新潟港
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新潟東港(東港区)
新潟市と豊栄市(当時)、聖籠町にまたがる地域に建設された掘込港である。
開削前の周辺は元々、小さな漁港と砂丘そして田畑が広がる地域だった。開削によって生じた土は、東港と同時期に建設が進められていた関屋分水路からの開削土と共に、新潟バイパスや亀田バイパスの盛り土として活用された。
開港当初は交通網も未整備で公共交通も脆弱であり、周辺は民家が点在する程度であった。そのため、海外から入港する船の乗組員は、新潟港での入港先を「East」と伝えられると、ひどく怪訝な態度になるほどだったという。
その後1980年代に入ると港内の係留施設が整い、航路網が充実、更に周辺の交通網が整備されるにつれ港内のファシリティは徐々に向上した。港周辺は工業団地として製造業・非製造業を問わず、数多くの企業が製造拠点や出先を設けている。
なお南埠頭には入港船の乗組員や周辺企業の従業員向けの厚生施設として1994年(平成6年)[29]に県が設けていた「にいがたポートセンター」があり、英語、ロシア語、中国語を話せる職員が常駐していた。しかし外国人船員の利用者が減少し、機能を果たさなくなったことから2006年末[30]をもって閉鎖・廃止された。
周辺ではロシアなどに輸出する中古車産業が発達していることが特筆される[31]。
東港一帯はみなとオアシスとして登録していて、聖籠町海のにぎわい館を代表施設とするみなとオアシス聖籠として周辺で行われる海洋レクリエーションやイベントの交流拠点となっている。
貨物
国際貨物航路
定期航路としては韓国、中国、台湾、香港、シンガポールなど東アジア、東南アジアを結ぶ外貿定期コンテナ航路がある。特に釜山港との間の日韓航路が週8便体制で運航。
2011年8月には、ロシア・トロイツァ(旧ザルビノ)港との間に航路が開設された[32]が、2013年以降は事実上休止となった。
日本沿岸とロシア・ボストーチヌイを結ぶトランスシベリア航路は休止されている。
工業
港内には石油、LNGの備蓄基地が置かれている。また敷地の多くは1970年代後半以降、県・新潟市・聖籠町によって工業団地として開発され、化学、食品、機械、精密など多岐にわたる業種が製造拠点や出先を設けている。東北電力は東新潟火力発電所を置いており、最大発電出力は4600MWと国内の火力発電所としては最大級の出力を有している。
なお日本石油(のち新日本石油、現JXTGエネルギー)は、西港区にあった新潟製油所の移転用地として中央埠頭東岸壁側の土地を取得した。だがその後移転計画は凍結されたため、暫定的利用法として「新潟サンライズゴルフ場」がオープン。しかし製油所はそのまま西港区で稼動を継続し、その後同社グループ内の合理化策により精製業務を取り止めた。このため移転は結局実現に至らず、用地は現在もそのままゴルフ場として供用されている。
一方、JXTGエネルギーは国際石油開発帝石や石油資源開発、コスモ石油など6社共同で、天然ガスを原料とした液化燃料の製造技術「GTL」の研究開発を進める「日本GTL技術研究組合」を組織して、北区太郎代の新潟市東港工業団地内に実証プラントを建設し、2009年春からGTLの製造実証実験を行っている。
この他、サンライズゴルフ場と国道113号を挟んだ向かい側の土地はサッポロビールが新潟工場の建設用地として取得したがこちらも建設計画が具体化せず、建設開始までの暫定供用策として1997年に「サッポロビール新潟ビール園」がオープンし営業を行っていた。しかし新潟工場の建設計画は日の目を見ることなく凍結され、ビール園も地ビールブームの衰退によって業績が悪化し閉店。その後、敷地の一部をNSGグループが賃借した上で県・新潟市・聖籠町などが合同で出資し、Jリーグ・アルビレックス新潟の練習場を兼ねた総合スポーツ施設「新潟聖籠スポーツセンター」が2005年4月1日に開場した。
埠頭
新潟県が管理する埠頭
- 中央埠頭
- 東埠頭
- 西埠頭
