日本学生支援機構 日本学生支援機構の概要

日本学生支援機構

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 20:11 UTC 版)

独立行政法人日本学生支援機構
JASSOが入居する東京工業大学すずかけ台キャンパス
正式名称 独立行政法人日本学生支援機構
日本語名称 独立行政法人日本学生支援機構
英語名称 Japan Student Services Organization
略称 JASSO
組織形態 独立行政法人
(中期目標管理法人)
所在地 日本
226-8503
神奈川県横浜市緑区長津田町4259番地
東京工業大学すずかけ台キャンパスS3棟
法人番号 7020005004962
資本金 1億円
(2019年3月31日現在)
負債 9兆6,637億4,932万5,564円
(2019年3月31日現在)
人数 役員7人(理事長1、理事4(うち理事長代理1)、監事2)、常勤職員232人
理事長 吉岡知哉
設立年月日 2004年4月1日
前身 日本育英会
財団法人国際学友会
財団法人内外学生センター
財団法人関西国際学友会
財団法人日本国際教育協会
所管 文部科学省
ウェブサイト www.jasso.go.jp
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設立根拠法は独立行政法人通則法及び独立行政法人日本学生支援機構法。理事長は吉岡知哉。主務大臣は、文部科学大臣。主務省所管課は、文部科学省高等教育局学生・留学生課。1980年代からの世代、学生だったものには、ガクト、内外学生センターと言ったほうが知られている[要出典]

概要

市谷事務所

2004年(平成16年)4月1日に、日本育英会財団法人日本国際教育協会財団法人内外学生センター財団法人国際学友会財団法人関西国際学友会の合併により設立された。

本部を神奈川県横浜市緑区長津田町の東京工業大学すずかけ台キャンパス内に設置する。なお本部には「支部総括室」のみが所属し、その他の部署は東京都内にある。

具体的には、旧日本育英会から引き継いだ日本人向け奨学金事業が育英会本部のあった新宿区市谷本村町の市谷事務所、旧日本国際教育協会から引き継いだ留学生事業の大半と旧内外学生センターから引き継いだ学生生活事業は江東区青海東京国際交流館にある青海事務所、そして留学生事業の一部が旧日本国際教育協会本部のあった目黒区駒場の駒場事務所と分かれている。また、旧国際学友会から引き継いだ東京日本語教育センターが東京都新宿区北新宿に、旧関西国際学友会から引き継いだ大阪日本語教育センターが大阪府大阪市天王寺区上本町の旧大阪外国語大学跡地に設置されている。さらに、北海道から九州にかけて日本各地に地方ブロック支部を置いている。

事業費を対象とした日本学生支援機構への寄付金は、税法上、特定公益増進法人への寄付金となる。また、学費の貸与を目的とした当該法人への寄付金は、指定寄付金とされ課税対象外となる。

発足以前の団体が個別に行ってきた日本人学生への奨学金貸与事業、外国人留学生に対する奨学金の給付事業や学生生活調査などの学生支援事業を総合的に実施する機関とされている。業務は、内外学生への日常業務としての支援の他、機構独自の講演会や育英友の会との留学生・奨学生地域交流集会共催などがある。

旧日本育英会時代からの積年の課題となっているのが、奨学金の返還滞納問題である。民間金融機関などと違い無担保であること、学生本人が債務者であることや奨学生採用決定時に将来の弁済能力は考慮に入れていない。2000年代に入り、奨学金予算は急激な予算拡大をしており、予算の膨張を背景にした安易な貸し付けが横行している側面も指摘されている。そのため、毎年、予算の縮小が求められている。

平成26年度(2014年度)奨学金の返還者に関する属性調査結果において、「だれに奨学金の申請を勧められたか」との質問に対し、「本人または親が主体的に申請した者に比べて、学校の先生等の勧めにより申請をした者が延滞となる傾向があることがうかがえる。」との調査結果が出た[1] ことからも高等学校における進路指導の在り方が問われている。

