加傾向にあり、2017年には337件、2018年には305件、2019年には318件(2019年は13人が死亡)が報告されている[9]


  1. ^ a b c d 馬原文彦 2007.
  2. ^ a b つつが虫病/日本紅斑熱 2005年12月現在 国立感染症研究所 The Topic of This Month Vol.27 No.2(No.312)
  3. ^ 高田伸弘, 藤田博巳, 矢野泰弘, 及川陽三郎, 馬原文彦「日本紅斑熱の媒介動物」『感染症学雑誌』第66巻第9号、1992年、1218-1225頁、doi:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.66.1218 
  4. ^ [1] バイエル製薬 (PDF) [リンク切れ]
  5. ^ Japanese spotted fever, South Korea. NBCI
  6. ^ 日本紅斑熱 国立感染症研究所 感染症の話 2002年第25週号(2002年6月17日~6月23日)掲載
  7. ^ 日本紅斑熱による死亡例の発生について(情報提供) 厚生労働省健康局結核感染症課 平成20年8月1日
  8. ^ 年別報告数一覧(その1:全数把握) 国立感染症研究所 感染症情報センター
  9. ^ 日本紅斑熱、過去最多 20年、マダニ媒介の感染症―野外活動に注意を・厚労省”. 時事ドットコム. 2021年7月17日閲覧。
  10. ^ a b 岩崎博道, 伊藤和広, 酒巻一平「我が国におけるダニ媒介感染症の現状と課題」『日本内科学会雑誌』第110巻第10号、2021年、2270-2277頁、doi:10.2169/naika.110.2270 
  11. ^ a b c 田原研司, 藤澤直輝, 金森弘樹「島根半島弥山山地における日本紅斑熱患者数の減少に繋がったThe One Health Approach」『日本獣医師会雑誌』第74巻第7号、2021年、444-448頁、doi:10.12935/jvma.74.444 
  12. ^ 日本紅斑熱の治療 国立感染症研究所






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