- 本州日本海側最大のコンテナターミナル。水深-12/-10/-7.5mが3バース、ガントリークレーン3基などを有する。第三セクターの「新潟国際貿易ターミナル」が運営。コンテナ貨物の増加で狭隘化しているためバース、ヤードの拡張工事が計画されている。
- 南埠頭
- 木材物揚場
- 網代物揚場
新潟県が管理する貨物駅
旧新潟臨海鉄道の鉄道施設は新潟県が引き継ぎ、西ふ頭 - 太郎代間 (1.0km) を廃止した上で現名称に改称し、黒山 - 西ふ頭間で営業を再開。この区間は新潟県の専用線扱いとして運行にあたっている。
この西ふ頭駅は県道とコンテナターミナルに挟まれた位置にあり、線路部分はフェンスで囲まれているが、藤寄 - 西ふ頭間は当面運行予定がないため国道113号の踏切部分には舗装が施されているため休止状態となっている。なお藤寄駅が至近距離にあり、そちらからの貨車利用は可能であるが、利用実績はない。
また現在休止している藤寄 - 西ふ頭間は終端部が西埠頭1号岸壁に接しており、周辺がコンテナターミナルとなっている立地条件に加え、近年東港のコンテナ取扱量が増加傾向にあり、陸上輸送の効率化が課題となっている。
民間が管理する埠頭
- 全農グリーンリソース
- 全農サイロバース
- 新日鉄バース
- 東北電力専用岸壁
- 新潟LNGバース
- 海洋運輸東港岸壁
- 日石ガスバース
観光
全国初となる釣り開放防波堤をはじめプレジャーボートパーク、海水浴場、交流施設がある。
- 聖籠町海のにぎわい館
- 網代浜海水浴場
- 釣り開放防波堤(新潟東港第2東防波堤)
- 新潟サンライズゴルフ場
釣り場としての東港
東港周辺は新潟市近郊でも随一の好漁場としても知られており、新潟市北区側の太郎代地区や聖籠町側の亀代地区を中心に、釣り船を出す網元や釣具店が数多く出店している。
しかし海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)の履行強化や、荒天時の危険防止などを目的に、県は2004年から港内の立入禁止区域を拡大するなど規制強化に乗り出し、釣り場が減少した。
だが港内に複数所在する防波堤や突堤は、周辺の中でも特に好漁場ともいわれていることもあって、立入禁止区域でありながらゲートを乗り越えて侵入する釣り人が後を絶たない。特に北区側から伸びる全長3.3kmの西防波堤は、外海に面している上に周辺水域の水深が深いため、沖合でしか釣れない魚も釣れることから侵入者が特に多いが、荒天時には高波による転落事故が多発して死傷者が出るなど非常に危険で、県では規制強化を進めている。
その一方で県は2010年夏から、釣りの愛好者らが管理・運営する形で防波堤を釣り場として開放できるかどうかも併せて検討しており、7月と10月には聖籠町側の第2東防波堤(約640m)を、入漁料の徴収や監視員の配置、釣り人へのライフジャケット着用義務化など対策を講じた上で試験開放した。これに関し、新潟県知事の泉田裕彦は10月の定例記者会見で「愛好家が釣りをできる環境を整備して、危険なところは立入禁止を強化するなど、両面で考えることが必要」と述べ、引き続き対策を検討する旨を表明した。
2023年1月3日夜、新潟東港の防波堤で釣り人の男性2人が海に転落し病院に搬送されたが死亡が確認された[33]。
- ^ 「日本海大交流時代を担う 新潟東港国際コンテナ埠頭」(PDF)『広報とよさか』第437号、豊栄市、1996年10月15日、4-5頁。
- ^ a b c “トキめき佐渡・にいがた観光圏観光圏整備計画”. 国土交通省. 2021年12月26日閲覧。
- ^ “新潟税関沿革史 (横浜税関月報附録 ; 24)”. 国立国会図書館デジタルコレクション. 2024年1月1日閲覧。
- ^ 松本和明. “佐渡島へのインフラの整備”. 新潟経済社会リサーチセンター. 2021年11月19日閲覧。
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- ^ a b c “新潟市歴史博物館 年報 第16号《令和元年度版》”. 新潟市歴史博物館. 2024年1月1日閲覧。
