山田尚子 山田尚子の概要

山田尚子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/11/17 04:54 UTC 版)

やまだ なおこ
山田 尚子
本名 山田 尚子
生年月日 11月28日
出生地 日本の旗 日本京都府
職業 アニメーション監督
アニメーション演出家
ジャンル 映画テレビアニメ
活動期間 2005年 -
主な作品

アニメーション映画
映画けいおん!』(監督)
たまこラブストーリー』(監督)
映画 聲の形』(監督)


テレビアニメ
けいおん!』(監督)
たまこまーけっと』(監督)
響け! ユーフォニアム』(シリーズ演出)

来歴

生い立ち〜学生時代

京都で生まれた後すぐ母方の田舎である群馬県に移り、3歳頃まで過ごす。その後、京都に戻る[2]。幼少期は『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、『スタジオジブリ作品』をよく好んで観ていた[4]。また、小学生の頃より絵を描くことが好きで、ドラゴンボール機動警察パトレイバーハイスクール!奇面組などの絵を模写していた[3]

高校時代はテニス部写真部に所属[3]京都造形芸術大学に進学後は特撮部に所属していた[3]。学科での専攻は油絵だったが、3年次にて「キャンバスでは自分がやりたい表現は出来ない」と感じ、立体造型の製作に着手。皆が絵画に取り組む中、発泡プラスチックを削っていたという。また、卒業制作においては歯車がモーターで無限に回転するオブジェを制作。観覧に訪れた祖母は「尚ちゃんは絵を勉強しに大学に入ったんじゃ…」という感想を若干引き気味に述べており、本人は落胆したという[5]

京都アニメーション入社

大学卒業後、京都アニメーションアニメーターとして入社。2005年AIR』にて初原画2007年CLANNAD -クラナド-』第8話「黄昏に消える風」、第12話「かくされた世界」の演出補佐を経て、第17話「不在の空間」で演出デビューを果たす。

2009年、『けいおん!』の監督に抜擢される[6]。この作品は、東京アニメアワードアニメーション神戸で優秀作品賞を受賞した[7][8]ほか、数々の社会現象を巻き起こす大ヒットを収める[9]。その後、2011年には『映画けいおん!』にて長編映画初監督を務め[10]、深夜アニメの劇場版としては史上初[11]となる、第35回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞に輝く[12]。また、全国130館公開規模であったが、興行収入では19億円を突破した[13]

2013年たまこまーけっと』にてオリジナル初監督[14]。翌2014年にはその続編となるオリジナル長編映画『たまこラブストーリー』の監督を手がけ、第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞[15]。審査委員の一人であるアニメーション監督高橋良輔からは「新人賞ではあるが、現在の日本のアニメの到達点といえる。何気ない日常の中にみずみずしい感動を見つけるという視点はやはり独特。」[16]との高い評価を受ける。

2015年には、テレビシリーズ『響け! ユーフォニアム』にてシリーズ演出を担当[17]。また、同年10月、大今良時原作『聲の形』のアニメーション映画化に際し、監督を務めることが発表された[18]

2016年9月17日、長編映画監督3作目となる『映画 聲の形』が公開[19]。本作は山田にとってテレビシリーズを挟まない、自身初となる映画となった[20]

