弓道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/16 07:32 UTC 版)
礼法
全日本弓道連盟が定める礼法は、小笠原流礼法を縦糸としている。ちなみに、室町幕府の頃より武家の礼を2部門に分け、伊勢氏は内向き(殿中)の諸礼を仕い、小笠原家は外向き(屋外)一切の武礼を司っている。
主要な大会
- 国民体育大会
- 全日本弓道選手権大会
- 全日本弓道大会
- 全日本勤労者弓道選手権大会
- 全日本学生弓道王座決定戦
- 全日本学生弓道女子王座決定戦
- 東西学生弓道選抜対抗試合
- 東西学生弓道女子選抜対抗試合
- 全日本学生弓道選手権大会
- 全国大学弓道選抜大会
- 全関東学生弓道選手権大会
- 全国高等学校総合競技大会
- 全国高等学校弓道選抜大会
- 全国中学生弓道大会
- 世界弓道大会
段級位制
全日本弓道連盟が定める段級位は五級から一級および初段から十段まで。原則として四段以下は都道府県単位の地方連盟で、五段は複数の地方連盟の合同で、六段から八段と錬士・教士は全日本連盟主催で審査を行い、審査員の過半数の賛成で認許される。的中すれば合格ということではなく、入退場を含む起居進退動作から心気の充実までのすべてが審査の対象である。九段・十段および範士は推薦制度により授与される。以下に基準を記す。
- 段位についての条件
- 十段 (規定はない)
- 九段 弓道の真体に透徹した者
- 八段 技能円熟、射品高雅、射芸の妙を体得した者
- 七段 射形・射術・体配自から備わり、射品高く、練達の域に達した者
- 六段 射形・射術・体配共に優秀にして射品高く、精錬の功顕著な者
- 五段 射形・射術・体配共に法に適って射品現われ、精励の功特に認められる者
- 四段 射形定まり、体配落ち着き、気息正しく、射術の運用法に適い、離れ鋭く、的中確実の域に達した者
- 参段 射形定まり、体配落ち着き、気息整って、射術の運用法に従い、矢飛び直く、的中やや確実な者
- 弐段 射型・体配共に整い、射術の運用に気力充実し、矢所の乱れぬ者
- 初段 射型・体配共に適って、矢所の乱れぬ程度に達した者
- 一級 射型・体配概ね正しいものと認められる者
- 二級 修練の程度三級に比して著しく進歩を認められる者
- 三級 射の基本動作及び弓矢の扱い方がやや整い、秩序ある指導のものに修練を得たと認められた者
- 四級 秩序ある指導を受けており、弓矢の扱い方に進歩があると認められる者
- 五級 弓道修練の初歩的階層にある者
- 称号についての条件
- 『弓道教本第一巻』より
- 範士
- 徳操高潔、技能円熟、識見高邁であって特に弓界の模範であること。
- 教士の称号を受有すること。
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- 教士
- 人格、技能、識見、共に備わり、弓道指導に必要な学識、共用及び実力を有し、且つ功績顕著であること。
- 錬士の称号を受有すること。
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- 錬士
- 志操堅実であって弓道指導の実力を有し、且つ精神鍛錬の功顕著であること
- 五段以上の段位を受有すること。
また初段、弐段は的中、弓返り不問。また、大きく分けて二種類の審査方式がある。
- 無指定審査 五級から初段までその実力にあった段級位が認許される。
- 昇段審査(初段審査) 初段から八段まで、その段位に合った実力があらかどうかを審査する。よって合格と不合格がある。
- 審査内容
- 審査内容は実技試験と学科試験に分かれている。
- 実技試験
- 基本的に坐射五人立ちで行う。時間制限はなく、地域によって差があるが概ね四段以上で、男性は肌脱ぎ、女性は襷捌きを行う。受審者は甲矢(はや)と乙矢(おとや)と呼ばれる2本の矢を射る。射法八節、つまり足踏みから始まり残心にて終わる一連の動作が行えているか否か、また射品射格や着装など総合的な観点から審査員は評価される。五人の審査員のうち三名以上の賛成で合格。
- 学科試験
- 低段位の学科試験については、問題は事前に公表され、審査当日に提出する。つまり、学科試験については予め試験対策をした上で臨む事が出来るようになっている。全日本弓道連盟発行の弓道教本に学科試験で出題される問題の答えは全て記載されている。
以上の二つを総合的に評価して合否が決定される。
アーチェリーとの比較
