天然痘とは? わかりやすく解説

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天然痘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/25 10:02 UTC 版)

天然痘(てんねんとう、variola, smallpox)は、天然痘ウイルス病原体とする感染症の一つである[1][2]疱瘡(ほうそう)、痘瘡(とうそう)ともいう。医学界では一般に痘瘡の語が用いられた。疱瘡の語は平安時代、痘瘡の語は室町時代、天然痘の語は1830年大村藩の医師の文書が初出である[3]ヒトに対して非常に強い感染力を持ち、全身に膿疱を生ずる。致死率が平均で約20%から50%と非常に高い[注 1][4]。仮に治癒しても瘢痕(一般的にあばたと呼ぶ)を残す。1980年世界保健機関(WHO)により根絶が宣言された。人類史上初にして唯一、根絶に成功した感染症の例である。


注釈

  1. ^ それまで流行していなかった地域においてはさらに致死率が跳ね上がるため、時に民族が滅ぶ原因となった事すらある。
  2. ^ 東山天皇寵愛の典侍中御門天皇の生母であった櫛笥賀子(没後、新崇賢門院の女院号を追贈)も天然痘によって天皇の死去から11日後に逝去している。
  3. ^ これについては、孝明天皇の病状の記録が天然痘とするには不審な点があるとして、毒殺説が唱えられていたが、原口清が従来説を否定し、近年では孝明天皇の死因が天然痘である事が通説となっている。
  4. ^ インドには天然痘流行の時、女神シータラーが祀られ、天然痘治癒や天然痘予防を祈願する信仰があったほどである。
  5. ^ 2002年廃止。

出典

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  2. ^ 浜部貴司 (2020年5月14日). “大坂救った発信力 洪庵、感染症と闘った不屈の医師”. 日経新聞. 日本経済新聞社. 2022年1月26日閲覧。
  3. ^ 山内 2015, p. 11.
  4. ^ 国立感染症研究所感染症情報センター 岡部信彦 (2001年10月). “IDWR: 感染症の話 天然痘”. idsc.nih.go.jp. 国立感染症研究所. 2016年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月21日閲覧。(2001年第40週(10月1日〜7日)掲載)
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  7. ^ 天然痘の歴史[1]
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  10. ^ 『物語メキシコの歴史』p40 中公新書 大垣貴志郎 2008年2月25日発行
  11. ^ 栄原永遠男「遣新羅使と疫瘡」 笠原編『日本古代の王権と社会』塙書房、2010年、ISBN 4827312370
  12. ^ 加藤茂孝人類と感染症との戦い -「得体の知れないものへの怯え」から知れて安心」へ- 第2回「天然痘の根絶-人類初の勝利」-ラムセス5世からアリ・マオ・マーランまで」(PDF)『モダンメディア』第55巻第11号、栄研化学、2009年、7-18頁、2022年10月16日閲覧 
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  36. ^ 米で次々発覚、危険物のずさんな管理”. ナショナル ジオグラフィック. ナショナル ジオグラフィック協会 (2014年7月23日). 2023年11月25日閲覧。
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  42. ^ 天然痘のリスク(1) | 一般社団法人 予防衛生協会 国立感染症研究所
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  48. ^ 北朝鮮の「生物兵器」は、どれほどの脅威なのか ITMediaビジネスオンライン、2017年10月25日
  49. ^ 在韓米軍、炭疽菌と天然痘の予防接種東亜日報』2004年7月1日
  50. ^ 平成29年版防衛白書。 韓国の『2016国防白書』は、「(北朝鮮は)1980年代から化学兵器を生産し始め、約2,500 - 5,000トンの様々な化学兵器を貯蔵していると推定される。また、炭疽菌(たんそきん)、天然痘(てんねんとう)、ペストなど様々な種類の生物兵器を独自に培養し、生産しうる能力を保有していると推定される」と指摘している。
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  52. ^ a b ゲノム科学が明らかにしたジェンナーの天然痘ワクチンの由来 2017年11月7日、一般社団法人 予防衛生協会
  53. ^ Kupferschmidt, Kai. "How Canadian researchers reconstituted an extinct poxvirus for $100,000 using mail-order DNA." Science July 6 (2017).
  54. ^ 天然痘近縁種の合成発表に疑問の声 悪用への懸念も毎日新聞』2018年2月6日
  55. ^ a b 「バイオテロから国民を守る」 初の天然痘治療薬、米当局が認可 NewSphere、2018年7月18日
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  57. ^ CBRNテロ対策の各論
  58. ^ 感染症法に基づく特定病原体等の管理規制について|厚生労働省
  59. ^ 病原体等の名称と疾患名称の対照表
  60. ^ 病原体等の適正管理について
  61. ^ 天然痘:類似ウイルス、今もアフリカ毒ヘビに寄生の可能性”. 毎日新聞. 毎日新聞社. 2007年7月10日閲覧。[リンク切れ]
  62. ^ 天然痘に似た症状の「サル痘」が欧米などで拡大 厚労省、国内流入を警戒





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