姿勢制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/12 04:49 UTC 版)
概要
宇宙機の場合、観測機器を観測対象に向けたり、通信アンテナを正しい方向へ向けたり、軌道制御時の推進方向を精密に保つために、衛星や船体の全体の向きを制御する必要がある。また有人宇宙活動では人間の船内・船外活動に支障をきたさないような制御が必要となる。
次のような制御ループによって姿勢制御が行われる。
航空機の姿勢制御
航空機の姿勢は、3つの方向で安定する。上下に走る軸を中心に、ヨーイングは機首を左または右に動かす。翼から翼へと走る軸を中心に、ピッチは機首を上下に動かす。横転、機首から尾まで伸びる軸を中心に回転する。昇降舵(水平尾翼のフラップを動かす)はピッチを生み出し、垂直尾翼の舵はヨーを生み出し、補助翼(反対方向に動く翼のフラップ)はロールを生み出す。
宇宙機の姿勢制御
宇宙機の姿勢制御には次のような方式がある。
スピン安定方式
スピン安定方式は、主な姿勢制御を1軸方向で機体を回転させることでジャイロ効果(ジャイロ剛性)によりぶれを防ぐ方式である。機体全体を1軸で回転させる「単一スピン安定方式」が基本であるが、アンテナやセンサなどを回転させたくない用途では、宇宙機本体とは逆回転させることで実質は回転させない「二重スピン安定方式」もある。いずれも潮汐力安定化のような方法で、残る2軸を安定化させることが一般的である。
3軸安定方式
3軸安定方式は直交する3つの軸に対して安定させる方式である。
バイアスモーメンタム方式
3軸安定方式でもバイアスモーメンタム方式は、1軸方向のみ大きなモーメンタム・ホイールを内蔵し高速回転させることで、機体全体を回転させることなく1軸でのジャイロ剛性を得る。この方式では残る2軸、または3軸全ては別の姿勢制御が必要になる。
ゼロモーメンタム方式
ゼロモーメンタム方式は3軸、または冗長性を得るために4軸といった方向のリアクション・ホイールを内蔵することで、姿勢制御を行う[2]。
- ^ 1本の矢印だけではその軸回りの任意の回転が表現できない。
- ^ a b 川口淳一郎著、『「はやぶさ」の超技術』、講談社、2011年3月20日第1刷発行、ISBN 9784062577229
- ^ 1軸方向をモーメンタム・ホイールで安定させる機体では、アンローディング用も含めた3軸を備えるものと、2軸だけを備えるものがある。
- ^ 燃料タンクだけの一液式では、タンク内部にゴム風船状の加圧バッグを収納しておくことで無重力空間でもタンクから配管へ燃料を押し出すことができるが、酸化剤タンクでは酸化剤が腐食性であるため容易ではない。多くのニ液式ロケットでは、燃料だけ先にノズルから噴射して軽い加速を得てから、酸化剤タンク内の酸化剤を配管側に寄せ、それから本格的な2液混合による噴射を行うという工夫をしている。日本の「はやぶさ」では、耐腐食性の金属ダイヤフラムを酸化剤タンクに内蔵した。
- ^ 多くの人工衛星では、主に軌道制御用に消費される推進剤の搭載残量が寿命を決定する。
- ^ “「ようこう」の成果について(補足資料)”. ISAS 2012年2月27日閲覧。
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