幻想文学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 02:44 UTC 版)
日本における受容
大正末から昭和初期にかけて、雑誌『新青年』などでは江戸川乱歩や夢野久作などの怪奇幻想趣味、あるいはエログロナンセンスと呼ばれる作風が一世を風靡し、また日夏耿之介は「神秘文学」「恠異派文学」として東西古今の怪奇・幻想作品の紹介を行った。国枝史郎などによって伝奇小説というジャンルも生まれる。
1950年代から澁澤龍彦によるフランス文学における幻想小説、怪奇小説の紹介、平井呈一による英米怪奇小説の紹介が始まり、1956年にハヤカワ・ミステリで『幻想と怪奇 英米怪談集』2巻が刊行。並行して澁澤の創作「犬狼都市」や、中井英夫「とらんぷ譚」連作などが発表され、1966年に『世界の異端文学』(桃源社)が刊行されて澁澤の存在が注目され、徐々に分野として認知されるようになった。『ミステリマガジン』誌では1967年から定期的に「幻想と怪奇」特集が組まれ、1968年には『血と薔薇』創刊、1970年代には『ユリイカ』誌上での澁澤龍彦、種村季弘、由良君美らが読者の空想を掻き立て、紀田順一郎、荒俣宏編集による『世界幻想文学大系』が出版される。中間小説誌でも赤江瀑や皆川博子がデビューし、1973年から1974年には雑誌『幻想と怪奇』が発行、『S-Fマガジン』誌では山尾悠子などが見いだされた。1980年頃からは日本の明治以降の文学作品の中における幻想的な作品を幻想文学として位置付けたアンソロジーも出版されるようになり、1983年には季刊誌『幻想文学』が発刊(2003年終刊)、出版界におけるジャンルの一つとして確立されるに至った。
詩歌の世界においては、中井英夫に見いだされた塚本邦雄や寺山修司らの前衛短歌運動により、幻想的な表現が注目された。
1980年代以降では村上春樹、多和田葉子、長野まゆみ、諏訪哲史などの作品にとりわけ詩的な幻想性がみられる。
- ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
- ^ なお、日本に眼を向けると、日本の『古事記』にも、そういった要素が含まれている。
- ^ ツヴェタン・トドロフ『幻想文学論序説』Ⅱ 幻想の定義
- ^ 篠田知和基編『ノディエ幻想短篇集』岩波書店 1990年
- ^ 渡辺明正他訳 国書刊行会 1987年
- ^ 篠田知和基『フランス幻想文学の総合研究』国書刊行会、1989年
- ^ 千葉宣一「澁澤龍彦と中井英夫」(『国文學』1984/8月号)
- ^ 風間賢二編『ヴィクトリア朝妖精物語』筑摩書房、1990年(編者あとがき)
- ^ https://www.nobelprize.org/prizes/literature/2012/summary/
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