微分方程式 解法

微分方程式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 07:07 UTC 版)

解法

微分方程式に限らず一般の方程式は必ずしも厳密解が得られるとは限らない。従って多く場合は摂動などの手法を用いて近似的な評価を与えるか、ルンゲ=クッタ法SOR法有限要素法のような数値解法によって具体的な解を得ることになる。しかしながらいくつかの基本的な微分方程式については、厳密解が得られたり、形式的に解を書き表せる。

微分方程式の具体的な解法としては代表的なものに、斉次方程式の解を利用して解く定数変化法グリーン関数を用いた解法、差分方程式を用いた解法、ラプラス変換逆ラプラス変換を用いた解法などが知られている。

指数関数と微分方程式

一階の線型斉次常微分方程式の中で最も基本的な方程式として次のものがある。

一般の線形微分方程式を解く際も、まずこの種の斉次微分方程式に帰着させるため、この方程式は微分方程式の解法を調べる上で基本的な役割を果たす。 この方程式の解はよく知られているように指数関数となる[注釈 7]

ここで C は任意定数である。解法は脚注にて紹介する[注釈 10]

指数関数の有用な性質として、微分作用素を別の定数や関数に置き換えられることが挙げられる。係数が定数の斉次方程式

の解として指数関数で書けるものを探すと、f⁡(x) = Cexp⁡(λx) と置き換えて、

と書くことができる[注釈 11]。これは λ に対する n 次の代数方程式になっている。 重根がなければ方程式の解が n 個求まることになり、斉次方程式の一般解はそれらの線型結合として表される。

この形の方程式の一般解を求める方法としては定数変化法がある[注釈 12]

一階線型常微分方程式

一つの未知関数に対する、一般の一階線型常微分方程式は、既知関数を P⁡(x)Q⁡(x) として、次のように書かれる。

この一階線型常微分方程式は、一般解求積法で解ける。 まず、斉次方程式

の一般解は、積分定数を A ≠ 0 として、

となる。一階線型常微分方程式の一般解は、斉次方程式の解を利用し Ax の関数とみなす定数変化法によって求められる。

ここで C ≠ 0 は積分定数である。

二階線型常微分方程式

二階線型常微分方程式の一般形は、既知関数を P⁡(x), Q⁡(x), R⁡(x) として、次のように書かれる。

この二階線型常微分方程式は、このままの形では求積法を用いて一般解を表示することはできない。 もし、右辺を 0 とした斉次方程式の特殊解として、y = y1 が存在すれば、

が成り立つので、z なる未知関数を導入して、

とすれば、二階線型常微分方程式が、z に関する常微分方程式、

に変換される。この常微分方程式は、導関数 dz/dx に関して一階線型常微分方程式なので、求積法で解ける。その一般解を

とすると、二階線型常微分方程式の一般解は、

で与えられる。なお、C1, C2 は積分定数である。 x の既知関数を含む二階線型常微分方程式で、求積法で解ける微分方程式は少ないが、 次の微分方程式などが知られている[2][3][4]

求積法で解ける方程式の例[注釈 13]
方程式 一般解[2]

注釈

  1. ^ : order
  2. ^ : nth order differential equation
  3. ^ : non-linear differential equation
  4. ^ : homogeneous linear differential equation
  5. ^ : inhomogeneous linear differential equation
  6. ^ : stochastic differential equation、SDE
  7. ^ この微分方程式の解として指数関数を定義する場合もある。その場合、y⁡(0) = 1 となる解 y⁡(x) を指数関数 exp⁡(x) (≡ ex) とする。
  8. ^ この関係を示す際に、ラフな計算法として dy, dx を微小な数として扱うことがある。つまり、
    の両辺に dx/y を掛けて、
    とし、最後に積分記号 を添える。
  9. ^ 対数関数が指数関数の逆関数であることを利用する。exp⁡(ln y) = y.
  10. ^ 解法: 一つの方法は次の自然対数の積分公式を利用する方法である。

    ある xy0 となるなら、

    方程式を満たす解 y0 である。次に y0 とならない解を探すと、 方程式は次のように変形できる。

    両辺を積分すれば、右辺は最初に示した積分と同じ形になる[注釈 8]

    両辺の積分を計算すると方程式の解は指数関数になることが分かる[注釈 9]

    その他の解法としては結局、指数関数か対数関数の定義に帰着させることになる。

  11. ^ 非自明な解を探しているので、任意の λ に対して f⁡(x) = Cexp⁡(λx) ≠ 0 である。従って、
    を満たす λ はすべて
    を満たす。
  12. ^ 解の形として f⁡(x) = C⁡(x)exp⁡(λx) というものを仮定しても一般性は損なわれない。
  13. ^ a ≠ 0b ≠ 0 および αβ ≠ 0 は定数で、C1, C2積分定数

出典

  1. ^ a b c d e 長倉三郎ほか編、『岩波理化学辞典 Archived 2013年9月27日, at the Wayback Machine.』、岩波書店、1998年、項目「微分方程式」より。ISBN 4-00-080090-6
  2. ^ a b 長島隆廣 『常微分方程式80余例とその厳密解』 近代文芸社、2005年 ISBN 4-7733-7282-6. 国立国会図書館蔵書, 請求記号:MA117-H55(東京 本館書庫)
  3. ^ 長島 隆廣[常微分方程式134例とその解]丸善出版サービスセンター,1982年5月発行,国立国会図書館・請求記号 MA117-111,全国書誌番号 82049441
  4. ^ 長島 隆廣『常微分方程式80余例と求積法による解法』2018年12月 researchmap で公開,全編PDF: https://researchmap.jp/T_Nagashima または,https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/263160/16f8fddfba5ab789f6475ac2962bfd31?frame_id=539358


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