推理小説 推理小説の分類

推理小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/11 23:09 UTC 版)

推理小説の分類

下記の分類は、互いに相反するものとは限らず、一つの作品が複数の項目に当てはまることがある。

アメリカ探偵作家クラブが主催するエドガー賞長編賞では、ハードボイルド(『長いお別れ』など)、警察小説笑う警官など)、医療ミステリー(緊急の場合はなど)、スパイ小説(『寒い国から帰ってきたスパイ』)など推理要素のある様々なジャンルの小説が受賞している。

サブジャンル

本格ミステリ

推理小説のなかではもっとも一般的でかつ古典的なジャンルである。事件の手がかりをすべてフェアな形で作品中で示し、それと同じ情報をもとに登場人物(広義の探偵)が真相を導き出す形のもの。第二次世界大戦前の日本では、「本格」以外のものは「変格」というジャンルに分類された。なお、本格という呼び方は日本独自のもので、欧米ではフーダニットパズラーと称される(後述)。

密室殺人をはじめとした不可能犯罪を扱った作品の多くはこのジャンルに含まれる。

本格であるためには、解決の論理性だけではなく手がかりが全て示されること、地の文に虚偽を書かないことが要求される(わざと決定的な事実を明示せず曖昧に表現したり、登場人物の視点から登場人物自身の誤解を記述するのは問題がない)。たとえば、ある作品では列車に乗り合わせた子供の性別が問題になるが、題名にも地の文にも「男の子」「女の子」といった記述は一切なく、伏線として子供の振るまい(特定の玩具に興味を示す)が記述されている。作家はそれが伏線であることを隠蔽する努力も怠っていない。ただし、現代の視点では、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』には若干アンフェアな記述がある他、アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』はフェアかアンフェアかについて、有識者の間で議論を醸した。現代でも本格ミステリの愛好家にとってはフェアかアンフェアが関心事であり、本格の体裁から外れる作品について論争がある[28][29]

ハードボイルド

「ハードボイルド」と言う言葉そのものは、非常に多面的な意味合いを持つ言葉なのだが、「推理小説」の一ジャンルとして使われる場合には、登場人物(主人公も含めて)の内面描写をあまり行わず、簡潔で客観的な描写を主体とした作品を指す。ダシール・ハメットの作品を嚆矢とする。特徴的なのは、それまでの「推理小説」の主人公は、自ら行動を起こすことはあまりなく、提供されるわずかな手がかりを元に、内面的な思索を深めて事件を解決する、まさに「推理」に重点を置く傾向が強かったのに対して、「ハードボイルド」の主人公は概ね行動的で、自ら率先して捜査を行い、その結果を積み上げて解決に至る傾向にある。これは、ハメット自身が探偵の経験があり、それを作品に生かしたからだと言われている。私立探偵や類似する職業が主人公に選ばれることが多いためPI(私立探偵)小説と呼ばれることもあるが、必ずしも同じものではない。

私立探偵のフィリップ・マーロウを主人公とするレイモンド・チャンドラーの作品が有名。

コージー・ミステリ

ハードボイルドの反義語で暴力的表現や非日常性を極力排除した作品。主人公が素人探偵であるのも大きな特徴。非情さを前面に出さず、穏健で道徳的な作風なため、ハードボイルドに対して「ソフトボイルドSoft Boiled)」とも呼ばれる。

狭義には女性向けの「気楽に読める」内容のコメディタッチのミステリをいう。

アガサ・クリスティの『ミス・マープル』シリーズなど、女性の素人探偵が活躍する作品が多い。

安楽椅子探偵

探偵が事件現場に赴くことなく、情報として与えられた手がかりのみで事件を解決する作品やその探偵は安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)と呼ばれる。

構造的に推理と関係の無い要素を描く必要がなく、論理的推理に特化することができるため推理小説の極北とも言われるが、依頼者や助手とのやり取りを描くこともあり、厳密にデータのみで勝負している作品は少ない。アイザック・アシモフの『黒後家蜘蛛の会』シリーズは参加者の議論を聞いていた給仕が謎を解くという形式である。