奨学金事業

国内

奨学金(給付型)

2017年度に先行実施され、2018年度に細部を先行実施時から変更の上で実施された制度の目的は、経済的理由により進学が困難な状況にある世帯の優れた生徒に対して、大学等への進学を後押しすることとされていた。この制度においては、進学先大学等の設置者(国公立、私立)・通学形態(自宅通学、自宅外通学)により給付金額が異なるが、最大で月4万円が給付される。通信制においては、面接授業を受講する年度において年額5万円の給付が受けられる他、最終学年かつ通年スクーリングが行われる場合に限り最大で月4万円が給付される。また、児童養護施設の入所者等においては、別に進学時に一時金として24万円が給付される。

2020年度に実施される制度は、対象機関として文部科学省等が指定する確認大学等に入学する者が対象である。経済的理由で進学をあきらめないように給付奨学金の対象者が広げられており、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生を対象としている。この制度においては、世帯の所得金額・進学先大学等の設置者(国公立、私立)・通学形態(自宅通学、自宅外通学)により給付金額が異なるが、最大で月75800円が給付される他、給付を受けている学生は授業料・入学金も免除又は減額される。通信制においては、世帯の所得金額にもとづいた区分により給付金額が異なり、最大で年額51000円の給付が受けられる。従前の通信制における給付制度と異なり、履修の形態は給付金額に影響を与えない。給付奨学金と第一種奨学金を併せて利用する場合は、第一種奨学金の貸与月額が制限される。

第一種奨学金(無利息)

専修学校専門課程)、高等専門学校短期大学大学大学院に在学する学生を対象とし、無利息で一定額を貸し付ける。本人の成績及び経済状況により選考される。

放送大学の全科履修生など大学等の通信教育課程に在籍する学生も、スクーリング(面接授業)に出席するなどの要件を満たすことで対象となる。また、学種により、学年や通学形態等で貸与金額が異なる。主に5科目の評定平均値が3・5以上の者。

大学院在学中に特に優れた業績を挙げた者を対象に、貸与期間終了時に大学院在学中の奨学金の全部または一部の返還が免除する制度がある。

第二種奨学金(利息付)

専修学校(専門課程)、高等専門学校(4・5年生)、短期大学、大学大学院に在学する学生を対象とし、利息付で一定額を貸し付ける。

こちらは奨学金と名がつくものの、実質的には学生ローンであり、卒業直後から数百万円の借金を背負うこととなる。返還不能に至る利用者も多く社会問題化している(下記参照)。放送大学の全科履修生など大学等の通信教育課程に在籍する学生も、スクーリング(面接授業)に出席するなどの要件を満たすことで対象となる。本人の成績及び経済状況により選考されるが、第一種の選考基準よりも緩やかな基準で選考される。また学種により、学年や通学形態等で貸与金額が異なる。主に評定平均値が3・0から3・4以下の者。

利率の選択
2007年度以前は奨学金に関わる利率について「利率固定方式」(市場金利の上下にかかわらず一定)のみが採用されていたが、2007年以降の採用分より、従来の「利率固定方式」に加えて「利率見直し方式」(返還期間中、概ね5年以内に利率見直しがなされる)も採用され、貸与者が自由に選択可能となった。尚、いずれの場合も利率上限は年3%であり、在学中は無利息である。

海外

第二種奨学金(海外)

国内の学校を卒業した後に、海外の大学へ留学する者を対象とし、利息付で一定額を貸し付ける。進学前に採用の申し込みを行う予約採用であり、 家計の経済状況により選考される。

第二種奨学金(短期留学)

国内の大学在学中に、海外の大学へ短期的に留学する者を対象とし、利息付で一定額を貸し付ける。留学前に採用の申し込みを行う予約採用であり、家計の経済状況により選考される。

