懲戒処分 懲戒処分の概要

懲戒処分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/10/06 19:33 UTC 版)

公務員における懲戒処分

公務員における懲戒処分とは、職員に非違行為があったとき、その職員に対する制裁としてなされる処分をいい、国家公務員法第82条、自衛隊法第46条、外務公務員法第3条、国会職員法第28条 - 第32条、地方公務員法第29条、裁判所職員臨時措置法に規定がある[1]

職員は、法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることはない。任命権者は非違の程度や情状によって懲戒処分の内容を決定し、処分の選択については任命権者の裁量に委ねられている。なお、一の非違行為に対して二種類以上の懲戒処分を重ねて課することはできない。また、公務員における懲戒処分については、国家公務員は人事院規則で、地方公務員は地方公共団体ごとに条例で、その詳細が定められており、その実施にあっては、通常、その旨を記した書面を交付して行うよう規定している。

懲戒処分の対象となる事由

  1. 国家公務員法若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令に違反した場合(国家公務員)
  2. 地方公務員法若しくは同法第57条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合(地方公務員)
  3. 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合(両者共通)
  4. 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合(両者共通)

懲戒処分の種類

公務員における懲戒処分は次のものがある(免職が一番重い)。なお、降任は防衛省の特別の機関である自衛隊自衛隊法にその規定がある。警察官は免職以外であっても、以後の昇進は不可能になるので、処分を受けた時点で依願退職することになる。

  • 免職 - 職員の意に反してその職を失わせる処分をいう。
  • 降任 - 現に定められている職務の等級・階級を1ないし2下位のものに下すこと。
  • 停職 - 一定期間、職務に従事させない処分をいう。国家公務員の場合は最低1日、最高1年までとなっている。
  • 減給 - 職員に対する制裁として一定期間、職員の給与の一定割合を減額して支給する処分をいう。国家公務員の場合は人事院規則で、期間は最高で1年、額は俸給の20パーセント以内と定められている。
  • 戒告(譴責:けんせき) - 職員の非違行為の責任を確認し、その将来を戒める処分をいう。

このほか、懲戒処分に至らないが不問に付することが適当でない場合として、軽微な処分を科すことがある。一般には次の3つが知られる。なお、これらは懲戒処分ではないので履歴書の賞罰欄に記載する必要はなく、経済的な損失も伴わない場合が多い。

  • 訓告(訓諭・訓戒) ※ただし、訓告が三回累積すると、戒告一回分相当の不利益を被る。
  • 厳重注意
  • 口頭注意(単に「注意」と表現される場合もある)

懲戒処分と刑罰

日本国憲法第39条に定める二重の処罰を禁止する規定との関係から、懲戒処分と刑罰を併せて科すことができるかが問題となる。この点について、懲戒処分は任命権者の懲戒権に基づく行政処分であり、国家の一般的統治権に基づき、公共の秩序維持のために科する刑罰とは目的を異にしているため、懲戒処分と刑罰を併課することは差し支えないとされる。

このことは、国家公務員一般職、国会職員および裁判所職員については国家公務員法第85条[2]、国会職員法第32条および裁判所職員臨時措置法にそれぞれ規定されている。また地方公務員や自衛隊員については、法律で明文の規定はないものの、国家公務員一般職等と同様と解しうるとされる。

懲戒処分と分限処分

懲罰的な意味合いをもつ懲戒処分とは異なり、公務の効率性を保つことを目的として行われる処分として分限処分がある。

懲戒処分と分限処分の両方の適用が可能な場合においては、(例えば免職であれば、どちらの処分によるかで退職手当の扱いなどが異なることから)その選択は任命権者の裁量により、個々の事案に即して適切に判断されるべきものである。よって、前述のとおり懲戒処分と分限処分は目的が異なることから、同一の事由について両者を併せて行うことは、いずれかの処分により職員の身分が失われない限り、可能である。