人物・作風

サイン
影響
アニメーション技術に衝撃を受けた作品に虫プロダクションの『哀しみのベラドンナ』を[4]、またアニメーションを志すきっかけとなった作品の一つに、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の『アリス Něco z Alenky』を挙げている[2]
他に言及している映画監督に小津安二郎セルゲイ・パラジャーノフソフィア・コッポラアレハンドロ・ホドロフスキールシール・アザリロヴィックなど[21][22][23][24]
作風
作風の大きな特徴の一つに「繊細な心情描写」が挙げられる。登場人物の内面をセリフではなく、ちょっとした表情やしぐさ、周囲の風景描写で語らせるような演出は、高い評価を得ている[25]
アニメーションの良さについては、「魂が宿る瞬間を見れること。パペット・アニメーションクレイ・アニメーションも同じだが、アニメは一コマ一コマに何かしら人間が手を加えて、コマが流れたときにはじめて動いて見える。その技術そのものに感動させられる。作品を作るときも、そうした初心を忘れないようにしている。」と答えている[26]
映像面では、キャラクターを「絵空事のキャラクター」としてではなく、「ひとりの人間」として実存感をもって扱い、「この子は何を思っているのか、どんな景色がみえているのか。」といった目線で接することを大切にしている[27]。演出においては、「どの場所に登場人物を立たせて、何ミリのレンズで、どの構図で撮れば、登場人物が魅力的に描けるのか。その積み重ね。アニメーションであれば、観る人の感情に的確に訴えるためのレイアウトや、色や空気感をしっかりとコントロールできる。」と答えている[28]。また、「物事を肯定的に見ること」を重視し、「皮肉的なアイロニーも重要だが、それも最終的には愛を持って肯定する意味合いで描くことを大事にしている」と述べている[2]
自身の監督作『けいおん!』や『たまこラブストーリー』等に見られる青春時代描写については、「その年代の子たちは、呼吸をしているとき、瞬きをしているとき、そのすべての瞬間が青春。当時は意識せずに生きてきたが、それは実に感動的なこと。それを撮りたいという思いで、それを意識して制作をした。」と説明している[27]
原作ものをアニメ化する際のスタンスは「原作ファンの人とずれてしまう」ことの怖さを語っており、「原作のファンは、自分だけの声や動きでキャラクターをイメージしている。それと、アニメが固定的に表現するイメージがずれる可能性が怖いと。では、どうしたか。『自分が一番のファンになろう。ファンの人よりファンになろう』という事を心掛けている。またユーザーの意見はあまり見ないようにしており、ユーザーに引っ張られるのではなく、こっちが引っぱっていくようにしたい」とも語っている[29]
音楽嗜好
「他にあまり趣味がない」と語るほど、音楽に対し思い入れが強い[30]
幼少期は姉の影響でチェッカーズを聴き、また音楽好きの母の影響で、レコードに触れ、ガゼボを口ずさむような子どもだった。思春期に入ってからは4つ打ちを知り、電気グルーヴをよく聴いていた。大学進学後、レコード屋に通うようになる。ニューウェイブUKパンクへの興味を持ち始めていた頃、映画『24アワー・パーティー・ピープル』が公開。そのレビューを石野卓球がしていたことをきっかけに、80年代から遡って、70年代の音楽にもより関心を広げる[30]
楽器歴では、小さい頃はピアノを習っていた。高校時にはコピーバンドを、大学在学時にはギターとベースとドラムとKORG Electribeの四人編成のバンドを組んでいた。また、音響専門誌『サンレコ』の読者でもあった[31]
その他・エピソード
愛用しているカメラはSONYDSC-RX1ロケハンではこのカメラに加え、ズームが出来るデジタル一眼レフカメラを使用している[32]
日々の生活の中における人間観察については、「基本的には、自分の見ている世界には自分がいない」「人と人が接する時、どのようにしてコミュニケーションを取ろうとしているのか、人が行動を起こす動機とは何だろうか、と思って見ている。だから"お腹が空いた"と言っている人を見ただけでも感動する。」と語っている。また、「感情に動かされている人や、自分の思いに素直な人を見ると感動して描きたくなる」と述べている[2]
京都アニメーションに入社して、刺激を受けた監督については「全員」としながら、その中でも特に「演出デビュー時も、初監督の『けいおん!』でも、先輩にあたる石原立也監督の仕事を間近で見てきた」と語り、「キャラクターとの向き合い方では、石原さんが好きになれるかどうか、が大きな基準にもなっている」と述べている[2]
作品を制作する上での打ち合わせや、アフレコなどでの伝え方については、「なるべく具体的に言わないようすることがある」と発言している[31]。その意図については、「もちろん言葉でも伝えるが、言葉だけだと誤解が多いので、伝え方を試したりしている」「一つの言葉に絞ると意味が限定されてしまうので、どうしても感覚的な表現に寄ることが多いかもしれない」「それでも、必ず考えているゴールにたどり着くように道を作ることはブレないようにしている」と語っている[31]。そのような伝え方に対して『映画 聲の形』で主人公を務めた入野自由からは、「役者の想像力を豊かに使ってくれる。僕らのことを信用してくれるディレクションが多かったので力を発揮できた。」[33]や、『たまこシリーズ』で音楽を担当したマニュアル・オブ・エラーズ・アーティスツ山口優からは、「ありがたかった。こちらが勝手に解釈する余地を与えてもらえるのは楽しい。」と振り返られている[31]
『映画 聲の形』で劇伴音楽を手掛けた牛尾憲輔からは、「コンセプトワークをしっかりやって、登場人物一人ひとりの感情の変化を一歩一歩さらっていく、そんな途方もない作業にほんと愚直に、全力で取り組むタイプの人でした。泥にまみれながらひとつひとつ作業していく姿にシンパシーを感じました。」と評されている[34]。また音楽の面では、「アニメ業界の方では山田監督くらいですね、ベルリンのテクノレーベルの話ができたのは」ともコメントしている[34]
アニメーション監督の新海誠は『映画 聲の形』を激賞し、「上品で端正な演出は、真似したくてもとても真似られそうもない」と評している[35]