身体障害者や老人など証拠集めのため動き回れない者が探偵役、介助者が証拠集めなど探偵を助けるワトスン役と役をはっきりと分ける作品もある。

最初期の名探偵であるC・オーギュスト・デュパンは訪ねてきた警視総監から聞いた話で事件を解決するため、安楽椅子探偵に含まれることもある。小説ではバロネス・オルツィの『隅の老人』シリーズ、レックス・スタウトの『ネロ・ウルフ』シリーズ、アガサ・クリスティミス・マープルものの短編集『火曜クラブ』(13作品のうち12作品まで)など。

サブジャンルとしてベッド・ディテクティヴがあり、こちらは怪我などで動けないため推理しか出来ないという設定である。シリーズものでは探偵役が怪我で動けなくなり、一時的に安楽椅子探偵となる作品もある。ジョセフィン・テイの『時の娘』、高木彬光の『成吉思汗の秘密』など。

犯罪者視点

倒叙から派生した犯罪心理小説は犯罪者の内面に目を向け、殺人に至る過程を描く作品であり、サスペンスの要素も含まれる。アントニー・バークリーの『殺意』、ジム・トンプスンの『内なる殺人者』など。

窃盗、詐欺、誘拐などで一攫千金を狙う姿を犯罪者の視点で描く作品は「ケイパー・ストーリー」と呼ばれ、警察や探偵を出し抜き大金を手にするという筋書きが多く推理小説とは別ジャンルとなるが、天藤真の『大誘拐』のように推理要素がある作品も書かれている。

ホラー/サスペンス/スリラー

恐怖を主題としたホラー、不安感を煽るサスペンス、スリルを表現するスリラーは必ずしも推理要素を含むとは限らないが、恐怖の様相を捜査や論理的な推理によって暴き出せば推理小説になりうる。殊にモダンホラー、サイコサスペンスといった、人間性や異常心理への恐怖を扱った作品では作例が多い。ジャンルとしては犯罪心理小説と重なる。

「孤島もの」で犯人への恐怖感を強めたり、探偵と犯人の頭脳戦をスリリングに描いたりするなど、他のジャンルに要素として取り入れられている。

法廷推理小説

法廷など司法の場が舞台となるジャンル。検事や弁護士が主人公となって、被告人の犯行を立証したり、逆に無実を証明して真犯人を暴きだしたりする過程が描かれる。法廷が主要な舞台とは限らないため、「リーガル・ミステリー」とも呼ばれる[30]

E・S・ガードナーが書いたペリー・メイスンシリーズ、和久峻三の『赤かぶ検事奮戦記』シリーズ、ゲームの『逆転裁判』シリーズなど。法廷もののシリーズ作品以外にもカーター・ディクスンの『ユダの窓』や高木彬光の『破戒裁判』などがある。

法律の知識を活かせることから、中嶋博行五十嵐律人フェルディナント・フォン・シーラッハなど現役弁護士の作家も存在する。

警察小説

警察官が主人公であるもの。謎解きそのものより警察の捜査活動の描写に重点が置かれる。警察官でありながら組織に反発する者が主人公だったり警察組織内部の情勢や暗部を題材としたりしたものもある。必ずしも推理小説であるとは限らず、アクション、サスペンスの要素に重点を置くもの、警察組織への風刺をこめたもの、逮捕後に法廷ものへ移行するもの、交番勤務など地味な活動に焦点を当てたものなど様々な作品がある。国際犯罪や公安警察を題材とした作品はスパイ小説に分類されることもある。

初の警察小説は1868年にウィルキー・コリンズが発表した『月長石』とされる[31]

科学捜査を主題とした作品では鑑識官や法医学者が科学・医学の知識を元に推理する作品もある。シャーロック・ホームズシリーズでも医師であるワトスンが証拠調べとして補助することはあったが、探偵役となるのは同時期にライバル誌で連載していた法医学者のジョン・イヴリン・ソーンダイクが活躍する作品が初期の例とされる。ジャンルの初期からあるが科学の進歩により新しい捜査手法が登場しており、最新の知見を反映した作品が定期的に発表されている。

知識や実務経験をいかせるため、濱嘉之佐竹一彦など元警察官の作家もいる。

日本警察小説は「ガラパゴス進化を遂げた」との見方もある[32]

スパイ小説

スパイ防諜活動を描くジャンル。エスピオナージュ(espionnage)とも呼ばれる。ジャンルとしてはハードボイルドや警察小説と重複する。

現実的な国際謀略を描いたものから、荒唐無稽なアクションまで多彩な作品が書かれており、前者の代表例はジョン・ル・カレのスマイリー・シリーズ、ロバート・ラドラムのボーン三部作、トム・クランシージャック・ライアン・シリーズ、フレデリック・フォーサイスのドキュメント・スリラー。後者の代表例としてはイアン・フレミングジェームズ・ボンド・シリーズが有名。アクション要素が強い作品はスパイ映画の原作となることも多い。

推理要素は必須とされないが、要人を暗殺した犯人や護衛対象を狙う殺し屋を探すなどスパイ要素に絡めた作品もある。フレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』は暗殺犯と警察の頭脳戦が主題となっており、エドガー賞長編賞を受賞している。

スパイ・ミステリ・暗殺といった要素を内包する演劇のジャンルは外套と短剣とも呼ばれる。

医療ミステリー

病院や診療所を舞台とし、主人公が医師看護師などの医療従事者であるジャンル[33]

医学の知識を用いて謎を暴くのが基本であるが、架空の病気を題材としたSFに近い作品、医療制度の問題を描く社会派に近い作品など様々な作品がある[33]

知識や実務経験があるため、海堂尊知念実希人など現役の医師が執筆する例もある[33]

時代ミステリ

過去の時代を舞台としたもの。探偵役やワトスン役、容疑者や犯人・被害者役が史実上の実在人物という設定もある(織田信長、水戸黄門千坂兵部など)。

日本では特に江戸時代を舞台にした「名奉行もの(お白州もの)」や「捕物帳」といったジャンルがある。「名奉行もの」は一種の法廷ものである。「捕物帳」は岡本綺堂の『半七捕物帳』を嚆矢とし、緊密な構成をもった本格物から江戸風俗の描写に力を入れたものまで幅広い。歴史ミステリと特に区別なく使用されることがしばしばある。

シャーロック・ホームズシリーズのように長く人気を保ち、後代の作家によって続編が書かれつづけた結果、時代ものとしての一面も持つに至った作品もある。

歴史ミステリ

歴史上の謎に、現代の探偵役が資料などを元に取り組むもの。史実における謎を真面目に取り扱った作品も存在するが、多くはフィクションとしての面白さを狙った奇抜な回答が用意されることになる。純粋に歴史上の謎のみを解決することは少なく、ほとんどの作品では探偵役と同時代の犯罪事件の解決も付随している。退職した刑事が迷宮入りした過去の事件を再検討する作品は警察ものに分類される。

ジョセフィン・テイの『時の娘』、高木彬光の『成吉思汗の秘密』など。

SF/ファンタジー/オカルト

魔術師超能力者が存在する状況、死者が甦る状況、宇宙の果てを航行する宇宙船の中、人類と異なる思考体系の知性体との共同社会など、現実世界ではありえない状況・環境を許容する世界観の中で発生した事件について、その世界観の下で論理的な捜査と考察を行えば推理小説になりうる。日本ではこのような非現実的な状況下において論理的な推理で事件を解決する作品に対し、米澤穂信による『折れた竜骨』の後書きや解説[34]から「特殊設定ミステリー」という用語が使われるようになった[35][27]。日本でのヒットは超能力による頭脳戦、デスゲームのような極限の状況下、複雑なルールのギャンブルを描いた漫画の影響が指摘されている[27]

論理性よりもSFや超能力の設定を重視し、ノックスの十戒では批判された(大半の読者には)理解出来ない高度な科学技術や、超能力による犯罪・解決をメインに据えた作品も多い。

SFミステリではロボットの殺人を禁じたロボット工学三原則を逆手に取った『鋼鉄都市』などアイザック・アシモフが多数の作品を執筆している。また未来を舞台に科学技術による犯罪と、進歩した科学捜査を駆使する警察を描いた「SF警察もの」も存在する。アルフレッド・ベスターの『分解された男』はテレパシー能力をもつエスパーが存在する世界の犯罪と警察活動を描いている。

サイバー犯罪のように執筆時点では空想であったが技術の進歩により現実となった例もある。

井沢元彦の『猿丸幻視行』のようにタイムトラベルものの歴史ミステリもある。

ファンタジーミステリとしては、密室で魔法使いが殺されたという事件を扱ったランドル・ギャレットの『魔術師が多すぎる』、マジックアイテムを用いた殺人事件を「嘘看破」の呪文を駆使して捜査する山本弘の『死者は弁明せず』などがある。

