奈良県 地理・地域

奈良県

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 03:51 UTC 版)

地理・地域

概要

八剣山(八経ヶ岳)
曽爾高原
吉野山

紀伊半島中央の内陸部に位置し、中央構造線によって南北に大別される。北部は奈良盆地大和高原といったなだらかな地形が広がる一方、南部は大台ケ原近畿地方最高峰の八経ヶ岳(八剣山)といった紀伊山地の急峻な地形で占められる。

南北2区分のほかに、北和中和西和宇陀(東和)、吉野南和)の5区分もあるが境界は曖昧なものとなっている。

奈良盆地
奈良盆地は、奈良県の中央から北西側に位置する。大阪との距離が近いこともあり、住宅開発が進んだ結果、大阪市京都市ベッドタウンとなっており、県民の8分の1が大阪市や京都市など県外へ通勤・通学している(奈良府民[3]。また、盆地外周の丘陵地(平城山丘陵西ノ京丘陵矢田丘陵馬見丘陵)ではニュータウンも開発された。
大和高原・宇陀
大和高原は、奈良盆地の東に位置する。名阪国道沿いの奈良市都祁地区や山添村では、工業団地が見られる。宇陀地域は、大和高原の南に位置する。南西部は盆地となっており、宇陀市中心部の近鉄大阪線榛原駅を中心にベッドタウン化も見られる。基本的に、奈良盆地と比べても自然が多く、奈良市の月ヶ瀬梅林曽爾村曽爾高原といったのどかな風景が広がっている。
吉野
吉野地域は、奈良県の3分の2近くの面積(神奈川県佐賀県に匹敵)を占める森林地帯である。範囲は吉野郡と同じ、もしくは五條市を加えたものである。吉野地域で特に知られるのは、吉野町千本桜で、春には多くの観光客が訪れる。また、世界遺産大峯奥駈道熊野古道小辺路)もあり、山岳信仰の霊地として古くから多くの信仰を集めている。大淀町など郡北部の一部の地域では、近鉄吉野線沿線であることや比較的可住地が多いことから、県北部と同様に大阪市京都市のベッドタウンとしてニュータウンが開発されている。その一方で、上北山村野迫川村などほとんどの地域は険峻な山地であり可住地面積が少なく、また道路施策の遅れから交通の便も悪いため、人口は多くの村で1,000人前後と少なく過疎状態であり財政再生団体化が進んでいる。

気候

奈良県各地の平年値(統計期間:1971年 - 2000年、出典:気象庁・気象統計情報
平年値
(月単位)
北西部 北東部 五條、北部吉野 南東部 南西部
奈良 奈良市
田原本 宇陀市
大宇陀
吉野 曽爾 上北山 十津川村
風屋
平均
気温
()
最暖月 26.6
(8月)
23.6
(8月)
24.6
(8月)
23.9
(8月)
24.4
(8月)
最寒月 3.8
(1月)
0.9
(1月)
1.9
(1月)
2.6
(1月)
4.6
(1月)
降水量
(mm)
最多月 208.5
(6月)
239.5
(6月)
194.3
(6月)
219.9
(6月)
216.8
(6月)
274.0
(9月)
446.6
(9月)
344.1
(7月)
最少月 40.7
(12月)
46.1
(12月)
37.1
(12月)
48.7
(12月)
53.1
(12月)
46.4
(12月)
59.4
(12月)
58.5
(12月)

気温の年較差・日較差の大きいいわゆる内陸性気候で、奈良における年平均気温は14.6°Cと全国の気象官署の中でほぼ平均的な気温である。降水量は年間を通じて1333.2mmと比較的少なく、奈良盆地(奈良市・橿原市などの地域)では冬型の気圧配置が強い時や、南岸低気圧が紀伊半島沖を通過した時に雪雲が流れ込むことがあり、積雪することもあるが、全体的にみると降雪の観測日数は多くない(年平均23.3日)。10cm以上の積雪となる時は殆どが南岸低気圧の通過によるものである。一方、五條地域・吉野地域・宇陀地域などは降雪・積雪に見舞われることがあり、天川村上北山村にはスキー場も存在する(大阪市から津市以南の近畿では両村だけ)。これらの地域では積雪が交通に影響を与えており、奈良県の道路政策には「雪害対策」の文言が含まれている。また温帯である。