- ^ “旧新潟税関庁舎等(国指定史跡・重要文化財)”. 新潟市. 2024年1月1日閲覧。
- ^ “東京税関の歴史”. 東京税関. 2024年1月1日閲覧。
- ^ 高橋裕『河川工学』東京大学出版会p91
- ^ a b 『日本の港湾2020』(2021年3月31日、公益社団法人日本港湾協会発行)275頁。
- ^ その後1972年(昭和47年)5月26日、浚渫船「海麟丸」が河口部に埋没した機雷に触雷して沈没、乗組員2名が死亡し45名が重軽傷を負う事故が発生している。
- ^ 「1500メートル掘り込む中央水路 東港周辺、将来は24万人に」(PDF)『市報にいがた』第195号、新潟市、1968年5月20日、2頁。
- ^ 「新潟港 悲願実って特重港に昇格」(PDF)『市報にいがた』第167号、新潟市、1967年3月20日、1頁。
- ^ 「新潟東港いよいよ19日開港!」(PDF)『市報にいがた』第245号、新潟市、1969年11月15日、1頁。
- ^ 「カメラ足報:中国との貨物航路開設」(PDF)『広報とよさか』第422号、豊栄市、1995年6月15日、9頁。
- ^ 「定期コンテナ航路 新潟ー釜山に直行便 輸送日数・コストとも削減」(PDF)『市報にいがた』第1568号、新潟市、1997年3月16日、8頁。
- ^ 「まちづくり最前線ルポ 新潟東港と豊栄市」(PDF)『広報とよさか』第436号、豊栄市、1996年9月15日、10-11頁。
- ^ 「待望の重量物荷役機械完成 新潟東港」(PDF)『広報とよさか』第288号、豊栄市、1984年4月15日、7頁。
- ^ -現場ルポ- 港湾・空港工事 第5巻 はじめての海洋現場⑤護岸上部工事(国土交通省 北陸地方整備局 新潟港湾・空港整備事務所)
- ^ 「日本海時代の幕開け 宿願実って開かれた 新潟⇔ナホトカ 定期客船航路 期待ふくらむ沿岸貿易」(PDF)『市報にいがた』第151号、新潟市、1966年7月5日、1頁。
- ^ 「開かれた定期客船航路 新潟○・・・○ナホトカ 日本海の新幹線 と好評」(PDF)『市報にいがた』第200号、新潟市、1968年8月5日、1頁。
- ^ 「北東アジア フェリー航路開設で交流の促進を 日本・韓国・ロシア・中国の5都市が連携」(PDF)『市報にいがた』第2086号、新潟市、2007年2月18日、1頁。
- ^ a b “資料編”. 日本海横断航路のあり方検討委員会報告書. 新潟県. 2024年3月20日閲覧。
- ^ 「日本海横断航路 運航開始 6/29 韓国からフェリー来港」(PDF)『市報にいがた』第2211号、新潟市、2009年7月12日、1頁。
- ^ 「新潟⇔ナホトカ間 日本海側で初めて定期航路 悲願実って第一船就航」(PDF)『市報にいがた』第130号、新潟市、1965年8月20日、1頁。
- ^ “万代テラス”. 新潟県新潟地域振興局 新潟港湾事務所. 2021年9月22日閲覧。
- ^ “立ち入り禁止区域に客運ぶ 容疑の船長ら書類送検へ”. 読売新聞 (2021年12月9日). 2021年12月9日閲覧。
- ^ 「にいがたポートセンターについて、見直しを行っています。」(PDF)『東港工業地帯だより』第2号、新潟県、2006年3月29日、3頁。
- ^ 「にいがたポートセンターは平成18年12月29日(金)をもって閉館します。」(PDF)『東港工業地帯だより』第5号、新潟県、2006年12月1日、1頁。
- ^ 渡辺正和「新潟市におけるロシア船員向け中古車産業の展開 一「環日本海経済交流圏」構想の一例として一」(PDF)『地域調査報告』第15巻、筑波大学地球科学系人文地理学研究グループ、1993年3月。
- ^ 「新潟と中国東北部を結ぶ 「日本海横断航路」開設」(PDF)『市報にいがた』第2322号、新潟市、2011年8月28日、1頁。
- ^ “立ち入り禁止の港の防波堤で釣り 男性2人海に転落し死亡 新潟”. NHK. 2023年1月4日閲覧。
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