  1. ^ つながる☆パピコ - 京都アニメーション公式スタッフブログ「THE☆アニメバカ一代」 (2009年11月25日)
  2. ^ a b c d e f 2015年10月31日京都市勧業館で行われた「第2回京アニ&Do ファン感謝イベント」トークショー発言より。
  3. ^ a b c d 2012年10月14日スコットランドイギリス)のグラスゴーで行われた「映画けいおん!」トークショー発言より。
  4. ^ a b 2015年2月11日シネマート六本木で行われた高橋良輔監督×山田尚子監督とのトークショー発言より。
  5. ^ 2009年11月1日に母校の学園祭で行われたトークショー発言より。
  6. ^ 現在大ヒット中! 若き女性監督に聞く映画『けいおん!』の魅力”. ニュース@ぴあ映画生活. 2015年4月22日閲覧。
  7. ^ 「第10回 東京アニメアワード」受賞作品が決定 アリエッティ、けいおん!!も”. エキサイトニュース. 2015年4月20日閲覧。
  8. ^ 第15回アニメーション神戸 「けいおん!」の山田監督も”. アニメ!アニメ!. 2015年4月20日閲覧。
  9. ^ オタクも女子高生も熱狂、150億円市場生んだ「けいおん!」人気の理由”. 日本経済新聞. 2015年4月14日閲覧。
  10. ^ 『けいおん!』山田尚子監督、寂しい…と本音チラリ!テレビシリーズ最終回へとつながる劇場版の展開は感動もの!”. シネマトゥデイ. 2015年4月14日閲覧。
  11. ^ 『映画「けいおん!」』がアニメーション映画として破格の興収17億円突破の大ヒット!”. シネマトゥデイ. 2016年9月6日閲覧。
  12. ^ 「映画 けいおん!」深夜アニメから日本を代表する映画へ”. エキサイトニュース. 2015年4月14日閲覧。
  13. ^ NHKが「けいおん!」を再放送 「アニメ推し」にファンも困惑?”. ライブドアニュース. 2016年9月6日閲覧。
  14. ^ 京アニのオリジナル「たまこまーけっと」来年1月放送開始予定 山田尚子監督”. アニメ!アニメ!. 2015年4月14日閲覧。
  15. ^ 第18回文化庁メディア芸術祭 「映画クレヨンしんちゃん」「ジョバンニの島」などに優秀賞”. アニメ!アニメ!. 2015年4月14日閲覧。
  16. ^ アニメーション部門新人賞”. 第18回文化庁メディア芸術祭. 2015年6月22日閲覧。
  17. ^ アニメ質問状:「響け!ユーフォニアム」”. MANTANWEB. 2015年11月9日閲覧。
  18. ^ 劇場アニメ『聲の形』制作は京アニ 監督は『けいおん!』山田尚子”. ORICON STYLE. 2015年11月9日閲覧。
  19. ^ 「聲の形」入野自由&早見沙織の熱演を原作者が絶賛 新場面写真も公開”. 映画.com. 2016年8月1日閲覧。
  20. ^ 映画「聲の形」2016年秋、松竹系公開 山田尚子監督、京都アニメーションの話題作”. アニメ!アニメ!. 2016年10月24日閲覧。
  21. ^ THE☆アニメバカ一代 映画充☆パピコ”. 京都アニメーションホームページ. 2016年4月20日閲覧。
  22. ^ 続編が望まれる映画 「けいおん!」山田監督 「ソフィア・コッポラみたいな女の子の映画を撮りたい」”. クランクイン!. 2016年4月20日閲覧。
  23. ^ THE☆アニメバカ一代 映画☆パピコ”. 京都アニメーションホームページ. 2016年4月20日閲覧。
  24. ^ キネマ旬報2011年12月上旬号「映画けいおん!の世界を山田尚子監督が語る」より
  25. ^ 「天才」の呼び声高く……『聲の形』山田尚子監督は『けいおん!』も手がけたヒットクリエイター”. Yahoo!ニュース. 2016年11月15日閲覧。
  26. ^ 「たまこラブストーリー」山田尚子監督インタビュー 第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞 ページ3”. アニメ!アニメ!ビズ. 2016年7月29日閲覧。
  27. ^ a b 「たまこラブストーリー」山田尚子監督インタビュー 第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞 ページ2アニメ!アニメ!2016年7月29日閲覧
  28. ^ 人間の“本質”を描き出す。山田尚子監督が語る映画『聲の形』”. ぴあ映画生活. 2016年10月10日閲覧。
  29. ^ 京アニ八田英明社長 山田尚子監督 京都でセミナーに”. アニメ!アニメ!ビズ. 2015年4月14日閲覧。
  30. ^ a b “最終回:対談 山田尚子+山口優(後編)”. サウンド&レコーディング・マガジン. (2013年8月9日). http://rittor-music.jp/sound/column/tamacomanu/5853 2016年11月17日閲覧。 
  31. ^ a b c d “第9回:対談 山田尚子+山口優(前編)”. サウンド&レコーディング・マガジン. (2013年8月2日). http://rittor-music.jp/sound/column/tamacomanu/5849 2016年11月17日閲覧。 
  32. ^ 2015年10月31日に京都市勧業館で行われた「第2回京アニ&Do ファン感謝イベント」展示コーナーより
  33. ^ 2016年9月17日に新宿ピカデリーで行われた映画『聲の形』初日舞台挨拶での発言より。
  34. ^ a b “アニメ映画『聲の形』の劇伴を担当した牛尾憲輔の「聴こえない世界」とは?”. 【es】エンタメステーション. (2016年10月27日). https://entertainmentstation.jp/54226 2016年11月17日閲覧。 
  35. ^ 『君の名は。』の新海誠監督、映画『聲の形』を絶賛 「上品で端正な演出はとても真似られそうもない」”. BIGLOBEニュース. 2016年11月17日閲覧。
  36. ^ a b 洲崎綾、マニュエラ作家陣による劇場版「たまこ」主題歌音楽ナタリー2016年7月9日閲覧
  37. ^ この他、エンディングに登場するキャラクターの衣装デザインや最終回の最後に挿入される「おしまい」という文字を手描きするなどもした。
  38. ^ マニュエラ作家陣活躍の「たまこまーけっと」歌モノベスト”. 音楽ナタリー. 2016年3月25日閲覧。


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