持続可能な開発のための教育 持続可能な開発のための教育の概要

持続可能な開発のための教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/05 22:39 UTC 版)

概要

持続可能な開発のための教育(ESD)は、持続可能な社会づくりの担い手を育む教育である[1]。環境、貧困人権、平和、開発といった"持続可能ではない将来を招く"課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む (think globally, act locally) ことにより、それらの課題の"持続可能な"解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動を指す[2]

これらの問題に対して、各国の政府や国際連合が主体となって取り組んでいるほか、日本では市民社会を中心に民間主体における取り組みも多数行われている。NGO非営利団体教育機関企業など様々なステークホルダーが連携し、地域密着型の教育を行うことで、市民全体が主体的に問題意識向上・改善策の発想を行い、その実践を地域主体で行うことに繋げることが理想とされる。

また、持続可能な開発のための教育は、教育の場や学習者の年齢を限定せず、場所・時間に縛られずに誰もが参加することのできる生涯学習でもある。その成功例の多くは各々の地域に深く根付いている。

SDGs

2015年の持続可能な開発目標 (SDGs) のゴール4「質の高い教育」の項目7では、持続可能な開発のための教育 (ESD) とともにグローバル・シチズンシップ (Global Citizenship) がキーワードとして記されている[3]

持続可能な開発のための教育 (ESD) は地球市民教育 (Global Citizenship Education, GCED) とともに国際連合教育科学文化機関 (UNESCO) が提唱する主幹教育プログラムに位置づけられている[4]

経緯

  • 1980年 - 国連環境計画 (UNEP)・国際自然保護連合 (IUCN)・世界自然保護基金 (WWF) が提出した「世界自然保全戦略」で、「持続可能な開発」の概念が示される。
  • 1987年 - 環境と開発に関する国際連合会議で、議長を務めたグロ・ハーレム・ブルントラントによって「持続可能な開発 (sustainable development)」という表現が用いられ、この概念が広く理解される。
  • 1992年 - ブラジルリオデジャネイロで開かれた、地球サミット(国連環境開発会議)において、「持続可能な開発」の実現に向けた話し合いがもたれる。成果文書の一つである国際的行動指針「アジェンダ21」に、教育の重要性が盛り込まれる。
  • 2002年 - 持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)で日本政府およびNGOが「持続可能な開発のための教育」(ESD) を提唱[5]
  • 2002年12月 - 第57回国連総会本会議で、2005年から2014年までの10年間を「国連持続可能な開発のための教育の10年(UNDESD, 国連ESDの10年)」とする決議案が採択される。ユネスコがESDの主導機関に指名される。これにより、各国がユネスコ提案の国際実施計画案に基づき、実施措置を取ることが求められるようになる。
  • 2003年7月 - ユネスコより「ESDの10年国際実施計画2005~2014」の草案が発表され、パブリックコメントの受付が開始される。
  • 2004年10月 - 第59回国連総会にユネスコの「国連持続可能な開発のための教育の10年実施計画」最終案が提示される。
  • 2004年11月 - 「持続可能な開発のための教育の10年」に関する決議案が採択される。
  • 2005年3月1日 - 国連本部(ニューヨーク)にて「国連持続可能な開発のための教育の10年」開始記念式典が開催される。
  • 2009年3月31日から4月2日 - ドイツのボンにおいて、「国連持続可能な開発のための教育 (ESD) 世界会議」が開催され、「ボン宣言」が採択される[6]
  • 2012年 - ブラジルのリオデジャネイロで開かれた国連持続可能な開発会議(リオ+20)における宣言文の中で、2014年以降もESDを推進することが盛り込まれる。
  • 2013年11月 - 第37回ユネスコ総会において、「国連持続可能な開発のための教育の10年」(2005~2014年)の後継プログラムとして「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム (GAP)」が採択される[1][7]
  • 2014年7月19日 - 「持続可能な開発目標」(SDGs) を、国連総会のオープン・ワーキング・グループがミレニアム開発目標(MDGs)を引き継ぐものとして提案[8]
  • 2014年11月4日から8日 - 岡山県岡山市で、「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ会議」のうちステークホルダーの主たる会合が開催される[9]
  • 2014年11月10日から12日 - 愛知県名古屋市で、「持続可能な開発のための教育 (ESD) に関するユネスコ会議」のうち閣僚級会合及び全体のとりまとめ会合、フォローアップ会合が開催される[10][11]
  • 2015年9月 - ニューヨークで開かれた国連サミットにおいて、「持続可能な開発目標」(SDGs) を中核とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択される。