現実世界を舞台に幽霊吸血鬼などオカルト超自然的要素が絡む作品はオカルト・ディテクティブ・フィクション英語版、サイキック・ディテクティブ、スーパーナチュラル・ディテクティブなどと呼ばれ[36]西澤保彦の『神麻嗣子の超能力事件簿』や城平京の『虚構推理』、漫画では松井優征の『魔人探偵脳噛ネウロ』などがある。

パズル・ミステリ

事件そのものの推理よりも暗号パズルなどの謎解きに重点が置かれる作品。

ストーリーは重視されず、トリックが解けると結末は数行で纏められたり、そのまま作品が終了しその後が描かれない作品もある。舞台背景も重視されず、謎を成立させるために非現実的な設定(1人は必ず嘘をつき、もう1人は必ず真実を話す双子など)の作品もある。分量が少ないため短編集やショートショート集が多い。アイザック・アシモフの『ユニオンクラブ奇談』シリーズはショートショート集である。

ゲームブック形式もあり、1936年に発表されたデニス・ホイートリーの「捜査ファイル・ミステリー・シリーズ」は警察の捜査書類や証拠写真のページを読んで、袋とじになった解決編に書かれた犯人を当てるゲームができるようになっている。

ストーリー性が薄く、数学パズルに簡単な設定を付けたものや、ほぼ論理クイズ(ロジックパズル)となっている作品もある。これらはクイズ集やパズル集として出版されており、多くはクイズやパズルの作家が執筆している。推理作家の作品としてドナルド・ソボルの『2分間ミステリ』シリーズは、短い本文に全ての証拠が提示されおり、それを2分間の制限時間で推理するというクイズを集めた短編集である。

極端な例として京都大学推理小説研究会はジグソーパズルと推理小説を組み合わせた『推理小説×ジグソーパズル 鏡の国の住人たち』を刊行した[37]

子供向け絵本の『いますぐ名探偵 犯人をさがせ!』は、最初から証拠と容疑者の素性提示されており、その情報から犯人を推理することで論理性を養うことを目的としている[38]

ジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』に収録された『密室講義』や、江戸川乱歩の『類別トリック集成』などトリックの分類や解説をした評論もある。

なお、英語圏での分類である「パズラー(Puzzler)」「パズル・ストーリー(Puzzle Story)」は、ここでいうパズル・ミステリではなく、日本語での分類に則せば本格ものに近い。

奇妙な味

推理小説とも怪奇小説ともつかない奇妙なもので、文学小説として分類されることもある。

推理作家でない作家が書くこともあり、ロアルド・ダールは短編を多数執筆した。

日本独自のサブジャンル

社会派

一般に、社会性のある題材を扱い、作品世界のリアリティを重んじる作風を指す。事件そのものに加え、事件の背景を綿密に描くのが特徴。日本では1960年代から長らく主流が続いた。松本清張の作品がその代表とされる。1990年代以降は高村薫がこの代表である。

新本格ミステリ

字義としては「新たな本格」であり、ミステリ史上いくつかの使用例があるが、日本では特に、1980年代後半から90年代にかけてデビューした一部の若手作家による作品群を指すことが多い。綾辻行人有栖川有栖法月綸太郎等がこの代表である。各作家による差異はあるが、一般に古典的ミステリ(特に本格もの)に倣った作風を特徴とする。ただし「新本格」という用語にはこれ以前にも別の用例があり、またミステリの拡散状況もあって、現在では歴史的な用語に近くなっている。

メタミステリ

推理小説の形式自体を題材にした、あるいは利用した推理小説[39]。曖昧に使われているが、広くいえば言語の自己言及性そのものに謎を見出す作品。小説中にAとBの2つの部分が交互に現れ、Aに現れる登場人物がBを、Bに現れる登場人物がAを執筆しているという合わせ鏡的プロット(有栖川有栖の「学生アリスシリーズ」と「作家アリスシリーズ」等)や、作中作を利用した再帰的構造の一番奥の部分が、全体の枠組みに言及する循環構造プロット、「探偵」「犯人」「ワトスン役」「読者への挑戦状」など推理小説の定義を利用したトリック、「登場人物一覧の虚偽」、著者・編集者・読者など小説外部の人間が犯人など商品としての書物自体を含んだプロットなどが挙げられる。

本格作品(前述)の〈手がかりをすべて作中に示す〉ことが作中でどのように保証されるかを問題にしたプロット(「本格」としての解決の後、それが実は作中作であって、後日談があって、新たな捜査の進展があって、意外な真相がさらに明らかにされる、など)も含まれ、この種の推理小説自体の枠組みに対し疑念を呈する作品を「アンチ・ミステリー」(反推理小説)と呼ぶことがある。

日常の謎

日常生活の中でふと目にした不思議な現象などについて、その理由・真相を探るもの。

犯罪の場合も「教室からある物が無くなった」など警察が関与するほどではない軽微なものであるため、少年探偵が活躍する青春ミステリ(後述)に多く採用されており、ジャンルが重複している。

代表的な作家に北村薫加納朋子等がいる。

青春ミステリ

主人公もしくはそれに近い人物に、思春期・青年期を迎えた人物を配したミステリ。多くは小説の進行に伴って、主人公およびその周辺の人物の成長が描かれる。学校を舞台とした学園ミステリの多くを包含する。当初ライトノベルジュブナイル小説のレーベルで発表された推理小説は多くがここに属する。

古典的な代表作に赤川次郎の『セーラー服と機関銃』、小峰元『アルキメデスは手を汚さない』、栗本薫『ぼくらの時代』等があり、2000年代以降の書き手では米澤穂信辻村深月などが著名である。

米澤穂信の「〈小市民〉シリーズ」、「〈古典部〉シリーズ」のような「日常の謎」系の作品から桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』のように陰惨なテーマを扱ったもの、ごく普通の少女だった主人公が如何に推理力を育てたかを描く松岡圭祐の『万能鑑定士Qの事件簿』シリーズまで、作風は幅広く存在している。

児童文学との境界が曖昧で、はやみねかおるの「名探偵夢水清志郎事件ノートシリーズ」や松原秀行の「パソコン通信探偵団事件ノートシリーズ」は特に低年齢層に支持されている。

推理要素を持つ海外の作品にはエーリッヒ・ケストナーの『エーミールと探偵たち』、ドナルド・ソボルの「少年探偵ブラウンシリーズ」、1930年から著者を変えて続く「少女探偵ナンシーシリーズ」などの少女探偵ものがあるが、海外では児童文学やジュブナイル小説に分類される。『パイは小さな秘密を運ぶ』から始まるアラン・ブラッドリーの「少女探偵フレーヴィアシリーズ」の邦訳は創元推理文庫から推理小説として出版されている。

トラベル・ミステリ

広義には、有名な観光地を舞台にするなど、探偵役が何らかの形で観光に関わる作品を指す。旅先の情景や風土といった旅行記的な要素も人気の一因で、テレビドラマや映画など、映像化に適したジャンルでもあり、その面での傑作も多い。日本では西村京太郎の多作によって、人気ジャンルの一つになっている[40]。主に京都を舞台とした山村美紗の多作と多数のテレビドラマ化もこれに寄与している。

狭義には、鉄道や航空機などの交通手段を用い、その運行予定表の裏をかいたアリバイ工作の登場する作品。鉄道の場合時刻表を駆使したトリックが使われることが多く「時刻表もの」とも呼ばれるが、車両の構造を利用する例もある[41]。特に日本では鉄道の定時性が極めて高く、国民の間で広く利用されていることが、このジャンルの成立と人気を支えている。

鮎川哲也が先駆的作品である『ペトロフ事件』で初めて列車の時刻表を用いて以降、時刻表ミステリが定番となった。松本清張は社会派とされるが、代表作のひとつ、『点と線』は、時刻表ミステリの代表的作品といえる。

海外では公共輸送機関の定時性が日本ほど厳密ではないため時刻表トリックは成立しにくいが、欧米では上流階級がクルーズ客船クルーズトレインでヨーロッパを旅行するというシチュエーションは自然であるため、『オリエント急行の殺人』のような走行中の列車内で探偵が事件に遭遇する「動く密室」としての利用が多い。このような作品は通常、本格ものに分類される。

バカミス

日本における分類の1つで、リアリズムを意図的に無視したトリックなど結末の「バカバカしさを重視するミステリー」と、結末を知って「そんなバカな!!と驚くようなミステリー」の二つを意味が混在している。