気象は一般的に瀬戸内海式気候に属する北部(基準地は奈良市)と太平洋側気候に属する南部(基準地は吉野郡十津川村風屋)に大別される。天気予報では北部と南部に分けて発表される。

さらに北部を北西部(基準地は奈良市で狭義の奈良盆地の地域)、北東部(基準地は宇陀市で、山辺郡宇陀市)、五條・北部吉野(基準地は五條市で、旧大塔村の地域を除く五條市域と、吉野郡3町)と二次細分区分として3分割している。

南部は南東部(基準地は吉野郡上北山で、宇陀郡・吉野郡の大峯山系東側の地域)と南西部(基準地は十津川村風屋、五條市のうち旧大塔村の地域・十津川村野迫川村)と2分割している。

県内は典型的な盆地気候であり、夏場はかなり蒸し暑い。最高気温25°C以上の夏日は奈良と五條がほぼ全日のうち60日間となっており、県内では最も多い。しかし2005年7、8月における最高気温では十津川村風屋の37.3°C、上北山の37.0°C、五條の36.7°C、奈良の36.2°Cと昼間の気温に関しては、十津川村風屋と上北山のほうが、奈良や五條よりも高くなることがしばしばみられ、かなりの酷暑になるために近畿地方で最も気温が高いこともある。また奈良盆地は、強い日射で地表と上空との温度差が大きくなりやすいことや紀伊山地、生駒山地、金剛山地、笠置山地に高温多湿の気流がぶつかることでも大気が不安定となるために、かなり頻繁に積乱雲(雷雲)が発生して夕立が起きやすい。奈良の夏季(5、6、7、8、9月)における平均雷日数は17.2日で、豊岡兵庫県)の16.9日、京都の15.9日、彦根滋賀県)の14.6日を上回る多さである。

冬の寒さはどの地域でも厳しい。近畿地方全体でも一、二を争うほどで、十津川では日本海側の豊岡市よりも寒くなる日もある。一般に寒いと言われる京都盆地よりも、奈良盆地のほうが冬場の平均気温は低い。また北部山岳部の冷え込みは3月ごろまで続くことが多く、年間を通じての最低気温の記録が3月では宇陀市大宇陀で−6.2°C、奈良市針が−6.1°Cとなっており、これらの宇陀地域は遅などの影響を受けやすい。このほか前述の通り積雪による影響を受ける地域もあり、奈良県内でも気象は一概に言えない状況である。

台風の影響は内陸部のため大きな被害を受けることは稀であるが、1912年(大正元年)の暴風雨で死者93人[4][出典無効]、1959年(昭和34年)の台風15号(伊勢湾台風)では風水害により死者行方不明者113名を出し、1998年(平成10年)の台風7号では室生寺五重塔など文化財が大きな損壊を受ける[5]など、台風が紀伊半島を北上する場合には地形の影響から大きな被害が出る。

吉野地区は年間を通してが多い、日本でも有数の多雨地帯であると同時に台風銀座でもある。台風が接近、通過する時は勿論だが、台風本体が東シナ海を通り、日本海に抜ける時や九州または四国に上陸し、中国地方を縦断する時にも暖かく湿った南東の風が紀伊山地にぶつかり、南東斜面を中心に大雨になりやすく被害をもたらすことがある。その典型例として、1889年(明治22年)8月に起きた十津川大水害と2011年(平成23年)の台風12号がある。特に、2011年(平成23年)の台風12号では上北山村の72時間降水量が国内の観測史上最大となる1652.5mmもの雨が降り[6]、紀伊半島に甚大な被害をもたらしたことから「平成23年紀伊半島豪雨」または「紀伊半島大水害」と呼ばれている。

隣接する都道府県・市町村

自治体

奈良県の自治体

  市 (31%)
  町 (38%)
  村 (31%)