日本における取組

2015年まで(国連「持続可能な開発のための教育の10年」終了まで)の取組

  • 政府は2005年(平成17年)12月、「国連持続可能な開発のための教育の10年」に向け関係行政機関の連携を図るため、「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議を内閣に設置した[12]。連絡会議では、「国連持続可能な開発のための教育の10年」に関する日本実施計画を定め発表した。
  • 上記の実施計画に基づき、環境省2006年に「国連持続可能な開発のための教育の10年促進事業」の実施地域を募集し、10地域を採択した[13]
  • 持続可能な開発のための教育(ESD)円卓会議が、2015年(平成27年)に設置された[14]
  • 文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会は、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置付けている[15][16]

ESDオフィシャルサポーター

日本ユネスコ国内委員会広報大使

2016年以降の取組


  1. ^ a b 文部科学省 > その他 > 国際関係 > 日本ユネスコ国内委員会 > ユネスコの活動(教育) > 持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development) > ESD(Education for Sustainable Development)
  2. ^ 及川 2021, p. 11-14.
  3. ^ グローバル・シチズンシップで世界をつなぐ”. JICA. 2022年4月18日閲覧。
  4. ^ 小林亮「ユネスコの地球市民教育が追究する能力 ―グローバル時代における価値教育の新たな展望―」『玉川大学教育学部紀要』第18巻、2019年3月、19-32頁、hdl:11078/1376ISSN 1348-3331NAID 1200068682332023年1月17日閲覧 
  5. ^ Ko Nomura and Osamu Abe (2009). “The Education for Sustainable Development Movement in Japan: A Political Perspective”. Environmental Education Research 15 (4): 483-496. doi:10.1080/13504620903056355. https://doi.org/10.1080/13504620903056355. 
  6. ^ 内閣官房 >政策課題 > 「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議 >ボン宣言概要 (PDF)
  7. ^ UNESCO > 2014年ESD世界会議 > 2014年以降のESD > グローバル・アクション・プログラム
  8. ^ 国際連合広報センター >ニュース・プレス >特集/背景資料 >持続可能な開発目標、国連総会のオープン・ワーキング・グループが提案
  9. ^ 文部科学省>ESD(持続可能な開発のための教育)>ステークホルダーの主たる会合
  10. ^ 「ESDユネスコ世界会議あいち・なごや支援実行委員会」ウェブサイト
  11. ^ 及川 2021, p. 14-15.
  12. ^ 内閣官房 >政策課題 > 「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議
  13. ^ 環境省 > 報道・広報 > 報道発表資料 > 平成18年度「国連持続可能な開発のための教育の10年促進事業」の採択について。当時採択されていたのは、北海道石狩郡当別町、仙台広域圏・宮城県全体、江戸前の海(羽田から船橋にいたる東京湾奥部)沿岸地域、山梨県北杜市須山町増富地域交流振興特区、静岡県三島市・その周辺地域、愛知県春日井市高蔵寺廻間町・石尾台地区など)、大阪府豊中市兵庫県西宮市高知県幡多郡大月町柏島、北九州市である。
  14. ^ 文部科学省 > その他 > 国際関係 > 日本ユネスコ国内委員会 > ユネスコの活動(教育) > 持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development) > 持続可能な開発のための教育(ESD)円卓会議
  15. ^ 文部科学省 > その他 > 国際関係 > 日本ユネスコ国内委員会 > ユネスコの活動(教育) > 持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development) > ユネスコスクール
  16. ^ 及川 2021, p. 17-18.
  17. ^ 「ESDオフィシャルサポーター」の発表について
  18. ^ ESD活動支援センター
  19. ^ 2017年4月29日 日本ESD学会設立総会を開催しました - 日本ESD学会”. 日本ESD学会. 2023年6月26日閲覧。


「持続可能な開発のための教育」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「持続可能な開発のための教育」の関連用語

持続可能な開発のための教育のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



持続可能な開発のための教育のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの持続可能な開発のための教育 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS