性的奴隷 性的奴隷の概要

性的奴隷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/04/01 07:51 UTC 版)

具体的関係の中でより従属的立場の者が、より支配的立場の者により意思に反して継続的に性的行為を強要される状況(その多くは退去(移動)の自由・性的自由を一部あるいは全て奪われる)でのその人・関係・状況・状態を指して、性的奴隷と呼ばれる[1]。人を性的奴隷状態におくことは、奴隷化することの一形態であり、本人の自己決定権や性的活動などに関する決定権の制限を特徴とする[2]。(広汎な用法は21世紀初頭までは日本で一般的に受け止められていず、○○奴隷とは扇情的比喩用法であった。慰安婦問題によって外国の表現が移入されてきている段階である[独自研究?])。

性的奴隷は、古代から19世紀までの階級的奴隷制の一形態・一側面にも存在したが、近代においては20世紀前半の国際連盟において、娼婦の多くが前借り借金で縛られている不自由さや人身売買の状況を問題視する視点から、強制労働などとともに「奴隷」の表現が当てられた。

性的奴隷制度性的奴隷状態を意味するセクシャル・スレイヴァリー(英:sexual slavery[3]と形容されることも多い。

現代においては俗語的用法も多く、広汎に被害者が継続的な性的行為を強要される場合を指して用いられる。広い題材で用いられるが、用語の意味自体が広いのか、狭い意味の言葉を比喩的・感情的に用いているのか明確ではない場合もある。

概要

(実際)

これらの人々は、階級的意味はなくても奴隷的といえる自由を奪われた状況下で性的な行為を強要されている。人身売買不当搾取といった人道上にて問題視される人権蹂躙が絡み、これを成す事や看過する事は多くの社会で忌み嫌われている。一方、貧困や社会情勢の問題により、まだ社会的地位の弱い児童などがこれらの犠牲者となるケースも見られ、国際的にも問題視されている。

特に暴力によって拘束するケースも多く、これらでは日常的に暴行される事により精神的に疲弊し、逃げる気力を喪失している場合もあり、心的外傷(PTSD)と呼ばれる心理的なダメージが生じた場合、治療も長期に渡るケースが多い。

(現代の用語と概念)

  • 法律上としては、20世紀初めから、前借金りによる拘束労働を、人身売買・奴隷制類似のものとする国際世論が存在し、問題視された。1926年には、全12条からなる奴隷条約(Slavery Convention)が国際連盟において締結された。これにより奴隷状態の最初の包括的な定義が明記された[4]。1956年の奴隷条約を補足するため国際連合が採択した奴隷制度廃止補足条約では当事者の女子が拒否することができない婚姻、負債奴隷制及び農奴制を含む奴隷制度に類似する制度と慣習の完全な廃止を規定している[5]。これは日本の前借金によるいわゆる身売りを対象に含むものである。
  • 現代でも世界各地で古代のような非人間的な状況があることが報道されることがあり、世界的に深刻な問題となっていて、一般にはこれらがまず想起される面も強い。
  • 現代では、人間関係についての一種の文学的な表現としても使われる。
  • 一般の欧米人の中には、日本の慰安婦は性奴隷だったから慰安婦が報酬を受け取っているはずがない、などという反応がある。実際、現代でさえ無給の奴隷状態の事件の報道はしばしばある。このため、先進国間の条約による「広い意味での性的奴隷」「文学的な性奴隷」という用語は一般的でない可能性も高い。混乱と危うさがつきまとう用語である。

現代における性的奴隷

性風俗産業

セックス産業(性風俗産業)に従事する者のうち、職場を選ぶ自由がなく、妥当な報酬を与えられず、また勤務外でも身体の拘束を伴うなどの悪環境に拘束されて働かされている者をさす言葉。世界各国で、人身売買などにより外国や国内の未発達地域から連れて来られ、法律上の根拠が無い債務を背負わされて身体を売る例が多く見られる。一般には拘束期間が明ければ解放されるが、性的に魅力的であり高収益をもたらす者、または逆に所属する性産業に十分な利益をもたらさなかった者は、拘束期間を延長されることがある。

日本のじゃはゆきさんなど先進国における場合と途上国における極端な場合との違いは、その程度にもあるが、被害者女性が自身の意志による一種の密入国者であり彼女らの前借金の多くが不法入国費用というケースが多いことにもある。2000年代までの日本は、強制売春と搾取労働を辞めさせるために不法入国・不法就労として送還していることが多かったが、現在では方針を変えている。

戦争

イラク戦争米軍女性軍人が男性捕虜に性的暴行を加え問題となった(アブグレイブ刑務所における捕虜虐待)。(ただ、この事件の本当の動機や主犯は不明瞭で、奴隷の問題か拷問の問題かなどの類別は定かではない。)

紛争地域

紛争地域において、集落を襲撃した武装集団が自身の身辺を世話をさせると共に性的な欲求の捌け口とするべく、未成年者を誘拐するケースが見られる。これらのケースでは、被誘拐者は常時武装集団により監視され、精神的にも追い詰められるケースも見られる。

誘拐・監禁事件

(犯罪心理として)

児童を誘拐し、それらに性的虐待行為を繰り返す犯罪者(変質者)のケースがある。これらでは特に都市匿名性により犯人が特定されにくい事件も発生しており、日本では新潟少女監禁事件2000年に発覚したが、これに伴い模倣犯の発生も見られた。

支配的傾向の見られる男性が、いわゆる「出会い系」サイトなどで知り合った女性を連れ出し、犬用の首輪・手綱で柱にくくりつけたり、暴力を振るうなどして逃げる意思を奪った上で性的行為を強要する例があり、日本でも確認された。

ただしこれらは社会的でも組織的でも売買でもないため、一般の性的奴隷の問題として語られるものではなく、犯罪事件・犯罪心理でしかない。

(組織犯罪として)

第三世界の娼館や人気の少ない地域では、誘拐・詐欺で集めた女性を監禁状態で奴隷的に使用している事例・事件がある。

現代の国連

国連の人権委員会において人権問題に関するいくつもの報告書を採択している。その中の、1998年に採択されたマクドゥーガル報告書で定義された性的奴隷とは、奴隷制(奴隷状態)の一形態であり、1926年の奴隷条約において「奴隷状態とは、所有権を伴う権力の一部もしくは全部が一個人に対して行使されている状況もしくは状態である」と定義され、性的奴隷には、レイプなどの性暴力の形態による性的接触も含むとされている。さらに、奴隷制という犯罪は政府の関与または国家の行為がなくても成立し、国家の行為者によるものであろうと民間の個人によるものであろうと、国際犯罪に相当すること。奴隷制とは人を所有物として扱うことを指すが、その人が金銭で売買されなかったからといって、奴隷制であるという主張が崩れることはないこと。性的奴隷には全てではないとしても大半の形態の強制売春も含まれ、武力紛争下での強制売春と呼びうる実態はたいていの場合、性的奴隷状態に相当すること。性的奴隷状態には、女性や少女が結婚を強要されるケースや、最終的には拘束する側から強かんなど性行為を強要される家事労働その他の強制労働も含まれる、等の概念として性的奴隷を明記している[6]。このようにこの報告書では、広い意味と実態を一体的に扱っているのが特徴である。

風習と価値観

過去においては、その土地の女性の魅力と思われつつも、現代では虐待としか見えず、奴隷の象徴と見えるものもある。中国では女性を表向き大事にするといいつつも、清代末まで盛んだった纏足。アフリカで今も残り、女性らしさの形成に役立つと信じる者もいる女性割礼、ヨーロッパの女性を苦しめたコルセットなどである。また李氏朝鮮の女性を閉じ込めるような慣習も、他の男性から女性を保護する一面があったが、現代人からはそれも含めて儒教社会と男性による徹底した奴隷化と見なすことも可能である。

こういう女性の一種奴隷視的な風習は現代でも残っている地域があり、国連などは人権問題として問題視している。

SMプレイにおける性的奴隷

いわゆるSMにおいて、性的遊戯として両者の合意の上で、Mの側が奴隷の役割を演じる場合があるが、これは本項における(強要された)性奴隷とは区別されるべきものである。

この事例の一つとして、例えば娼館などでは「奴隷遊び」という名目で、割高の料金で娼婦を緊縛や鞭打ち、浣腸などして嗜虐的に玩弄するプレイが用意されている(あるいは客と娼婦間の交渉で可能となる)場合もある。

なお通常の恋人間やセックスフレンド同士でも、精神の良識的な部分ではSMプレイを嫌悪、あるいは同プレイに抵抗の念を覚えながらも、一方で相手に調教された肉体そのもの、または精神の裏面がマゾヒズムとしての要求を生じ、奴隷のように責められる行為が成立する場合もある。完全には心のままではないが、それでもマゾヒストが相手の支配下に置かれるのを希求し、奴隷のごとく扱われて性的な快楽を覚える場合はこれも一種の主従関係である。

それゆえ、上記のように(強要された)性奴隷とはまったく意味合いが異なるものの、こういったSMプレイにおける事例も、現代におけるひとつのタイプの性的奴隷と見ることが可能である。

性的な従属人間関係

性的な対人関係において、一方が一方を性的心理から強く従属させる関係になることを、性奴隷と呼ぶことが現代の物語方面ではよくある。


  1. ^ ICL Database & Commentary:国際刑事裁判所ローマ規程データベース及び解説
  2. ^ ICL Database & Commentary:国際刑事裁判所ローマ規程データベース及び解説
  3. ^ 辞書 Dictionary.com:「slavery」:奴隷制、奴隷状態
  4. ^ 『戦時・性暴力をどう裁くか 国連マクドゥーガル報告全訳〈増補新装2000年版〉』凱風社,2000年
  5. ^ 1957年の強制労働の廃止に関する条約(ILO条約第105号) 国際労働機関駐日事務所
  6. ^ 『戦時・性暴力をどう裁くか―国連マクドゥーガル報告全訳〈増補新装2000年版〉』凱風社,増補新装2000年版, 39-42頁
  7. ^ 公娼を参照。
  8. ^ 吉見義明「従軍慰安婦」岩波新書、1995年
  9. ^ 従軍慰安婦問題への政府の対応に関する声明 1995年11月16日
  10. ^ 例えばA modern history of Japan:from Tokugawa times to the present, Gordon, Andrew, Oxford University Press, 2003(邦訳はアンドリュー・ゴードン「日本の200年」みすず書房、2006)


「性的奴隷」の続きの解説一覧




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

性的奴隷に関係した商品

辞書ショートカット

カテゴリ一覧

全て

ビジネス

業界用語

コンピュータ

電車

自動車・バイク

工学

建築・不動産

学問

文化

生活

ヘルスケア

趣味

スポーツ

生物

食品

人名

方言

辞書・百科事典

すべての辞書の索引

「性的奴隷」の関連用語

性的奴隷のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング

画像から探す

STS-95

コリドラス・シミリス

IS350

マナンドナ石

脊柱結合

御嶽山

モミジガサ

デビッド・パッカード





性的奴隷のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの性的奴隷 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2015 Weblio RSS