奈良県には、12市7郡15町12村の自治体がある。村の読み方はすべて「むら」である。町の読み方はすべて「ちょう」である。

都市圏

奈良県では、多くの自治体が大阪都市圏に含まれている。下記の表は、県内の都市雇用圏を表したものである。また、大阪都市圏の各自治体のほか五條市や吉野郡の一部も京阪神大都市圏に含まれる。県庁所在地である奈良市生駒市は県の最北部に位置し、大阪や京都へのアクセスにおいては至便で、ベッドタウンとなっている。また、奈良県では主要な公共交通手段として近畿日本鉄道(近鉄)が大部分を担っており、県中部の橿原市御所市、県南部の吉野町などからも大阪都市圏に1時間程度でのアクセスが可能となっている。

自治体
('80)
1980年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 自治体
(現在)
山添村 上野 都市圏 上野 都市圏 上野 都市圏 上野 都市圏 大阪 都市圏
12156918人
伊賀 都市圏 伊賀 都市圏 山添村
月ヶ瀬村 大阪 都市圏
12238814人
大阪 都市圏
12078820人
奈良市
都祁村 天理 都市圏 - 大阪 都市圏
12007663人
大阪 都市圏
12116540人
奈良市 大阪 都市圏
11170018人
大阪 都市圏
11842283人
大和高田市 大和高田市
大和郡山市 大和郡山市
天理市 天理 都市圏 天理市
橿原市 大阪 都市圏
11170018人
橿原市
桜井市 桜井市
御所市 - 御所市
生駒市 大阪 都市圏 生駒市
香芝町 香芝市
新庄町 葛城市
當麻町
平群町 平群町
三郷町 三郷町
斑鳩町 斑鳩町
安堵町 安堵町
川西町 川西町
三宅町 - 三宅町
田原本町 大阪 都市圏 田原本町
高取町 高取町
明日香村 明日香村
上牧町 上牧町
王寺町 王寺町
広陵町 広陵町
河合町 河合町
榛原町 - - 宇陀市
室生村 -
菟田野町 - - - - -
大宇陀町 - - - - -
曽爾村 - - 大阪 都市圏
12007663人
大阪 都市圏
12116540人
伊賀 都市圏
190804人
伊賀 都市圏
188673人
伊賀 都市圏
179010人
曽爾村
御杖村 - - 御杖村
五條市 五條 都市圏 五條 都市圏 五條 都市圏 五條 都市圏 - - - 五條市
西吉野村
大塔村 - - - -

北部地域と南部地域

奈良県は可住地面積が全国最下位となっており、人口の9割以上が北西部の奈良盆地(大和平野)に集中している。北西部は京阪神大都市圏に含まれ、大阪や京都への交通の便もよく都市近郊地域として発展している一方、世界遺産世界文化遺産)である古都奈良の文化財法隆寺地域の仏教建造物など歴史的文化的遺産にも恵まれている。一方、南部地域はほとんどが山地であり、吉野杉に代表される林業や紀の川におけるレジャーなど自然を生かした産業があるほか、この地域でも世界遺産(世界文化遺産)の紀伊山地の霊場と参詣道といった歴史的文化遺産に恵まれている。


注釈

  1. ^ 他の4都府県は、東京都神奈川県大阪府沖縄県である。
  2. ^ 都県内に気動車による定期列車が存在しないのは、当県のほかは東京都・神奈川県・沖縄県のみである。なお、2006年3月17日までは、気動車による急行「かすが」が奈良県内を走っていた。
  3. ^ 新幹線を除けば岩手県栃木県広島県もこれに該当する。2020年3月13日まで宮城県もこれに該当していた。
  4. ^ 近鉄が定期特急を運転していることを踏まえれば、JRと民鉄を総合すると、沖縄県を除く46都道府県全てで定期特急が走っている。
  5. ^ 臨時列車を含めた場合は、特急「まほろば」が運行されているため、特急列車が走っている県になる。
  6. ^ 京都府内の私鉄路線では阪急京都線大阪メトロ堺筋線と直通運転を行っているが、堺筋線の車両である大阪市交通局66系電車は定期運用では大阪府内の北千里駅、京都線の高槻市駅までの乗り入れのため京都府内には乗り入れない。
  7. ^ 地下鉄事業者の路線を有しない都道府県で、なおかつ地下鉄車両が乗り入れてくるのは奈良県以外では茨城県が該当する(県内の取手駅東京メトロ千代田線の車両が乗り入れるため。京都市営地下鉄東西線の車両は滋賀県へは、福岡市営地下鉄空港線の車両は佐賀県へは直通していない)。
  8. ^ 山梨大学宮崎大学は国立の男女共学であるが、総合大学ではない。
  9. ^ 実質的にはKCNとこまどりケーブルは経営統合しているのでKCNグループで独占しているといえる。
  10. ^ ただし期限付き。
  11. ^ 県内でも一部だが、これらの局を直接受信可能な地域がある(受信出来る局は地域によって異なる)。
  12. ^ サービス開始当初はKCN提携のものだけだったが、2008年8月1日から、ケイ・キャット提携(現・ケイ・オプティコム直営)のサービスも開始し、並列で同時提供している。

出典

  1. ^ 県のシンボル(奈良県)
  2. ^ “金魚・アユ・アマゴを「奈良県のさかな」に - MSN産経west”. 産経新聞. (2012年6月27日). オリジナルの2012年6月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120627160424/http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120627/wlf12062712140008-n1.htm 2012年6月27日閲覧。 
  3. ^ 県外通勤の実態2[リンク切れ] - 読売新聞
  4. ^ 誰か昭和を思わざる 大正ラプソディー (大正元年)[リンク切れ] Archived 2011年1月25日, at the Wayback Machine.[出典無効]、奈良県警の発表より
  5. ^ 強風による災害事例[リンク切れ] - 奈良地方気象台
  6. ^ 当時の気象庁アメダス記録
  7. ^ 「明治維新と奈良」『奈良市史 通史四』” (PDF). 奈良県 (1995年). 2017年6月5日閲覧。
  8. ^ やまと21世紀ビジョン[リンク切れ] - 奈良県
  9. ^ 奈良県統計課[リンク切れ]の調査による各年10月1日の人口
  10. ^ 捕獲されたニホンオオカミは現在、大英博物館で標本になっている - ならかん
  11. ^ 「刑務所ゼロ」、奈良に波紋 独自の教育惜しむ声 - 朝日新聞デジタル(2016年7月27日)
  12. ^ 強み 弱み 世の中の動き 県内地域の状況 ニーズの変化 ホテル - 奈良県
  13. ^ 日経グローカル No.94 P.48 - 49(2008年、日本経済新聞社 産業地域研究所)。なお当記事では客室数・ホテル数の最下位は徳島県となっている。
  14. ^ 「第2部 奈良県の中小企業 第1章 工業 その他指定外伝統工芸品」 『奈良県地域経済レポート』 奈良県. 2014年10月12日閲覧
  15. ^ 500年の歴史を未来へ伝えるために E!KANSAI 平成29年11月号 企業・地域の取組紹介 (近畿経済産業局)”. 近畿経済産業局. 2023年8月8日閲覧。
  16. ^ 13~14章/奈良県公式ホームページ”. www.pref.nara.jp. 2023年8月8日閲覧。
  17. ^ 無線局免許状等情報(総務省) - 2016年5月21日閲覧
  18. ^ 無線局免許状等情報(総務省) - 2016年5月21日閲覧
  19. ^ 無線局免許状等情報(総務省) - 2016年5月21日閲覧
  20. ^ テレビ・ラジオでの放送 奈良県の放送局 (PDF) - 日本道路交通情報センター 2016年5月21日閲覧
  21. ^ 2012年9月30日まではケイ・キャット枚方市八幡市京田辺市京阪東ローズタウンでサービスを提供)と提携関係にあったが、同10月1日に合併し直営化
  22. ^ 朝毎読日経 VS 地方紙のシェア争い - FACTA online
  23. ^ “奈良にうまいものなし。奈良高畑に住んだ…”. 奈良新聞. (2021年11月11日). https://www.nara-np.co.jp/opinion/20211111214017.html 2023年3月24日閲覧。 
  24. ^ スポーツ振興課”. 奈良県. 2023年10月18日閲覧。






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