奨学金事業の問題点

奨学金事業に対しては様々な問題点が指摘されている。以下に主たる問題点を列挙する。なお、給付型奨学金が以下の批判を受けて創設されるなどしたため、一部現状にそぐわない記述が含まれる。

採用・貸与・給与

日本学生支援機構が実施する奨学金事業は、第一種及び第二種のいずれとも「貸与型奨学金」であり、「事実上の教育ローン」に他ならず、返還義務を伴うため家計負担の軽減にならない[2][3] との批判があったこともあり、返済不要の給付型奨学金も創設された。

貸与とすることで、借用したい学生が概ね奨学金を受けることができるようになったメリットは存在する。しかしながら、安易な貸付がなされた結果のデメリットとしては、無利子(第一種)の滞納者数・滞納額がほぼ横ばいである一方、有利子(第二種)の滞納者数・滞納額が大きく増加している点が指摘されている[4]

基本的には家計基準で選考する(第一種は成績の基準点がある)
基本的には家計基準で選考する。また、大学1年生が借用する場合、成績に関しては奨学金が実際に貸与されていない「高校在学時」のものだけが考慮されている。なお、評定平均値3.5以上は一律に第一種基準内とする方式で、基準内の数値の良し悪しは選考の対象とはならない。

返還の滞納

卒業後に返還義務があるにもかかわらず、返還の滞納を行う者が後を絶たない。このことからも無駄な支出との指摘が避けられない。また、奨学金の原資には貸与者からの返済金が活用されていることもあり、滞納額の増加は奨学金事業そのものを崩壊させることになりかねない。2007年度末時点で奨学金滞納額は660億円に上っている。また、この問題では、未回収金のうち約130億円について、同機構側が貸出先住所について、卒業後半年間は奨学生と接触しないシステムを継続していることなど杜撰な管理をしていることにより、転居先を把握していなかったことが主因であることが、会計検査院の調査で判明している[5]
滞納者の個人情報を信用情報機関に登録
日本学生支援機構では滞納に歯止めを掛けるため、2010年4月より、61日以上滞納した利用者の個人情報氏名住所、勤務先、延滞額など)を信用情報機関である「全国銀行個人信用情報センター」に登録する。同センターの情報は、銀行消費者金融信販会社保証会社など、金融機関が貸し出し審査等に利用しているため、延滞情報や代位弁済情報(機関保証制度利用者に限る)を登録された場合には、携帯電話端末の割賦契約、保証会社を利用する賃貸住宅の契約、公営住宅の入居、クレジットカードの作成や各種ローン契約が出来なくなり、すでにクレジットカードやキャッシングカード等を契約している場合は、持っているカードが利用停止、場合によっては強制解約になる恐れがある[6]
また多重債務者に対しては、強制執行の申し立て・連帯保証人裁判所への申し立てなど、法的手段により回収を強化する。
原則として2009年度の貸与分(新規だけでなく継続の在学生も含む)から導入し、貸与希望者に予め情報提供の同意書を取り付け、同意しない者には貸与しない。また返還をしている卒業生には、順次郵送で同意書への同意を呼びかける[7]
延滞状況の改善ない大学名の公表へ
財務大臣の諮問機関である「財政等審議会」の財政投融資分科会は、各大学の回収取り組みを強化させるため、延滞状況の改善が進まない大学名を公表すると明らかにした。2009年度より実施する予定だった[8]。これは、目前に控えた2018年問題に対処する必要があるからである。結局、2017年4月に公表された[9]

注釈

  1. ^ 大平も裕福でない農家出身であり奨学金によって進学の機会を得た過去から趣旨には賛同できたが、設立目的のあいまいさには戸惑い、国の手による育英事業は本当の英才に限られるべきとの考えから、当初の中学20万人案はいうに及ばす、文部省の3万人案よりも少なく査定した。さすがに厳し過ぎることから大蔵省首脳からも批判され、最終的には主計局長の植木庚子郎(後に衆議院議員)に説得されて譲歩したという[10]

出典



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