数式 数式の概要

数式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 13:32 UTC 版)

オイラーが1755年に書いた数式。

構文と意味

一般に数式には、その: value)が定められており、数式はその値を表現すると考えられている。数式の値の評価: evaluation)は、その数式に用いられる記号の定義あるいは値によって決まる。すなわち、数式はそれが現れる文脈に完全に依存した形で決まる。

構文論

各数式は構文論(シンタックス)的に構築され、正しく並べられた(well-formed: 整形の)ものでなければならない。それはつまり、使用が許された演算は、正しい場所に正しい数の引数を持ち、それら引数を構成する文字列は有効かつ演算の順番が明確であるようになっていなければならない、などを意味する。与えられた記号からなる文字列が構文規則に違反するということは、それは正しく並んでおらず数式として有効ではないということになる。

例えば、通常の算術において式『1 + 2 × 3』は正しく並んでいるが『× 4)x + , / y』は有効な式ではない。

意味論

数式にそれが表す意味を与えることを研究するのが意味論(セマンティクス)である。形式的意味論は、構文論的に正しい文字列として形式的に与えられる数式に、形式的に意味を付与する。

代数学において数式は「値」を指定することに利用できる(値はその式に現れる変数に割り当てられた値に依存してよい)。この「値」を決定する問題は、数式を構成する各記号に割り当てられた意味論に依って異なり、意味論の選択はその数式が属している文脈に依存して決まる。例えば、構文論的には同じ式『1 + 2 × 3』でも、演算の優先順位が文脈によって異なれば、異なる値(この場合、7 かもしれないし 9 かもしれない)を持ち得る。

このような意味論規則の中に、どのような値も持たないある種の数式(例えば、零除算を含む式)を宣言することは可能である(そのような式は「値が定義されない」とはいえ、それでもなお正しく並べられた式であることに変わりはない)。一般には、数式の意味は「指定された値」に制限されるものではない。例えば、その数式は条件を指定するものであるかもしれないし、それは解かれるべき方程式であるかもしれないし、あるいは数式それ自体をある種の規則によって操作可能な数学的対象と見なすことだってできる。ある種の数式では、それが値を指定するものであると同時にそれが持つと仮定された条件をも表すということも起きる(例えば、演算子 を含む数式が、直和という演算を施すこととその演算を施した結果として得られる対象を同時に表している、というようなこと)。

形式言語とラムダ計算

形式言語によって、正しい数式(: well-formed expression)の概念を形式化することができるようになる。

1930年代に「λ式」と呼ばれる新たな種類の数式が、アロンゾ・チャーチおよびスティーヴン・クレイニにより、函数とその評価を定式化するために導入された。λ式はλ計算数理論理学およびプログラミング言語理論英語版において用いられる形式体系—の基礎を成している。

任意の二つのラムダ式に対して同値性判定を行うことは決定不可能な問題である。実数を表現する数式に対する(つまり、整数から始めて四則演算や指数対数を用いて実数を構成する)場合もである(リチャードソンの定理英語版)。

変数

数式には(どくりつへんすう、: independent variable)、(じゆうへんすう、: free variable)あるいは(ふていげん、: indeterminate)と呼ばれる、その数式自体の中では値を持たないような記号を含むものもある。独立変数の評価は数式を含む文脈から外因的に与えられる。対して(じゅうぞくへんすう、: dependent variable)または(そくばくへんすう、: bound variable)と呼ばれる記号はその評価が特定の独立変数に結び付けられており、その対応する独立変数の評価が行われ値が決定されるごとに、従属変数自身の評価が同時に(従属的に)行われる。

回帰分析などにおいては、モデルの独立変数を(せつめいへんすう、: explanatory variable)と呼び、従属変数を(おうとうへんすう、: response variableresponding variable)とか(もくてきへんすう、: target variable[注 1]などと呼ぶ。確率論統計学の分野では確率変数の独立性などについて「独立」という言葉を多く用いるため、誤解を避けるため独立変数という言葉はあまり用いられない(説明変数は確率論の意味で独立でなくてよい)。


注釈

  1. ^ 目的変数という語はしばしば『response variable』の訳語として用いられる。また、目的変数に対応する語として『objective variable』という語があてられることもある。

出典

  1. ^ a b c d e 『新修百科辞典』 p.1286 三省堂 1934年
  2. ^ a b c d e f g 紙田公 著『改訂2版 電験2種電気数学』 p.7 電気書院 2013年


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