アーチェリー(洋弓)はかつて全日本弓道連盟が「洋弓部」として管轄し、1958年には国際アーチェリー連盟(FITA)に加盟した。しかし国内のアーチェリー団体からの要請や、1967年の第24回世界選手権に出場した和弓選手の惨敗などを受けて、1968年にFITA加盟権を全日本アーチェリー連盟に移譲し、洋弓への関与を終えた。
技術的には、アーチェリーは矢を(身体から見て)弓の左に番え、弦は右手人差し指、中指、薬指で引く「地中海式」をとるのに対し、弓道は矢を弓の右に番え、取り掛けは右手親指根で弦を引っ掛けるようにして保持する「蒙古式(モンゴル式)」をとる(弓術#諸外国弓術との比較)。また日本のアーチェリーでは弓道の射法八節を取り入れている[注釈 13]。
道具では、弓道もアーチェリーも本質的には同じであるが、アーチェリーの弓には(競技種目にもよるが)多数の補助具(スタビライザー、サイト(照準器)、クリッカーなど)を付けるのに対し、和弓は基本的に弓と弦だけである。アーチェリーでは左右両手用の弓があるが、和弓では基本的に左手用の弓しかない(弓道では左手に弓を持ち、右手で弦を引く)。
ルール面では、弓道では試合において引き戻しが許されず、矢を発射前に落とした場合は「失(しつ)」として、その矢は失格となる。
弓道では礼法や服装など武道の要素が強いが、アーチェリーは純粋に精度を競うため、安全面以外では服装やフォームなどは考慮されない。
注釈
- ^ 対象物に善く中て、強く貫き、精度を維持する事「中貫久」(本来は「貫中久」である)。
- ^ 香川県の岡内木、東京の関口源太・本多利実・浦上直置、京都府の石崎反求・岡田透、佐賀の森川秀実、愛知の奥村閑水・横浜有仲、岡山の富田忠正、長崎県の市川虎四郎、熊本県の生駒新太郎 ら
- ^ 本多利実の弟子、大平善蔵(射仏)談「自分が20年前(大正2年頃)京都の武徳祭に出場したときは、前面(正面)打起は自分一人であったから妙なやり方もあるものだと言った人も多かったが、今日(昭和7年)では出演者の九割は前面打起となっている。」
- ^ 後の日本剣道形
- ^ 大日本武徳会柔道形に改称。武徳会解散後は講道館の柔道形に統合
- ^ 大平 善藏(日置流道雪派・東京)、浦上 榮(日置流・東京)、西牟田 砥潔(日置流竹林派・東京)、根矢 熊吉(日置流竹林派・東京)、鱸 重康(小笠原流・静岡)、渡邊 昇吾(日置流竹林派・茨城)、阿波 研造(日置流竹林派・宮城)、三澤 喜太郎(日置流竹林派・愛知)、堀田 義次郎(日置流竹林派・滋賀)、酒井 彦太郎(日置流雪荷派・兵庫)、大島 翼(小笠原流・武徳会・日置流・兵庫)、河毛 勘(一貫流・鳥取)、小西 武次郎(日置流竹林派・香川)、村河 淸(大和流・京都)、石原 七蔵(日置流吉田大蔵派・福岡)、三輪 善輔(日置流竹林派・福岡)、祝部 至善(日置流竹林派・福岡)、坂本 茂(日置流・熊本)、宇野 東風(日置流道雪派・熊本)、溝口 武夫(日置流・鹿児島)、種子島 常助(日置流・鹿児島)、小笠原 淸道(武徳会本部)、跡部 定次郎(武徳会本部)、田島 錦治(武徳会本部)、膳鉦次郎(武徳会本部)、高倉 永則(武徳会本部)。
- ^ 大日本武徳会解散時、宇野要三郎は副会長という要職に就いており、武徳会がGHQにより強制解散させられた際に追放(パージ)された。(旧)全日本弓道連盟結成後暫くして、「追放された者が会長を務めている「(旧)全日本弓道連盟」は大日本武徳会の延長である」との趣旨の噂が司法界や文部省で囁かれ、国民体育大会から「弓道」が除外される懸念も出始め、宇野会長は辞任。(旧)全日本弓道連盟も解散させる形をとった。
- ^ 弓道教本第2巻-射技篇、弓道教本第3巻-続射技篇、弓道教本第4巻-理念と射技詳論に詳説。
- ^ 男子と同じ腰板付の袴を着用することもある。
- ^ 一部流派や学校ではあえて着用しない場合もあるが、多くの弓道場では裸足が禁止されている。
- ^ はね返った場合は「はずれ」となる。
- ^ 以前は矢が的にあたる前に地面に触れた場合と区別せずに「はずれ」としていたが、現在の規則ではあたった後に筈が地面についた場合は「あたり」としている。
- ^ 1.スタンス(足構え)、2.セット(胴構え)、3.ノッキング(矢つがえ)、4.セットアップ(射ち起こし)、5.ドローイング(引き分け)、6.フルドロー(会)、7.リリース(離れ)、8.フォロースルー(残身)
出典
- ^ 全日本弓道連盟「令和三年度事業報告書」 (PDF)
- ^ a b 令和4年度加盟登録状況 (PDF) (全国高等学校体育連盟)
- ^ 『史料稿本』文久2年9月5日「幕府、講武所の弓術・犬追物を廃し、柔術も亦た之を停む」 [1]
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