手榴弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/22 01:48 UTC 版)
殺傷を目的としない手榴弾
閃光手榴弾(スタングレネード)
ハイジャックなどの人質事件のうち、安易な殺傷が許されない状況において閃光手榴弾(スタングレネード)(stun grenade)やフラッシュバン(flash bang)と呼ばれる特殊な手榴弾が使用されることがある。
この手榴弾は、爆発時の爆音と閃光により、付近の人間に一時的な失明、眩暈、難聴、耳鳴りなどの症状と、それらに伴うパニックや見当識失調を発生させ、その効果で、室内に立てこもる武装凶悪犯を無力化し、制圧部隊が突入する。アメリカで採用されているM84の場合、約100万カンデラ以上の閃光と15m以内に170デシベルの爆音を発するとされている[10]。
非致死性兵器であるため、爆発の威力を超音速の爆轟が発生しない程度に抑えて破片も飛散させない設計になっているが、目標や人質が心臓病を患っている場合はショック死する可能性がある。また至近距離で爆発した場合には、ヒトや動物を火焔または燃焼ガスで死傷させたり、可燃物に引火させるおそれがある。
スタングレネードは、1960年代にイギリス陸軍の特殊部隊SASが世界で初めて採用して以降、世界中の特殊部隊で採用されており、日本では西鉄バスジャック事件で突入の際に利用された事でも有名である。
日本語訳は資料や採用している機関によって異なるが、自衛隊では閃光発音筒と呼称している。
その他
発煙弾(smoke grenade)も、殺傷力は無いものの手榴弾と同様の構造をしており、点火すると白もしくは着色された煙を噴き出す。煙幕は、敵の攻撃をかわしたり、注意を逸らしたり、信号を送るなど多くの用途があり、軍隊ではよく用いられる。
暴動鎮圧用として、煙ではなく催涙ガスを用いる場合もある。これは、催涙手榴弾または催涙弾(tear gas grenade)で、点火すると内部からCNガス(クロロアセトフェノン)やCSガス(2-クロロベンジリデンマロノニトリル)といった催涙ガスが噴き出し、これを吸い込むと激しい咳、くしゃみ、涙、嘔吐などの症状が出て行動が難しくなる。
攻撃目標を燃やす場合には、黄燐手榴弾や焼夷手榴弾(テルミット手榴弾)が用いられる。黄燐手榴弾は、黄燐が大気中で発火および燃焼する性質を利用した手榴弾で、焼夷手榴弾はテルミット反応を用いて激しい燃焼を起こす。
注釈
- ^ この場合の「防御」とは塹壕などで身を隠して使用する場合を意味し、「攻撃」は特定目標を狙っての攻撃を意味する。
- ^ a b ディスカバリーチャンネル『怪しい伝説』5thシーズン12「コーラと手榴弾」。うわさ話について科学的な実験を行う番組。動物性ゼラチン製のダミー人形を手榴弾の上に被せることで被害が軽減されることを実証した。まず、人形無しで手榴弾を爆発させる比較実験では撮影カメラを破壊するほど広範囲に破片が飛び散った。特に周囲1.5-4.5m周囲に配置された木製ターゲットには全身に破片が貫通した穴が空くほどで、即死判定が下った。一方、人形を被せた実験では爆発により人形は四散したものの、手榴弾の破片はほとんどが人形に吸収され、至近距離(1.5m)のターゲットの足部分に穴が空いたのみだった
- ^ 彼はその功績により、911後9番目の名誉勲章受章者となった。
出典
- ^ 「手投げ弾」と「手りゅう弾」の使い分けや決まりはある? | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所
- ^ 飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで アルフレッド・W. クロスビー (著)
- ^ Chisholm, Hugh, ed. (1911). . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 12 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 578.
- ^ “Online Etymology Dictionary”. Etymonline.com. 2017年1月5日閲覧。
- ^ “軍の命令、人間国宝が作った備前焼の手りゅう弾…「嫌な思い出だが残さねば」長男が寄贈”. 読売新聞オンライン (2022年8月11日). 2022年8月11日閲覧。
- ^ 『図解ミリタリーアイテム (F-Files)』118P
- ^ a b 日本一受けたい授業
- ^ ルネ・シャルトラン 『ルイ14世の軍隊 : 近代軍制への道』 稲葉 義明訳、新紀元社、2000年。ISBN 978-4-88317-837-7
- ^ 『当った予言、外れた予言』ジョン・マローン著 文春文庫 ISBN 4167308967
- ^ 柿谷哲也『海上保安庁「装備」のすべて』サイエンス・アイ新書、2012年、P102、ISBN 978-4-7973-6375-3。
- ^ “アーカイブされたコピー”. 2014年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月16日閲覧。
- ^ “手りゅう弾に注意!”. 福岡県警察. 2013年10月7日閲覧。
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