懲戒処分と失職の違い

失職とは、職員に欠格が生じ、それが人事院規則又は当該地方公共団体の条例に定める場合以外であったときに任命権者の処分を要することなく職を失うものである。よって、任命権者による処分の要否という観点から失職と懲戒処分(免職)は異なるものである。

懲戒処分の効力など

懲戒処分は、それが適法かつ有効に成立した後は、法令により変更が認められている場合及び公益上その効力を存在させることができない新たな事由が発生した場合でなければ、その効力を消滅させることはできない(懲戒処分を自ら取り消したり、あるいは撤回することはできない)。また、公務員等の懲戒免除等に関する法律に基づく免除の発動により、懲戒処分が免除されることがある。

公平審査

懲戒処分の変更または取消を求めるには、国家公務員なら人事院にある公平審査局に公平審査を申し出る。地方公務員であれば人事委員会または公平委員会に対して、不利益処分に関する不服申立てを行いその裁決・決定を求めることが必要である。その裁決・決定に不服がある場合は、裁判所に出訴することができるが、人事院公平審査または不利益処分に関する不服申立てを行わずに裁判への出訴はできない。

人事院公平審査は裁判ではないが、被処分者がいわば原告となり、処分者が被告、公平委員が裁判官の形式で審査が行われる。傍聴できる公開審査もあるが非公開審査にもできる。代理人を立てることもできるが、裁判同様に弁護士もよいが、裁判とは違うために被処分者が指定した代理人でも構わない。また被処分者、処分者ともに証人を招致することができる。被処分者側から、処分者側の証人出席を求めることもできるが、必要かどうかは公平委員の裁量による。審理は書面(甲が被処分者、乙が処分者)を用意して証拠書類とする。その書面に沿って公平委員が尋問したり、被処分者が処分者または処分者側証人を尋問する。審査は1日ないし2日で行われ、公平審査局から決定が出されるのに6か月ないし1年ほどかかる。

裁量権と司法審査

前述のとおり、非違行為のあった職員に対していかなる懲戒処分を行うかは任命権者の裁量に委ねられているところであるが、前述の不服申立て後に裁判所に出訴した場合、任命権者の裁量権(行政裁量)に対して司法審査(合法・違法の審査)がどの程度及ぶかが問題となる。このことについて、争議行為禁止規定違反等を理由として、税関職員で組合幹部である3名を国家公務員法第82条1号・同3号に基づき懲戒免職としたことに対して、同3名からなされた当該処分の無効確認及び取消訴訟に対する判決[3]において、最高裁は次のように説示し、「処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を乱用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき」とした。

「懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられるのであるが、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである以上、平素から庁内の事情に通暁し、都下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないものといわなければならない。 それ故、公務員につき、国公法に定められた懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うかどうか、懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。もとより、右の裁量は、恣意にわたることを得ないものであることは当然であるが、懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるものとして、違法とならないものというべきである。したがつて、裁判所が右の処分の適否を審査するにあたつては、懲戒権者と同一の立場に立つて懲戒処分をすべきであつたかどうか又はいかなる処分を選択すべきであつたかについて判断し、その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものである。」

司法警察職員、士業における懲戒処分




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  1. ^ なお、これらの法律による規定がなされる前は、文官懲戒令明治32年勅令第63号)(後に「官吏懲戒令」と改称)により懲戒処分が定められていた。
  2. ^ 国家公務員法第85条(刑事裁判との関係)
    懲戒に付せらるべき事件が、刑事裁判所に係属する間においても、人事院又は人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について、適宜に、懲戒手続を進めることができる。この法律による懲戒処分は、当該職員が、同一又は関連の事件に関し、重ねて刑事上の訴追を受けることを妨げない。
  3. ^ 最高裁判所第三小法廷昭和52年12月20日判決・事件名:行政処分無効確認等、附帯(通称 神戸税関職員懲戒免職)
  4. ^ 菅野和夫『雇用社会の法』有斐閣 p.82
  5. ^ 懲戒処分の公表指針について(平成15年人事院事務総長発)
  6. ^ 最高裁判所第三小法廷昭和56年4月14日判決







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