前者の意味での代表作は蘇部健一の『六枚のとんかつ』など。

エロミス

推理小説に性的な描写やアダルトな展開などの官能的な推理を混ぜたジャンルである。性が重要なキーワードとなる場合もあり、映像化不可能と宣伝される物もある。また、余りにエロティック過ぎてバカミスと称されることもある。

代表作は早坂吝の『○○○○○○○○殺人事件』など。

イヤミス

読むと嫌な気分になるミステリー、後味の悪いミステリーのこと。社会派、ホラー、青春小説などジャンルは様々である。イヤミスという言葉を最初に使ったのは、霜月蒼とされ[42]、『本の雑誌』2007年1月号で「このイヤミスに震えろ!」というタイトルの連載がスタートしている[43]

代表的な作家に湊かなえ沼田まほかる真梨幸子秋吉理香子歌野晶午貫井徳郎らがいる。


注釈

  1. ^ 厳密には、作中に登場する「ムーンストーン」は月長石ではなく、黄色い透明のダイヤモンドである。
  2. ^ シーリー・リジェスター著『The Dead Letter』(1866年)が先という異説あり。
  3. ^ 『トフ氏と黒衣の女』論創社 論創海外ミステリ1(2004年)裏表紙解説。クリーシーは12のペンネームを使い、短編集と非ミステリの普通小説も合わせると、出版された作品は600冊を超す。
  4. ^ 太陽がいっぱい』(1960年)および『リプリー』(1999年)
  5. ^ 詐欺師のクレイ大佐のシリーズとも言えるが、表題は騙される大富豪チャールズ・ヴァンドリフトを指し、物語も被害者側からの視点で語られている。
  6. ^ 表題は調味料セールスマン(行商人)のスミザーズが語る物語を意味する。彼が出会った殺人や、引退した警部から聞いた事件を語るもの。日本では第一短編『二壜の調味料』が多くのアンソロジーに収録。
  7. ^ 英米版で原題が異なるため、「大空の死」の邦題もあり。
  8. ^ 1934年の最初の歴史ミステリ Devil Kinsmere を後年書き直した長編
  9. ^ ドイツ・北欧ミステリが流行するのは21世紀(早川書房で翻訳が増え、ミステリマガジンで特集)
  10. ^ それまでは、「ダートムア小説」とも呼ばれる一連の「田園小説」で有名。推理もの第一長編『灰色の部屋』の前に、ミステリ要素のある『吝嗇家の隠し金』(1920年)があるが未訳
  11. ^ 『大統領殺人事件』を書いたジョルジュ・ミシェルの100歳が最高齢と言われる(『赤毛のレドメイン家』解説:長谷部史親折原一
  12. ^ 「オベリスト」とは「疑問を抱く人」を意味する作者の造語(エラリー・クイーン『クイーンの定員』1951年)
  13. ^ Dean Street Press社では電子書籍でも購買可能。
  14. ^ 20世紀末の日本で綾辻行人を嚆矢とした、海外のクイーンやカーを再現したような「本格」派を、海外作家と区別して「日本の新本格派」とも呼ばれることがある
  15. ^ バーバラ・ヴァイン名義のサイコスリラー長編はCWA賞ゴールド・ダガー賞を複数回受賞している。
  16. ^ 直訳は「赤い収穫」だが、「血の収穫」の邦題もあり。
  17. ^ グレゴリー・ペックとロバート・ミッチャム、マーティン・バルサムはリメイクの『ケイプ・フィアー』で、前作とは正反対の役でカメオ出演している
  18. ^ 近年の翻訳が村上春樹の訳であることも一つの要因(『さよなら、愛しい人』解説)でもある
  19. ^ 『ロアルド・ダール劇場 予期せぬ出来事』(1979年)ではダール自身が作品の案内役として画面に登場する。
  20. ^ ルパンやフランボウ、四十面相クリークは老婆や大女など自在に化けられるが、トゥーイの主人公は美女にしか変装できない。
  21. ^ 小鷹信光、法月綸太郎らが高く評価している(『物しか書けなかった物書き』解説)
  22. ^ 「3F」のFは「female」を指す。
  23. ^ 他の人物は時間経過で年を重ねている(例えば『赤髯王の呪い』では、青年だった事件関係者は老齢になったり、死去したりしている)。
  24. ^ 日本語訳では文庫本も同様の趣向(中央公論社
  25. ^ フレミングの『死ぬのは奴らだ』(Live And Let Die )のもじり。
  26. ^ フレミング原作から引き続きDr.Noと、007映画から殺し屋「ジョーズ」などがシリーズを通じて悪役で登場。『ジェームズ・ボンドJr』としてアニメ化。Marvel Comicsで漫画化。
  27. ^ 朝鮮語(北朝鮮)では「リ・ヘジョ」読み。
  28. ^ 複数の作家による合同企画で1951年(昭和26年)3月から京都新聞に連載された『黒門町の傳七捕物帳』が基になっており、その「新作」として陣出が『伝七捕物帳』を執筆しているため、完全なオリジナル作品ではない。
  29. ^ 木々高太郎が考案した「頭脳パン」も今日でも製造、販売されている。
  30. ^ クリスチアナ・ブランドニコラス・ブレイク、エドマンド・クリスピンらポスト黄金時代のトリッキーな作家群を江戸川乱歩は「新本格派」と命名している。
  31. ^ 第26巻以降は、ボワロー=ナルスジャック原作のルパンもの。
  32. ^ モーリス・ルブランの短編『地獄のわな』と『麦わらのストロー』のプロットやトリックが物語の導入部にある。
  33. ^ 作者は前書きや物語の冒頭で、「意外な犯人」を書くことを宣言している。
  34. ^ 作者は東京出身だが、内田の父が長野県長野市出身。
  35. ^ 舞台は愛知県にある妃真加島(ひまかじま)。主人公の犀川創平はN大学(テレビアニメでは国立那古野大学)で教えている設定。
  36. ^ テレビドラマ『牟田刑事官事件ファイル』では、主役の牟田警視は神奈川県警察本部に所属し、横浜市内の警察署に勤務する設定に変更されている。
  37. ^ 「民間顧問探偵」の訳もある。
  38. ^ 「探偵役の友人」が語り手というのは、これより古いポーの推理小説(『デュパンシリーズ』や『黄金虫』、探偵役の「知人」まで範囲を広げると『お前が犯人だ』も該当。)からある手法。なお、これらの語り手は最後まで人称代名詞でしか呼ばれず名前は不明。
  39. ^ 調味料セールスマン(行商人)のスミザーズが語るシリーズだが、日本では最初の「二壜の調味料」(The Two Bottles of Relish )のみ知られている。次の「スラッガー刑事の射殺」は前作の事件を捜査し、語り手とともに現場を訪れた警察官が被害者になっている。
  40. ^ probability、蓋然性

出典

  1. ^ 推理小説(すいりしょうせつ)とは - コトバンク
  2. ^ a b 山村正夫『推理文壇戦後史』p.87(双葉社1973年
  3. ^ 『グレアムズ・マガジン(英語版)』1841.4
  4. ^ 北條文緒ニューゲイト・ノヴェルとその背景」『東京女子大学紀要論集』第27巻第2号、東京女子大学、1977年3月、83-115頁、CRID 1050001337660421632ISSN 04934350 
  5. ^ 研究書として北條文緒による『ニューゲイト・ノヴェル : ある犯罪小説群』がある(1981年 研究社選書14 ISBN 978-4327342142)。
  6. ^ 日本語訳は、藤本隆康 訳『ニューゲイト・カレンダー大全 全5巻』がある。藤本隆康 訳『ニューゲイト・カレンダー大全 全 5巻』 大阪教育図書株式会社、第1巻:2003年 7月 ISBN 978-4271114635、第2巻:2004年12月 ISBN 978-4271114666、第3巻:2005年12月 ISBN 978-4271114680、第4巻:2006年11月 ISBN 978-4271114741、第5巻:2006年12月 ISBN 978-4271114789
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  8. ^ 『昭和ミステリ秘宝 横溝正史翻訳コレクション 鍾乳洞殺人事件 / 二輪馬車の秘密』解説
  9. ^ 『ハーフペニー・マーベル(Halfpenny Marvel)』誌6号(1893年12月10日)
  10. ^ 『カリブ諸島の手がかり』(国書刊行会 世界探偵小説全集15)巻末解説
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  14. ^ ハヤカワ・ミステリ(A Hayakawa Pocket Mystery Book)949『アラベスク』(1961年)
  15. ^ 光文社文庫『クイーンの定員 I』(1992年)などに収録。
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  59. ^ 歯と爪 - ビル・S・バリンジャー/大久保康雄 訳|東京創元社http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488163044 






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