性的奴隷 性的奴隷の概要

性的奴隷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/10/25 09:11 UTC 版)

具体的関係の中でより従属的立場の者が、より支配的立場の者により意思に反して継続的に性的行為を強要される状況(その多くは退去(移動)の自由・性的自由を一部あるいは全て奪われる)でのその人・関係・状況・状態を指して、性的奴隷と呼ばれる[1]。人を性的奴隷状態におくことは、奴隷化することの一形態であり、本人の自己決定権や性的活動などに関する決定権の制限を特徴とする[2]。(広汎な用法は21世紀初頭までは日本で一般的に受け止められていず、○○奴隷とは扇情的比喩用法であった。慰安婦問題によって外国の表現が移入されてきている段階である)。

性的奴隷は、古代から19世紀までの階級的奴隷制の一形態・一側面にも存在したが、近代においては20世紀前半の国際連盟において、娼婦の多くが前借り借金で縛られている不自由さや人身売買の状況を問題視する視点から、強制労働などとともに「奴隷」の表現が当てられた。

性的奴隷制度性的奴隷状態を意味するセクシャル・スレイヴァリー(英:sexual slavery[3])と形容される場合もある。

現代においては俗語的用法も多く、広汎に被害者が継続的な性的行為を強要される場合を指しても用いられる。

概要

これらの人々は、階級的意味はなくても奴隷的といえる自由を奪われた状況下で性的な行為を強要されている。人身売買不当搾取といった人道上にて問題視される人権蹂躙が絡み、これを成す事や看過する事は多くの社会で忌み嫌われている。一方、貧困や社会情勢の問題により、まだ社会的地位の弱い児童などがこれらの犠牲者となるケースも見られ、国際的にも問題視されている。

特に暴力によって拘束するケースも多く、これらでは日常的に暴行される事により精神的に疲弊し、逃げる気力を喪失している場合もあり、心的外傷(PTSD)と呼ばれる心理的なダメージが生じた場合、治療も長期に渡るケースが多い。

法律上としては、20世紀初めから、前借りによる拘束労働を、人身売買・奴隷制類似のものとする国際世論が存在し、1926年、全12条からなる奴隷条約(Slavery Convention)が国際連盟において締結された。これにより奴隷状態の最初の包括的な定義が明記された[4]。1956年の奴隷条約を補足するため国際連合が採択した奴隷制度廃止補足条約では当事者の女子が拒否することができない婚姻、負債奴隷制及び農奴制を含む奴隷制度に類似する制度と慣習の完全な廃止を規定している[5]。これは日本の前借りによるいわゆる身売りを対象に含むものである。

現代における性的奴隷

性風俗産業

セックス産業(性風俗産業)に従事する者のうち、十分な報酬を与えられず、また勤務外でも身体の拘束を伴うなどの奴隷的環境で働かされる者をさす言葉。世界各国でも多くの場合、人身売買などにより外国や国内の未発達地域から連れて来られ、法律上の根拠が無い債務を背負わされて身体を売るのが普通である。一般には拘束期間が明ければ解放されるが、性的に魅力的であり高収益をもたらす者、または逆に所属する性産業に十分な利益をもたらさなかった者は、拘束期間を延長されることがある。

戦争

イラク戦争米軍女性軍人が男性捕虜に性的暴行を加え問題となった(アブグレイブ刑務所における捕虜虐待)。

紛争地域

紛争地域において、集落を襲撃した武装集団が自身の身辺を世話をさせると共に性的な欲求の捌け口とするべく、未成年者を誘拐するケースが見られる。これらのケースでは、被誘拐者は常時武装集団により監視され、精神的にも追い詰められるケースも見られる。

誘拐・監禁事件

児童を誘拐し、それらに性的虐待行為を繰り返す犯罪者(変質者)のケースがある。これらでは特に都市匿名性により犯人が特定されにくい事件も発生しており、日本では新潟少女監禁事件2000年に発覚したが、これに伴い模倣犯の発生も見られた。

支配的傾向の見られる男性が、いわゆる「出会い系」サイトなどで知り合った女性を連れ出し、犬用の首輪・手綱で柱にくくりつけたり、暴力を振るうなどして逃げる意思を奪った上で性的行為を強要する例があり、日本でも確認された。

SMプレイにおける性的奴隷

いわゆるSMにおいて、性的遊戯として両者の合意の上で、Mの側が奴隷の役割を演じる場合があるが、これは本項における(強要された)性奴隷とは区別されるべきものである。

この事例の一つとして、例えば娼館などでは「奴隷遊び」という名目で、割高の料金で娼婦を緊縛や鞭打ち、浣腸などして嗜虐的に玩弄するプレイが用意されている(あるいは客と娼婦間の交渉で可能となる)場合もある。

なお通常の恋人間やセックスフレンド同士でも、精神の良識的な部分ではSMプレイを嫌悪、あるいは同プレイに抵抗の念を覚えながらも、一方で相手に調教された肉体そのもの、または精神の裏面がマゾヒズムとしての要求を生じ、奴隷のように責められる行為が成立する場合もある。完全には心のままではないが、それでもマゾヒストが相手の支配下に置かれるのを希求し、奴隷のごとく扱われて性的な快楽を覚える場合はこれも一種の主従関係である。

それゆえ、上記のように(強要された)性奴隷とはまったく意味合いが異なるものの、こういったSMプレイにおける事例も、現代におけるひとつのタイプの性的奴隷と見ることが可能である。


  1. ^ ICL Database & Commentary:国際刑事裁判所ローマ規程データベース及び解説
  2. ^ ICL Database & Commentary:国際刑事裁判所ローマ規程データベース及び解説
  3. ^ 辞書 Dictionary.com:「slavery」:奴隷制、奴隷状態
  4. ^ 『戦時・性暴力をどう裁くか 国連マクドゥーガル報告全訳〈増補新装2000年版〉』凱風社,2000年
  5. ^ 1957年の強制労働の廃止に関する条約(ILO条約第105号) 国際労働機関駐日事務所
  6. ^ 吉見義明「従軍慰安婦」岩波新書、1995年
  7. ^ 例えばA modern history of Japan:from Tokugawa times to the present, Gordon, Andrew, Oxford University Press, 2003(邦訳はアンドリュー・ゴードン「日本の200年」みすず書房、2006)
  8. ^ 『戦時・性暴力をどう裁くか―国連マクドゥーガル報告全訳〈増補新装2000年版〉』凱風社,増補新装2000年版, 39-42頁
  9. ^ 従軍慰安婦問題への政府の対応に関する声明 1995年11月16日


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