妖怪 妖怪の学術的研究

妖怪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 14:44 UTC 版)

妖怪の学術的研究

倉橋山の「(クダン)」:「天保7年の瓦版
犬神」『百怪図巻』:佐脇嵩之
天狗と象」:歌川国芳

妖怪を研究対象として取り扱っている学問には民俗学文化人類学などがある。また、文学歴史学宗教学芸術学演劇などの諸領域でも作品・事例についての研究が重ねられている。

民俗学では「民間信仰」に関する研究において、予兆禁忌ことわざ民間療法などと並んで、妖怪は庶民一般の信仰事象を解明する一事象として捉えられてきた。自然現象に対する理屈付け、教育的機能など、自然に対する畏怖や敬意、価値観などを明らかにするものと言われる。

著名な研究者

出生順

仏教哲学者。当時の科学的見地から、哲学や心理学を用いて、妖怪の存在やその現象の真偽を、分類し体系としてまとめた[49]。著書には『妖怪学』・『妖怪学講義』などがある。
日本の博物学者。粘菌の権威として知られる生物学者であるが、民俗学者でもあり、その見地から妖怪についても記している[50]。ちなみに柳田國男と親交があったが、山人にまつわる論争の末に絶交している[51]
日本の民俗学者。著書『遠野物語』では、河童や座敷童子などを通して、岩手を中心とした日本の風俗習慣や価値観を示したほか、著書『妖怪談義』において「信仰を失った神が零落した姿が妖怪である」とするなど[52]、妖怪から人間の精神性を読み解こうとした[53]。他に『山島民譚集』『一目小僧その他』などがある。
日本の歴史学者。文明開化以降、迷信などの類は否定的に見られるだけでなく、排斥される傾向にあったが、日本の歴史学の見地から学術的に妖怪を取り上げ、世間に見直させる風潮を作った[54]。著書に『日本妖怪変化史』などがある。
日本の風俗史学者。『日本伝説研究』(1922-25)で「人魚伝説」などを考証するなど、伝説関係の著作を多く手掛けた[55]
日本の民俗学者。日本の古民具や民間信仰について研究している。著書には『少年少女版日本妖怪図鑑』・『妖怪と絵馬と七福神』などがある。
日本の民俗学者。著書には『妖怪の民俗学 日本の見えない空間』などがある。
日本の文化人類学者、民俗学者でもある。「妖怪研究は人間そのものを知るためと同様に、総合的かつ学際的な視点による研究が必要不可欠である」と主張し、諸分野の妖怪研究を共有するための場としての「妖怪学」を提唱した[56]。著書に『日本妖怪異聞録』・『妖怪学新考-妖怪からみる日本人の心』などがある。
妖怪研究家。

注釈

  1. ^ 草双紙の分類の一つ。安永から文化にかけての約30年間に出版された。それまでの青本などに洒落本などの影響が加わり大人向けの言語遊戯などを取り入れた作品が多く見られた。
  2. ^ 古語では神留まる(かんづまる)
  3. ^ 磐境の境は境界や坂を意味し、このときの坂も神域との境界の意味を持つ。
  4. ^ 神籬の籬も垣の意味で、同様に神域との境界を意味する。
  5. ^ 結界としての神祭具でもある。
  6. ^ ヨーロッパやその他の大陸は、城壁の中に居住していることが多く、集落と自然環境が隔絶されている。
  7. ^ 町奉行が管轄した町場()に設けられた、時間制限で閉じられてしまう集落の出入り口にある門。門限の語源となっている。
  8. ^ 配置や間取りや構造が、自然と居住空間の境が曖昧な作りになっている。

出典

  1. ^ a b 宮田登 (2002), p. 24.
  2. ^ 小松和彦 (2015), p. 53.
  3. ^ 小松和彦 (2015), pp. 48–49.
  4. ^ a b 妖怪談義 (講談社学術文庫) 柳田 國男。NHK出版、100分 de 名著「遠野物語」。
  5. ^ 近藤瑞木・佐伯孝弘 (2007).
  6. ^ 小松和彦 (2015), p. 24.
  7. ^ 小松和彦 (2011), p. 16.
  8. ^ 小松和彦 (2011), pp. 16–18.
  9. ^ 宮田登 (2002), p. 14.
  10. ^ 小松和彦 (2015), pp. 201–204.
  11. ^ 宮田登 (2002), pp. 12–14.
  12. ^ 小松和彦 (2015), pp. 205–207.
  13. ^ a b c 小松和彦 (2011), pp. 21–22.
  14. ^ 香川雅信 (2011b), pp. 188–189.
  15. ^ 民俗学研究所 (1956), pp. 403–407(索引では「霊怪」という部門の中に「霊怪」「妖怪」「憑物」が小部門として存在している。)
  16. ^ a b 小松和彦 (2011), p. 20.
  17. ^ 『今昔物語集』巻14の42「尊勝陀羅尼の験力によりて鬼の難を遁るる事」
  18. ^ 伊藤慎吾 (2011), p. 78.
  19. ^ 小松和彦 (2011), p. 21.
  20. ^ 小松和彦 (2015), p. 46.
  21. ^ 小松和彦 (2015), p. 213.
  22. ^ 宮田登 (2002), p. 12.
  23. ^ 小松和彦 (2015), p. 200.
  24. ^ a b 太刀川清 (1987), pp. 365–367.
  25. ^ 世説故事苑 3巻”. 2015年12月16日閲覧。
  26. ^ アダム・カバット (1999), p. 29.
  27. ^ 村上紀夫 (2023), pp. 182–184.
  28. ^ 村上紀夫 (2023), p. 184.
  29. ^ 高田衛 (1989), pp. 369–397.
  30. ^ 尾崎久弥 (2001), p. 5.
  31. ^ 石川純一郎 (1985), pp. 27–34.
  32. ^ 兵庫県立歴史博物館 & 京都国際マンガミュージアム (2009), pp. 58–59.
  33. ^ 石上敏 (1994), pp. 372–373.
  34. ^ 多田克己 (2008), pp. 272–273.
  35. ^ 湯本豪一 (2008), pp. 30–31.
  36. ^ 湯本豪一 (2013), p. 158.
  37. ^ 渋谷保 (1891)「凡例」
  38. ^ 竹柴金作 (1929), p. 716.
  39. ^ 西本晃二 (2002), pp. 289–290.
  40. ^ 泉鏡花 (1984), p. 134(澁澤龍彦「解説」)
  41. ^ a b 山口敏太郎 (2007), p. 9.
  42. ^ 湯本豪一 (2008), p. 2.
  43. ^ a b c と学会 (2007), pp. 226–231.
  44. ^ a b c 妖怪王(山口敏太郎)グループ (2003), pp. 16–19.
  45. ^ 水木しげる (1974), p. 17.
  46. ^ 諸橋轍次 (1956), pp. 645–647.
  47. ^ 朝鮮総督府 (1972), pp. 87–98.
  48. ^ a b c d e 小山隆秀 (2009), pp. 3–5.
  49. ^ 香川雅信 (2011a), pp. 39–41.
  50. ^ 志村真幸 (2021), pp. 222–223.
  51. ^ 志村真幸 (2023), pp. 203–209.
  52. ^ 香川雅信 (2011a), pp. 45–48.
  53. ^ 妖怪百鬼夜行展 (2022), p. 26.
  54. ^ 香川雅信 (2011a), pp. 42–44.
  55. ^ 妖怪百鬼夜行展 (2022), p. 27.
  56. ^ 香川雅信 (2011a), p. 54.






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